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  • 平成13年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第4 日本鉄道建設公団|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

新幹線等建設工事の工事用道路等の整備に当たり、再生砕石の利用を促進することにより経済的な積算を行うよう改善させたもの


 新幹線等建設工事の工事用道路等の整備に当たり、再生砕石の利用を促進することにより経済的な積算を行うよう改善させたもの

科目 (項)建設費
部局等の名称 盛岡支社ほか1支社及び北陸新幹線建設局
工事名 北幹、飯山T(富倉)他3ほか19工事
工事の概要 新幹線及び都市鉄道線の建設並びにその一環としての工事用道路の整備等を行う工事
工事費 554億3040万余円
請負人 熊谷・日本国土・大本共同企業体ほか19共同企業体
契約 平成13年6月〜14年3月 一般競争契約、公募型指名競争契約、随意契約
砕石の材料費の積算額 2億1697万余円
低減できた砕石の材料費の積算額 4490万円

1 工事の概要

(工事の内容)

 日本鉄道建設公団(以下「公団」という。)では、新幹線、都市鉄道線等の建設工事を多数実施している。これらの工事においては、その一環として工事用道路の整備、水路等の構造物の築造等を行っていて、道路の路盤材や構造物の基礎材等として多量の砕石を使用している。

(砕石の種類)

 砕石には、原石を採取して破砕するなどして製造する砕石(以下「新材砕石」という。)のほか、構造物の解体等により発生するコンクリート塊を破砕し不純物を除去するなどして製造する砕石(以下「再生砕石」という。)がある。

(再生資源の利用促進施策)

 近年、資源の再生利用の重要性が注目されており、資源の有効な利用の確保、産業廃棄物の発生の抑制及び環境の保全の見地から、資源の再生利用を促進するため、平成3年に「再生資源の利用の促進に関する法律」(平成3年法律第48号。(12年に名称が「資源の有効な利用の促進に関する法律」に改正)以下「リサイクル法」という。)が制定された。リサイクル法では、建設業者等の事業者及び建設工事の発注者は、事業又は建設工事の発注を行うに際して再生資源を利用するよう努めることとされている。そして、建設工事副産物のうち土砂、コンクリート塊、木材等については、「再生資源の利用の促進に関する法律施行令」(平成3年政令第327号)により、再生資源としての利用を促進することが特に必要なものとして指定された。また、「建設業に属する事業を行う者の再生資源の利用に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」(平成3年建設省令第19号)において、コンクリート塊を再生材として利用する場合には、主として道路舗装及びその他の舗装の下層路盤材、土木構造物の裏込材及び基礎材等として利用するものとされている。

(公団における再生資源の利用促進の取組)

 公団では、リサイクル法の制定等を受けて、4年に「再生資源の利用について」(以下「4年通達」という。)により、公団が実施する建設工事における再生材の利用について、次のように取り扱うこととしている。
〔1〕 再生材の使用に当たっては、その供給量、取引状況、価格及び品質等並びに再資源化施設の立地状況等について事前調査を十分行う。
〔2〕 再生材を使用する場合は請負業者に対する設計図書等により、使用する材料、品質及び用途等を明示する。
〔3〕 再生材の用途は、土木工事においては道路の路盤材、構造物の基礎材等とする。

(砕石の材料費の積算)

 公団では、工事で使用する砕石について、毎年、各支社又は建設局等(以下「支社等」という。)において、外部に調査を委託したり、見積りを徴取したりして、新材砕石の単価を設定しており、各工事の積算に当たっては、この単価に使用量を乗じて材料費を積算している。また、再生砕石については、各工事の積算に当たって、供給状況を十分調査した上で、必要量の確保が可能でかつ経済的になる場合に、これを使用することとして積算することにしている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 リサイクル法制定後10年を経過し、コンクリート塊から再生砕石を製造する再資源化施設は年々増加してきている。また、再生砕石の価格は、新材砕石に比べて安価になっている。そこで、公団が実施する工事において、再生砕石の使用が図られ、経済的な積算が行われているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 公団の盛岡支社ほか1支社及び北陸新幹線建設局ほか1建設局(注1) が13年度に契約した新幹線、都市鉄道線等の建設工事のうち4年通達により再生砕石を使用できることになっている工事用道路等の路盤材等に砕石を使用している21工事(工事総額570億7679万余円)、その砕石量約73,980m について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、1建設局(注2) の1工事、砕石量約580m では、再生砕石を使用することとして、砕石の材料費を積算していたが、3支社等(注3) の20工事(工事費総額554億3040万余円)、砕石量約73,400m では、使用砕石の種類を問わず、材料費の積算においては、支社等が設定している新材砕石の単価2,350円/m 〜3,100円/m を用いて、計2億1697万余円と積算していた。
 そして、このように積算したのは、当該各工事の実施に当たって行った事前調査において、刊行物である積算参考資料に工事箇所を含む地区について再生砕石の単価が掲載されていなかったことなどによるとしている。
 しかし、前記20工事の実施地区の市町村管内について、本院が調査したところ、各市町村に1箇所以上の再資源化施設があり、再生砕石の供給体制は整っている状況であった。また、各都道府県では管内市町村における再生砕石の単価を調査しており、それによると、上記20工事の市町村における平均単価は、新材砕石に比べて300円/m 〜1,000円/m (新材砕石単価の11%〜34%)安価となっていた。
 したがって、道路の路盤等に使用する砕石の材料費の積算に当たっては、原則として再生砕石を使用することとし、外部への調査委託等によりその単価を把握して積算する要があると認められた。
 現に、国土交通省や都道府県等では、道路の路盤材等には原則として再生砕石を使用することとし、毎年、その地区別単価を定め、これにより積算することとしている状況である。

(低減できた砕石の材料費)

 前記の新材砕石を使用することとして積算していた20工事について、再生砕石を使用することとして積算したとすると、その材料費は1億7207万余円となり、前記の積算額2億1697万余円を約4490万円低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、公団として、再生材の利用促進を図るという方針はあるものの、4年通達等において、原則として再生砕石を使用することとして積算することの具体的な取扱いが定められていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、公団では、14年10月に再生砕石の利用の促進を図るため、支社等に通達を発し、同年12月以降に契約する工事から道路の路盤材等については、原則として再生砕石を使用することとして積算すること、また、再生砕石の単価について、外部への委託などにより調査して地区別に定めることとする処置を講じた。

(注1) 盛岡支社ほか1支社及び北陸新幹線建設局ほか1建設局 盛岡支社、関東支社、北陸新幹線建設局、北陸新幹線第二建設局
(注2) 1建設局 北陸新幹線第二建設局
(注3) 3支社等 盛岡支社、関東支社、北陸新幹線建設局