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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 貸付金

農業改良資金の貸付けが不当と認められるもの


(168)−(172)農業改良資金の貸付けが不当と認められるもの

会計名及び科目 農業経営基盤強化措置特別会計 (項)農業改良資金貸付金
昭和59年度以前は、
一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業振興費
部局等の名称 東北、九州両農政局
国の貸付金等 農業改良資金貸付金
(昭和59年度以前は、「農業改良資金助成補助金」)
貸付け等の根拠 農業改良資金助成法(昭和31年法律第102号)
貸付け等の内容 農業者等に対し農業改良資金の貸付けを行う都道府県に対する資金の貸付け等
貸付け等先 宮城県ほか1県
県の貸付件数 5件(3農業者)
県の貸付金額の合計 36,610,000円
(国の貸付金等相当額 24,406,666円)
県の不当貸付金額 30,305,263円
貸付け等の目的に添わない国の貸付金等相当額 20,203,507円

1 貸付金の概要

 農林水産省では、農業者等における農業経営の改善等に必要な資金の貸付けを行う都道府県に対して、当該貸付けに必要な資金の3分の2を無利子で貸し付けている(昭和59年度以前は当該額を補助金として交付している。)。
 都道府県は、国の貸付金及び補助金に自己資金等を合わせて資金を造成し、能率的な農業技術の導入に必要な施設の設置又は機械の購入等を行う農業者等に対して、その必要な資金を農業改良資金として無利子で貸し付けている。農業改良資金の貸付けの限度額は、資金の種類によって、農林水産省令で定める標準資金需要額を基準として都道府県が定める額の100分の80又は100分の90などとなっている。また、償還期間は12年以内となっている。
 農業改良資金の貸付けを受けようとする農業者等は、貸付申請書に事業計画を添えて貸付申請を行い、都道府県はその内容を審査の上貸付けの適否を決定することとなっており、農業者等が貸付申請前に完了した事業については、貸付対象としないこととされている。また、借受者は事業完了後に事業実施報告書を提出し、都道府県はこれに基づいて事業の実施状況を確認することとなっている。

2 検査の結果

 北海道ほか32県における農業改良資金の貸付けのうち547件の貸付けについて検査したところ、宮城県ほか1県の3農業者に対する5件36,610,000円の貸付けにおいて、借受者が、貸付けの対象とならない事業について貸付けを受けたり、貸付対象機械を購入していなかったりなどしていた。このため、30,305,263円の貸付けが不当と認められ、ひいては国の貸付金等相当額20,203,507円が貸付け等の目的に沿わない結果になっていると認められる。
 このような事態が生じていたのは、借受者が事実と相違した内容の貸付申請や事業実施報告を行っていたこと、これに対する県の審査及び確認が適切でなかったことなどによるものである。
 これを県別・貸付先別に示すと次のとおりである。

県名 貸付先 貸付対象 貸付年月 貸付対象事業費 貸付対象として適切でない事業費 貸付け等の目的に沿わない国の貸付金等相当額 摘要
同上に対する貸付金額 同上に対する貸付金相当額
千円 千円 千円
(168) 宮城県 農業者 米麦作用コンバイン等の購入 6.10 8,690
(6,930)
8,690
(6,930)
4,620 貸付対象外
(169)  同  同 田植機の購入 8.5 2,630
(2,100)
2,630
(2,100)
1,400
(170)  同  同 トラクタ等の購入 8.11 7,309
(5,800)
7,309
(5,800)
3,866
 これらの貸付けは、同一農業者に対し、大規模な水田営農を推進するために、米麦作用コンバイン等の購入に必要な資金8,690,000円、田植機の購入に必要な資金2,630,000円及びトラクタ等の購入に必要な資金7,309,000円の一部として、それぞれ6,930,000円、2,100,000円及び5,800,000円を貸し付けたものである。
 これらの貸付けに当たっては、目標年において6ha以上の水田営農面積を確保するための具体的で、達成が見込まれる事業計画を策定することがその要件となっている。借受者は、それぞれの貸付申請に当たり、自作地3.2haのほかに11haの農作業を受託することにより、計14.2haの水田営農面積を確保するという事業計画を策定し、農作業受委託契約書の写しとともに提出していた。しかし、この契約書は虚偽のものであり、実際は作業の受託に関する裏付けはなく、上記の事業計画は達成が見込まれるものではなかった。また、作業受託の実績もなく、目標年(平成9年)における水田営農面積は、自作地の3.2haだけであり、貸付けの要件である6ha以上を大幅に下回っていた。
 したがって、これらの事業は貸付けの要件を満たしておらず、貸付対象にならないものである。
(171)  同  同 トラクタ等の購入 9.10 13,209
(10,500)
12,959
(10,300)
6,866 貸付対象外、事業の一部不実施及び低額実施
 この貸付けは、トラクタ(付属品を含む。)、乾燥機、荷受ホッパ等の購入に必要な資金13,209,000円の一部として、10,500,000円を貸し付けたものである。借受者は、これらの機械を平成9年11月に貸付対象事業費どおりの額で購入したとしているが、実際は、これらのうちトラクタ(貸付対象事業費6,951,846円)は貸付申請をした同年8月より前の同年4月及び5月に購入しており、貸付対象にならないものである。また、乾燥機等(貸付対象事業費計5,562,462円)は購入しておらず、さらに、荷受ホッパ(貸付対象事業費694,692円)は契約額を水増ししており、実際は250,000円で購入していた。
 したがって、これに対する適切な貸付金額を計算すると200,000円となるので、本件貸付金額との差額10,300,000円が過大な貸付けとなっている。
(172) 宮崎県  同 ロールベーラ等の購入等 10.12 11,280
(11,280)
5,175
(5,175)
3,450 貸付対象外及び事業の一部不実施

 この貸付けは、ロールベーラ(注1) 、フロントローダ(注2) 等の購入及び牛舎等の設置に必要な資金11,280,337円の一部として、11,280,000円を貸し付けたものである。借受者は、これらの購入及び設置を平成10年10月から11年6月までに実施したとしているが、実際は、これらのうちロールベーラ等(貸付対象事業費計4,392,150円)は、貸付申請をした10年9月より前の9年12月から10年6月までに購入していて、貸付対象にならないものであり、フロントローダ(貸付対象事業費887,250円)は購入していなかった。
 したがって、これに対する適切な貸付金額を計算すると6,104,737円となるので、本件貸付金額との差額5,175,263円が過大な貸付けとなっている。

(注1) ロールベーラ 牧草等を拾い集めて、円柱形に圧縮、成形する機械
(注2) フロントローダ 運搬物の積込み、移動を行うために、トラクタの前部に装着する機械
(168)-(172)の計 43,118
(36,610)
36,763
(30,305)
20,203