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  • 平成13年度|
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雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの


(57) 雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)雇用安定等事業費
部局等の名称 青森労働局ほか20労働局(支給庁)
青森公共職業安定所ほか64公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 78事業主
特定求職者雇用開発助成金の支給額の合計 172,920,523円 (平成12年度〜14年度)
不適正支給額 99,008,876円 (平成12年度〜14年度)

1 保険給付の概要

(特定求職者雇用開発助成金)

 特定求職者雇用開発助成金(以下「助成金」という。)は、雇用保険(前掲の「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」参照) で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、55歳以上65歳未満(注1) の高年齢者など就職が特に困難な者(以下「特定求職者」という。)の雇用機会の増大を図るため、特定求職者を雇い入れた事業主に対して、当該雇用労働者に支払った賃金の一部を助成するものである。

(特定求職者雇用開発助成金の支給)

 この助成金は、事業主が特定求職者を公共職業安定所の紹介により新たに常用労働者として雇い入れたことなどが支給要件となっている。ただし、平成10年6月18日から13年9月30日までの間(緊急雇用開発対策期間)に雇い入れた労働者(重度の身体障害者等を除く。)について、雇用・能力開発機構から中小企業雇用創出人材確保助成金(以下「雇用創出助成金」という。後掲の「中小企業雇用創出人材確保助成金の支給が適正でなかったもの」参照 )等を受給できる場合には、助成金は支給しないこととなっている。そして、支給対象期間は雇入れ後1年(重度の身体障害者等については1年6箇月)、支給額は支給対象期間内に支払った賃金の額に所定の支給率(注2) を乗じて得た額となっている。
 助成金の支給を受けようとする事業主は、特定求職者雇用開発助成金支給申請書等を公共職業安定所に提出することとなっている。そして、公共職業安定所は支給申請書等に記載されている当該雇用労働者の氏名、生年月日、雇用年月日、支払賃金額及び雇用創出助成金等の受給の有無等を審査して支給を決定し、これに基づいて都道府県労働局が支給することとなっている。

(注1)  55歳以上65歳未満 平成10年6月18日から13年9月30日までの間は暫定措置として45歳以上55歳未満の者も対象となっている。
(注2)

 所定の支給率 高年齢者の場合の支給率は、次表のとおりである。


企業区分
年齢区分
中小企業事業主以外の事業主 中小企業事業主
55歳以上65歳未満の者 1/4 1/3
45歳以上55歳未満の者 1/6 1/4

2 検査の結果

(検査の対象)

 北海道労働局ほか26労働局(支給決定庁 旭川公共職業安定所ほか255公共職業安定所)において、12年度から14年度の間に助成金の支給を受けた事業主のうち1,405事業主について、支給申請書等の記載内容が事実でかつ支給要件に合致するかに着眼して、公共職業安定所における支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、青森労働局ほか20労働局で、78事業主に対する支給(支給額172,920,523円)について99,008,876円が適正に支給されていなかった。
上記の不適正支給となっていたものの主な態様は、次のとおりである。
(ア) 雇い入れた労働者について雇用創出助成金を受給できるのに本件助成金を申請した事業主に対して支給決定し、その結果、重複して支給していたもの
(イ) 既に雇い入れている者を新たに雇い入れたこととして申請した事業主に対して支給していたもの
(ウ) 既に事実上雇入れが決定している者に形式的に公共職業安定所の紹介を受けさせ、その紹介により雇い入れたこととして申請した事業主に対して支給していたもの
このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったなどのため支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、青森公共職業安定所ほか64公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことなどによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院が調査した事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した特定求職者雇用開発助成金 左のうち不適正特定求職者雇用開発助成金
        千円 千円
青森労働局 青森ほか1 14 2 2,426 2,426
宮城労働局 大河原ほか1 9 2 1,734 1,149
茨城労働局 日立ほか3 17 4 11,071 4,272
群馬労働局 前橋ほか3 33 5 6,454 5,820
埼玉労働局 川口ほか6 51 9 15,995 10,586
千葉労働局 千葉ほか3 23 5 14,095 8,133
東京労働局 上野ほか6 42 11 40,697 18,852
神奈川労働局 横浜ほか7 29 8 23,827 11,194
石川労働局 羽咋 3 1 1,400 1,400
静岡労働局 静岡ほか2 16 4 4,799 2,871
愛知労働局 名古屋中ほか2 11 3 6,906 6,158
京都労働局 宇治ほか1 9 2 1,574 1,574
大阪労働局 岸和田ほか2 9 3 9,225 6,740
兵庫労働局 伊丹 3 1 2,054 815
和歌山労働局 和歌山ほか1 14 2 7,517 4,062
島根労働局 出雲ほか1 6 2 1,269 1,269
山口労働局 山口ほか2 18 3 5,009 2,311
香川労働局 高松 10 2 8,084 3,975
佐賀労働局 鳥栖ほか1 14 4 3,601 3,601
熊本労働局 阿蘇 5 1 800 800
鹿児島労働局 大隅ほか2 15 4 4,377 994
65箇所 351 78 172,920 99,008