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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 農林水産省|
  • 平成10年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用について


(2)並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び魚礁の管理・活用について

(平成10年度決算検査報告参照)

1 本院が要求した改善の処置

(検査結果の概要)

 水産庁では、沿岸漁場整備開発法(昭和49年法律第49号)等に基づき、沿岸漁業の基盤たる沿岸漁場の整備及び開発を図り、もって沿岸漁業の安定的な発展と水産物の供給の増大に寄与するため、沿岸漁場整備開発事業を推進することとしている。そして、農林水産大臣が作成し閣議決定された同事業に関する計画に基づき、都道府県、市町村等が事業主体となって、魚礁設置事業、水産動植物の増殖及び養殖場の造成事業、沿岸漁場保全事業等を補助事業により実施している。
 魚礁設置事業には、原則として共同漁業権内に魚礁を設置する並型魚礁設置事業、共同漁業権外に魚礁を設置する大型魚礁設置事業等がある。このうち、並型魚礁設置事業の実施に当たり事業計画の策定及び魚礁設置後における魚礁の管理・活用が適切に行われ、事業の効果の発現に資するものとなっているかなどに着眼して検査したところ、次のとおり適切を欠く事態が見受けられた。
(1) 事業計画の策定については、漁獲量が減少しているのにその原因を十分調査、検討することなく事業を繰り返していたり、事業実施計画の策定時における当該漁場の漁獲量に魚礁を設置することによる増加見込分を加えた漁獲量(以下「生産効果期待量」という。)を算出するに当たり、個々の魚礁の設置場所や近年の漁獲量の実績を考慮していなかったりしていた。
(2) 魚礁の管理・活用については、事業主体が管理を委託している漁業協同組合等(以下「漁協等」という。)から魚礁における漁獲状況などの報告が十分行われていなかったり、事業主体が魚礁の設定場所について漁業者に十分に周知を図っているものが少なかったりしていた。また、釣り漁業と網漁業のような異なった漁業種類の間の利用調整を図るなど、魚礁の適切かつ効率的な運用のために必要な利用方法を定めていなかったりしていた。
 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められた。
(1) 水産庁及び都道府県において魚礁1空m3 当たりの増加見込量の把握方法を示していないため、事業主体において生産効果期待量が的確に算出されていないこと、及び都道府県において魚礁の管理及び利用状況等を的確に把握しないまま施設管理・運営状況報告書を作成し水産庁に提出していること
(2) 事業主体において、魚礁の設置場所等について漁業者の意向を十分把握しておらず、また、漁業者に周知していないこと、漁協等との連絡協調体制等が十分でないこと、及び異なった漁業種類の間の魚礁の利用方法についてのトラブルをなくすような管理規程等を定めていないこと

(検査結果により要求した改善の処置)

 並型魚礁設置事業における事業計画の策定及び設置後の魚礁の管理・活用が適切に行われ、事業効果の発現が図られるよう、次のとおり、水産庁長官に対し平成11年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
(1) 事業計画を策定する際に用いる魚礁1空m3 当たりの増加見込量の把握方法を定めること
 特に、過去に同海域又は近隣の海域で並型魚礁設置事業を実施した実績がある場合は、可能な限り魚礁設置後における漁獲量の報告値を基に1空m3 当たりの増加見込量を算出するようにすること
(2) 魚礁の設置後における漁獲量の把握の方法を確立すること
(3) 異なった漁業種類間の魚礁の利用方法等についての指導方法を確立すること
(4) 都道府県に対し、魚礁の管理及び利用状況等を的確に把握して、施設管理・運営状況報告書を水産庁に提出するよう指導すること
(5) 事業主体に対し、魚礁の設置に際し漁業者の意向を十分把握するとともに、漁協等と十分連絡協議を図り、魚礁の設置後の管理・活用を適切に行うよう指導すること

2 当局が講じた改善の処置

 水産庁では、本院指摘の趣旨に沿い、12年9月までに通達を発するなどして、事業効果の発現が図られるよう、次のような処置を講じた。
(1) 事業計画を策定する際に用いる魚礁1空m3 当たりの増加見込量の把握方法を定めるため、事業実施地区等において、類似の事業を実施した実績がある場合は、可能な限り魚礁設置後における漁獲量の報告値を基に1空m3 当たりの増加見込量を算出することとした。
(2) 魚礁設置後の漁獲量の把握方法を確立するため、事業計画前の漁獲量に対応した実績数値を把握することとした。
(3) 異なった漁業種類間の魚礁の利用方法の確立に資するため、各地域において行われている利用調整に関する事例の収集・分析を行い、その内容を取りまとめ、これにより指導を行うこととした。
(4) 都道府県に対し、魚礁の管理及び利用状況等を漁協等の水揚げ資料等に基づき把握した上で、施設管理・運営状況報告書を水産庁に提出させることとした。
(5) 都道府県を通じ、事業主体に対して魚礁の設置に際し漁業者の意向を十分把握するとともに、漁協等と十分連絡協議を図り、魚礁の設置後の管理・活用を適切に行うよう指導した。