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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 厚生省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

年金受給権者への通知書等の郵送に当たり、割引制度を活用することにより郵便料金の節減を図るよう改善させたもの


(2)年金受給権者への通知書等の郵送に当たり、割引制度を活用することにより郵便料金の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(業務勘定)  (項)業務取扱費
 (項)福祉施設事業費
船員保険特別会計  (項)業務取扱費
国民年金特別会計(業務勘定)  (項)業務取扱費
 (項)福祉施設費
部局等の名称
社会保険庁

年金受給権者に郵送する通知書等の差出通数 2億0320万余通 (平成10、11両年度)
上記に係る郵便料金 108億9402万余円 (平成10、11両年度)
節減できた郵便料金 3億0825万円 (平成10、11両年度)

1 通知書等の郵送の概要

(受給権者への通知書等)

 社会保険庁では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)及び船員保険法(昭和14年法律第73号)に基づき、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを防止するため、厚生年金保険、国民年金及び船員保険に係る年金の受給権者に対して、老齢、障害、遺族等の各年金を支給している。
 そして、同庁では、受給権者に対して、次の各種の通知書等を定期的に郵送している。
〔1〕 振込通知書、支払通知書(以下、これらを「振込通知書等」という。)
 受給権者に年金の支払額を毎年6月に通知するもので、支払日までに送達することとされている。
〔2〕 公的年金等の源泉徴収票(以下「源泉徴収票」という。)
 年金の支払総額、源泉徴収税額等を通知するためのもので、毎年1月31日までに受給権者に交付することとされている。
〔3〕 年金受給権者現況届(以下「現況届」という。)
 引き続き年金を受ける権利を有していることを受給権者が誕生月の末日までに届け出るもので、届出書は受給権者の誕生月の月初に送達されている。
〔4〕 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書(以下「扶養親族等申告書」という。)受給権者が扶養親族等の有無等を申告するためのもので、受給権者に対しては11月中旬に送達し、12月初めに返送させるようにしている。

(通知書等の発送業務)

 各種の通知書等の発送業務は、同庁の社会保険業務センター(以下「業務センター」という。)で行っている。同庁では、発送業務等に係る業務委託要領等を定めて業者との業務委託契約を締結し、年金の種別ごとに、はがきへの目隠しシールの貼付、封書の封入封緘、郵便番号別の区分、東京中央郵便局等に郵便物を差し出すなどの業務を行わせている。

(郵便料金の割引制度)

 郵便料金には、大量の郵便物を差し出すなど一定の条件に該当するときに、通常の郵便料金を割り引くこととする種々の割引制度が定められている。
 そして、これらの割引制度の一つに「利用者区分割引」があり、差し出す郵便物を、あらかじめ受取人の住所又は居所の郵便番号別に区分し、同時に2,000通以上差し出すなどの条件を満たした場合に、差出通数に応じて2%から9%の割引(以下、この割引率を「基本割引率」という。)を受けることができることとなっている。
 この利用者区分割引には、さらに、特別割引率として、拠点となる郵便局に5万通以上差し出す場合は1%、郵便局が示している標準送達日数(3日程度)に更に3日程度の余裕を承諾する場合は4%を、それぞれ基本割引率に加算するものがある。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 同庁では、全国の受給権者約2900万人に対して、定期的に大量の通知書等を郵送しており、これらに係る郵便料金は、保険料を主な財源とする厚生保険特別会計等から支出されていて、その金額も毎年多額に上っている。そこで、通知書等の郵送に当たり、郵便料金の割引制度を十分に活用して郵便料金の節減が図られているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 平成10、11両年度に郵送した振込通知書等、源泉徴収票、現況届及び扶養親族等申告書について、作成から送付までの作業の実態及び郵便料金の割引制度の利用状況について検査した。
 前記の4種類の通知書等の10、11両年度における差出通数は、計2億0320万余通(10年度1億1117万余通、11年度9203万余通)であり、その郵便料金の総額は、計108億9402万余円(10年度58億6500万余円、11年度50億2902万余円)となっている。

(検査の結果)

 検査したところ、業務センターにおいては通知書等の送付について利用者区分割引を利用し、差出通数に応じた基本割引率の適用を受けていて、さらに、東京中央郵便局に5万通以上差し出す場合には、特別割引率(1%)の加算を受けていた。
 しかし、通知書等の送付について、標準送達日数に更に3日程度の余裕を承諾する場合の特別割引率(4%)の適用を受けたり、より高い基本割引率の適用を受けたりすることができると認められたものが次のとおりあった。

ア 特別割引率の適用について

 振込通知書等及び源泉徴収票については、その送達期限が法令等において定められている。これらについて両年度の送付実績を調査したところ、業務センターでは、これらを計7回に分けて郵送していたが、このうち4回については差出日から送達期限まで7日から11日の余裕期間があった。
 また、現況届及び扶養親族等申告書については、受給権者への送達時期は定められていないが、あらかじめパンフレット等で送達時期を周知しており、また、受給権者からの提出や返送のための所要期間を見込む必要がある。これらについて送付実績を調査したところ、いずれも、周知している送達時期に合わせて送付しており、また受け取ってから提出等の期限までに約2週間から1箇月の余裕期間があった。
 したがって、上記のように標準送達日数に更に3日程度の余裕を承諾しても特段の支障がなく、特別割引率(4%)の適用を受けることが可能であると認められた。

イ 基本割引率の適用について

 上記4種類の通知書等の中には、同一の差出日に、年金の種別ごとにそれぞれの通数をまとめて郵便局に差し出し、その差出通数ごとに基本割引率の適用を受けているものがあった。しかし、年金の種別が異なる通知書等であっても形状又は重量等が同じものについては、それぞれの通数を合算して、より高い基本割引率の適用を受けることができたものなどがあった。

(節減できた郵便料金)

 上記により、受給権者への通知書等の郵送に当たり特別割引率等を見直すこととすれば、郵便料金を10年度で1億6165万余円、11年度で1億4660万余円、計3億0825万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、社会保険庁において、より高い基本割引率の適用や特別割引率の加算の適用を受けたりして、郵便料金の節減を図るという認識が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、社会保険庁では、業務委託要領等を見直しするなどして、12年10月からより高い基本割引率の適用を受ける処置を講じた。また、同月に業務センターへ通知を発し、送達に3日程度の余裕を承諾することによって特別割引率の適用を受けることについて、13年4月から実施することとする処置を講じた。