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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

米殻販売業流通合理化推進事業の運営が適切に行われるよう改善させたもの


(6) 米殻販売業流通合理化推進事業の運営が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 食糧管理特別会計(国内米管理勘定) (項)国内米管理費
部局等の名称 食糧庁
助成の根拠 予算補助
事業実施主体 財団法人全国米穀協会及び社団法人日本米穀小売振興会
事業名 米穀販売業流通合理化推進事業(平成10年度以前は米穀販売業者活性化推進事業)
事業の概要 米穀卸売業及び米穀小売業の販売力及び経営基盤の強化を図るため、これらの業者が精米機等の機械及び装置をリースにより導入する場合において必要な助成を行うもの
検査した事業費 95億9281万円 (平成9年度〜13年度)
上記に対する国庫助成金交付額 28億8464万円  
適切とは認められない事業費 2億5294万円 (平成9年度〜13年度)
上記に対する国庫助成金相当額 7381万円  

1 事業の概要

(制度の概要)

 食糧庁では、米穀の高付加価値化及び経営の高度化・多角化により、米穀卸売業及び米穀小売業の販売力及び経営基盤の強化を図ることを目的として、米穀販売業流通合理化推進事業(平成10年度以前は米穀販売業者活性化推進事業。以下「推進事業」という。)を実施している。
 推進事業は、卸売業設備導入事業及び小売業設備導入事業から構成されており、いずれも、米穀卸売業者及び米穀小売業者(以下「米穀販売業者」という。)がその事業場等に精米機等の機械及び装置(以下「機械等」という。)を最長10年間のリース契約により導入する場合において必要な助成を行うものである。
 この助成は、米穀販売業者流通円滑化対策助成事業実施要綱、米穀販売業流通合理化推進事業実施要領及び流通円滑化対策助成金交付要綱(以下「実施要綱等」という。)に基づき実施されることとなっている。そして、食糧庁では、実施要綱等に基づき、卸売業設備導入事業を実施する財団法人全国米穀協会及び小売業設備導入事業を実施する社団法人日本米穀小売振興会(以下、両団体を合わせて「事業実施主体」という。)に対し、流通円滑化対策助成金(以下「国庫助成金」という。)を交付している。また、事業実施主体では、食糧庁の承認を得て、米穀販売業流通合理化推進事業卸売業設備導入事業業務方法書及び米穀販売業流通合理化推進事業小売業設備導入事業業務方法書(以下、これらを「業務方法書」という。)等を作成しており、これに基づき推進事業を実施することとしている。
 なお、推進事業は14年度をもって終了することとされている。

(助成の申請手続)

 機械等を事業用設備として導入することを希望する米穀販売業者は、機械等の導入に関する事業計画書、見積書等所定の申請書類を事業実施主体に提出し、事業実施主体は、食糧庁と協議の上、助成の可否を決定することとされている。

(助成の方法及び内容)

 9年度から11年度まで及び12年度以降における助成の方法及び内容は、それぞれ次のとおりとなっている。
ア 9年度から11年度までの助成の方法及び内容
〔1〕 食糧庁では、事業実施主体に対し、機械等の購入経費の3分の1以内の額を国庫助成金として交付する。
〔2〕 事業実施主体では、国庫助成金を頭金とする割賦契約により機械等を購入する。
〔3〕 事業実施主体は、この機械等を事業用設備として事業場等に導入する米穀販売業者(以下「借受者」という。)との間でリース契約を締結し、機械等を貸し付ける。
〔4〕 事業実施主体は、借受者からリース料の支払を受け、これを機械等の購入代金の支払に充てる。
イ 12年度以降における助成の方法及び内容
〔1〕 リース会社は、借受者が導入する機械等を購入し、リース契約に基づいてこれを借受者に貸し付ける。
〔2〕 事業実施主体は、借受者及びリース会社との三者間でリース料助成契約を締結し、当該リース料の一部をリース会社に支払うことを約する。
〔3〕 食糧庁は、事業実施主体に対し、リース料助成契約の締結により事業実施主体が負担することになる当該契約期間中のリース料の一部に相当する額の国庫助成金をあらかじめ一括交付する。
〔4〕 事業実施主体は、上記の一括交付された国庫助成金を管理し、リース契約期間中、この資金の中から定期的にリース料の支払を行う。
 なお、食糧庁が事業実施主体に交付した国庫助成金の13年度交付実績に基づいて機械等の導入に対する国庫助成金の助成割合を算出すると、機械等の取得価格の約5分の1となっている。

