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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 建設省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国庫債務負担行為等により土地開発公社等が先行取得した土地を事業主体が取得する場合の国庫補助基本額の算定が適切に行われるよう改善させたもの


(2)国庫債務負担行為等により土地開発公社等が先行取得した土地を事業主体が取得する場合の国庫補助基本額の算定が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)建設本省  (項)都市計画事業費
道路整備特別会計  (項)道路事業費等
治水特別会計(治水勘定)  (項)河川事業費等
平成6、7両年度国庫債務負担行為
 一般会計(組織)建設本省   (事項)都市公園事業費補助等
 道路整備特別会計   (事項)一般国道改修費補助等
 治水特別会計(治水勘定)   (事項)河川改修費補助等
部局等の名称 東京都ほか5府県
補助の根拠 都市公園法(昭和31年法律第79号)
道路法(昭和27年法律第180号)
河川法(昭和39年法律第167号)等
事業主体 都1、県1、市4 計6事業主体
補助事業 公園、下水道、道路、街路、再開発、河川、砂防各事業
補助事業の概要 国庫債務負担行為等により公園事業、河川事業等の事業用地とするため土地開発公社等が先行取得した土地を事業主体が取得するもの
国庫補助基本額 289億3127万余円 (平成6、7両年度国庫債務負担行為等)
上記に対する国庫補助金額 128億8063万余円
過大になっていた国庫補助基本額 3億7575万円 (平成6、7両年度国庫債務負担行為等)
上記に対する国庫補助金相当額 1億6271万円

1 事業の概要

(土地先行取得の概要)

 建設省では、公共施設整備の促進を図ることを目的として、国庫債務負担行為等により公園事業、河川事業等の事業用地とするために先行取得された土地を取得する都道府県、市町村等の事業主体に対し、国庫債務負担行為年度の翌年度以降4箇年度に分割して国庫補助金を交付するなどしている。
 土地先行取得は、地方公共団体又は地方公共団体が設立した土地開発公社(以下、これらを「土地開発公社等」という。)において行っている。

(土地取得費に係る国庫補助基本額の算定)

 先行取得した土地を事業主体が取得する場合の国庫補助基本額は、「国庫債務負担行為により直轄事業又は補助事業の用に供する土地を先行取得する場合の取扱いについて」(昭和51年建設省計用発第16号。以下「事務次官通達」という。)等に基づき算定することとなっている。これによれば、先行取得の際の土地の取得費、補償費、事務費等及び直接管理費(以下、これらを「先行取得費」という。)並びに先行取得費に有利子の資金が充てられた場合の利子支払額の合計額を国庫補助基本額に計上することができることとされている。そして、この利子支払額は建設経済局長等が定めた利率(以下「限度利率等」という。)で6箇月ごとの複利により計算した額を限度とし、土地開発公社等が先行取得費を支払った日から事業主体が当該土地の取得に要する経費を支払った日までの期間を計算対象期間として算定することとされている。
 また、限度利率等は、市場金利の動向や市場公募地方債(以下「公債」という。)を発行する際の額面金額と発行価額との差額及び金融機関等に支払う受託手数料、登録手数料等(以下「公債発行手数料等」という。)を勘案したものとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象及び着眼点)

 東京都ほか10府県(注1) 、及び東京都ほか12府県(注2) 管内の69市区町、計80事業主体が、国庫債務負担行為等により平成7年度から11年度までの間に実施した公園事業、河川事業等の土地取得384件に係る土地取得費計1794億2940万余円(国庫補助金額801億0054万余円)を検査の対象とし、上記の国庫補助基本額の算定が、事務次官通達等の趣旨に沿って適切に行われているかという点に着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、東京都ほか1県(注3) 、及び大阪府ほか3県(注4) 管内の4市、計6事業主体が実施した土地の取得33件(土地面積計181,662.4m2 )に係る土地取得費計289億3127万余円(国庫補助金額計128億8063万余円)の国庫補助基本額に計上する利子支払額等の算定について次のような事態が見受けられた。

(1) 利子支払額が限度利率等により算定した額を超えていたもの

 東京都では、下水道事業、街路事業等22件に係る先行取得費の支払に公債を発行して調達した資金を充当していた。そして、国庫補助基本額に計上する利子支払額の算定に当たっては、公債の表面利率により算定した額が限度利率等により算定した額の範囲内であるとし、これとは別に公債発行手数料等も計上していた。このため、公債の表面利率により算定した額と公債発行手数料等との合計額が限度利率等により算定した額を超えていた。

(2) 利子支払額を実際の支払額によらず、これを超える限度利率等により算定していたもの

 長崎県、及び岐阜県ほか1県(注5) 管内の2市では、河川事業、道路事業等9件に係る国庫補助基本額に計上する利子支払額等について、実際の利子支払額は限度利率等により算定した額を下回っていたのに、先行取得費を支払った日に対応する限度利率等により、利子支払額を過大に算定するなどしていた。

(3) 利子支払額を実際より長い計算対象期間により算定していたもの

 大阪府ほか1県(注6) 管内の2市では、公園事業等2件に係る国庫補助基本額に計上する利子支払額の算定に当たって、計算対象期間の起算日を土地開発公社等が先行取得費を支払った日ではなく、これより前の有利子資金の借入日とするなどして、実際より長い期間を対象にして利子支払額を過大に算定していた。
 しかし、前記のように、限度利率等は公債発行手数料等を勘案したものとなっており、また、国庫補助基本額は、実際に要した費用を基礎として算定することとなっていることから、上記のような事態となっていたのは適切とは認められない。
 したがって、国庫補助基本額の算定が適切に行われるよう改善の処置を執る要があると認められた。

(過大になっていた国庫補助基本額)

 本件土地33件の取得について、国庫補助基本額をそれぞれ修正計算すると、計285億5552万余円となり、前記の国庫補助基本額はこれに比べて3億7575万余円(国庫補助金相当額計1億6271万余円)過大になっていた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
(ア) 建設省において、限度利率等は、公債の表面利率に加えて公債発行手数料等を考慮したものとなっていることを通達等により明確にしていなかったこと
(イ) 事業主体において、国庫債務負担行為等により土地を取得する場合の国庫補助基本額の算定方法に対する理解が十分でなかったこと、及び、建設省において、国庫補助基本額の算定方法についての指導及び周知徹底が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、建設省では、国庫債務負担行為等により土地を取得する場合の国庫補助基本額の算定が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。
(ア) 12年10月に、都道府県等に対して通知を発するなどして、限度利率等は、公債発行手数料等をも含めたものであることなどを明確に示した。
(イ) 上記の通知において、国庫補助基本額の算定方法を定めた前記事務次官通達等の趣旨について改めて指導及び周知徹底を図った。

(注1) 東京都ほか10府県 東京都、大阪府、茨城、新潟、岐阜、愛知、三重、島根、福岡、長崎、大分各県
(注2) 東京都ほか12府県 東京都、大阪府、宮城、茨城、新潟、岐阜、静岡、愛知、三重、島根、福岡、長崎、大分各県
(注3) 東京都ほか1県 東京都、長崎県
(注4) 大阪府ほか3県 大阪府、新潟、岐阜、福岡各県
(注5) 岐阜県ほか1県 岐阜、福岡両県
(注6) 大阪府ほか1県 大阪府、新潟県