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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本道路公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

橋りょう新設工事における補修塗装費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの


橋りょう新設工事における補修塗装費の積算を施工の実態に適合するよう改善させたもの

科目 (項)高速道路建設費
(項)一般有料道路建設費
部局等の名称 北海道、東北、北陸、関西、中国、四国各支社、東京、静岡、名古屋各建設局
工事名 北海道縦貫自動車道野田追川橋(鋼上部工)工事ほか32工事
工事の概要 高速道路等の建設工事の一環として、橋りょうを新設する工事
工事費 553億2421万余円
請負人 株式会社日本製鋼所ほか18会社及び石川島播磨重工業株式会社・高田機工株式会社近畿自動車道(敦賀線)佐分利川橋(鋼上部工)工事共同企業体ほか9共同企業体
契約 平成9年2月〜12年3月 一般競争契約、指名競争契約
補修塗装費の積算額 1億7088万余円
低減できた補修塗装費の積算額 9210万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 日本道路公団(以下「公団」という。)では、平成11年度に、高速道路等の建設工事の一環として、鋼製の橋りょう(以下「鋼橋」という。)のうち床版がプレストレストコンクリート製(以下「PC床版」という。)で、鋼板をI形状の断面に製作した主桁を橋軸方向に2本から3本配置するなどしたPC床版I断面プレートガーダー橋(以下「少本数主桁橋」という。参考図参照 )を新設する工事を33工事(工事費総額553億2421万余円)施行している。
 鋼橋では、従来、床版が鉄筋コンクリート製(以下「RC床版」という。)で、鋼板をI形状の断面に製作した主桁を橋軸方向に4本から7本配置するなどしたRC床版I断面プレートガーダー橋(以下「多本数主桁橋」という。参考図参照 )の施工が大部分を占めていた。しかし、公団においては、近年、鋼橋の構造をできるだけ単純化し製作及び現場施工の省力化を図ることなどを目的として、上記の少本数主桁橋が施工されるようになってきた。
 鋼橋は、道路面となる床版、床版を支える主桁、主桁を相互に連結する対傾構又は横桁等(以下、主桁、対傾構、横桁等を「橋りょう部材」という。)から構成されており、橋りょう部材は、橋脚、橋台によって支えられている(参考図参照)

(鋼橋の施工方法と補修塗装)

 鋼橋の施工方法は、次のとおりとなっている。
〔1〕 工場において鋼板等で橋りょう部材を製作し、スプレーで塗装(以下「工場塗装」という。)する。
〔2〕 橋りょう部材を現場に運搬して、橋脚、橋台上に架設し、その下面等には仮設足場を設置し、その上面には床版等を施工する。
〔3〕 橋りょう部材の運搬、架設等に伴い橋りょう部材の塗装に部分的に損傷が発生することから、橋りょう全体の塗装の損傷箇所を確認するなどの準備作業を行い、当該箇所をはけで元どおりに塗装する修復作業(以下、これらの作業を「補修塗装」という。)を行って、その後、仮設足場を撤去する。

(補修塗装費の積算)

 公団では、補修塗装費については、公団制定の「土木工事積算要領」(以下「積算要領」という。)に基づいて積算することとしている。この積算要領における補修塗装の歩掛かりは、多本数主桁橋における塗装の修復作業に係る施工実績が工場塗装面積に対して2%程度であったことから、これを基に定められており、少本数主桁橋にも適用することとなっている。
 そして、本件33工事においては、上記の補修塗装の歩掛かりに橋りょう塗装工の労務単価を乗じて1m2 当たりの補修塗装単価を算出し、これに各々の工場塗装面積を乗じて総額1億7088万余円と積算していた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 近年、公団では、道路面となる床版をPC床版とすることにより、主桁数を減じるなどして鋼橋の構造を単純化した少本数主桁橋の施工が増加してきており、設計の基本となっている。そこで、補修塗装費の積算が鋼橋の構造の変化や施工方法の変化に対応し施工の実態を反映したものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、多本数主桁橋と少本数主桁橋の構造及び施工方法の相違による塗装の損傷状況について、次のような事態が見受けられた。

(ア) 多本数主桁橋における塗装の損傷状況

 多本数主桁橋は、主桁の間隔が2mから3m程度で、主桁を相互に連結する対傾構が橋軸方向に6m程度の間隔で設置されているなど複雑な構造となっていた。そして、RC床版の施工は、橋りょう部材の上に底型枠(1枚当たり長さ1.8m、幅0.9m)、1m程度の間隔で設置する鋼製の底型枠支持材(1本当たり長さ2m〜3m)等(以下、これらを「底型枠材」という。)を組み立てて、現場でコンクリートを打設した後、底型枠材を取り外して、それを主桁の間から仮設足場に降ろして搬出する作業を行っていた。このように、橋りょう部材の間の限られた空間の中で底型枠材の組立て、搬出の作業を行うため、作業中に底型枠材が橋りょう部材に当たることなどにより、塗装の損傷が橋りょう部材の全般にわたって発生している状況であった(参考図参照)

(イ) 少本数主桁橋における塗装の損傷状況

 少本数主桁橋は、主桁の間隔が6m程度で、主桁を相互に連結する横桁が橋軸方向に10m程度の間隔で設置されているなど単純な構造となっていた。そして、PC床版の施工は、別途工場等で製作したものをクレーンで吊り上げて架設したり、橋軸方向に移動できる型枠を使用したりする工法を採用していることから、底型枠材の組立て、搬出の作業は必要のないものであった。このため、本院において既往年度施工分の1橋りょうを含む少本数主桁橋4橋りょうについて塗装の損傷状況を調査したところ、塗装の損傷は、橋りょう部材そのものの運搬、架設時に、橋りょう部材の端部の継手部や横桁付近の一部に生じていただけで、他の箇所にはほとんどない状況であった(参考図参照) 。そして、工場塗装面積に対する修復作業の施工面積の割合は、平均0.6%程度となっていた。
 以上の結果から、少本数主桁橋の補修塗装においては、多本数主桁橋に比べ、準備作業はほとんど変わらないものの、修復作業の施工面積は3分の1程度と少ない状況であった。
 したがって、公団では、少本数主桁橋が設計の基本となり、その施工が年々増加してきている状況であることから、その補修塗装費の積算に当たっては、施工の実態に適合した積算を行う要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、本件各工事における補修塗装費を修正計算すると、積算額は7873万余円となり、前記の積算額を約9210万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、少本数主桁橋の補修塗装費について、施工の実態を積算に反映させる配慮が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、12年10月に、少本数主桁橋の補修塗装費の積算が施工の実態に適合したものとなるよう積算要領を改正し、同年12月以降契約を締結する工事から適用することとする処置を講じた。

(参考図)

(参考図)