ページトップ
  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第3 総務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

消防防災等施設整備費補助事業で整備する防火水槽に係る補助金の基準額の算定に当たり、諸経費率の取扱いを適切に行うよう改善させたもの


(1)消防防災等施設整備費補助事業で整備する防火水槽に係る補助金の基準額の算定に当たり、諸経費率の取扱いを適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)消防庁 (項)消防防災施設等整備費
部局等の名称 消防庁
補助の根拠 消防施設強化促進法(昭和28年法律第87号)
事業主体 市8、町96、村12、一部事務組合4、広域連合1、計121事業主体
補助事業 消防防災等施設整備
補助事業の概要 市町村の消防水利を確保するため、防火水槽を整備するもの
補助対象事業費 35億1722万余円 (平成12年度〜14年度)
上記に対する基準額 29億0599万余円  
上記に対する国庫補助金交付額 15億4756万余円  
適切と認められない基準額 2億8840万円 (平成12年度〜14年度)
過大に交付されていた国庫補助金相当額 1億5490万円 (平成12年度〜14年度)

1 事業の概要

(補助事業の概要)

 消防庁では、消防施設強化促進法(昭和28年法律第87号)等に基づき、市町村の消防の用に供する施設の強化を促進し、社会公共の福祉を増進することに寄与するため、消防防災等施設整備費補助事業を行う市町村(特別区及び市町村の加入する一部事務組合等を含む。以下同じ。)に対し、消防防災施設整備費補助金及び市町村消防施設整備費補助金を交付している。そして、市町村ではこの補助事業の一環として、「国が行う補助の対象となる消防施設の基準額」(昭和29年総理府告示第487号)、消防防災等施設整備費補助金交付要綱(平成14年消防消第69号)等(以下、これらを「告示等」という。)に基づき、消防水利を確保するための防火水槽を整備している。

(補助金の算定方法)

 防火水槽に係る補助金額は、告示等により、次のように算定することとなっている。
〔1〕 防火水槽の整備に要した本工事費(労務費、材料費、諸経費等)と工事雑費を合計して、補助金の基礎となる工事費(以下「告示工事費」という。)を算定する。その際、諸経費(保険料、利潤等)は告示工事費の5%以内、工事雑費(備品購入費、消耗品費等)は告示工事費の2%以内、計7%以内(以下、諸経費と工事雑費を合わせて「諸経費等」といい、告示工事費に占める諸経費等の割合を「諸経費率」という。)に限り告示工事費に算入できることとされている。
〔2〕 〔1〕により算定した告示工事費と告示等で定められている所定の額を比較して低額な方の額を基準額とする。
〔3〕 〔2〕により決定された基準額に所定の補助率(注1) を乗じて補助金額を算定する。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 消防庁が実施している補助事業のうち特に防火水槽に係るものは、限られた予算の範囲内でより広範囲かつ多数の市町村に防火水槽の整備の機会を与え消防力の整備を促進するため、告示工事費の算定に当たって用いる諸経費率に上限を設け、7%までの算入しか認めていない。
 一方、市町村において防火水槽を整備する工事の予定価格を算出する際に通常使用されている土木工事積算基準等(以下「積算基準」という。)によると、この工事の費用は、直接的な経費である純工事費と間接的な経費である現場管理費及び一般管理費(以下「管理費等」という。)から構成されている。そして、管理費等は、純工事費に20%程度の所要の率を乗じて積算することなどとなっている。
 そこで、諸経費等と管理費等との対応関係はどのようになっているか、また、事業主体である市町村が、諸経費等と管理費等との対応関係を理解し、補助金額の算定に当たって、諸経費率を7%以内とした上で基準額を決定しているかに着眼して検査した。

(検査の対象)

 宮城県ほか12都府県(注2) の140市町村において、平成12年度から14年度までの間に補助事業により整備された防火水槽766基、補助対象事業費35億1722万余円(これに係る基準額29億0599万余円、国庫補助金交付額15億4756万余円)を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、管理費等を構成している経費は、諸経費等を構成している経費におおむね相当するものとなっていた。しかし、これらの経費の対応関係が明確でなく、管理費等から諸経費率を算出できない状況となっていた。
 このため、すべての市町村において、予定価格に基づき契約した請負金額から、補助の対象とならない事業の経費を除いた補助対象事業費をそのまま告示工事費としていて、諸経費率の上限を考慮したものとなっていなかった。
 そこで、前記の766基の補助事業についで、補助対象事業費を基に管理費等を諸経費等とみなして諸経費率を計算すると、9.0%から34.1%となっており、すべてにおいて、諸経費率の上限である7%を上回っている状況となっていた。
 したがって、諸経費率の上限を考慮することなく補助金算定の基礎となる基準額を決定していることは、適切とは認められず、改善の要があると認められた。

(過大に交付されていた国庫補助金相当額)

 市町村が算定した補助対象事業費を基に諸経費率を7%とした告示工事費を算定し、これを基礎として基準額を算出し直したところ、前記の防火水槽766基のうち、13都府県121市町村が採用した528基に係る基準額は計約2億8840万円過大となっており、これに係る国庫補助金相当額約1億5490万円が過大に交付されていると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、消防庁が市町村に対し、告示等における諸経費等と積算基準における管理費等との対応関係を具体的に明示し、補助対象事業費から告示工事費を算定する具体的な方法を周知していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、消防庁では、15年10月に都道府県に対して諸経費等と管理費等との関連を明示し、告示に規定する諸経費率の上限を超えた算入は認められないことなどとした内容の通知を発し、市町村を指導するなどして適正な補助事業の執行を図る処置を講じた。

(注1) 所定の補助率 原則として3分の1であるが、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)、離島振興法(昭和28年法律第72号)等の適用を受ける場合は10分の5.5などとなっている。
(注2) 宮城県ほか12都府県 東京都、京都府、宮城、福島、群馬、滋賀、鳥取、広島、徳島、愛媛、高知、福岡、鹿児島各県