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健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの


(53) 健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計 (健康勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
  (年金勘定) (款)保険収入 (項)保険料収入
部局等の名称 北海道社会保険事務局ほか26社会保険事務局(190社会保険事務所及び23社会保険事務局事務所)(平成11年度は宮城県ほか11都府県(60社会保険事務所))
保険料納付義務者 1,518事業主
徴収不足額 健康保険保険料 1,068,202,058円(平成11年度〜14年度)
  厚生年金保険保険料 3,254,007,238円(平成11年度〜14年度)
  4,322,209,296円

1 保険料の概要

(健康保険、厚生年金保険)

 健康保険は、常時従業員を使用する事業所の従業員を被保険者として、業務外の疾病、負傷、分娩等に関し医療、療養費、傷病手当金、出産手当金等の給付を行う保険である。また、厚生年金保険は、常時従業員を使用する事業所の65歳未満(平成14年4月1日以降は70歳未満)の従業員を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行う保険である。
 そして、事業所に使用される従業員のうち、いわゆるパートタイム労働者等の短時間就労者については、労働時間、労働日数等からみて当該事業所に常用的に使用されている場合には被保険者とすることとされている。

(保険料の徴収)

 保険料は、被保険者と事業所の事業主とが折半して負担し、事業主が納付することとなっている。
 そして、これらの事業主は、地方社会保険事務局(11年度以前は都道府県)の社会保険事務所等に対し、健康保険及び厚生年金保険に係る次の届け書を提出することとなっている。
(ア) 新たに従業員を使用したときには、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届
(イ) 毎年8月には、同月1日現在において使用している被保険者の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額算定基礎届
(ウ) 被保険者の報酬月額が所定の範囲以上に増減したときには、変更後の報酬月額等を記載した被保険者報酬月額変更届
 これらの届け書の提出を受けた社会保険事務所等は、その記載内容を審査するとともに、届け書に記載された被保険者の報酬月額に基づいて標準報酬月額(注1) を決定し、これに保険料率を乗じて得た額を保険料として徴収している。
 保険料の13年度の収納済額は、健康保険保険料6兆2276億余円、厚生年金保険保険料19兆9359億余円、計26兆1635億余円に上っている。

 標準報酬月額 健康保険では第1級98,000円から第39級980,000円(平成12年12月までは第1級92,000円から第40級980,000円)まで、厚生年金保険では第1級98,000円から第30級620,000円(12年9月までは第1級92,000円から第30級590,000円)までの等級にそれぞれ区分されている。被保険者の標準報酬月額は、実際に支給される報酬月額をこの等級のいずれかに当てはめて決定される。


2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 本院では、毎年度の決算検査報告において、特別支給の老齢厚生年金(注2) の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者(後掲の「厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの」参照) を使用している事業主が届出を適正に行っていなかったため多額の保険料が徴収不足となっている事態を掲記している。
 また、平成12年度決算検査報告においては、短時間就労者等を使用している小売業、飲食業等の事業主が届出を適正に行っていなかったため保険料が徴収不足となっているなどの事態を掲記しているが、この中には食料品製造業においても事業主が短時間就労者等に係る届出を適正に行っていなかったものもあった。
 これらのことから、本年の検査に当たっては、北海道社会保険事務局ほか26社会保険事務局の217社会保険事務所等管内の事業主のうち、次の3,313事業主について、社会保険事務所等における11年度から14年度までの間の保険料の徴収の適否を検査した。
(ア) 短時間就労者等を使用している小売業、飲食業及び食料品製造業の事業主
(イ) 特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者を使用しているなどの事業主

 特別支給の老齢厚生年金 厚生年金保険において行う保険給付であり、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あって老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などに60歳以上65歳に達するまでの間支給される。そして、受給権者が厚生年金保険の適用事業所に使用され被保険者である間は、その者の標準報酬月額等に応じて年金の額の一部又は全部の支給が停止される。

(徴収不足の事態)

 検査したところ、上記27社会保険事務局の213社会保険事務所等管内における3,296事業主のうち1,518事業主について、徴収額が4,322,209,296円(健康保険保険料1,068,202,058円、厚生年金保険保険料3,254,007,238円)不足していた。
 これを、前記の事業主別にみると、次のとおりである。

(ア) 短時間就労者等を使用している小売業、飲食業及び食料品製造業の事業主に係るもの
679事業主 徴収不足額 2,754,876,565円
(イ) 特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者を使用しているなどの事業主に係るもの
839事業主 徴収不足額 1,567,332,731円
 このような事態が生じていたのは、事業主が次のように届出を適正に行っていなかったのに、上記の213社会保険事務所等において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったことによると認められる。
〔1〕 被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの    
1,340事業主 徴収不足額 4,014,725,266円
〔2〕 資格取得年月日の記載が事実と相違していたもの
162事業主 徴収不足額 284,813,698円
〔3〕 被保険者資格喪失届を誤って提出していたものなど
16事業主 徴収不足額 22,670,332円

 このように事業主が届出を適正に行っていなかったのは、制度を十分に理解していなかったり、従業員が受給している特別支給の老齢厚生年金が支給停止となる事態を避けようとしたりしていたことなどによる。
 なお、これらの徴収不足額については、本院の指摘により、すべて徴収決定の処置が執られた。
 徴収不足額の大部分を占める被保険者資格取得届の提出を怠っていた事態についての事例を示すと次のとおりである。
<事例1> 短時間就労者等を使用している食料品製造業の事業主が被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの
 A会社は、水産食料品の製造等の業務に従事する従業員234人を使用していた。同会社は、これら従業員のうち74人については、勤務時間が短く常用的な使用でないなどとして、社会保険事務所に対して被保険者資格取得届を提出していなかった。
 しかし、上記の74人について賃金台帳、雇用契約書等により調査したところ、同会社はこのうち8人を常用的に使用しており、被保険者資格取得届を提出すべきであった。
 このため、健康保険及び厚生年金保険の保険料3,760,281円(健康保険保険料1,682,884円、厚生年金保険保険料2,077,397円)が徴収不足になっていた。
<事例2> 特別支給の老齢厚生年金の受給権者を使用している事業主が被保険者資格取得届の提出を怠っていたもの
 B会社は、警備等の業務に従事する従業員110人を使用していた。同会社は、これら従業員のうち22人については、年金の受給権者である従業員から被保険者資格取得届が提出されると受給している特別支給の老齢厚生年金が支給停止になるとの申出を受けるなどしたため、社会保険事務所に対して被保険者資格取得届を提出していなかった。
 しかし、上記の22人について賃金台帳、雇用契約書等により調査したところ、同会社はこれら22人を常用的に使用しており、被保険者資格取得届を提出すべきであった。
 このため、健康保険及び厚生年金保険の保険料15,909,239円(健康保険保険料7,227,299円、厚生年金保険保険料8,681,940円)が徴収不足になっていた。

(地方社会保険事務局等ごとの徴収不足額)

 これらの徴収不足額を地方社会保険事務局等ごとに示すと次のとおりである。

これらの徴収不足額を地方社会保険事務局等ごとに示すと次のとおりである。