平成13年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第9 農林水産省
不当事項
補助金(203)−(219)
1 補助金の概要
農林水産省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、この事業に要する経費について、都道府県等及び特定の団体に対しては直接に、市町村等に対しては都道府県等を経由して補助金を交付している。
2 検査の結果
北海道ほか45都府県及びその管内の市町村等並びに32団体を検査した結果、5都県、9都県管内の10町等及び2団体計17事業主体が実施した地域防災対策総合治山事業、林業地域総合整備事業等の14事業に係る国庫補助金1,391,554,382円が不当と認められる。
これを不当の態様別に示すと次のとおりである。
| 〔1〕 工事の設計が適切でないもの | ||
| 4事業 | 不当と認める国庫補助金 | 52,576,896円 |
| 〔2〕 補助の対象とならないもの | ||
| 2事業 | 不当と認める国庫補助金 | 12,636,197円 |
| 〔3〕 補助対象事業費を過大に精算しているもの | ||
| 2事業 | 不当と認める国庫補助金 | 11,166,164円 |
| 〔4〕 補助の目的を達していないもの及び補助事業で設置した施設を無断で処分しているもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 1,279,104,000円 |
| 〔5〕 補助金を過大に受給しているもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 14,726,142円 |
| 〔6〕 工事費の積算が過大となっているもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 9,621,425円 |
| 〔7〕 工事の施工が設計と相違しているもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 5,407,500円 |
| 〔8〕 工事の設計及び施工が適切でないもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 3,904,237円 |
| 〔9〕 予算・法令に違反しているもの | ||
| 1事業 | 不当と認める国庫補助金 | 2,411,821円 |
また、これを個別に示すと次のとおりである。
(203) 景気対策臨時緊急特別林業構造改善事業等の実施に当たり、補助の目的を達していなかったり、補助金の交付条件に違背したりしているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、岩手県久慈市に所在する「いわて森のトレー生産協同組合」(以下「組合」という。)が、景気対策臨時緊急特別林業構造改善事業及び経営基盤強化林業構造改善事業の一環として、間伐材の利用を促進するなどのため、平成10年度から12年度(10年度事業は11年度に繰越し)までに木製トレーを製造するための装置、作業用建物等の木材処理加工施設等の整備を事業費2,692,212,600円(国庫補助金1,279,104,000円)で実施したものである。
上記補助金の交付決定等に当たって、組合は、補助金で取得した財産を、久慈市の承認を受けないで、処分制限期間内は補助金の交付の目的に反して使用したり、担保に供したりしてはならないなどの条件が付されている。
木製トレーの製造は、〔1〕間伐材の原木を厚さ0.35mmの単板にスライスする工程、〔2〕各単板を乾燥させ、これを3枚糊付けして重ね合わせ、圧縮プレスをした後に成形する工程から成っている。〔2〕の工程についでは、乾燥炉1台、糊付装置2台、ホットプレス装置1台、成型機4台をもって1ラインとし、すべて本件木製トレーの製造のために新たに開発されたものである。
組合では、11年度に3ライン、12年度に1ライン、計4ラインを整備することとし、これらの装置を12年3月及び13年3月に機械メーカーから購入していた。
2 検査の結果
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 組合では、12年3月に整備した3ラインについて、各装置が新たに開発されたものであるにもかかわらず、これを試運転するなどして機能を確認することなく受領していた。そして、久慈市及び岩手県においても、完了確認調査の際にこれを了としていた。
しかし、実際には、装置に不具合があり、木製トレーが事業計画どおりに製造できない状況となっていた。
すなわち、組合では、これらラインを稼働させたところ、木製トレーに、膨れ、割れが生じるなど仕様どおり製造できず、装置の不具合について機械メーカーに対策を執らせたが、不具合は改善されないままであった。
このような状況の中、組合では、同様の事態が予期されるのに、13年3月に1ラインを整備していた。
そして、組合では、装置の不具合のため木材処理加工施設をほとんど稼働させることなく、製品が安定して製造されないことから、14年8月に、事業を中断していて、本件補助事業は補助の目的を達していない。
イ 組合では、事業の実施に当たり、自己負担分のうち1,150,000,000円を金融機関から12年4月以降借り入れており、このうち1,080,000,000円について、同市に無断で、13年3月以降、木材処理加工施設等を担保に供し、14年6月の会計実地検査時においても無断で担保に供されたままとなっていて、補助金の交付条件に違背している。
上記ア、イのような事態が生じていたのは、組合において、装置に対する受領検査が十分でなかったり、適正な補助事業の実施に対する認識が欠けていたりしていること、同県及び同市において、完了確認調査及び組合に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件木材処理加工施設等(事業費2,692,212,600円)は、補助の目的を達しておらず、また、補助金の交付条件に違背していて、これに係る国庫補助金1,279,104,000円が不当と認められる。
(204) 経営体質強化施設整備事業による特定高性能農業機械の導入に当たり、機械の利用面積が審査基準の下限面積を下回っていて、補助の対象とならないもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、河北農業協同組合(平成13年9月1日以降は「いしのまき農業協同組合」)が、経営体質強化施設整備事業の一環として、地域農業の担い手の育成・確保を図るため、農業経営の規模拡大等を促進するために必要な水稲用自脱型コンバイン(以下「水稲用コンバイン」という。)等の特定高性能農業機械(注)(以下「高性能機械」という。)を導入して、これを地域の11生産組織にリースする事業である。そして、同組合は、12年度に、事業費25,497,885円(国庫補助金12,141,000円)で水稲用コンバイン2台及びトラクタ1台を、13年度に、事業費98,231,700円(国庫補助金46,777,000円)で水稲用コンバイン9台、田植機2台及びトラクタ2台を導入し、上記の11生産組織にそれぞれリースしていた。
