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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国有林野事業特別会計における物品の管理を適正かつ効率的に行うよう改善させたもの


(7) 国有林野事業特別会計における物品の管理を適正かつ効率的に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 国有林野事業特別会計 (国有林野事業勘定) (項)国有林野事業費
    (治山勘定) (項)治山事業費
(項)北海道治山事業費
(項)離島治山事業費
(項)改革推進公共投資治山事業費
(項)改革推進公共投資北海道治山事業費
(項)治山事業工事諸費
部局等の名祢 林野庁、北海道森林管理局ほか6森林管理(分)局、石狩森林管理署ほか18森林管理署等、6事務所等(平成13年7月31日以前は33事務所等)
物品の概要 基幹作業職員等が素材生産を行うための林業機械等、その他国有林野事業等で使用するもの
国有林野事業特別会計で管理している重要物品の数量及び価格 5,828個 108億2232万円 (平成13年度末)
上記のうち適切に管理されていなかった重要物品の数量及び価格 72個 4億7087万円  

 

1 国有林野事業の改革に伴う物品の管理

(国有林野事業の改革)

 林野庁では、国有林野事業の危機的な財務状況に対処するため、その抜本的改革に必要な特別措置について定めた「国有林野事業の改革のための特別措置法」(平成10年法律第134号。以下「改革法」という。)が施行されたことなどに伴い、素材生産の民間事業者への委託及び簡素かつ効率的な組織への再編を進めている。
 そして、素材生産の民間事業者への委託割合については、改革法施行前の平成9年度に71%であったものが13年度には95%に達している。
 また、組織については、9年度末に14営林(支)局及び229営林署であったものを、15年度末には14森林管理(分)局(以下「管理局」という。)、120の森林管理署、支署及び森林管理事務所(以下、これらを「管理署」という。)に再編することとし、組織再編の過程で暫定的に設置した201事務所等についても13年8月に150箇所廃止し、15年度末までには残り51箇所もすべて廃止することとしている。そして、職員数については、9年度末に13,566人であったものが13年度末には8,770人に削減されている。

(物品管理事務)

 国の物品については、その適正かつ効率的な供用その他良好な管理を図るため、物品管理法(昭和31年法律第113号)等において、各省各庁の長が物品の取得、保管、供用及び処分(以下「管理」という。)を行い、その委任を受けた当該各省各庁所属の職員等(以下「物品管理官」という。)が管理事務を行うこととされている。
 そして、物品管理官は、供用及び処分の必要がない物品について管理換により適切な処理をすることができないときなどには、これらの物品について不用の決定をし、売り払ったり、廃棄したりすることができることとされている。物品の管理に当たっては、物品管理簿等を備え、物品の異動に関する事項及びその他物品の管理上必要な事項を記録し、取得価格が50万円以上の機械及び器具(以下「重要物品」という。)については、その取得価格を記録しなければならないこととされている。
 また、各省各庁の長は、重要物品について、毎会計年度間における増減及び毎会計年度末における現在額の報告書(以下「物品増減及び現在額報告書」という。)を作成することとされており、この報告書は内閣から国会に報告されている。
 そして、同庁では、組織の再編及び職員数の削減に伴い、物品管理の事務を適正かつ効率的に行うために、全国統一的に電算処理を行う物品管理システムを12年度に導入し、13年度から運用を開始する計画(以下「運用計画」という。)を作成した。
 このシステムは、本庁、管理局、管理署、事務所等における物品管理に係る情報をデータベース化し、官署相互間の送受信処理機能により物品の管理換、不用決定等の事務を電算処理し、物品管理簿等を出力するものである。
 国有林野事業特別会計で管理している重要物品の13年度末における数量及び価格は、5,828個、108億2232万余円(物品管理簿に記録された取得価格。以下同じ。)となっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 国有林野事業の改革により、伐採、造林等の作業に直接従事する基幹作業職員等が使用していた集材機やトラクタ等の林業機械及び器具(以下「林業機械等」という。)の多くが使用されなくなり、また、組織の再編及び職員数の削減に伴い、物品管理システムが導入され運用が開始されることとなった。
 そこで、供用及び処分の必要がない林業機械等については速やかに不用決定の手続がなされ、売り払うなどの管理が適切に行われているか、物品管理システムについて、出力された物品管理簿の記録は従来の物品管理簿から正確に引き継がれているか、また、運用計画どおりに稼働しているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 本庁、北海道森林管理局ほか6管理局(注1) 、石狩森林管理署ほか18管理署、6事務所等(注2) の所管に属する物品について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
(ア) 林業機械等の管理が適切でなかったもの

