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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(56)雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等の名称 北海道労働局ほか22労働局(支給庁)
札幌公共職業安定所ほか153公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 421人
失業等給付金の支給額の合計 求職者給付 307,311,101円 (平成12年度〜15年度)
就職促進給付 30,124,658円 (平成13年度〜15年度)
教育訓練給付 898,800円 (平成13年度)
雇用継続給付 640,563円 (平成13年度〜14年度)
338,975,122円  
不適正支給額 求職者給付 97,297,338円 (平成12年度〜15年度)
就職促進給付 30,124,658円 (平成13年度〜15年度)
教育訓練給付 898,800円 (平成13年度)
雇用継続給付 640,563円 (平成13年度〜14年度)
128,961,359円  

1 保険給付の概要

(雇用保険)

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者とし、被保険者が失業した場合及び被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合のほか、被保険者又は被保険者であった者が自ら職業に関する教育訓練を受講した場合に、その生活及び雇用の安定を図るなどのため失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業、能力開発事業及び雇用福祉事業を行う保険である。

(失業等給付金の種類)

 失業等給付金には、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種の給付がある。
ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち、
〔1〕 基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めかつ失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。
〔2〕 特例一時金は、被保険者であって季節的に雇用される者等が失業した場合に支給される。
イ 就職促進給付には4種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上残して安定した職業に就いた場合に支給される。
ウ 教育訓練給付には教育訓練給付金があり、同給付金は、被保険者又は被保険者であった者が厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講し、当該教育訓練を修了した場合に、これらの者が自ら支払った費用の一部について支給される。
エ 雇用継続給付には5種の給付金があり、このうち高年齢再就職給付金は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を100日以上残して60歳に達した日以後に安定した職業に就くことにより被保険者になった場合において、再就職後の各月の賃金額が離職時の賃金月額(60歳到達時後の離職時の賃金月額が60歳到達時の賃金月額を下回っている場合には60歳到達時の賃金月額)の85%未満となったときに、1年又は2年を限度として支給される。

受給資格者 被保険者が、離職し労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6箇月以上あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者

(失業等給付金の支給)

 上記の手当等は、公共職業安定所が次のように支給を決定し、これに基づいて都道府県労働局(平成11年度以前は都道府県)が支給することとなっている。
ア 基本手当及び特例一時金については、受給資格者等から提出された失業認定申告書等に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認の上、失業の認定を行って支給を決定する。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書等に記載されている雇入年月日等について調査確認を行って支給を決定する。
ウ 教育訓練給付金については、被保険者又は被保険者であった者から提出された教育訓練給付金支給申請書等に記載されている教育訓練講座名、支払った費用の額等について確認を行って支給を決定する。
エ 高年齢再就職給付金については、被保険者から提出された高年齢雇用継続給付支給申請書等に記載されている賃金支払状況等について確認を行って支給を決定する。ただし、事実と相違した申告により基本手当等を受給した者に対しては、同給付金を支給しないこととなっている。

2 検査の結果

(検査の対泉)

 11年度から15年度において北海道労働局ほか26労働局及び神奈川県ほか4県(支給決定庁 札幌公共職業安定所ほか282公共職業安定所)から失業等給付金の支給を受けた者のうち15,400人について、公共職業安定所における失業等給付金の支給決定の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、12年度から15年度において北海道労働局ほか22労働局(支給決定庁札幌公共職業安定所ほか153公共職業安定所)が421人に対して支給した失業等給付金(支給額338,975,122円)について、128,961,359円が適正に支給されていなかった。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付

 北海道労働局ほか22労働局が414人に対して支給した基本手当及び特例一時金(支給額307,311,101円)について、97,297,338円(基本手当96,690,138円、特例一時金607,200円)が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職していながらその事実を失業認定申告書等に記載していないなどのため、同申告書等の内容が事実と相違するなどしていたのに、札幌公共職業安定所ほか152公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによると認められる。

イ 就職促進給付

 北海道労働局ほか20労働局が88人に対して支給した再就職手当について、支給額30,124,658円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、再就職手当支給申請書に事実と相違した雇入年月日を記載するなどしていたのに、帯広公共職業安定所ほか63公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによると認められる。

ウ 教育訓練給付

 北海道労働局が5人に対して支給した教育訓練給付金について、支給額898,800円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、事業主が支払った費用を自ら支払ったこととして教育訓練給付金支給申請書等を提出していたのに、岩見沢、岩内両公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによると認められる。