補助事業により高性能機械を導入するに当たっては、「補助事業により導入する農業機械に係る審査の適正化等について」(昭和60年60農蚕第1947号構造改善局長等通知)により、都道府県知事が策定した高性能機械の導入に関する計画に定めた機種別、類別ごとの利用規模の下限面積(以下「下限面積」という。)を審査の基準とし、既導入機械の有効利用を図るためにその利用面積を考慮して新たに導入する機械の利用面積を算定することとなっている。
同組合では、12、13両年度に導入した水稲用コンバイン計11台の利用面積を、11生産組織ごとに、利用計画面積から既に導入していた水稲用コンバインの下限面積に相当する面積を控除するなどして算定していた。そして、1台当たりの利用面積が11台のうちの1台(刃幅1.4m)は、11.0ha、10台(刃幅1.65mから1.98m)は、15.1haから29.3haとなることから、いずれもその下限面積である10ha又は15haを上回るとしていた。
2 検査の結果
検査したところ、水稲用コンバインの利用面積の算定が次のとおり適切ではなかった。
同組合では、本件補助事業において利用面積の算定上考慮した既導入の水稲用コンバインとは別に、転作作物である麦又は大豆の収穫作業用として、汎用性のある普通型コンバイン(以下「汎用コンバイン」という。)を9年度及び11年度の国庫補助事業により計3台導入していた。そして、このうち2台については、本件補助事業において水稲用コンバインのリース先となった前記11生産組織のうちの2生産組織にそれぞれ1台ずつ既にリースしていたが、これら2台の汎用コンバインについては、前記の利用面積の算定上考慮していなかった。
しかし、これら2台の汎用コンバインは、6月上旬から下旬までは麦の収穫に、10月下旬から11月上旬までは大豆の収穫に利用されていて、9月下旬から10月上旬までの水稲の収穫時期と重複することがなく、機能的にも水稲の収穫に利用できるのであるから、利用面積の算定上考慮すべきであったと認められる。
したがって、既に導入していた汎用コンバインの利用面積を考慮して、前記の2生産組織に係る水稲用コンバイン2台(刃幅1.65m及び1.85m)の利用面積を算定すると、5.1ha及び10.7haとなり、下限面積15haを下回ることから、本件補助事業の対象とは認められない。
このような事態が生じていたのは、同組合において、既導入機械の有効利用を図るという認識に欠けていたこと、宮城県及び河北町において、本件補助事業の審査、確認及び同組合に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、前記の2生産組織に導入された水稲用コンバイン2台を補助の対象外として適正な事業費を計算すると、計103,926,585円(国庫補助金相当額計49,488,277円)となり、交付された国庫補助金との差額計9,429,723円が不当と認められる。
| (注) | 特定高性能農業機械 刃幅が0.8m以上のコンバイン、乗用型田植機等農業経営の改善のために計画的に導入を促進する必要があり、農業機械化促進法施行令(昭和40年政令第209号)で定める農業機械 |
(205) 農村資源活用農業構造改善事業の実施に当たり、仕入税額控除した消費税額に係る補助金を返還していなかったもの
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1 補助事業の概要
(補助事業の概要)
この補助事業は、田沢湖町等が出資した第3セクターである株式会社アロマ田沢湖(秋田県仙北郡田沢湖町)が、農村資源活用農業構造改善事業の一環として、都市との交流を基盤とした農村地域における就業機会等の増大に資するため、平成7年度から9年度までの間に、総合交流ターミナル施設等の整備を行ったものである。
同会社では、本件補助事業を消費税(9年度は地方消費税を含む。以下同じ。)30,319,257円を含め、689,266,952円で実施している。そして、8年3月、9年6月及び12月に同町に実績報告書を提出し、これにより国庫補助対象事業費の精算を受けていた。
(補助事業における消費税相当額の取扱い)
補助事業の事業主体は、「農業構造改善事業推進対策費補助金交付要綱」(昭和37年37振A第5418号農林事務次官依命通達)等により、実績報告書の提出後に消費税の申告により課税売上高に対する消費税額から補助事業に係る消費税額を課税仕入れに係るものとして控除(以下、この控除額を「消費税仕入控除税額」という。)し、補助金に係る消費税仕入控除税額が確定したときには、その金額を速やかに報告するとともに、当該金額を返還しなければならないこととなっている。
2 検査の結果
検査したところ、同会社は10年6月に消費税の確定申告を行い、本件補助事業に係る消費税額30,319,257円を仕入れに係る消費税額として控除し、同年9月に消費税の還付を受けていた。
しかし、同会社では、上記の消費税仕入控除税額30,319,257円のうち本件補助金に係る額14,726,142円を報告、返還しておらず、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同会社において、補助事業における消費税相当額の取扱いについての理解が十分でなかったこと、秋田県及び同町において、本件補助事業の消費税相当額の取扱いについての確認が適切でなかったこと及び同会社に対する指導が十分でなかったことによると認められる。
(206)−(209) 畜産振興総合対策事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、たい肥化処理施設の発酵槽等が補助の目的を達していないもの
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1 補助事業の概要
これらの補助事業は、山形県酪農業協同組合ほか2組合、1有限会社が、畜産振興総合対策事業の一環として、家畜排せつ物の適正な管理と有効利用の促進を図り、もって家畜排せつ物からの汚水による水質汚染など畜産環境問題の改善に資するため、平成12、13両年度に、たい肥化処理施設等を事業費269,501,350円(国庫補助金128,864,506円)で整備したものである。
