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  • 平成11年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第18 東日本電信電話株式会社、第19 西日本電信電話株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

加入者光ケーブル敷設工事の光損失試験の設計を経済的なものとするよう改善させたもの


(1)(2)加入者光ケーブル敷設工事の光損失試験の設計を経済的なものとするよう改善させたもの

会社名 (1) 東日本電信電話株式会社
(2) 西日本電信電話株式会社
((1)及び(2)ともに平成11年6月30日以前は「日本電信電話株式会社」)
科目 (1) 設備投資勘定
(2) 設備投資勘定
部局等の名称 (1) 東日本電信電話株式会社本社
(2) 西日本電信電話株式会社本社
工事名 (1) 横浜西(横浜西10)通信設備総合工事ほか25工事
(2) 北大阪支店No.0440通信設備工事ほか40工事
工事の概要 支店の設備センタビルと加入者を結ぶ光ファイバケーブル敷設等の通信設備工事
工事費 (1) 19億6512万余円
(2) 50億6313万余円
請負人 (1) 株式会社協和エクシオほか9会社
(2) 近畿通信建設株式会社ほか7会社
契約 (1) 平成10年3月〜11年11月 資格型一般競争契約
(2) 平成10年3月〜11年10月 資格型一般競争契約
幹線光ケーブルの光損失試験を実施した心線数 (1) 32,954心
(2) 38,295心
上記の心線に係る光損失試験の積算額 (1) 4318万余円
(2) 5388万余円
光損失試験を実施した未接続心線数 (1) 30,584心
(2) 34,221心
低減できた光損失試験の積算額 (1) 3990万円(平成11年度)
(2) 4790万円(平成11年度)

1 工事の概要

(アクセス網の光化)

 東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)及び西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)では、情報通信端末の普及に伴う高速コンピュータ通信や映像通信を始めとするマルチメディア通信サービスを可能とする通信基盤を整備するため、加入者線交換機を設置している支店の設備センタビルからオフィスビル等の加入者までのアクセス網を、従来のメタリックケーブルから光ファイバケーブルに逐次更新してきている。
 そして、設備センタビルとオフィスビル等の加入者を結ぶ光ファイバケーブル(以下「加入者光ケーブル」という。)は、設備センタビルと分岐点を結ぶ幹線部分の光ファイバケーブル(以下「幹線光ケーブル」という。)と、これから分岐してオフィスビル等の加入者まで敷設する支線部分の光ファイバケーブル(以下「配線光ケーブル」という。)とに区分される。光ファイバケーブルは、光ファイバ心線を多数束ねたものであり、幹線光ケーブル1条当たりの心線数は、おおむね数百心から1,000心、また、配線光ケーブル1条当たりの心線数は、おおむね数十心となっている。

(工事の内容)

 設備センタビルからの加入者光ケーブルの敷設工事は、両会社の各地区の技術総合センタが、各支店から工事実施の依頼を受けて請負業者に発注し、実施している。この敷設工事では、幹線光ケーブルだけを敷設する場合と、幹線光ケーブルとこれに接続する配線光ケーブルも併せて敷設する場合とがある。そして、通信サービスの提供が可能となる幹線光ケーブルの心線は、オフィスビル等の加入者まで敷設する配線光ケーブルに接続している心線(以下「接続心線」という。)である。

(パルス試験及び光損失試験)

 NTT東日本の各地区の技術総合センタでは、本社が制定した「電気通信設備工事規格書」等及び平成11年4月に日本電信電話株式会社東日本会社移行本部設備部が配布した工程解説書の補足資料(以下「補足資料」という。)に基づき、加入者光ケーブル敷設工事の最終試験を請負業者に実施させている。
 また、NTT西日本の各地区の技術総合センタでは、本社が制定した「電気通信設備工事規格書」等に基づき、加入者光ケーブル敷設工事の最終試験を請負業者に実施させている。
 両会社では、この最終試験としてパルス試験及び光損失試験を実施することとしており、両試験の内容、目的は次のとおりである。

