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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第16 西日本旅客鉄道株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

新幹線におけるリネンサプライ作業の委託に当たり、未使用のおしぼりの有効利用を図ることなどにより委託費の節減を図るよう改善させたもの


新幹線におけるリネンサプライ作業の委託に当たり、未使用のおしぼりの有効利用を図ることなどにより委託費の節減を図るよう改善させたもの

科目 (款)鉄道事業営業費
部局等の名称 西日本旅客鉄道株式会社
契約名 旅客車リネンサプライ作業
契約の概要 新幹線において乗客に配布するおしぼりの列車への積込み・取卸し及び洗濯加工等の作業を委託して行わせるもの
契約の相手方 鉄道リネンサービス株式会社
契約 平成5年6月 随意契約
支払額 1億5862万余円 (平成10、11両年度)
節減できた委託費 3290万円 (平成10、11両年度)

1 業務委託の概要

(委託契約の概要)

 西日本旅客鉄道株式会社(以下「JR西日本」という。)では、列車内で使用するカバー、シーツ等の旅客車用品の洗濯加工等の作業を業者に委託して実施している。このうち、山陽新幹線を走行する「のぞみ」及び「ひかり」のグリーン車において、列車内サービスの一環として乗客に配布しているおしぼりの列車への積込み・取卸し及び洗濯加工等の作業(以下「リネンサプライ作業」という。)について、鉄道リネンサービス株式会社と業務委託契約を締結し、平成10年度8062万余円、11年度7799万余円、計1億5862万余円を支払っている。

(リネンサプライ作業の内容)

 リネンサプライ作業は、JR西日本の指示により、新大阪、広島、博多各駅を始発・終着とする列車について、各駅(広島駅は広島新幹線運転所)において次のとおり実施している。
〔1〕 各始発駅を出発する列車に積み込むおしぼりは、洗濯加工するリネン工場から委託業者の作業所まで輸送した後、作業所で、列車単位にグリーン車の定員数等を基に定めた本数を加熱して積み込む。
〔2〕 各終着駅に到着する列車からは、使用済み及び未使用のおしぼりを取り卸しいったん作業所へ返却する。作業所では、このうち、原則として17時までに到着する列車から取り卸した未使用のおしぼりは、加熱し当日の後続列車で利用するが、17時以降に到着する列車では、後続列車への積込み、加熱等に要する作業時間の確保が困難であることから当日の後続列車では利用しないなどとして未使用のおしぼりもリネン工場へ輸送し洗濯加工する。

(リネン料の算定)

 リネンサプライ作業に係る委託費のうち、リネン料はおしぼりの洗濯加工及びリネン工場と作業所間の輸送等に係る費用であり、作業に要する時分等を基に1本当たりの単価を算出し、これにおしぼりの本数を乗じて算定している。
 リネン料の支払対象としているおしぼりの本数は、原則として17時までに到着する列車については、未使用のおしぼりを当日の後続列車で利用することから、実際に乗客が使用した本数としているが、17時以降に到着する列車については、未使用のおしぼりを後続列車で利用しないことなどから、列車への積込本数(1列車当たり80本から240本)を使用、未使用にかかわらず支払対象としている。
 そして、10年度及び11年度にリネン料の支払対象となったおしぼりの本数は、それぞれ約338万本、約328万本であり、これによりリネン料をそれぞれ3805万余円、3591万余円支払っていた。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 JR西日本では、経営基盤の強化を図るため経費のより一層の削減等に取り組んでいる。
 このような状況から、本件業務委託は経済的、効率的に行われているか、特にリネン料の支払対象となるおしぼりの本数の算定が適切なものとなっているかなどについて検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、リネン料の支払対象としているおしぼりについては、次のように適切とは認められない事態が見受けられた。
(ア) 原則として17時以降に到着する列車についてみると、積込本数は、10年度約264万本、11年度約258万本であったが、そのうち実際に使用した本数は、それぞれ約56万本(積込本数の約21%)、約53万本(同約20%)に過ぎず、大半の約207万本、約205万本が未使用となっていた。これは、おしぼりを使用する乗客数が平日、休日、繁忙時期等により異なっているのに、グリーン車の定員数等を基に一律に積込本数を定めていたことによるものであり、このため、積込本数と実際の使用本数に大幅なかい離が生じていた。
(イ) 原則として17時以降に到着する列車(10年度計約14,000本、11年度計約14,400本)については、加熱等に要する作業時間の確保が困難であるため、一律に未使用のおしぼりを後続列車で利用しないこととしていた。しかし、加熱等に要する作業時間は、その作業内容等からみて新大阪、博多の両駅では1時間程度、広島新幹線運転所では2時間程度あれば足りることから、後続列車で利用することが可能である列車がそれぞれ約6,700本(約47%)、約7,000本(約48%)あった。
 したがって、列車へのおしぼりの積込本数を乗客数の実態を考慮して調整したり、未使用のおしぼりを後続列車で利用したりすることにより、乗客に使用されないまま洗濯加工することとなるおしぼりの本数を減らし、委託費の節減を図る要があると認められた。

(節減できた委託費)

 本件委託費について、上記のような方法によると、使用されないまま洗濯加工しているおしぼりの本数を10年度約158万本、11年度約154万本減らすことができ、リネン料が10年度2110万余円、11年度1991万余円となることから、委託費をそれぞれ約1690万円、約1590万円、計約3290万円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
(ア) グリーン車に積み込むおしぼりの本数について、乗客数の実態を考慮していなかったこと
(イ) 未使用のおしぼりを後続列車で利用するための作業に要する時間を勘案し、可能な限り後続列車に積み込み、未使用おしぼりの有効利用を図るための検討が十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、JR西日本では、12年9月、新たに「新幹線おしぼり作業仕様書」を作成し、乗客数の実態を考慮して列車へのおしぼりの積込本数を見直すとともに未使用おしぼりの有効利用を図り、同年10月からの業務委託契約に適用する処置を講じた。