そして、畜産業を営む者は、「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(平成11年法律第112号)に基づき農林水産省が定める「たい肥舎その他の家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設の構造設備及び家畜排せつ物の管理の方法に関し畜産業を営む者が遵守すべき基準」(以下「管理基準」という。)に従い家畜排せつ物を管理しなければならないとされている。管理基準によると、家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設は、家畜排せつ物からの汚水が飛散したり、流出したりすることがないように床をコンクリートのような不浸透性材料で築造し、適当な覆いと側壁を設けることとされている。
2 検査の結果
検査したところ、前記の補助事業で整備した施設のうち発酵槽等(事業費相当額91,899,161円)は、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態になっていたり、所要の安全度が確保されていない状態になっていたりしていた。
したがって、発酵槽等は、畜産環境問題の改善に資するという補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額44,189,390円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主体において、委託した設計業務の成果品が管理基準に沿わないものとなっていたのに、これに対する検査が十分でなかったこと、事業主体に対する県等の指導が十分でなかったことなどによると認められる。
これを態様別に示すと次のとおりである。
| ア 汚水が地下に浸透する状態になっているもの | ||||||
| 県名 | 事業主体 (所在地) |
事業費 | 左に対する国庫補助金 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金 | |
| 千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||
| (206) | 山形県 | 山形県酪農業協同組合 (南陽市) |
122,542 | 58,353 | 22,107 | 10,527 |
| (207) | 同 | 有限会社ビッグフィールド (米沢市) |
96,127 | 45,775 | 23,271 | 11,081 |
| 小計 | 218,669 | 104,128 | 45,378 | 21,608 | ||
| この両補助事業は、平成13年度に、いずれもたい肥化処理施設を整備したものである。 | ||||||
| 本件たい肥化処理施設は、投入棟(床面積208.8m2、199.6m2)、発酵棟(同1,705.2m2、1,761.4m2)及び搬出棟(同381.0m2、176.5m2)で構成されている。 | ||||||
| このうち発酵槽の床については、地面に埋戻し土や砂を敷き均すだけの設計とし、これにより施工したため、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態になっていた。 | ||||||
| したがって、本件両補助事業により設置された発酵槽(事業費相当額計45,378,656円)は、補助の目的を達していない。 | ||||||
| (208) | 埼玉県 | 農事組合法人アドバンス有機肥料利用組合 (羽生市) |
33,631 | 16,815 | 29,320 | 14,660 |
| この補助事業は、平成12年度に、家畜排せつ物処理利用施設としてたい肥舎1棟(床面積1,157m2)を整備したものである。 | ||||||
| 本件たい肥舎は、基礎部分、床及び擁壁は鉄筋コンクリート造、上屋は鉄骨造となっている。 | ||||||
| このうち基礎部分については、地盤の種類を関東ローム層と想定し、基礎部分の形式を、柱下基礎については独立基礎、擁壁下基礎については連続基礎とそれぞれ設計し、これにより施工していた。 | ||||||
| しかし、床については柱を中心に、また、擁壁については柱と柱の中間にそれぞれ多数のき裂(最大幅2.5mm)が生じていた。そこで、たい肥舎の近傍でボーリング調査及び標準貫入試験(注1)を実施したところ、この地盤はN値が1から4(平均は2.3)、期待できる長期許容地耐力度(注2)が2tf/m2程度となっていて、想定した関東ローム層(長期許容地耐力度3tf/m2)に比べて著しく軟弱な種類の地盤であった。すなわち、軟弱な地盤に対し基礎部分の設計接地圧が1.9tf/m2から3.0tf/m2と区々であったことから、不同沈下が発生して床や擁壁に多数のき裂が生じ、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態になっていた。 | ||||||
| したがって、本件補助事業により設置されたたい肥舎(事業費相当額29,320,505円)は、補助の目的を達していない。 | ||||||
| (注1) | 標準貫入試験 ボーリング孔を利用し、サンプラーを取り付けたロッドの上からハンマーを落下させ、サンプラーを30cm貫入させるのに要する打撃回数を測定して土層の硬軟を調べる試験。そして、この打撃回数を「N値」という。 | |||||
| (注2) | 長期許容地耐力度 地盤に対し鉛直方向に長期に働く力を地盤が支えることができ、かつ有害な地盤の沈下を生じさせない設計上許される上限値 | |||||
| アの計 | 252,301 | 120,944 | 74,699 | 36,269 | ||
| イ 施設の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの | ||||||
| (209) | 福島県 | 笠石堆肥生産利用組合 (岩瀬郡鏡石町) |
17,200 | 7,920 | 17,200 | 7,920 |
| この補助事業は、平成12年度に、家畜排せつ物処理利用施設としてたい肥舎4棟(1棟当たりの床面積160m2)、発酵舎1棟(同392m2)を整備したものである。 | ||||||
| 本件たい肥舎及び発酵舎は、床及び擁壁はコンクリート造で、上屋は床及び擁壁に建て込んだ鋼管(外径48.6mm)の柱に同材の梁を組み、その上に屋根を架ける構造となっていた。そして、これらの施設は簡易な構造の建築物であるとして所要の安全度を確認する構造計算は行われていなかった。 | ||||||
| しかし、これらの施設が破損した場合、家畜排せつ物からの汚水が流出するなどのおそれがあることから、構造計算を行う要があると認められた。そこで、これを行ったところ、これらの施設は次のとおり構造計算上安全な範囲を超えていた。 | ||||||
| (ア) たい肥舎の擁壁は、暴風時、地震時及びホイールローダーによるたい肥の切返し作業時において所要の安全度が確保されていない。 | ||||||
