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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 総理府|
  • (防衛庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査が適切に行われるよう改善させたもの


 護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)防衛本庁  (項)装備品等整備諸費
平成12年度国庫債務負担行為
 (組織)防衛本庁  (事項)装備品等整備
部局等の名称 海上自衛隊舞鶴、大湊両地方総監部
契約名 護衛艦「さわゆき」12年度年次検査総則の部、船体の部その1、機関の部、電気の部外4件ほか45件
契約の概要 護衛艦及び護衛艦に搭載されている機器を良好に維持するため、その機能等の検査を行うもの
契約の相手方 函館どつく株式会社ほか8会社
契約 平成12年7月〜13年2月 指名競争契約、随意契約
契約金額 8億6272万余円 (平成12年度)
通信機器に係る年次検査費 5877万余円
実施要領に基づいて検査した場合との開差額 2700万円

1 年次検査の概要

(年次検査の実施)

 海上自衛隊横須賀地方総監部ほか4地方総監部では、護衛艦等の艦船及び艦船に搭載されている機器を良好に維持するため、定期検査及び年次検査を実施している。
 このうち年次検査は、おおむね5年に一度行われる定期検査の年度を除いて毎年度実施されるもので、その実施の手順、方法、内容等は、「艦船の修理、定期検査等に関する達」(昭和45年海上自衛隊達第45号。以下「達」という。)等の規定に基づく「年次検査実施要領」(昭和59年海上幕僚監部制定。以下「実施要領」という。)に定められている。
 また、平成10年12月に海上自衛隊に補給本部が設置され、年次検査を含む艦船等の整備等の実施に関する企画、総合調整等の事務を行うこととされている。これに伴い、実施要領の制定・改正に関する事務は、海上幕僚監部から補給本部に移管されている。

(年次検査の請求及び発注の手続)

 年次検査は、一部の機器を除き請負により行われている。その年次検査の請求及び発注の手続は、達等により、次のように行うこととなっている。
〔1〕 各地方総監部の所在地に設置されている造修補給所の長は、各艦船の長に年次検査の開始期日を通知する。
〔2〕 艦船長は、乗員に艦船及び搭載機器について調査等を行わせ、機器の使用実績、修理記録、点検成績その他年次検査に必要な資料を作成し、これを検査請求書に添付して造修補給所長に年次検査を請求する。
〔3〕 造修補給所長は、上記の資料を基に機器の状態を把握した上で、年次検査の仕様書を作成し、地方総監部に提出する。
〔4〕 地方総監部は、年次検査を入札に付するなどして、業者に発注する。

(点検成績の作成)

 前記の〔2〕における点検成績は、前記のように、艦船の乗員が年次検査の発注前に検査を行って記録・作成することになっている。この検査(以下「事前点検」という。)は、年次検査を効果的・効率的に行うために、機器の状態を事前に把握することを目的として、実施要領に定められた項目について行うことになっている。

(通信機器の年次検査の内容)

 請負業者において行われる通信機器の年次検査の方法及び内容については、実施要領において、外観検査と機能検査とされ、それぞれ具体的な検査項目が定められている。外観検査は、部品の損傷、焼損、緩み、変形等の有無の確認を目視等により行うもの、機能検査は、送信出力や受信感度等が基準を満たしているかを試験機器等を使って確認するもので、不具合がある場合には、その箇所及び原因を調べることになっている。
 そして、請負業者は、上記の検査結果を報告書にまとめて造修補給所長に提出する。なお、地方総監部では、不具合があった場合、当該契約を変更して部品の交換、修理等を行っている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 艦船及び搭載機器の年次検査は、定期検査が行われる年度を除いて毎年度実施されるもので、その契約額は毎年多額に上っていることなどから、年次検査が達や実施要領に基づき適切に実施されているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 各地方総監部が12年度に業者に請け負わせ実施した護衛艦に搭載されている通信機器の年次検査について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、舞鶴、大湊両地方総監部が実施した年次検査46件、契約額8億6272万余円における通信機器計591機器の検査(検査費の積算額5877万余円)について、適切とは認められない事態が、次のとおり見受けられた。
(1)舞鶴、大湊両地方総監部では、年次検査の実施前に機器の状態を把握するために乗員が行うこととされている事前点検が行われておらず、点検成績が作成されていなかった。このため、両地方総監部では、年次検査の実施に当たり、実施要領に定められた外観検査及び機能検査のほかに、事前点検を目的とした検査を含めて請け負わせていた。
 しかし、年次検査を効果的・効率的に行うためには、乗員が実施する事前点検の結果を記録した点検成績を活用するなどして、年次検査の実施前に機器の状態を把握しておくべきであり、事前点検を目的とした検査を請け負わせていたのは適切とは認められない。
(2)年次検査の実施に当たり、実施要領に定められた機能検査を行う前の作業として、舞鶴地方総監部においては「微調整」、大湊地方総監部においては「点検等」と称する作業を含めて請け負わせていた。
 これらの作業について、両地方総監部ではそれぞれ、「微調整」は機器の送信出力等の計測値を基準値より少しでも向上させることなどを目的とし、また、「点検等」は機器各部のユニット単位で正常に作動しているかを確認することなどを目的としたものであるとしている。
 しかし、各通信機器は年次検査終了時の段階で基準値を満たしていれば、1年間は機器の性能等が確保され、護衛艦の任務の遂行に支障がなくなるのであるから、特段の理由がない限り、実施要領に定める機能検査を行えば足り、「微調整」及び「点検等」の作業を追加して行う必要はないと認められた。
 現に、横須賀、呉及び佐世保の3地方総監部では、事前点検については業者に請け負わせることなく乗員が実施し、また、「微調整」や「点検等」のような作業は行っていない状況であった。
 したがって、年次検査の実施に当たっては、乗員に点検成績を作成させるなどして事前に機器の状態を十分把握した上で年次検査を請け負わせるよう、また、検査の内容については実施要領を標準として行うよう、改善を図る要があると認められた。

(実施要領に基づいて検査した場合との開差額)

 実施要領に定められた方法・項目により年次検査を実施したとして舞鶴、大湊両地方総監部における通信機器に係る検査費を積算すると、3175万余円となり、前記の積算額5877万余円と比べ約2700万円の開差が生じることとなる。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、両地方総監部において、実施要領の趣旨の確認が必ずしも十分でなかったことにもよるが、艦船等の整備等に関する企画、総合調整等の事務を行う補給本部において、各地方総監部に対し、実施要領に基づいて年次検査を適切に実施するよう十分な周知徹底を図っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、補給本部では、13年10月に各地方総監部に通知を発し、実施要領に基づいて年次検査を行うよう周知徹底を図り、これを受けて、両地方総監部では、今後発注する年次検査について、点検成績を作成の上、実施要領を標準として行うこととする処置を講じた。