エ 雇用継続給付

 兵庫労働局が2人に対して支給した高年齢再就職給付金について、支給額640,563円全額が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなく、事実と相違した申告により基本手当を受給していながら高年齢雇用継続給付支給申請書を提出していたのに、加古川、西脇両公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給の決定を行っていたことによると認められる。

 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を都道府県労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院が調査した受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不適正失業等給付金
千円 千円
北海道 〔1〕 札幌ほか10 781 37 24,222 7,532
  〔2〕 帯広ほか3 57 4 1,807 1,807
  〔3〕 岩見沢ほか1 5 5 898 898
  小計     26,928 10,239
秋田 〔1〕 秋田ほか2 213 14 10,646 2,899
  〔2〕 秋田ほか1 41 3 616 616
  小計     11,263 3,516
福島 〔1〕 平ほか5 394 11 8,090 1,244
  〔2〕 平ほか1 28 2 359 359
  小計     8,449 1,604
茨城 〔1〕 水戸ほか5 410 17 13,910 4,028
  〔2〕 下館ほか2 103 5 1,689 1,689
  小計     15,599 5,717
千葉 〔1〕 銚子ほか4 260 6 6,026 1,279
  〔2〕 佐原ほか1 51 2 426 426
  小計     6,453 1,706
東京 〔1〕 上野ほか14 1,109 42 37,378 14,869
  〔2〕 上野ほか9 417 17 7,037 7,037
  小計     44,415 21,907
神奈川 〔1〕 横浜ほか6 271 9 4,349 3,320
  〔2〕松田ほか2 54 4 1,160 1,160
  小計     5,509 4,480
新潟 〔1〕 新津 6 1 1,172 129
  〔2〕 新津 3 1 557 557
  小計     1,730 686
富山 〔1〕 富山ほか2 162 5 4,084 1,378
  〔2〕 富山ほか1 75 2 971 971
  小計     5,056 2,350
山梨 〔1〕 甲府ほか3 270 9 6,735 1,635
  〔2〕 塩山 13 1 155 155
  小計     6,891 1,791
長野 〔1〕 岡谷ほか8 336 23 24,472 6,912
  〔2〕 岡谷ほか1 11 2 636 636
  小計     25,108 7,548
静岡 〔1〕 浜松ほか2 250 8 4,604 1,157
  〔2〕 磐田 28 1 293 293
  小計     4,898 1,451
愛知 〔1〕 名古屋南ほか6 439 11 5,018 1,260
  〔2〕 名古屋東ほか2 79 3 552 552
  小計     5,571 1,812
滋賀 〔1〕 大津ほか5 368 21 13,153 2,320
  〔2〕 大津ほか1 49 3 542 542
  小計     13,695 2,862
京都 〔1〕 京都西陣ほか7 413 26 23,233 13,427
  〔2〕 伏見ほか2 26 4 1,508 1,508
  小計     24,742 14,935
大阪 〔1〕 大阪東ほか8 497 32 23,769 5,491
  小計     23,769 5,491
兵庫 〔1〕 神戸ほか12 806 41 28,387 10,695
  〔2〕 神戸ほか9 308 13 5,272 5,272
  〔4〕 加古川ほか1 2 2 640 640
  小計     34,300 16,608
奈良 〔1〕 奈良ほか3 174 13 9,563 4,912
  〔2〕 大和郡山 15 2 398 398
  小計     9,962 5,311
岡山 〔1〕 岡山ほか7 501 19 12,683 3,494
  〔2〕 岡山ほか2 135 5 1,034 1,034
  小計     13,717 4,528
徳島 〔1〕 徳島ほか3 235 15 7,757 1,508
  小計     7,757 1,508
愛媛 〔1〕 松山ほか4 325 17 13,690 3,764
  〔2〕 松山ほか1 95 6 2,610 2,610
  小計     16,301 6,375
福岡 〔1〕 飯塚ほか10 712 23 15,602 2,810
  〔2〕 八幡ほか4 188 6 1,706 1,706
  小計     17,309 4,516
熊本 〔1〕 熊本ほか4 286 15 8,756 1,221
  〔2〕 熊本ほか1 67 2 786 786
  小計     9,543 2,007
〔1〕 153箇所 9,217 414 307,311 97,297
  〔2〕 64箇所 1,843 88 30,124 30,124
  〔3〕 2箇所 5 5 898 898
  〔4〕 2箇所 2 2 640 640
合計       338,975 128,961
(注1)  〔1〕は求職者給付に係る分、〔2〕は就職促進給付に係る分、〔3〕は教育訓練給付に係る分、〔4〕は雇用継続給付に係る分である。
(注2)  公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間及び各労働局間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ154箇所、421人である。