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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(78)労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定) (項)保険給付費
部局等の名称 厚生労働本省(支出庁)(平成13年1月5日以前は労働本省)
宮城労働局ほか11労働局(審査庁)
山形労働基準局(審査庁)(平成12年度以降は山形労働局)
支払の相手方 220医療機関
不適正な支払となっていた労災診療費 手術料、リハビリテーション料、入院料等
不適正支払額 33,533,257円(平成11、12両年度)

1 保険給付の概要

(労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

(療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)に対し診察、処置、手術等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働局(平成11年度以前は都道府県労働基準局)に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省)において労災診療費を支払うこととなっている。
 労災診療費は、「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号労働省労働基準局長通達)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定めこれにより算定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 労災診療費のうち手術料、リハビリテーション料等に着目して、宮城労働局ほか13労働局及び山形労働基準局ほか1労働基準局の審査に係る11、12両年度の労災診療費の支払についてその適否を検査した。

(不適正支払の事態)

 検査したところ、宮城労働局ほか11労働局及び山形労働基準局の審査に係る労災診療費のうち、手術料、リハビリテーション料、入院料、麻酔料、検査料等が適正に支払われていなかったものが、220医療機関について33,533,257円あった。
 これらの事態について、その主なものを示すと次のとおりである。

ア 手術料に関するもの

 手術料は、創傷処理、植皮術等の区分ごとの所定点数により算定することとなっている。そして、1回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっている。
 しかし、宮城労働局ほか11労働局及び山形労働基準局管内の164医療機関では、本来算定すべき区分の所定点数によらず、異なる区分のより高い所定点数により算定したり、同一手術野につき 2以上の手術を同時に行っているのに、主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により算定したりするなどしていた。このため、手術料276件、21,995,006円が適正に支払われていなかった。

イ リハビリテーション料に関するもの

 リハビリテーション料は、理学療法等の区分ごとの所定点数により算定することとなっている。そして、特定の施設基準に適合しているものとして届出を行った医療機関において、入院の日等から起算して6箇月を超えた期間に理学療法等を行った場合、6箇月以内に行った場合の所定点数よりも低い所定点数により算定することとなっている。
 しかし、宮城労働局ほか9労働局及び山形労働基準局管内の21医療機関では、入院の日等から起算して6箇月を超えた期間に行った理学療法等であるのに、6箇月以内に行った場合の高い所定点数により算定するなどしていた。このため、リハビリテーション料325件、5,793,993円が適正に支払われていなかった。

ウ 入院料に関するもの

 傷病労働者が、医師又は看護婦の常時監視を要する症状であるなどの算定要件に該当する場合は、入院室料加算を算定できることとなっている。
 しかし、埼玉労働局ほか5労働局管内の26医療機関では、入院室料加算の算定要件に該当しない傷病労働者であるのに、入院室料加算を算定するなどしていた。このため、入院料65件、3,063,964円が適正に支払われていなかった。
 このような事態が生じていたのは、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、前記の12労働局及び1労働基準局において、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによると認められる。
 上記の適正に支払われていなかった労災診療費の額を労働局等別に示すと次のとおりである。

労働局等名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額

宮城労働局

7

32
千円
1,395
秋田労働局 3 4 1,434
山形労働基準局 11 37 618
群馬労働局 19 113 1,602
埼玉労働局 33 129 5,885
千葉労働局 16 32 1,502
東京労働局 40 149 6,193
新潟労働局 10 91 2,161
山梨労働局 9 37 1,791
愛知労働局 11 14 740
兵庫労働局 40 242 7,097
福岡労働局 8 14 840
鹿児島労働局 13 67 2,268
220 961 33,533