3管理局、16管理署、5事務所等
(重要物品72個(4億7087万余円)、これ以外のもの378個)

 上記の管理局等において、素材生産の民間事業者への委託の進展に伴い使用する見込みがなくなった林業機械等について、不用決定の手続を執り、売り払うことが可能なものについては物品の有効利活用を図る観点から森林組合に売り払って収益の確保を図るなどすべきであったのに、これらの措置を講じることなく保管されたままとなっていた。さらに、重要物品72個のうち11個(7252万余円)の林業機械等について屋外に放置するなど適切な保管が行われていなかった。

<事例>

 天竜森林管理署では、素材生産の民間事業者への委託の進展に伴い、グラップルソー1台(12,840,000円)及び集材機2台(6,633,500円)が平成10年12月以降3年以上使用されないまま作業現場に放置され、適切な保管が行われていなかったことから、現在では腐食し使用できない状況となっていた。
(イ) 物品管理システムヘの移行時の事務処理が適切でなかったもの

7管理局、19管理署、5事務所等

 上記の管理局等において、物品管理システムに従来の物品管理簿の記録を入力するに当たり、記録と実際の物品の保有状況を照合し確認していなかったり、従来の物品管理簿の一部を紛失したりしていた。このため、物品管理システムで出力された物品管理簿が正確性を欠いている。また、物品管理簿、物品増減及び現在額報告書等に物品の数量及び価格が計3個(6,058,200円)誤って計上されていた。

<事例>

 四国森林管理局では、管内の診療所において心電計1台(1,028,200円)が廃棄処分された際に、その数量及び価格の異動について物品管理簿への記録を怠ったまま物品管理システムヘ移行したため、平成13年度物品増減及び現在額報告書において当該物品の数量及び価格が誤って計上されていた。
(ウ) 物品管理システムが稼働していなかったもの

本庁、2管理局、8管理署、3事務所等

 本庁等において、業務担当者が端末の操作に習熟していなかったことから、物品管理システムが13年度末現在においても稼働していなかった。このため、物品管理簿等を出力することができなかったり、物品管理に係る情報を全国統一的な電算処理により集計することができなかったりしていた。

<事例>

 大井川治山センターでは、業務担当者が端末操作に習熟していなかったことから、会計実地検査時(平成14年4月)において物品管理に係る情報を入力しておらず、物品管理システムが全く稼働していなかった。このため、物品管理官が置かれている東京分局においては管内の物品管理に係る情報の集計を、また、本庁においては全国の官署における物品管理に係る情報の集計をそれぞれ行うことができず、重要物品の毎年度間における増減及び毎年度末における現在額についての調書等を出力することができない状況となっていた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、林野庁において、物品の適正かつ効率的な供用その他良好な管理を図るという物品管理についての基本認識が十分でなかったこと、使用しないこととなった林業機械等について売り払うなどの措置を講じて効率的な事業実施体制を確立するとの認識に欠けていたこと、物品管理システムの導入により物品管理を適正かつ効率的に行うとの認識が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、林野庁では、物品増減及び現在額報告書等に物品の数量及び価格を誤って計上していたものについて是正の措置を講じた。そして、14年10月に各管理局に対して通知を発し、物品管理についての基本認識を周知徹底し、使用しないこととなった林業機械等について不用決定等の手続を執り売払いに努めるなどの措置を講じるとともに、各官署間の送受信処理機能により管理換等の事務を全国統一的に行えるよう、物品管理システムの運用を図るなどの処置を講じた。

(注1) 北海道森林管理局ほか6管理局 北海道、東北、中部、四国各森林管理局及び旭川、帯広、東京各分局
(注2) 石狩森林管理署ほか18管理署、6事務所等 石狩、空知、胆振東部、留萌北部、宗谷、上川南部、根釧西部、米代東部、秋田、庄内、山形、静岡、伊豆、天竜、木曽、四万十、安芸各森林管理署、東大雪、南木曽両支署、芦別、上川、王滝、窪川各事務所、大井川治山センター、駒ケ根森林管理センター