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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第7 日本下水道事業団|
  • 不当事項|
  • 工事

ポンプ場建設工事の施工に当たり、設計が適切でなかったため流入暗きょの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの


(243)ポンプ場建設工事の施工に当たり、設計が適切でなかったため流入暗きょの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

科目 (受託業務勘定)  (項)受託工事業務費
 (項)単独受託工事業務費
部局等の名称 日本下水道事業団大阪支社
工事名 出水市住吉雨水ポンプ場建設工事
工事の概要 雨水ポンプ場を建設するため、平成9、10両年度にポンプ棟の建設及び流入暗きょの築造等を行うもの
工事費 727,177,500円
(当初契約額682,500,000円)
請負人 梅林・植村特定建設共同企業体
契約 平成9年9月 指名競争契約
しゅん功検査 平成11年3月
支払 平成10年1月〜11年4月 5回
不適切な設計となっている工事費  9,011,000円

1 工事の概要

 この工事は、日本下水道事業団(以下「事業団」という。)が、鹿児島県出水市の委託を受けて、出水市公共下水道住吉雨水ポンプ場を建設するため、平成9、10両年度に雨水ポンプ棟の建設及び流入暗きょの築造等を工事費727,177,500円で実施したものである。
 このうち流入暗きょは、ポンプ棟と雨水管を接続するために、開削工法により、内径1,350mmの遠心力鉄筋コンクリート管(以下「ヒューム管」という。)を延長18.0m布設するなどのものである。ヒューム管の布設に当たっては、仮設の土留工として鋼矢板を設置することとし、ポンプ棟に沿って布設する延長10.3m部分は、鋼矢板をヒューム管の片側のみに設置し、これ以外の延長7.7m部分はヒューム管の両側に鋼矢板を掘削幅3.2mで設置し、施工後に引き抜くこととしている(参考図参照)
 事業団では、本件工事の設計を建設コンサルタントに委託しており、コンサルタントは、このうちヒューム管については、土圧等の応力計算を行うことなく、建設省制定の土木構造物標準設計を基に作成された参考資料により設計している。すなわち、管種についてはヒューム管2種を、管基礎については管底部をコンクリートにより管の外周4分の1の部分で固定する90度固定基礎として設計していた。そして、この参考資料は、ヒューム管にかかる土圧の範囲を管外径の直上分だけとしている(参考図参照)

2 検査の結果

 検査したところ、本件ヒューム管の設計が次のとおり適切でなかった。
 すなわち、管の設計に当たってコンサルタントが適用した参考資料は、鋼矢板の設置及び引き抜きを行わずにヒューム管を布設する場合のものであり、施工条件が異なるため本件工事には適用できないものであった。
 そして、本件工事のように、鋼矢板による土留工を施工してヒューム管等を布設する場合、事業団の設計基準による応力計算では、土圧計算の対象となる範囲が掘削幅に応じて広くなること、また鋼矢板を引き抜く時にヒューム管に作用する埋め戻し土のゆるみによる土圧を考慮することから、ヒューム管にかかる土圧が大きくなる(参考図参照)
 そこで、本件ヒューム管について、土圧等の応力計算を行うと、管に生じる最大曲げモーメント(注) は2.881tf・m(延長10.3m部分)又は2.645tf・m(延長7.7m部分)となり、いずれもヒューム管の許容曲げモーメント(注) 1.658tf・mを大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。そして、本件工事で施工したヒューム管には、ほぼ全長にわたって管頂部及び管底部にき裂が生じている状況であった。
 このような事態が生じていたのは、事業団において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検収が十分でなかったことなどによる。
 したがって、流入暗きょのうち本件ヒューム管は、設計が適切でなかったため所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る工事費相当額9,011,000円が不当と認められる。

最大曲げモーメント・許容曲げモーメント 「最大曲げモーメント」とは、外力が材に作用し、これを曲げようと材に生じる力の最大値をいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げモーメント」という。

(参考図)

(参考図)