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  • 平成13年度|
  • 第4章 特定検査対象に関する検査状況|
  • 第1 金融システムの安定化のための緊急対策等の実施状況について|
  • 3 検査の状況|
  • (2) 金融システムの安定化のための緊急対策等の実施状況|
  • エ 金融機能早期健全化法の枠組みの実施状況

資本増強の実施状況


(資本増強の実施状況)

 金融庁は、金融機能早期健全化法に基づき、11年3月から14年3月末までに計32金融機関(注13) に対する資本増強の承認を行った。そして、預金保険機構は、整理回収機構に資本増強の業務を委託して、13年度末までに、表6のとおり、上記の金融機関に対して累計8兆6053億余円の資本増強を実施した。

表6 資本増強実績の推移 (単位:件、億円)
年度 10 11 12 13 累計
金融機関数 15 7 5 5 32
  主要行
地銀・第二地銀
14
1
1
6
1
4
0
5
16
16
資本増強額 74,593 5,750 3,870 1,840 86,053
(注)
 主要行の欄は、都市銀行、長期信用銀行、信託銀行を集計して計上している。また、地銀・第二地銀の欄は、地方銀行協会加盟行(地銀)及び第二地銀を集計して計上している。

 金融再生委員会(当時)では、資本増強に係る基本方針として、不良債権問題については、十分な償却・引当てを行うことにより、11年3月期にその処理を基本的に終了すること、業務純益や民間からの自力調達等と併せ、資本増強を行うことにより、不良債権の処理額等を考慮してもなお十分な資本勘定を確保することなどを挙げた。そして、資本増強額の審査に当たり、貸倒引当金の引当率の具体的数値の目安(注14) も定めた。
 また、資本増強の承認の要件としては、資本増強を受ける金融機関が債務を完済できない状況にないこと、かつ、株式等の処分が著しく困難でないこと、経営健全化計画の各種方策の実行が見込まれることなどが定められた。そして、金融再生委員会は、資本増強を受ける金融機関が直近の決算において債務超過でないことを確認し、公的資金返済の重要な原資となる剰余金の推移についても審査した。また、リストラ、再編等への対応が十分であれば財務内容・経営内容が改善するものと見込まれることから、リストラ、再編等を実施する経営健全化計画の評価を優先株式等の配当率等に反映させることとした。
 このほか、金融機能安定化法による資本注入を受けた金融機関の経営・財務状況については、当該金融機関があらかじめ作成した健全性の確保のための計画の履行状況を公表していたが、金融機能早期健全化法による資本増強を受ける金融機関については、あらかじめ作成した経営健全化計画の履行状況を公表するとともに、履行状況等に応じて銀行法(昭和56年法律第59号)に基づく業務改善命令を発動することとするなど、行政措置との連携が明確に位置付けられた。
 11年3月に金融機関に対して実施された資本増強額については、まず、4年先までの不良債権処理損失額が見積もられ、金融再生委員会が示した具体的な貸倒引当金の引当率の目安から必要となる引当金が算出されて、上記の不良債権に係る処理が実施されても十分な資本勘定を維持できるように算定された。この結果、11年3月に資本増強を受けた金融機関は、10%程度の自己資本比率を維持することとなった。

(注13)  32金融機関 株式会社第一勧業、株式会社さくら、株式会社富士、株式会社あさひ、株式会社三和、株式会社住友、株式会社大和、株式会社東海、株式会社北海道、株式会社足利、株式会社千葉興業、株式会社横浜、株式会社北陸、株式会社近畿大阪、株式会社琉球、株式会社日本興業、株式会社新生、株式会社あおぞら、株式会社東日本、株式会社岐阜、株式会社関西さわやか、株式会社和歌山、株式会社広島総合、株式会社福岡シティ、株式会社九州、株式会社熊本ファミリー、株式会社八千代各銀行、三井、三菱、東洋、中央、住友各信託銀行株式会社(資本増強実施時における金融機関名)
(注14)  貸倒引当金の引当率の具体的数値の目安 平成11年1月の金融再生委員会による「資本増強に当たっての償却・引当についての考え方」では、担保・保証で保全されていない破綻懸念先に係る債権がおおむね70%、担保・保証で保全されていない要管理先(業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要する債務者)に係る債権はおおむね15%などとされている。