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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 平成11年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策の実施について


 水田麦・大豆等の生産振興を図るための技術対策の実施について

(平成11年度決算検査報告参照)

1 本院が要求した改善の処置

(検査結果の概要)

農林水産省では、転作による水田の有効活用や生産構造の転換を図ることを目的として、平成10、11両年度に、米の緊急生産調整推進対策を実施するとともに、水田を活用して生産される麦及び大豆(以下「水田麦・大豆」という。)について水田麦・大豆等生産振興緊急対策事業を実施している。この事業においては、農業協同組合等が事業主体となり、営農排水、病害虫防除等の技術の実証を行う水田麦・大豆生産振興緊急対策技術・営農実証事業を実施している。
 この実証事業について検査したところ、次のとおり、水田麦・大豆等の本格的生産の定着・拡大という事業効果の発現及び確保が十分図られていないと認められる事態が見受けられた。
(1)事業の実施に当たり、機械等を用いて作業を実施する場合の技術数の判定方法や、土壌診断に関してその実施時期などが明確に定められていなかったため、事業が効果的に実施されていなかった。
(2)事業の実施状況の確認について、技術のタイプごとに技術の実証を行っていたかどうかを確認できない状況となっていたり、作業記録等が保存されていなかったりしていて、事業の実施を十分確認できなかった。また、収量や品質の目安を定量的に示し、その実績を把握する仕組みとなっていなかったため、実施した事業が生産性や品質の向上等の課題に十分対応しているかを客観的に分析・評価することができず、事業の実効性を十分確保する仕組みとなっていなかった。
 このような事態が生じていたのは、主として次のことによると認められた。
(1)農林水産省において、技術数の判定方法、実証した技術の内容や実証面積等について実施要領等に明確に定めていなかったりなどしていて、事業実施についての審査・確認体制を整備していなかったこと、市町村等に対し、収量や品質等の目標値を定めさせたり、その実績を報告させたりするなどして事業実施の効果を把握することなどについて都道府県に対する指導が十分でなかったこと
(2)道県において、実証した技術の内容や実証面積についての審査・確認が十分でなかったこと、より効果的な技術を選定すること及び技術の実証を裏付けるための資料を整備、確認することについて、事業主体に対する指導が十分でなかったこと、各技術の内容及び関連についての理解が十分でなく、事業主体に対する指導が適切でなかったこと
(3)事業主体において、水田麦・大豆の生産について生産性や品質の向上等の課題に対応した水田営農を推進するという事業の趣旨についての認識が十分でなかったこと

(検査結果により要求した改善の処置)

 水田麦・大豆等の本格的生産の定着・拡大という事業効果の発現及び確保が十分図られるよう、12年度から実施している水田農業経営確立対策における技術対策について、次のとおり、農林水産大臣に対し12年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。

(1)栽培技術の実施及び確認並びに事業実施による効果の把握に関して次のとおり、水田農業経営確立対策実施要綱(平成12年12農産第1932号。以下「実施要綱」という。)等を改正するなどして明確に示すこと
 ア 事業が効果的に実施されるように複数の栽培技術を同時に実施する場合の技術数の判定方法等を具体的に定めること
 イ 栽培技術についてその実施による効果が確保されるように実施内容及び確認方法を具体的に定めること
 ウ 栽培技術の実施等に係る要件を確認できる資料を整備すること
 エ 水田麦・大豆等の本格的生産の定着・拡大を図るため、収量・品質等について目標値を定めさせたり、その実績について対策期間中報告させたりするなどして事業実施の効果が把握できるような体制を整備すること

(2)都道府県及び都道府県から確認事務について委託を受ける市町村に対して、実施要綱等の周知徹底を図り、栽培技術の実施等の確認について的確に行うよう指導すること

2 当局が講じた改善の処置

 農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、13年5月に実施要綱等を改正するなどして、事業効果の発現及び確保が十分図られるよう、次のような処置を講じた。

(1)栽培技術の実施及び確認並びに事業実施による効果の把握に関して次のとおり、実施要綱等を改正するなどして明確に示した。
 ア 複数の栽培技術を同時に実施する場合の技術数の判定方法等を具体的に明記した。
 イ 栽培技術について、土壌診断の時期を明確にするなどしてその実施内容及び確認方法について具体的に定めた。
 ウ 資材を使用した技術を実施した場合にそれを確認できる資料として、資材購入伝票や作業日誌の具体的様式を定めた。
 エ 都道府県水田農業基本方針及び市町村等水田農業振興計画における水田麦・大豆等の作付け及び販売計画について、作物の収量や品質の目標を踏まえて定めることとした。また、その実績について、毎年度、報告させたりするなどして事業実施の効果が把握できるような体制を整備した。

(2)都道府県及び市町村に対して、実施要綱等の周知徹底を図り、栽培技術の実施等の確認について的確に行うよう指導した。