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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金(159)−(167)

補助金


(159)農業集落排水事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、汚水処理水槽等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費
部局等の名称 東北農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 岩手県
間接補助事業者
(事業主体)
岩手県胆沢郡金ヶ崎町
補助事業 農業集落排水
補助事業の概要 農業集落排水施設を新設するため、平成10年度に汚水処理水槽、管理棟の建設等を行うもの
事業費 426,092,100円
上記に対する国庫補助金交付額 213,046,050円
不当と認める事業費 24,183,167円
不当と認める国庫補助金交付額 12,091,583円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、岩手県胆沢郡金ヶ崎町が、農業集落排水事業の一環として同町三ヶ尻地区において汚水処理施設を新設するため、平成10年度に地下式の汚水処理水槽(縦16.6m、横26.9m、底面積446.5m2 )及びその上部の管理棟(平屋建て、412.3m2 )の建設等を工事費426,092,100円(国庫補助金213,046,050円)で実施したものである。
 この処理施設は、鉄筋コンクリート構造とし、地下8.1m又は6.5mの位置に厚さ40cmの基礎底版を築造し、その上に、汚水の前処理室、流量及び水質を平準化する流量調整槽1槽、汚濁物を分解除去する回分槽2槽、汚泥貯留槽等の汚水処理水槽と上部の管理棟を建設するものである(参考図参照)
 このうち回分槽2槽(底面積109.5m2 )の設計についてみると、基礎底版にかかる荷重を2.76tf/m2 と算出し、これに基づき、基礎底版に配置する主鉄筋については、上面側には径16mmの鉄筋を20cm間隔で、下面側には径16mmと19mmの鉄筋を交互に15cm間隔で配置することとした。そして、これによれば、主鉄筋に生ずる引張応力度(注1) (常時)(注2) は鉄筋の許容引張応力度(注1) (常時)を下回ることから、応力計算上安全であるとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 検査したところ、回分槽の設計に当たり、基礎底版にかかる荷重を2.76tf/m2 と算定していたのは、次のとおり適切でなかった。
 すなわち、本件工事の設計においては、処理施設(各水槽及び管理棟)と各水槽に貯留する汚水との合計重量3,893.3tを処理施設の底面積446.5m2 で除して、汚水を含む処理施設の荷重を8.72tf/m2 と算出していた。そして、基礎底版の設計に当たっては、水槽内の汚水と基礎底版そのものの荷重は地盤の反力と相殺され、応力計算上、荷重に加える必要がないことから、上記の8.72tf/m2 から水槽ごとに汚水(設計深を2.3m、3.9m及び5.0mの3つに区分)と基礎底版の荷重を差し引くこととし、回分槽(汚水の設計深5.0m)については、5.96tf/m2 を差し引いて基礎底版にかかる荷重を2.76tf/m2 と算出していた。
 しかし、上記の計算方法を用いる場合には、算出した荷重8.72tf/m2 は汚水を含む処理施設全体の平均値であることから、基礎底版にかかる荷重の計算において差し引くこととした汚水と基礎底版の荷重も全体の平均値を用いなければならないのに、誤って、水槽ごとに算出された荷重をそのまま差し引いていた。このため、設計深が深い回分槽については基礎底版にかかる荷重が過小に算出されていた。そして、この種施設の一般的な計算方法は、汚水を含む処理施設全体の重量から汚水と基礎底版の重量を差し引いた重量を底面積で除して平均的な荷重を算出する方法であり、これにより回分槽の基礎底版にかかる荷重を正しく計算すると5.48tf/m2 となる。
 上記により、回分槽の基礎底版の主鉄筋に生ずる引張応力度(常時)を改めて計算すると、下面側で2,778kgf/cm2 、上面側で3,015kgf/cm2 となり、いずれも鉄筋の許容引張応力度(常時)1,800kgf/cm2 を大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
 このような事態が生じていたのは、同町において、委託した設計業務の成果品である設計図書等に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったこと、及び岩手県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件の処理施設は設計が適切でなかったため、回分槽2槽及びこの上部の管理棟(これらの工事費相当額24,183,167円)の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額12,091,583円が不当と認められる。

(注1) 引張応力度・許容引張応力度 「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注2) 常時 地震時などに対応する表現で、土圧など常に作用している荷重及び輪荷重など作用頻度が比較的高い荷重を考慮する場合をいう。

(参考図)

(参考図)

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