| (イ) たい肥舎の上屋は、積雪時、暴風時及び地震時において所要の安全度が確保されていない。 | ||||||
| (ウ) 発酵舎の上屋は、暴風時及び地震時において所要の安全度が確保されていない。 | ||||||
| したがって、本件補助事業により設置されたたい肥舎及び発酵舎(事業費相当額17,200,000円)は、補助の目的を達していない。 | ||||||
| ア、イの計 | 269,501 | 128,864 | 91,899 | 44,189 | ||
(210) 補助事業の実施に当たり、架空に経理されていた額を補助対象事業費としていたもの
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1 補助事業の概要
(1)の補助事業は、社団法人東京都畜産会(以下「都畜産会」という。)が事業主体となって、平成9年度から12年度までの間に、家畜衛生対策事業(11年度以前は自衛防疫強化総合対策事業)の一環として、畜産農家の衛生意識の高揚、家畜伝染性疾病の発生予防、豚コレラの防疫推進等の事業を事業費計13,589,181円(国庫補助金計3,632,000円)で実施したものである。
(2)の補助事業は、東京都が事業主体となって、9年度から12年度までの間に、地域畜産総合支援体制整備事業ほか1事業(11年度以前は畜産経営技術高度化促進事業ほか2事業)の一環として、畜産経営体の経営・生産技術の高度化を図るため、研究会、農家への個別指導を行うことなどの事業を事業費計26,477,000円(国庫補助金計12,797,000円)で、都畜産会がその一部を受託して実施したものである。
都畜産会は、東京都における畜産経営の健全な発展を図るため、畜産農家等の指導・支援を行う団体であり、上記事業のほか、農畜産業振興事業団及び日本中央競馬会より直接又は間接に補助等を受け各種事業を実施している。
2 検査の結果
検査したところ、上記事業の実施及び経理が次のとおり適切でなかった。
すなわち、都畜産会では各種の会議、農家への指導を行うための出張などに要した費用として(1)について13,589,181円、(2)について23,611,000円を東京都に対する実績報告書に計上していた。しかし、この会議、出張等の一部はその事実が無く、それに要したとする費用(1)について1,258,784円、(2)について6,642,505円は架空の関係書類等により会場借上料、謝金、旅費等の名目で払い出した額であった。そして、都畜産会では、これらを簿外の資金に繰り入れて飲食費等の費用や役職員の手当に充てるなどしていた。
このような事態が生じていたのは、都畜産会において事実に基づく適正な会計経理を行うという基本認識が欠けていたこと、都畜産会に対する東京都の審査及び指導が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、事実と相違した架空の名目で支払ったとし、簿外で経理するなどしていた事業費の額に係る国庫補助金相当額(1)について330,612円、(2)について3,176,147円、計3,506,759円が不当と認められる。
| (参考) | 本件事態について、農畜産業振興事業団に関して「補助事業等の実施に当たり、架空に経理されていた額を事業費としていて不当と認められるもの」を、日本中央競馬会に関して「補助事業等の実施に当たり、架空に経理されていた額を事業費としていて不当と認められるもの」をそれぞれ掲記した。 |
(211) 林業地域総合整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、パイプカルバートの所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、静岡県が、林業地域総合整備事業の一環として、磐田郡佐久間町上平山地内において林道を開設するため、平成12、13両年度に土工、排水施設工等を工事費39,480,000円(国庫補助金21,714,000円)で実施したものである。
このうち排水施設工は、林道の開設により遮断される既存の渓流の機能を維持するため、パイプカルバート(以下「カルバート」という。)を3箇所(延長計42.5m)布設などするものである。そして、このうちの1箇所(内径1,000mm、延長26.7m)については最大土被り厚を4.5mとし、管種については遠心力鉄筋コンクリート管の外圧管1種、基礎形式については管の外周4分の1をコンクリートで固定する90度固定基礎として設計し、これにより施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、本件カルバートの設計が次のとおり適切でなかった。
すなわち、カルバートの設計に当たっては、「森林土木構造物標準設計」(財団法人林業土木コンサルタンツ作成。以下「標準設計」という。)により行うこととされ、その管種及び基礎形式の選定は、標準設計に示されている設計表により決定することとなっている。そして、本件カルバートについては、設計作業の当初、最大土被り厚を2.1mとして上記の管種・基礎形式を決定していた。しかし、その後、現場外で処理することとしていた残土の一部をこのカルバートの布設箇所に更に盛土して処理することとしたため、最大土被り厚を4.5mとしたが、管種等については再検討することなく設計を了していた。
そこで、本件カルバートについて設計計算を行うと、最大土被り厚2.1mの場合のカルバートに作用する最大曲げモーメント(注)6.1kN・mに対し、最大土被り厚4.5mにおける最大曲げモーメントは13.3kN・mとなり、カルバートの許容曲げモーメント(注)6.4kN・mを大幅に上回っていて、応力計算上安全な範囲を超えている。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
したがって、本件カルバートの管種及び基礎形式の設計が適切でなかったため、カルバート延長26.7m及びその上部の盛土等(これらの工事費相当額3,727,921円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額2,050,356円が不当と認められる。
| (注) | 最大曲げモーメント・許容曲げモーメント 「最大曲げモーメント」とは、外力が材に作用し、これを曲げようと材に生じる力の最大値をいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げモーメント」という。 |
(参考図)
(212) 農地防災事業の実施に当たり、ため池堤体内の旧底樋の撤去に係る施工が設計と著しく相違していたなどのため工事の目的を達していないもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、奈良県が、農地防災事業の一環として、山辺郡都祁村金ジツ池地区において、堤体断面が不足するなどしていて危険な状態となっているため池を改修するため、平成12年度に堤体の盛土、ため池から用水を取水するための施設である底樋の改修等を工事費10,815,000円(国庫補助金5,407,500円)で実施したものである。
