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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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労働者災害補償保険の保険給付に要した費用として事業主から徴収すべき額を徴収していなかったもの


(201)(202) 労働者災害補償保険の保険給付に要した費用として事業主から徴収すべき額を徴収していなかったもの

会計名及び科目
労働保険特別会計(労災勘定) (款)雑収入 (項)雑収入

部局等の名称 (1) 神奈川労働局
  (2) 大阪労働局
費用徴収の根拠 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)
費用徴収の概要 事業主の故意又は重大な過失により生じた業務災害について、保険給付に要した費用の一部を事業主から徴収するもの
費用徴収の対象となる保険給付の額 (1) 16,810,696円 (平成12年度〜14年度)
(2) 15,720,866円 (平成12年度〜14年度)
32,531,562円  
費用徴収をしていなかった額 (1) 5,043,204円 (平成12年度〜14年度)
(2) 4,716,257円 (平成12年度〜14年度)
9,759,461円  

1 費用徴収の概要

 労働者災害補償保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病、死亡等に対し保険給付などを行うものである。そして、この保険給付が事業主の故意又は重大な過失により生じた業務災害について行われた場合には、都道府県労働局は、その保険給付に要した費用の一部を事業主から徴収することとなっている。
 この事業主からの費用徴収は、厚生労働省が定めた通達により、次のとおり取り扱うこととなっている。
〔1〕 労働基準監督署は、事業主が労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等の法令の危害防止のための規定に明白に違反したため発生したと認められる死亡事故等の業務災害について、遺族補償給付、休業補償給付等の保険給付が行われた場合には、都道府県労働局に対し、費用徴収の対象となる事案である旨を通知する。
〔2〕 都道府県労働局は、労働基準監督署から上記の通知を受けた場合には、保険給付に要した費用として、保険給付の額の100分の30に相当する額を事業主から徴収することを決定し、事業主に対しその旨を通知するとともに、納入告知書を送付する。

2 検査の結果

 平成12年中に神奈川、大阪両労働局管内で発生した業務上の死亡災害5件について行われた保険給付に係る費用徴収について検査したところ、次のとおり、両労働局において、費用徴収の決定を行っていなかったため、事業主から費用徴収すべき額計9,759,461円が徴収されていなかった。
(1) 神奈川労働局管内の2事業主がいずれも労働安全衛生法に違反して、高所作業場からの墜落を防止する措置を講じていなかったため、労働者が作業場から墜落して死亡する業務災害が2件発生した。そして、12年8月から14年6月までの間に遺族補償年金前払一時金、遺族補償年金等の保険給付計16,810,696円が遺族に支給された。一方、所轄の2労働基準監督署は、同労働局に対し、それぞれ13年1月及び6月に費用徴収の対象となる事案である旨を通知した。
 しかし、同労働局では、上記の通知後1年以上を経過しているのに、これらの2事業主に対する費用徴収の決定を行っていなかった。このため、上記保険給付の額の100分の30に相当する額計5,043,204円が徴収されていなかった。
(2) 大阪労働局管内の3事業主がいずれも労働安全衛生法に違反して、高所作業場からの墜落を防止する措置を講じていなかったため、労働者が作業場から墜落して死亡する業務災害が3件発生した。そして、12年9月から14年6月までの間に遺族補償一時金、遺族補償年金等の保険給付計15,720,866円が遺族に支給された。
 しかし、所轄の3労働基準監督署では、誤って費用徴収の対象となる事案に該当しないと判断するなどして、同労働局に対し費用徴収の対象となる事案である旨を通知していなかった。このため、同労働局では、これらの3事業主に対する費用徴収の決定を行っておらず、上記保険給付の額の100分の30に相当する額計4,716,257円が徴収されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、前記の両労働局において、事業主からの費用徴収について取扱いが徹底されていなかったことによると認められる。
 なお、これらの費用徴収をすべき額については、本院の指摘により、すべて徴収決定の処置が執られた。