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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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飛行場周辺に所在する建物等に係る移転補償金の支払が訓令に定める手続に違背し、適正を欠いていたもの


(2)飛行場周辺に所在する建物等に係る移転補償金の支払が訓令に定める手続に違背し、適正を欠いていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛施設庁 (項)施設運営等関連諸費
部局等の名称 防衛施設庁仙台防衛施設局
契約の名称 建物等移転補償契約(3件)
契約の概要 自衛隊等の使用する飛行場の周辺における航空機の離発着等による騒音障害区域内に所在する建物等の移転等により通常生ずべき損失を建物所有者等に補償するもの
契約額 (1) 112,488,644円
  (2) 148,757,332円
  (3) 162,832,694円
  424,078,670円
移転補償金の支払時期 (1) 平成13年11月、14年3月
(2) 平成13年11月、14年4月
(3) 平成13年11月、14年5月
訓令に定める手続に違背して支払われた移転補償金の額 (1)  2,028,714円
(2)  3,000,718円
(3)  3,278,254円
 8,307,686円

1 移転補償金の概要

(移転補償事業の概要)

 防衛施設庁では、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律(昭和49年法律第101号)等に基づき移転補償事業を行っている。この事業は、自衛隊等の使用する飛行場等の周辺地域で、航空機の離着陸等により生ずる騒音障害が特に著しいと認めて防衛施設庁長官が指定した区域(以下「騒音障害区域」という。)に所在する建物、立木竹等(以下「建物等」という。)の所有者(以下「建物所有者」という。)が、当該建物等を騒音障害区域外に移転し又は除却する場合に、その移転又は除却(以下「移転等」という。)により通常生ずべき損失を補償するため、補償金(以下「移転補償金」という。)の支払を行うものである。
 そして、この移転補償金の支払は、移転等に係る建物所有者及び当該建物等に関する所有権以外の権利を有する者に対して行われることとされている。

(移転補償金の支払手続)

 「自衛隊等の使用する飛行場等周辺の移転補償等の実施に関する訓令」(昭和43年防衛施設庁訓令第10号。以下「訓令」という。)によると、移転補償金の支払手続は次のとおりとなっている。
〔1〕 防衛施設局長(名古屋防衛施設支局長を含む。以下「局長」という。)は、建物所有者からその所有する建物等の騒音障害区域外への移転等を希望する旨の申し出を受けたときは、建物移転等補償申請書(以下「申請書」という。)の提出を受ける。当該建物に借家人又は借間人(以下「賃借人」という。)が居住している場合には、賃借人からも申請書の提出を受ける。
〔2〕 局長は、申請書を受理したときは、建物所有者と当該建物等の現況を確認の上、建物等の登記簿謄本、建物所有者及び居住者の住民票の写し、建物所有者と賃借人との間で建物等に係る賃貸借契約等が締結されている場合には当該契約書の写し等の関係書類を添付した建物等調書を作成する。
〔3〕 局長は、建物等調書を作成したときは、建物等移転補償額算定調書(以下「算定調書」という。)を作成するなどして移転補償金の額を算定した上、建物所有者、賃借人等(以下「建物所有者等」という。)と移転補償額について協議し、協議が整ったときは、各建物所有者等に移転同意書の提出を求める。
〔4〕 局長は、各建物所有者等から移転同意書の提出があったときは、所定の様式により契約書を作成し、これに基づき、各建物所有者等との間で移転補償金の支払等に関する契約(以下「移転補償契約」という。)を締結する。
〔5〕 局長は、建物所有者等が建物等の移転を完了したときは、移転完了届を提出させ、当該建物等の騒音障害区域外への移転について確認の上、各建物所有者等に対して移転補償金の支払を行う。

(仙台防衛施設局における移転補償金の支払)

 仙台防衛施設局(以下「仙台局」という。)では、平成13年度に、三沢飛行場周辺における移転補償事業の一環として、次のとおり、騒音障害区域内に所在する建物を所有する3名の建物所有者との間で移転補償契約(契約額計424,078,670円)を締結し、当該契約書に基づき、13、14両年度にわたり、移転補償金の支払を行っていた。
(1)13年11月2日締結(契約額112,488,644円。移転補償金の支払時期13年11月及び14年3月)
(2)13年11月2日締結(契約額148,757,332円。移転補償金の支払時期13年11月及び14年4月)
(3)13年11月2日締結(契約額162,832,694円。移転補償金の支払時期13年11月及び14年5月)

2 検査の結果

 検査したところ、これらの移転補償金の支払に当たり、次のとおり、賃借人に係る移転補償金相当額の支払が訓令に定める手続に違背しており、適正を欠いていた。
 すなわち、仙台局では、移転補償に係る建物にはいずれも賃借人が居住していることを認識していたのに、賃借人との間では、申請書の受理、移転補償額に関する協議、移転同意書の受理、移転補償契約書の作成等訓令に定める手続を行わないまま、賃借人に係る移転補償金の額(前記(1)の契約で2,028,714円、同(2)の契約で3,000,718円、同(3)の契約で3,278,254円、計8,307,686円)を含めて移転補償額を算出し、各建物所有者に対してその全額を支払っていた。なお、一部の賃借人には、各建物所有者から移転補償金相当額の支払がされていなかった。
 このような事態が生じていたのは、仙台局において、移転補償金の支払に当たり、訓令に従った適正な支払を行うという認識に欠けていたことなどによると認められる。
 したがって、建物所有者に支払われた移転補償金のうち、訓令に定める手続に違背して支払われた賃借人に対する移転補償金相当額8,307,686円が不当と認められる。