同県では、上記工事の設計については、農林水産省制定の「土地改良事業設計指針「ため池整備」」及び同県制定の「ため池改修実施基準」(以下「設計指針等」という。)に基づいて行っている。
そして、底樋の改修工法としては、開削・埋戻し工法を採用し、その施工方法は現況堤体下部に埋設されている既設の底樋(コンクリート管、内径250mm、延長9.8m。以下「旧底樋」という。)を露出させる幅まで堤体を開削してこれを撤去し、その後新たな底樋(鋳鉄管、内径600mm、延長10.1m。以下「新底樋」という。)を設置して、盛土等を行うこととしていた(参考図参照)。
2 検査の結果
検査したところ、旧底樋の撤去に係る施工については、実際には設計図書等と異なり、新底樋を設置する幅を開削しただけで旧底樋を露出させる幅までの開削は行っておらず、旧底樋は撤去せずに存置したままとしていた。
しかし、旧底樋を堤体内に存置する場合には、設計指針等によれば、旧底樋が破損して漏水経路となることを防ぐため、両端をコンクリートで閉鎖し、管内すべてをモルタルで充てんすることとされているのに、本件工事の場合は、旧底樋の流入部及び出口部の両端をコンクリートで閉鎖したのみで、旧底樋管内はモルタルで充てんされていなかった(参考図参照)。
このような事態が生じていたのは、旧底樋の撤去に係る施工が設計と著しく相違していたのに、これに対する同県の監督及び検査が適切でなかったことによると認められる。
したがって、本件ため池の堤体内に存置された旧底樋の撤去については、施工が設計と著しく相違しており、その結果、ため池の堤体内に存置された旧底樋が漏水経路となって堤体が損壊するおそれがあり、ため池自体の安全性が確保されていない状態となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金5,407,500円が不当と認められる。
(213) 地域防災対策総合治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、重力式コンクリート擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、奈良県が、地域防災対策総合治山事業の一環として、吉野郡東吉野村大字麦谷地区において作業道を開設するなどのため、平成12、13両年度に擁壁工、吹付工等を工事費51,450,000円(国庫補助金25,725,000円)で実施したものである。
このうち擁壁工は、作業道の路体の土留めとして重力式コンクリート擁壁(高さ1.5mから4.5m、延長136.6m。以下「擁壁」という。)を施工するものである。
同県では、擁壁の設計については、「森林土木構造物標準設計」(財団法人林業土木コンサルタンツ作成)等に基づいて行っており、これによると、基礎地盤の許容支持力度は、土質試験等により求める代わりに、基礎地盤の種類から許容支持力度を判定する表(以下「判定表」という。)により求めることができるとされている。また、同県では、地山を掘削した際に、現地の基礎地盤の種類が設計時の想定と異なり許容支持力度が最大地盤反力度(注1)を下回り設計上安全でないことが想定される箇所については、目視等で基礎地盤の種類等を確認し、必要に応じて適切な設計変更を行うこととしている。そして、基礎地盤の種類を現地の施工実績等に基づき、地山の表土は許容支持力度を期待できない「ルーズな礫(れき)混じり土」であり、表土の下に許容支持力度を期待できる「礫層・密実でないもの」が存在するとして、これが擁壁の基礎地盤となるように擁壁の位置を決定していた(参考図参照)。
そして、作業道の終点側擁壁(高さ4.5m、延長26.7m。以下「本件擁壁」という。)については、基礎地盤となる「礫層・密実でないもの」の許容支持力度を判定表から294kN/m2とし、許容支持力度が本件擁壁の最大地盤反力度162kN/m2を上回っていることから、設計上安全であるとし、これにより施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、本件擁壁については天端で最大10cm前方に傾斜していて、しかも、設計と異なり本件擁壁底版の先端部が露出している箇所もあった。
そして、地山線の位置を確認したところ、本件擁壁底版の先端部において設計図面で示された位置よりも最大2m山側にあり、設計図面が誤っていた。このため、本件擁壁の基礎地盤の一部(底版幅の約1/2から約1/4の範囲)は、表土である「ルーズな礫混じり土」となっていて、設計時の想定と異なり、許容支持力度を期待できないものとなっていた(参考図参照)。そこで、本件擁壁の前面4箇所において一点載荷試験(注2)を実施したところ、許容支持力度は、21kN/m2から57kN/m2となっていて、本件擁壁の最大地盤反力度162kN/m2をいずれも大幅に下回っており、安定計算上安全とされる範囲を逸脱していた。
このような事態が生じていたのは、同県において、本件擁壁の設計に当たり、実際の地山線とは異なる設計図面の地山線に基づいて本件擁壁の位置を決定していたこと、地山を掘削した際に、現地の基礎地盤の種類等を目視等により確認してこれに応じた適切な設計変更を行わなかったことによると認められる。
したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、本件擁壁及びこれに係る盛土等(これらの工事費相当額8,185,609円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額4,092,804円が不当と認められる。
(214) 中山間地域総合整備事業の実施に当たり、水路の基礎砕石工費の積算を誤ったため、工事費が割高となっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、和歌山県が、中山間地域総合整備事業の一環として、有田郡金屋町中井原地内においてため池を改修するため、平成12年度に堤体工、水路工等を工事費62,612,000円(国庫補助金34,436,600円)で実施したものである。
このうち水路工は、三面張りコンクリート水路(延長42m、高さ0.8mから1.2m、底幅0.8mから1.0m)を築造するもので、基礎には基礎砕石工として再生砕石を15cmの厚さに施工している。
上記水路工の工事費のうち基礎砕石工費については、農林水産省が定めている積算基準等を適用することとして、1m2当たりの単価を182,227円と算出し、これに施工面積81m2を乗じて14,760,387円と積算していた。
2 検査の結果
検査したところ、基礎砕石工費の積算が次のとおり適切でなかった。
