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  • 平成12年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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補助金


(210) 河川等関連公共施設整備促進事業の実施に当たり、施工が設計と相違していたため橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 道路整備特別会計 (項)道路事業費
部局等の名称 埼玉県
補助の根拠 予算補助
補助事業者
(事業主体)
埼玉県
補助事業 河川等関連公共施設整備促進
補助金の概要 橋りょうを架け替えるため、平成11、12両年度に橋脚、上部工等を施工するもの
事業費 123,099,900円
(うち国庫補助対象額 68,566,900円)
上記に対する国庫補助金交付額 34,283,450円
不当と認める事業費 90,601,706円
(うち国庫補助対象額 50,464,000円)
不当と認める国庫補助金交付額 25,232,000円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、埼玉県が、河川等関連公共施設整備促進事業の一環として、行田市栄町外地区の一級河川忍川に架かる橋りょうを新橋(橋長29.2m、幅員10.7m)に架け替えるため、平成11、12両年度に橋脚1基の築造、鋼合成床版の製作・架設等を工事費123,099,900円(うち国庫補助対象額68,566,900円、国庫補助金34,283,450円)で実施したものである。
 このうち橋脚は、高さ 9.3m、底版部が橋軸方向5.0m、橋軸直角方向12.0mの矩形断面、柱部が橋軸方向1.2m、橋軸直角方向11.0mの小判型断面の鉄筋コンクリート構造となっている(参考図1参照)
 そして、この橋脚の柱部の鉄筋については、鉛直方向に主鉄筋を、水平方向に帯鉄筋及び中間帯鉄筋をそれぞれ配置することとしており、このうち帯鉄筋及び中間帯鉄筋は、これらの鉄筋が一体的な構造となってコンクリートを横方向から拘束することにより、構造物の保有する靭(じん)性(注1) を向上させることなどを目的として配置するものである。
 上記の各鉄筋については、設計図書によると次のように施工することとしていた。
(ア)主鉄筋は、径29mmの鉄筋を、柱の周縁部に12.5cmから15.0cmまでの間隔で鉛直方向に配置する。
(イ)帯鉄筋は、径16mmの鉄筋を、主鉄筋を取り囲むようにして15cmの間隔で水平方向に配置する。
(ウ)中間帯鉄筋は、両端部をフック状に曲げ加工した径16mmの鉄筋を、帯鉄筋が配置されるすべての断面において、橋軸直角方向に100cmの間隔で、その両端部を帯鉄筋にかけて配置する(参考図2参照)
 そして、設計計算書においては、橋脚の耐震設計を「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編)の耐震設計編に定める地震時保有水平耐力法(注2) により行っている。これによると、前記のように柱部の鉄筋を配置すれば、内陸直下型地震を想定した地震動の場合の橋脚の地震時保有水平耐力が橋脚に作用する慣性力を上回ることなどから、本件橋脚は耐震設計上安全であるとしていた。

2 検査の結果

 検査したところ、中間帯鉄筋は、両端部を帯鉄筋にかけることとされているのに、誤って帯鉄筋ではなく主鉄筋にかけて施工されていた(参考図3参照)
 このため、帯鉄筋と中間帯鉄筋とが一体となっておらず、橋脚が大きな地震力を受けた際、帯鉄筋のはらみだし等に対する中間帯鉄筋の抑制効果が期待できないことになる。この結果、帯鉄筋と中間帯鉄筋が一体的な構造となってコンクリートを横方向から拘束する効果じんが低下することとなり、ひいては、構造物の保有する靭性を低下させることとなる。
 そこで、本件橋脚について、改めて橋軸方向における地震時保有水平耐力及び慣性力を計算すると、内陸直下型の地震動では、地震時保有水平耐力248.00tf、慣性力311.56tfとなり、地震時保有水平耐力が慣性力を大幅に下回っている。
 このような事態が生じていたのは、橋脚の施工が設計と相違していたのに、これに対する県の監督、検査が適切でなかったことによると認められる。
 したがって、本件橋脚は、中間帯鉄筋の施工が設計と相違したものとなっていて、同橋脚及びこれに架設された鋼合成床版等(これらの工事費相当額90,601,706円、うち国庫補助対象額50,464,000円)は耐震設計上の所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る国庫補助金相当額25,232,000円が不当と認められる。

(注1) 靱(じん)性 外力に抗して破壊しにくく、衝撃力にも耐えるようなねばり強い性質
(注2) 地震時保有水平耐力法 大規模地震を想定した耐震設計法で、平成7年の阪神・淡路 大震災の被災状況等を踏まえて、地震に対して構造物に適切なねばりを持たせ、靭(じん)性を高めることにより、構造物全体としての崩壊を防止するという観点から定められた耐震設計法。安全性の判定は、構造物が有している地震時保有水平耐力が、地震時に作用する慣性力以上になることにより行う。この慣性力は物体の重量に構造物の靭(じん)性に応じて低減される設計震度を乗じて算出される。

(参考図1)

(参考図1)

(参考図2)

(参考図2)

(参考図3)

(参考図3)

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