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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 平成12年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

農用地の流動化を推進するための事業の実施について


 農用地の流動化を推進するための事業の実施について

(平成12年度決算検査報告参照)

1 本院が表示した改善の意見

(検査結果の概要)

 農林水産省では、「ウルグァイ・ラウンド農業合意関連農地流動化対策の基本方針」(平成7年7構改B第449号農林水産事務次官依命通達)の下、農用地に関する利用権の設定、農作業の受委託等に関する情報の収集・管理、農作業の受委託の調整を含めた徹底した農用地の利用調整などを一体的に推進し、農用地の利用集積を図ることを目的として、平成7年度から12年度までの間に、農用地利用調整特別事業を実施している。また、食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)の制定に伴い、12年度から新たに、農用地の流動化に関する情報を共有し、利用集積面積等の目標を設定するとともに当該目標の達成に必要な事業の組合せ等の計画を作成し、それに基づいて農地流動化施策を総合的に実施する仕組みを整備することを目的として、農地流動化地域総合推進事業(以下「推進事業」という。)を実施している。
 これら両事業について検査したところ、次のとおり、担い手への農用地の利用集積を図るという事業の目的に照らして適切とは認められない事態が見受けられた。
(1) 農業者に対する意向調査が適切に行われていなかったり、意向調査の結果が適切に農業者意向台帳等に集約整理されていなかった。
(2) 農用地の利用調整計画が適切に策定されていなかったり、農地流動化推進員(以下「推進員」という。)による利用調整活動が適切に行われていなかった。
このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 市町村(事業主体)において、利用調整活動を行うための基礎となる農用地の流動化に関する情報を把握、管理、活用することが、農用地の利用集積を図るという目的の実現にとって極めて重要であることの認識が十分でないこと、また、利用調整活動の重要な役割を担う推進員に対して、事業の目的等を十分理解させるための指導・周知が図られていないこと
(イ) 道県において、市町村における事業の実施状況を的確に把握しておらず、また、市町村に対する指導等が十分でないこと
(ウ) 農林水産省において、意向調査や利用調整活動の意義、実施方法等についての道県に対する指導等が十分でないこと

(検査結果により表示した改善の意見)

 農用地の流動化を推進するための実施態勢が整備され、担い手への農用地の利用集積を図るという目的に資するものとなるよう、事業実施の在り方を含め、今後実施される事業について、その効果的な実施を期する要があるとして、農林水産大臣に対し13年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の意見を表示した。

2 当局が講じた改善の処置

 農林水産省では、本院指摘の趣旨に沿い、14年3月に農業経営総合対策実施要領(平成14年13経営第6627号農林水産事務次官依命通知)を新たに制定するなどして、次のような農用地の流動化を推進するための実施態勢を整備する処置を講じた。
(1) 推進事業等の実施方法について、次のとおり全面的な見直しを行った。
ア 事業を重点的に実施するため、全市町村を対象に行っていた農家の意向調査を見直し、その必要性を判断した上で実施することとした。
イ 事業効果の発現がより図られるよう、全集落を対象に配置されていた推進員の活動を廃止し、基盤整備が終了した地区等を対象として、新たに農地の集積計画の作成に関与する役割も担う担い手集積活動員を設置するなどして事業を実施することとした。
ウ 事業の実施状況に係る情報を的確に把握、管理、活用することができるよう、担い手集積活動員等に活動記録等の作成を義務付けるとともに、都道府県知事は、必要に応じて市町村に対して上記活動記録等の提出を求めることができることとした。
(2) 都道府県及び市町村に対して、上記実施要領等の周知徹底を図り、事業の趣旨、目的及び内容に即して適切に実施されるよう指導した。