すなわち、基礎砕石工の単価とした182,227円は1日当たりの施工量155m2に係る金額であるのに、同県では、これを1m2当たりの単価と誤認したもので、正しい単価は、この金額を155m2で除するなどした1,172円となる。
したがって、基礎砕石工費を正しい単価に基づいて積算すると94,932円となり、前記の積算額は14,665,455円過大となっていた。
このような事態が生じていたのは、同県において、積算基準の理解及び工事費の積算に対する審査が十分でなかったことなどによると認められる。
上記により工事費を修正計算すると、積算過小となっていた流用土仮置きに係る運搬費等2,620,406円を考慮するなどしても、諸経費等を含めた工事費総額は45,118,500円となり、本件工事費はこれに比べて17,493,500円割高となっており、これに係る国庫補助金相当額9,621,425円が不当と認められる。
(215) 林業地域総合整備事業の実施に当たり、練石積工の施工が著しく粗雑となっていたり、橋りょう工の設計が適切でなかったりしたため、工事の目的を達していないもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、広島県佐伯郡湯来町が、林業地域総合整備事業の一環として、同町古塚地区において、砂防指定地(注)内を流下する川角川の護岸を補修して排水施設を整備するため、平成10、11両年度に流路工、練石積工、橋りょう工等を工事費60,648,000円(国庫補助金33,356,400円)で実施したものである。
このうち練石積工及び橋りょう工については、次のとおり設計し、これにより施工することとしていた。
(1) 練石積工について
練石積工(高さ0.2mから2.5m、延長計156.6m、面積計191.2m2)は、流路工の背後地の土留めを目的として、流路工背面の埋戻し部分などの上に径25cmから30cmの野面(のづら)石を用いて施工するものである(参考図参照)。
そして、土木工事共通仕様書等によると、練石積工は次のように施工することとしていた。
〔1〕 基礎地盤となる流路工背面の埋戻しの施工に当たっては、沈下などにより練石積の安定に影響が生じないように一層の仕上がり厚を30cm以下を基本として十分締固めを行う。
〔2〕 野面石と地山との間には型枠(以下「裏型枠」という。)を設けて胴込めコンクリートを十分に充てんしながら野面石を所定の高さまで積み上げる。
(2) 橋りょう工について
橋りょう工は、流路工の施工に伴って失われる既設の橋りょうの機能を回復することを目的として、4橋施工するものである。そして、最上流に施工する橋りょう(1号橋)及び最下流に施工する橋りょう(4号橋)は、それぞれ橋長2.9m、幅員3.5mとなっており、これらはL型のコンクリート二次製品を橋台として設置して、これに桁を架設するものである。また、1号橋と4号橋の間に施工する橋りょう(2号橋及び3号橋)は、それぞれ橋長2.9m、幅員2.0mとなっており、流路工に桁を架設するものである(参考図参照)。
そして、各橋りょうの桁下高(流路工の底版上面から桁下までの高さ)については、1号橋では2.2m、2号橋及び3号橋では1.2m、4号橋では1.0mと、それぞれ設計し、これにより施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、練石積工の施工及び橋りょう工の設計が、次のとおり適切でなかった。
(1) 練石積工について
練石積の基礎地盤や胴込めコンクリートについて検査したところ、次のような状況となっていた。
基礎地盤となる流路工背面の埋戻しの施工に当たって締固めを十分行っていなかった。そして、胴込めコンクリートの充てんに当たっては裏型枠を設けることなく、野面石を積み上げる際、部分的にコンクリートを充てんしているだけであり、中には野面石の背面に胴込めコンクリートを全く充てんしていない箇所もあった。
これらの施工の結果、練石積は基礎地盤の支持力が低下して沈下が生じたり、野面石と胴込めコンクリートが一体化しなかったりしており、一部には野面石と胴込めコンクリートの間に最大4.5cmのすき間が生じていた(参考図参照)。
このような事態が生じていたのは、埋戻しにおける十分な締固め及び胴込めコンクリートの充てんに当たっての裏型枠設置など必要な作業を行わないまま粗雑な施工をしていたのに、これに対する同町の監督及び検査が適切でなかったことなどによると認められる。
(2) 橋りょう工について
広島県では、砂防指定地内を流下する河川に施工する橋りょうについて「建設省河川砂防技術基準(案)」(社団法人日本河川協会編)に準拠して「砂防技術指針」(以下「技術指針」という。)を定めている。技術指針によれば、川角川が砂防指定地内を流下する河川であることから、橋りょうの桁下高は、計画高水位に、流路工としての余裕高(0.6m)と、流木等による橋りょうの破壊等を考慮した橋りょうとしての余裕高(0.5m)を加算した高さ以上とすることとなっている。
そこで、技術指針に基づき、前記の各橋りょうで必要となる桁下高を計算すると、2号橋では1.7m、3号橋では1.6m、4号橋では1.7mとなり、2号橋では0.5m、3号橋では0.4m、4号橋では0.7mそれぞれ桁下高が不足することとなる。このように、2号橋から4号橋までの3橋は設計が適切でなかったため流木等により破壊されるなどのおそれがあると認められる。
このような事態が生じていたのは、設計に当たり、同町において技術指針を理解していなかったことによると認められる。
したがって、本件練石積工は施工が粗雑であったため、また、2号橋から4号橋までの3橋は桁下高の設計が適切でなかったため、工事(これらの工事費相当額7,098,613円)の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額3,904,237円が不当と認められる。
| (注) | 砂防指定地 砂防法(明治30年法律第29号)に基づき、砂防設備を要する土地又は治水上砂防のため一定の行為を禁止若しくは制限する土地として主務大臣が指定した土地 |
(216) 地域防災対策総合治山事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、重力式コンクリート擁壁等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、広島県が、地域防災対策総合治山事業の一環として、神石郡油木町大字油木字出佐谷地区において森林荒廃によって低下した森林の防災機能を補完するため、平成11、12両年度に土留工、落石防止工、モルタル吹付工等を工事費62,508,600円(国庫補助金31,254,300円)で実施したものである。
