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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの


(59) 労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(労災勘定) (項)保険給付費
部局等の名称 厚生労働本省(支出庁)(平成13年1月5日以前は労働本省)
北海道労働局ほか13労働局(審査庁)
支払の相手方 291医療機関
不適正な支払となっていた労災診療費 手術料、入院料、指導管理料等
不適正支払額 42,417,732円(平成12、13両年度)

1 保険給付の概要

(労働者災害補償保険)

 労働者災害補償保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。

(療養の給付に要する診療費の支払)

 療養の給付は、保険給付の一環として、都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)に対し診察、処置、手術等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働局では請求の内容を審査し、その結果に基づき、厚生労働本省(平成13年1月5日以前は労働本省)において労災診療費を支払うこととなっている。
 労災診療費は、「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号労働省労働基準局長通達)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定め、これにより算定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の対象)

 労災診療費のうち手術料、入院料等に着目して、北海道労働局ほか14労働局の審査に係る12、13両年度の労災診療費の支払についてその適否を検査した。

(不適正支払の事態)

 検査したところ、北海道労働局ほか13労働局の審査に係る労災診療費のうち、手術料、入院料、指導管理料、リハビリテーション料、注射料等が適正に支払われていなかったものが、291医療機関について42,417,732円あった。
 これらの事態について、その主なものを示すと次のとおりである。
ア 手術料に関するもの
 手術料は、創傷処理、植皮術等の区分ごとの所定点数により算定することとなっている。そして、1回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっている。
 しかし、北海道労働局ほか13労働局管内の195医療機関では、本来算定すべき区分の所定点数によらず、異なる区分のより高い所定点数により算定したり、同一手術野につき2以上の手術を同時に行っているのに、主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により算定したりするなどしていた。このため、手術料313件、26,225,048円が適正に支払われていなかった。
イ 入院料に関するもの
 傷病労働者が赴いた病院又は診療所の普通室が満床で、かつ、緊急に入院療養を必要とし、個室又は2人部屋に入院するなどの場合は、入院室料加算を算定できることとなっている。
 しかし、北海道労働局ほか12労働局管内の44医療機関では、緊急に入院療養を必要としない傷病労働者について、入院室料加算を算定するなどしていた。このため、入院料126件、4,434,924円が適正に支払われていなかった。
ウ 指導管理料に関するもの
 病院又は診療所に入院している患者について、入院の日から起算して10日以内に行われたマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注) を伴う手術後に必要な医学管理を行った場合は、当該手術日の翌日から起算して3日に限り手術後医学管理料を算定することとなっている。
 しかし、北海道労働局ほか11労働局管内の40医療機関では、入院の日から起算して10日を超えた期間に行われた手術について手術後医学管理料を算定するなどしていた。このため、指導管理料78件、3,364,249円が適正に支払われていなかった。

閉鎖循環式全身麻酔 閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する吸入麻酔法

 このような事態が生じていたのは、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、前記の14労働局において、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによると認められる。
 上記の適正に支払われていなかった労災診療費の額を労働局別に示すと次のとおりである。

労働局名 医療機関数 不適正支払件数 不適正支払額
    千円
北海道労働局 33 118 5,173
福島労働局 16 52 2,389
埼玉労働局 36 85 5,761
東京労働局 53 144 6,704
神奈川労働局 20 67 2,287
石川労働局 4 71 789
岐阜労働局 12 30 1,329
京都労働局 20 50 2,646
大阪労働局 45 238 7,752
山口労働局 15 26 2,237
高知労働局 6 13 1,110
福岡労働局 13 23 2,301
佐賀労働局 13 31 1,337
長崎労働局 5 8 596
291 956 42,417