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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 裁判所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

電話等に関する各種の割引制度を適切に利用することにより、通話料の節減を図るよう改善させたもの


 電話等に関する各種の割引制度を適切に利用することにより、通話料の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計  (組織)裁判所  (項)最高裁判所
       (項)下級裁判所
       (項)裁判費
     (組織)検察審査会  (項)検察審査会
部局等の名称 最高裁判所、東京高等裁判所ほか67裁判所
契約の概要 裁判関係者等への電話連絡、ファックス等の送信に電話回線を利用するもの
契約の相手方 東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
通話料の支払額 1億3920万余円(平成14年度)
節減できた通話料 1394万円(平成14年度)

1 通話料の概要

(裁判所における電話等の利用と通話料)

 最高裁判所並びに高等裁判所、地方裁判所及び家庭裁判所(以下「高等裁判所等」という。また、最高裁判所と併せて「裁判所」という。)などにおいては、弁護士や通訳人などの裁判関係者への連絡、当事者との話合い、各裁判所間の相互連絡などに電話、ファックス等を利用している。
 そして、これらの電話等の利用に係る契約については、裁判所ごとに、東日本電信電話株式会社(以下「NTT東日本」という。)、西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。また、「NTT東日本」と併せて「NTT地域会社」という。)、エヌ・ティ・テイ・コミュニケーションズ株式会社(以下「NTTコミュニケーションズ」という。また、「NTT地域会社」と併せて「NTT各社」という。)等の電話サービス等を提供している会社(以下「電話会社」という。)との間で、それぞれ契約を締結し、利用に応じた基本料、通話料(通信料を含む。以下同じ。)等の電話料金を支払っている。

(電話会社の割引制度)

 平成13年5月から、個々の電話回線ごとに行う通話・通信を「市内通話・通信」(以下「市内通話」という。)、「県内市外通話・通信」(以下「市外通話」という。)、「県間市外通話・通信」(以下「県外通話」という。)及び「国際通話・通信」の4区分に分け、利用者がそれぞれの区分ごとに利用したい電話会社をあらかじめ選んで登録(以下「マイライン登録」という。)する電話会社選択サービスが開始された。
 そして、NTT各社がマイライン登録している利用者に対して提供している通話料に係る主な割引制度の概要は、次のとおりである。
〔1〕 NTT地域会社においては、同一企業の複数の事業所で使用する回線で1つのグループを構成し、グループ内の回線に係る月額の市内通話及び市外通話の通話料の合計額に応じて、市内通話が10〜15%、市外通話が26〜40%割引になる企業単位通話料金割引
〔2〕 NTTコミュニケーションズにおいては、県外通話の通話料が月間の利用額に応じて26〜30%割引になる法人向複数回線割引、更にこれに年間の利用額などに応じた割引率16.5%を加算して最大46.5%割引になる多回線割引
 そして、これらの割引制度の適用を受けるためには、適用を受けようとする電話回線を特定してNTT各社に割引制度の適用を申請することとなっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 近年、裁判所における訴訟や調停などの件数が増加しており、それに係る電話料金の支払額も多額に上っている。そして、多くの裁判所ではNTT各社にマイライン登録している。
 そこで、裁判所において通話・通信の4区分のうち通話料の大宗を占めている市内通話、市外通話及び県外通話の3区分について、NTT各社の提供する割引制度を適切に利用しているかなどに着眼して検査した。
 検査に当たっては、電話会社からの請求書によりNTT各社にマイライン登録していることが確認でき、かつ、通話料の内訳が確認できた最高裁判所及び東京高等裁判所ほか69裁判所(注1) に係る4,459回線、これらに係る14年度の通話料1億4127万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、各裁判所において各々独自に割引制度の利用を決定している状況であって、その結果、以下のような適切を欠く事態となっていた。
ア 市内通話又は市外通話に関して、NTT地域会社にマイライン登録をしていることが確認できた2,929回線における割引制度の利用状況は、市内通話においては約6割の1,656回線(61箇所)が、また、市外通話においては約3割の980回線(49箇所)が何ら割引制度の適用を申請しておらず、割引の適用を受けていなかった。また、市内通話においては裁判所ごとに割引制度を利用していることから、通話料が割引を受けるための金額に達していないために割引の適用を受けていない回線も見受けられた。
イ 県外通話に関して、NTTコミュニケーションズにマイライン登録をしていることが確認できた2,222回線における割引制度の利用状況は、多回線割引を利用しているのは約6割の1,308回線(25箇所)であり、残りの914回線のうち580回線分(60箇所)については全く割引の適用を受けていなかった。また、334回線分(27箇所)については以前から法人向複数回線割引等の適用を受けていたが、それ以上に割引を受けることの可能な多回線割引の適用を受けていなかった。
 しかし、これらの回線については、各種の割引制度について、その内容を十分に把握し、その活用を図ることにより、電話等の利用の実態にあった経済的な割引制度の適用を受けることが可能であったと認められた。
 したがって、電話会社によって各種の割引制度が提供されてきている状況の下、裁判所において割引制度の内容を十分に把握、検討し、その利用状況を全体的に見直すことにより、通話料の節減に努める要があると認められた。