このうち土留工は、土砂の崩落を抑止するための重力式コンクリート擁壁(以下「擁壁」という。)を山腹に3箇所(高さ4m、1号擁壁から3号擁壁までの延長計88.5m)施工するものである。また、落石防止工は、各擁壁の上部にH形鋼製の落石防護壁(高さ2m、1号落石防護壁から3号落石防護壁までの延長計85m)を設置するものである(参考図参照)。
同県では、本件工事の設計については、林野庁制定の「治山技術基準」及び林野庁監修の「治山技術基準解説」に基づいて行っている。そして、本件各擁壁の設計に当たり、施工箇所の基礎地盤が地山の礫(れき)層であることから、上記の基準等に基づき、転倒、滑動及び基礎地盤の支持力に対する安定性を検討した結果、所要の安全度が確保され、各擁壁は設計上安全であるとしていた。
そして、本件工事期間中に、2号擁壁の延長9.5m区間(以下「本件擁壁」という。)の基礎地盤である地山が、山腹崩壊によって流出した。そこで、同県では、流出した地山の礫質土を崩壊箇所に盛土することによって新たな基礎地盤を造成し、その上に当初設計のまま本件擁壁を施工していた。
2 検査の結果
検査したところ、本件擁壁は、前方へ最大約8cm、側方へ約1cm、それぞれ傾斜し、また、下方へ最大約1cm沈下していた(参考図参照)。
そこで、新たな基礎地盤は、盛土によって造成されたものであること、また、その前面が急勾配となることからみて、盛土内部にすべり(注)が発生するおそれがあるものと認められたことから、すべりに対する安定計算を行ったところ、すべり力は525.5kN/mとなり、すべり抵抗力の460.lkN/mを上回っていて、すべりに対する安全度を確保できていなかった。
このような事態が生じていたのは、新たな基礎地盤が、当初において基礎地盤としていた地山の礫層とは著しく異なるものとなり、当初設計と同等の安定性を期待できないものとなっていたにもかかわらず、同県において適切な設計変更を行わなかったことによると認められる。
したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、本件擁壁及びその上部に設置された落石防護壁等(これらの工事費相当額4,488,692円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額2,244,346円が不当と認められる。
| (注) | すべり 盛土斜面等において、重力の作用によって斜面の高い部分の土が低い部分へ移動しようとするために発生する力が、土中のある連続した面(すべり面)において、土内部の移動に抵抗する力を上回った場合に、斜面がすべり面に沿って崩壊する現象 |
(217) 小規模零細地域営農確立促進対策事業の実施に当たり、物品の購入契約の入札において最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除したため、割高な契約を締結しているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、愛媛県上浮穴郡久万町が、小規模零細地域営農確立促進対策事業の一環として、小規模零細な農林家の農林業所得の向上等を図る上で必要な施設等の整備を行うため、平成11年度に、トラクタ4台、コンバイン4台、田植機3台等の農業用機械の購入及び保管倉庫の設置を事業費51,678,000円(国庫補助金34,452,000円)で実施したものである。
同町では、上記のうち農業用機械の購入契約に当たり、予定価格を34,000,000円と設定して、3業者による指名競争入札に付し、27,403,000円で入札した業者を落札者とし、これに消費税相当額を加えた28,773,150円で同業者と契約を締結していた。
2 検査の結果
検査したところ、同町では、本件契約の入札に当たり、予定価格の80%に当たる27,200,000円の最低制限価格を設定していた。そして、予定価格と最低制限価格の範囲内の最低価格である前記27,403,000円で入札した業者を落札者とし、最低制限価格を下回る23,958,000円で入札した1業者牽失格として排除していた。
しかし、地方自治法(昭和22年法律第67号)及び地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)によれば、地方公共団体が指名競争入札により工事又は製造の請負の契約を締結する場合において、当該契約の内容に適合した履行を確保するため特に必要があると認めるときは、最低制限価格を設けることができることとなっているが、本件のような物品の購入契約の場合は、これを設けることができないこととなっている。
したがって、本件契約の入札に当たり、最低制限価格を設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除したことは、適切とは認められない。
このような事態が生じていたのは、同町において法令に対する理解が十分でなかったこと、同町に対する愛媛県の審査が十分でなかったことなどによると認められる。
そして、本件契約において、最低価格で入札した業者と契約したとすれば、契約額は消費税相当額を加えた25,155,900円となり、本件契約額はこれに比べて3,617,250円割高となっており、これに係る国庫補助金相当額2,411,821円が不当と認められる。
(218) 総合食料対策事業等の経理に当たり、補助対象事業費に計上すべきでない消費税の納税額を計上していたため、補助対象事業費の精算が過大となっているもの
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1 補助事業の概要
この補助事業は、効率的な流通システムの構築や流通施設の整備等を通じた食品流通の効率化に資するため、財団法人食品流通構造改善促進機構(以下「機構」という。)が、平成10年度から12年度までに、生鮮食品等の取引の電子化等に関する調査研究、情報・資料の収集・提供、研修等を実施したものである。
機構では、上記の補助事業において、補助対象事業費として、ソフトウェアの開発委託費、通信運搬費、印刷費、謝金、会場費等の経費を計8,175,037,587円要したとして農林水産省に実績報告書を提出し、これに対して国庫補助金計8,070,497,000円の交付を受けていた。
2 検査の結果
検査したところ、機構が本件補助事業の実施に要したとして補助対象事業費に計上していた経費8,175,037,587円の中には、機構がその営む事業に関して納税義務者として国に納付した消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)の額(以下「納付消費税額」という。)の一部7,826,898円が含まれていた。
