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  • 平成14年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 平成13年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項に対する処置状況

保育所における定員を超えた保育の実施について


(4)保育所における定員を超えた保育の実施について

1 本院が要求した改善の処置

(検査結果の概要)

 児童保護費等負担金(保育所運営費国庫負担金に係る分)は、保育の実施(保育に欠ける児童を保育所において保育を行うこと)を行う市町村に対して交付されており、その交付額は、1人当たりの月額で定められている保育単価に各月の入所児童数を乗ずるなどして算出される。
 上記の保育単価は、保育所の定員等の区分によって定められており、児童数が多い定員区分の方が額が低く定められている。そして、保育所の定員を変更しようとするときは、都道府県に届け出なければならないことになっている。
 保育の実施は定員内で行うことが原則であるが、近年、保育所入所待機児童の解消が大きな課題となっていることから、次の(ア)から(ウ)を主な内容とする、保育所への入所円滑化対策が執られている。
(ア) 定員を超えても保育士数等が所定の基準を満たす保育所においては、定員を超えて保育の実施を行うことができることとし、その児童数は、〔1〕年度当初は定員の15%まで、〔2〕年度途中は定員の25%までとし、〔3〕年度後半は定員の25%を超えても差し支えない。
(イ) 定員を超える児童に係る保育単価は、当該保育所の定員内の児童と同じに取り扱う。
(ウ) 定員を超える状況が恒常的にわたる場合などには、定員の見直し等に取り組む。
 そこで、保育所の定員及び入所児童数等について検査したところ、長期間、継続的に定員を超えて保育の実施を行っていたのに定員が変更されていなかったり、定員を変更していても増員時又は減員時から継続的に定員を超えて保育の実施を行っていたりした保育所が多数見受けられた。
 このような事態が生じているのは、主として次のことによると認められた。
(ア) 市町村及び保育所において、定員内で保育の実施を行うことが原則であるということについての理解が十分でないこと
(イ) 市町村及び保育所において、定員を超えて保育の実施を行う状況が「恒常的にわたる」かどうかを任意に判断していること
(ウ) 都道府県において、保育所の定員変更の届出を受ける際に、地域の保育需要について適切に把握していないこと

(検査結果により要求した改善の処置)

 保育所における保育の実施が適切に行われるよう、次のとおり、厚生労働大臣に対し平成14年11月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
(ア) 市町村及び保育所に対し、定員内で保育の実施を行うことが原則である旨の周知徹底を図ること
(イ) 市町村及び保育所に対し、定員を超えて保育の実施を行う状況が「恒常的にわたる」かどうかを判断する具体的な基準を明示すること
(ウ) 都道府県に対し、保育所の定員変更の届出を受ける際は地域の保育需要を最もよく把握している市町村の意見を求める旨を明示すること

2 当局が講じた改善の処置

 厚生労働省では、本院指摘の趣旨に沿い、15年1月に都道府県に対し通知を発するなどして、次のような処置を講じた。
(ア) 通知において定員内で保育の実施を行うことが原則である旨を明記するなどして、市町村及び保育所に対して周知徹底を図った。
(イ) 「恒常的にわたる」とは、連続する過去の3箇年度間常に定員を超えており、かつ、各年度の年間平均在所率が120%以上の状態をいうものであるとする具体的な基準を明示した。
(ウ) 都道府県は、保育所から定員見直しの届出がある場合には、あらかじめ、地域の保育需要の見通し等に関し、市町村の意見を求めることとした。