(節減できた通話料)

 仮に、最高裁判所及び東京高等裁判所ほか67裁判所(注2) において、市内通話及び市外通話については、企業単位通話料金割引の適用を受けていたとして、また、県外通話については、多回線割引の適用を受けていたとして計算すると、14年度の通話料1億3920万余円(市内通話及び市外通話6940万余円、県外通話6979万余円)が1億2525万余円(市内通話及び市外通話6597万余円、県外通話5927万余円)となり、1394万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。
(ア) 高等裁判所等において、電話会社が提供している各種の割引制度について、その内容の把握や検討が徹底されていなかったこと
(イ) 最高裁判所において、高等裁判所等における各種の割引制度の利用状況についての調査、把握が十分でなかったため、その割引制度を活用するための高等裁判所等に対する支援・指導が必ずしも十分でなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、最高裁判所では次のような処置を講じた。
ア 15年9月に高等裁判所等に対して事務連絡を発して、高等裁判所等において電話会社が提供している各種の割引制度の内容を十分に把握し、電話等の利用の実態にあったより経済的な割引制度を利用するよう指導した。また、高等裁判所等における各種の割引制度の利用状況を把握して、裁判所全体としてより適切な割引制度を利用することとした。
イ さらに、同年11月に高等裁判所等に対して通知を発し、今後も、逐次電話料金の割引制度を把握し、適時適切に利用するよう周知徹底した。

(注1) 最高裁判所及び東京高等裁判所ほか69裁判所 最高裁判所、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌各高等裁判所、東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、前橋、静岡、甲府、長野、新潟、大阪、京都、神戸、大津、和歌山、名古屋、津、岐阜、福井、金沢、富山、広島、山口、岡山、鳥取、松江、大分、鹿児島、那覇、仙台、福島、山形、盛岡、秋田、青森、札幌、旭川、釧路、高松、徳島、高知、松山各地方裁判所、東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、前橋、静岡、新潟、大阪、京都、名古屋、金沢、広島、山口、岡山、熊本、那覇、福島、札幌、高松、松山各家庭裁判所
(注2) 最高裁判所及び東京高等裁判所ほか67裁判所 最高裁判所、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌各高等裁判所、東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、前橋、静岡、甲府、長野、新潟、大阪、京都、神戸、大津、和歌山、名古屋、津、岐阜、福井、金沢、富山、広島、山口、岡山、鳥取、松江、大分、鹿児島、那覇、仙台、福島、山形、盛岡、秋田、青森、札幌、旭川、釧路、高松、徳島、高知、松山各地方裁判所、東京、横浜、さいたま、千葉、宇都宮、前橋、静岡、新潟、大阪、京都、名古屋、金沢、広島、山口、熊本、福島、札幌、高松、松山各家庭裁判所