(ア) パルス試験

 パルス試験は、光ファイバ心線に光パルスを入射し、光ファイバ心線の断線の有無や光ファイバ心線どうしの接続が正確に行われているかを測定する試験であり、敷設工事が適正に実施されたことを確認するため、敷設された光ファイバケーブルの全心線を対象として行う試験である。

(イ) 光損失試験

 光損失試験は、光ファイバ心線に設備センタビル側から光を入射し、オフィスビル等側で受光することにより、設備センタビルからオフィスビル等までの間の光損失を測定する試験であり、加入者に通信サービスを提供する上での許容損失値を満足しているかを判定するため、所要の心線を対象として行う試験である。
 上記の光損失試験は、「電気通信設備工事規格書」等によれば、設備センタビルから加入者光ケーブルの端末の区間について測定することとなっている。また、NTT東日本ではさらに光損失試験の対象とする心線の範囲については、補足資料により、オフィスビル等に引き込まれている心線を対象として行うこととしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 両会社では、11年度末における幹線部分のケーブルが光化されている区域の割合はNTT東日本で約40%、NTT西日本で約30%となっており、22年までに100%とすることを目標として加入者光ケーブルの敷設工事を引き続き推進していくこととしている。そこで、同工事のうち幹線光ケーブル敷設工事の設計に当たり、光損失試験を実施する心線(以下「試験実施心線」という。)の選定が経済的なものとなっているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 NTT東日本の神奈川支店ほか5支店管内(注1) の151工事(工事費総額84億4039万余円)及びNTT西日本の大阪支店ほか7支店管内(注2) の127工事(工事費総額148億3480万余円)において、それぞれ11年度にしゅん功した幹線光ケーブル300条の試験実施心線46,933心、同222条の試験実施心線45,043心を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、幹線光ケーブル敷設工事の設計における試験実施心線の選定は、次のような状況となっていた。
(ア) NTT東日本では、前記の151工事のうち、26工事(工事費総額19億6512万余円)で敷設した幹線光ケーブル64条の試験実施心線32,954心(光損失試験の積算額4318万余円)のうちには、オフィスビル等の加入者まで敷設する配線光ケーブルに接続していない心線(以下「未接続心線」という。)が48条に30,584心含まれていた。
(イ) NTT西日本では、前記の127工事のうち、41工事(工事費総額50億6313万余円)で敷設した幹線光ケーブル94条の試験実施心線38,295心(光損失試験の積算額5388万余円)のうちには、未接続心線が57条に34,221心含まれていた。
 しかし、光損失試験は、加入者に通信サービスを提供する上での許容損失値を満足しているかを判定するためのものであり、未接続心線については同試験を行う必要はないものである。この未接続心線については、配線光ケーブルを接続し加入者に通信サービスを提供する際に、設備センタビルからオフィスビル等までの間の光損失試験を実施するものである。
 したがって、光損失試験の対象とする心線は接続心線に限定して設計を行うよう明確に指示する必要があると認められた。

(低減できた積算額)

 上記により、未接続心線を光損失試験の対象としない設計とすれば、NTT東日本の26工事及びNTT西日本の41工事の光損失試験に係る積算額を、それぞれ約3990万円、約4790万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。
(ア) NTT東日本では、本社において、各地区の技術総合センタ等に対し補足資料を配付しているものの、光損失試験の対象とする心線の範囲についての指示が十分なされていなかったこと
(イ) NTT西日本では、本社において、各地区の技術総合センタ等に対し光損失試験の対象とする心線の範囲を具体的に示していなかったこと
(ウ) 両会社の各地区の技術総合センタにおいて、光損失試験の対象とする心線の範囲を十分に理解していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、NTT東日本では12年10月、NTT西日本では同年7月、それぞれ各地区の技術総合センタ等に指示文書を発し、加入者光ケーブル敷設工事の際に光損失試験を行う対象心線の範囲について、接続心線のみを対象とすることにより、光損失試験の設計を経済的なものとする処置を講じた。

(注1) 神奈川支店ほか5支店 神奈川、千葉、宮城、山形、秋田、北海道各支店
(注2) 大阪支店ほか7支店 大阪、京都、神戸、滋賀、和歌山、名古屋、静岡、岐阜各支店