すなわち、機構では、本件補助事業において課税仕入れはあるものの課税売上げがないことから納付消費税額は生じないが、別途行っている出版事業等の収益事業において課税売上げがあり、毎年、課税売上げに係る消費税額からこれに対応する課税仕入れに係る消費税額を控除した額により消費税の申告を行い納付している。この納付消費税額は、納付時点で管理費の科目である租税公課に計上しているが、10年度から12年度までの各年度の実績報告書の提出に当たり、その提出期限である翌年度の4月前に中間申告・納付した納付消費税額計8,195,800円については、他の管理費の例に倣って、年度末に租税公課から各事業費の科目に振り替えていた。そして、うち計7,826,898円を本件補助事業に係る経費としていた。
しかし、機構の納付消費税額は、機構が収益事業を行っていることに伴い納税義務者として納付したものであって、補助事業の実施に必要な経費ではなく、これを補助対象事業費に計上したのは適切を欠くものである。
このような事態が生じていたのは、機構において補助対象経費の範囲についての認識が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、機構が本件補助事業に要した経費は、補助対象事業費から前記の補助対象事業費に計上した納付消費税額を差し引いた計8,167,210,689円であり、補助対象事業費が7,826,898円過大に精算されていて、これに係る国庫補助金計7,659,405円が不当と認められる。
(219) 水田農業経営確立対策等の実施に当たり、とも補償金及び稲作経営安定対策に係る補てん金等を交付対象者に該当しない農業者に交付していたもの
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1 補助事業の概要
農林水産省及び食糧庁では、水田農業経営確立対策実施要綱(平成12年12農産第1932号農林水産事務次官依命通知)等に基づき、とも補償及び稲作経営安定対策を実施する全国農業協同組合連合会(以下「全農」という。)に対し、次のとおり、とも補償事業費及び稲作経営安定資金助成金を交付している。
(1) とも補償について
とも補償は、需要に応じた米の計画的生産の円滑かつ確実な実施等に資することを目的として、農業者に、生産調整の実施面積に応じて、とも補償金を交付するものである。
このとも補償金の交付事務等は、全農から都道府県経済農業協同組合連合会(都道府県を事業区域とする全農の都道府県本部等を含む。以下「経済連」という。)に、また経済連から農業協同組合(以下「農協」という。)に委託されている。
農林水産省では、全農に対し、とも補償に加入した農業者の拠出と併せてとも補償金の交付に必要となる資金の造成に充てるため、とも補償事業費を交付している。
とも補償金の交付の対象となる農業者は、当該年度における計画的生産実施者(注1)であることなどの要件を満たす者となっており、その確認は、農協において、市町村から米の計画的生産の実施に関するデータの提供を受けるなどして行うこととなっている。そして、とも補償金を受領した農業者について、その後に交付対象者の要件に満たないことが判明した場合には、当該農業者は、とも補償金の全部を速やかに返納することとなっており、全農は、返納額を国に返還することとしている。
(2) 稲作経営安定対策について
稲作経営安定対策は、生産調整の着実な実施を確保しつつ、自主流通米の価格下落が稲作経営に及ぼす影響を緩和することを目的として、当年産の自主流通米の平均価格が補てん基準価格(注2)を下回った場合に、その差額分の一定割合を補てん金として農業者に交付するものである。
この補てん金は、稲作経営安定対策に加入した個々の農業者ごとに造成された資金から交付されることとされており、食糧庁では、同対策に加入する契約をした農業者の拠出と併せて資金を造成(以下、この造成された資金の額を「造成資金額」という。)するため、稲作経営安定資金助成金を全農に交付している。
また、補てん金の交付後に資金に剰余が生じた場合には個々の農業者ごとに翌年度に繰り越される仕組みとなっており、平成12年度からは、補てん後の資金残高により額が定まる特別支払が補てん金の交付と併せて行われている。
これらの補てん金及び特別支払(以下「補てん金等」という。)の対象となる者は、生産調整の着実な実施等の観点から、当該年度におけるとも補償金の交付対象者であることなどの要件を満たす者となっている。そして、全農は、稲作経営安定対策に加入した農業者がとも補償金の交付対象者とならなかったなどの場合は、加入契約を解除し、その際、造成資金額に剰余がある場合には、当該造成資金額のうち、農業者拠出に相当する額を当該農業者に返還するとともに、国庫補助金相当額を国に返還することとしている。
なお、この補てん金等の交付事務等についても、とも補償と同様、全農から経済連に、また経済連から農協に委託されている。
2 検査の結果
12年産米に関し、全農が栃木県経済連(13年4月1日以降は全農栃木県本部)に、同経済連が矢板市等を事業区域とする塩野谷農協に委託して行ったとも補償金及び稲作経営安定対策に係る補てん金等の交付について検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
(1) とも補償金について
塩野谷農協では、矢板市内のとも補償に加入している農業者が計画的生産実施者であるか確認するため、同市に問い合わせをした。これに対し、同市では、市内のすべての対策推進上の地区(注3)において生産調整対象水田面積に係る生産調整が実施されていたことから、各地区のとも補償に加入している農業者についてもすべて計画的生産実施者であると同農協に連絡した。
しかし、実際は同市内の農業者のうち18人は計画的生産実施者に該当しない農業者であり、同農協ではこれら18人の農業者が交付対象者に該当しないにもかかわらず、生産調整をとも補償金の交付対象とはならない方法により実施していた1人を除く17人に対し、とも補償金1,101,775円(国庫補助金同額)を交付していた。
(2) 稲作経営安定対策に係る補てん金等について
上記の18人に対しては、13年度末までに2,806,270円(国庫補助金相当額2,104,699円)の資金が造成され、稲作経営安定対策に係る補てん金等計2,259,247円が交付されていた。
しかし、前記のとおり、稲作経営安定対策に係る補てん金等の交付を受けるためには、とも補償金の交付対象者であることが要件とされていることから、上記の補てん金等は交付してはならず、加入契約を解除して、造成された資金に係る国庫補助金相当額を国に返還する要があった。
このような事態が生じていたのは、とも補償及び稲作経営安定対策に係る事務を行う塩野谷農協において交付要件の確認が十分でなかったこと、同農協に対する全農の栃木県経済連を通じた指導が十分でなかったことなどによると認められる。
したがって、本件(1)のとも補償金に係る国庫補助金1,101,775円及び(2)の稲作経営安定対策の造成資金額2,806,270円に係る国庫補助金相当額2,104,699円、計3,206,474円が不当と認められる。