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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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移転補償額の算定に係る業務委託契約において、実施されていない業務について委託費を支払っていたもの


(228) 移転補償額の算定に係る業務委託契約において、実施されていない業務について委託費を支払っていたもの

会計名及び科目 (1)、(2)国営土地改良事業特別会計  (項)北海道土地改良事業費
(3)、(4)治水特別会計(治水勘定)  (項)北海道河川総合開発事業費
部局等の名称 北海道開発局石狩川開発建設部(平成13年1月5日以前は総理府北海道開発庁北海道開発局石狩川開発建設部)
契約名 (1) 夕張シューパロダム化学工場補償積算業務
(2) 夕張シューパロダム化学工場移転補償調査積算業務
(3) 夕張シューパロダム鹿島北栄町用地調査等業務
(4) 夕張シューパロダム北栄町支障物件調査積算業務
契約の概要 移転補償額の算定を委託するもの
契約額 (1)  20,249,000円
(2)  21,819,000円
(3)  4,620,000円
(4)  4,410,000円
契約の相手方 (1) 株式会社ドボク管理
(2)、(3)、(4) 株式会社ズコーシャ
契約 (1) 平成9年9月  指名競争契約
(2) 平成11年6月  指名競争契約
(3) 平成12年10月  指名競争契約
(4) 平成12年12月  指名競争契約
支払 (1) 平成9年10月、12月
(2) 平成11年6月、9月
(3) 平成12年11月、12月
(4) 平成12年12月、13年3月
不適切に支払われていた委託費 12,192,000円

1 契約の概要

(業務委託契約の概要)

 上記の各業務委託契約は、北海道開発局石狩川開発建設部(以下「開発建設部」という。)が、石狩川水系夕張川で実施している夕張シューパロダム建設事業において、水没区域内に所在する日北酸素株式会社(以下「日北酸素」という。)夕張工場に対する移転補償の補償額を算定するため、移転工法の検討並びに機械設備、営業等に係る調査及び補償額の積算(以下、このうち営業に係る調査及び補償額の積算を「営業調査積算」という。)等の業務を、次のとおり補償コンサルタントに4件委託したものである。
 (1)の業務委託契約は、移転工法の検討、機械設備調査、営業調査積算等を平成9年9月16日に20,249,000円で株式会社ドボク管理に委託したものである。
 (2)の業務委託契約は、機械設備調査、機械設備見積、機械設備積算、営業調査積算等を11年6月8日に21,819,000円で株式会社ズコーシャ(以下「ズコーシャ」という。)に委託したものである。
 (3)及び(4)の業務委託契約は、機械設備調査、機械設備見積、機械設備積算をそれぞれ12年10月17日及び12月12日に4,620,000円及び4,410,000円でズコーシャに委託したものである。

(営業調査積算業務の概要)

 前記業務のうち営業調査積算は、営業休止期間中の収益減、従業員に対する休業手当相当額等、事業所の移転に伴う営業損失に対する補償額を算出するための調査積算業務であり、北海道開発局制定の用地調査等標準仕様書等によると、貸借対照表、損益計算書、固定資産台帳、総勘定元帳等の財務関係資料等を収集し、これらを基に補償額を積算することとされている。

2 検査の結果

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 契約の変更が必要だったもの
 (1)及び(2)の委託契約は、それぞれ9年11月25日及び11年8月20日に調査等の業務が完了し、これを受けて開発建設部ではそれぞれ翌々日及び6日後に完了検査を実施し、営業調査積算を含むすべての業務が完了したとしていた。
 しかし、上記の2業務委託契約は、いずれも日北酸素から財務関係資料等の提出を受けられなかったため、受託者は前記の仕様書等において実施することとされていた営業調査積算を実施できなかったのに、すべて完了したとしていた。そして、開発建設部において、必要な契約変更を行わず、これらに係る成果品の引渡しを受けていないのに、すべての調査等の業務が完了したとして委託費を支払っていたことは不適切と認められる。
 このため、(1)及び(2)の業務委託契約について適正な委託費を計算すると、それぞれ19,751,000円、19,155,000円となり、委託費20,249,000円、21,819,000円は、それぞれ498,000円、2,664,000円が過大に支払われていた。
 このような事態が生じていたのは、開発建設部において、契約の履行確認が適切でなかったことによると認められる。
イ 委託する必要がなかったもの
 (3)及び(4)の委託契約は、それぞれ12年12月8日及び13年2月26日に業務が完了し、これを受けて開発建設部ではそれぞれ3日後及び翌日に完了検査を実施し、すべての業務が完了したとして、成果品の引渡しを受けたとしていた。
 しかし、上記2業務委託契約の補償額算定の対象である夕張工場については、既に12年8月に日北酸素との間で補償契約が締結されていて、この締結後に補償額の算定等を委託する必要はなく、受託者はこれら2契約について何ら業務を実施していなかったのに業務が完了したとしていた。そして、開発建設部において、実態と異なる関係書類を作成して会計処理を行い、業務が完了したとして委託費を支払っていたことは不適切と認められる。
 このため、(3)及び(4)の業務委託契約に係る委託費4,620,000円、4,410,000円は支払う必要がなかった。
 なお、北海道開発局の説明によれば、これら2契約は、契約締結以前にズコーシャに口頭依頼した機械設備に関する補償額の再積算に要した費用を支払うために発注されたものであるとしている。
 このような事態が生じていたのは、開発建設部において、委託契約の適正な実施に対する認識が不足していたことによると認められる。
 したがって、上記のア、イに係る委託費計12,192,000円は過大に支払われており、不当と認められる。