(導入した機械等の管理等)

 食糧庁では、借受者の事業場等に導入した機械等を管理するため、当該借受者を管轄する食糧事務所長に対して、リース開始後速やかに機械等の設置状況を確認(以下「設置確認」という。)させ、また、リース期間が終了するまで機械等の設置状況及び利用状況等を適宜把握(以下「利用状況調査」という。)させることとしている。

(事業実施主体が管理する国庫助成金等の資産)

 食糧庁が9年度から13年度までの5年間に交付した国庫助成金の額は、計86億8995万余円に上っている。また、11年度までに購入された機械等の残存価格に占める国庫助成金相当額及び12年度以降において事業実施主体が管理するリース契約期間中のリース料相当額に係る国庫助成金の残額は、13年度末現在でそれぞれ31億2870万余円、16億5300万余円、計47億8171万余円となっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 前記のとおり、推進事業は14年度をもって終了することとされている。しかし、推進事業には既に多額の国庫助成金が交付されており、また、現に事業実施主体が管理している機械等の資産は多額なものとなっていることから、食糧事務所による機械等の設置確認、リース期間中の利用状況調査等推進事業の実施及び管理が適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 札幌食糧事務所ほか14食糧事務所等(注1) 管内の127借受者に係る推進事業296件(事業費95億9281万余円、国庫助成金交付額28億8464万余円)について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、札幌食糧事務所ほか9食糧事務所等(注2) 管内の13借受者に係る推進事業18件において、次のとおり、適切とは認められない事態(事業費2億5294万余円、これに係る国庫助成金相当額7381万余円)が見受けられた。

(ア) 機械等の管理が適切でなかったもの
6件 事業費 1億5132万余円
国庫助成金相当額 4031万余円

 これらは、食糧事務所による機械等の設置確認及び利用状況調査が適切に実施されていなかったため、リース期間当初から機械等が事業場に設置されていなかったり、リース期間中に機械等が使用されなくなっていたりするなどしていたものである。

(イ) 助成の申請等に対する審査が適切でなかったもの
12件 事業費 1億0162万余円
国庫助成金相当額 3350万余円

 これらは、事業実施主体及び食糧庁における助成の申請等に対する審査が適切でなかったため、助成の対象とならない機械等の据付工事費等を国庫助成の対象事業費に含めていたり、機械等の価格を割高に算定していたりするなどしていたものである。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、借受者において、事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったことにもよるが、主として次のことなどによると認められた。
(ア) 食糧庁において、機械等の設置確認及び利用状況調査の実施方法等が具体的に定められておらず、また、機械等の設置確認の結果に基づいて国庫助成金を交付することとされていないなど、推進事業の管理体制が十分に整備されていなかったこと
(イ) 事業実施主体及び食糧庁において、助成の申請等に対する審査体制が十分に整備されていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、食糧庁では、14年10月までに、推進事業の運営を適切なものとするよう、次のような処置を講じた。
(ア) 各食糧事務所長あてに通知を発し、機械等の設置確認及び利用状況調査の実施方法等を具体的に定めることにより機械等の管理が適切に行われるようにするとともに、機械等の設置確認の結果に基づき国庫助成金の交付を行うこととするなどして、推進事業の管理体制を整備した。
(イ) 機械等の価格の妥当性についても確認することができるようにするなど業務方法書等を改正して、助成の申請等に対する審査体制を整備した。

(注1) 札幌食糧事務所ほか14食糧事務所等 札幌、東京、名古屋、大阪、福岡各食糧事務所及び東京食糧事務所水戸、同宇都宮、同前橋、同さいたま、新潟食糧事務所福井、名古屋食糧事務所静岡、広島食糧事務所鳥取、同松江、高松食糧事務所高知、福岡食糧事務所大分各事務所
(注2) 札幌食糧事務所ほか9食糧事務所等 札幌、東京、名古屋、大阪、福岡各食糧事務所及び東京食糧事務所さいたま、新潟食糧事務所福井、広島食糧事務所鳥取、高松食糧事務所高知、福岡食糧事務所大分各事務所