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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 国会|
  • (国立国会図書館)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

物品・役務の調達に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、競争に付するなど契約事務を適切に実施するよう改善させたもの


物品・役務の調達に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、競争に付するなど契約事務を適切に実施するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国立国会図書館 (項)国立国会図書館
部局等の名称 国立国会図書館
契約の概要 庁舎の維持管理等に係る役務の調達及び事務用品等の物品の調達
適切な契約事務を実施する要があると認められた契約件数及び契約金額 133件 109億0515万円(平成14、15両年度)

1 契約事務の概要

(国の物品・役務調達契約の事務)

 国の物品・役務調達契約の事務は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に従って執行される。このうち契約の締結については、原則として競争に付することとなっている。ただし、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、時価に比べて著しく有利な価格をもって契約をすることができる見込みがあるなどのため競争に付することが不利と認められる場合などにおいては、随意契約等によることとされている。
 また、「契約事務の適正な執行について」(昭和53年蔵計第875号大蔵省主計局長通達)などにより、国の締結する契約の相手方の選定については、機会の均等及び公正性の保持の原則に適合し、広く多数の参加者による競争を通じて国にとって最も有利な条件の申込者を選定できるため、一般競争契約によることが原則であることなどが通知されている。

(特定調達契約)

 政府調達に関する協定(平成7年条約第23号)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用される協定の一つで、国の機関による調達について、内外無差別原則の確立と手続の透明性の確保を目的とするものである。そして、同協定を受けて「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号。平成7年一部改正。以下「特例政令」という。)等において、現金及び有価証券を除く物品等又は特定のサービスに係る役務を調達するための契約のうち予定価格が一定金額以上のもの(以下「特定調達契約」という。)については、調達手続の透明性を確保するため、次のような手続を執ることとされている。
 すなわち、特定調達契約につき入札の方法により競争に付そうとするときは、所定の期日までに官報により公告・公示するとともに、落札者を決定したときは、落札者、落札金額等を官報により公示しなければならないこととされている。また、特定調達契約につき随意契約によろうとする場合は、所定の期日までに調達の内容、契約予定日、随意契約によることの理由、予定している契約相手方を官報により事前に公示するとともに、契約の相手方を決定したときは、契約相手方、契約金額等を官報により公示しなければならないこととされている。

2 検査の結果

(検査の対象及び着眼点)

 近年、契約手続の執行に関して一層の厳正さが求められている状況を踏まえ、国立国会図書館において平成14、15両年度に締結された物品・役務調達契約のうち、1件当たりの契約金額が100万円以上の1,366件、契約金額182億1621万余円(うち随意契約1,244件、契約金額154億4788万余円)を対象として、契約の締結に際して、契約方式の決定、官報による公告・公示などの契約事務が適切に行われ、公正性、競争性及び透明性が確保されているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、上記1,366件の契約のうち133件(契約金額109億0515万余円)において、次のとおり、契約方式の決定が適切でなかったり、官報による公告・公示が行われていなかったりしていて、公正性、競争性及び透明性が確保されていないと認められる事態が見受けられた。

(1)契約方式の決定について

ア 庁舎の維持管理に係る役務調達契約につき、役務を提供できる業者が他にあるにもかかわらず、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして随意契約によっていたもの

国立国会図書館本庁舎及び国会分館の清掃作業ほか16件 7億2268万余円

 これらの契約は、国立国会図書館の庁舎等の清掃作業、警備業務等の役務を調達するものである。国立国会図書館では、これらの役務調達契約につき、数年ごとに競争に付していたものの、それ以外の年度においては、次の理由により契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとして、直近の競争に付した際の落札者を相手方とする随意契約によっていた。
(ア)国立国会図書館は、不特定多数の利用者が訪れる大規模な公共施設であることから、契約相手方は、同種公共施設の設備等に関して十分な知識・技術等を有する作業員を常に配置できること、実績に裏付けられた高い信頼性を有する業者であることなどが必要である。
(イ)上記の要件をすべて満たし、業務を支障なく実施し得る業者は直近の競争に付した際の落札者以外にない。
 しかし、次のようなことから上記の理由は妥当性を欠いており、随意契約によったことは適切ではなかったと認められた。
(ア)これらの役務は、仕様書の内容や作業の実態からみて、大規模な施設・設備に固有の特殊な技術を要するものではなく、一般的な庁舎の維持管理に関するものであり、当該業者でなくても履行できる業務となっている。
(イ)業者の信頼性については、入札参加者の資格審査に当たり当該業務の履行に求められている要件を満たしているかどうかの審査を行うことで、履行する能力のない者の競争参加を防ぐことができる。そして、実際にも、競争に付した際には、複数の業者が過去の業務実績などの入札参加の条件について資格審査を受け入札に参加していた。

イ 事務用品に係る物品調達契約につき、一般に市販されている物品で他に納入できる業者があるにもかかわらず、経済性の検証が十分に行われないまま、競争に付することが不利と認められる場合に該当するとして随意契約によっていたもの

事務用回転椅子一式購入契約ほか12件 6411万余円

 これらの契約は、事務用回転椅子、平机等の物品を調達するものである。国立国会図書館では、これらの物品調達契約につき、当初、一般競争に付して調達を行ったが、その後、当該年度又は翌年度に同一の仕様の物品を追加して調達するに当たり、次の理由により競争に付することが不利と認められる場合に該当するとして、当初の一般競争に付した際の落札者を相手方とする随意契約によっていた。
(ア)既に納入されている物品と仕様の統一を図る必要がある。
(イ)追加して調達する数量は一般競争に付した際の数量と比較して少量であり、このように調達数量が減少する場合には単価が上昇するのが一般的であるにもかかわらず、一般競争に付した際の落札者は当初の調達における価格と同一の単価で見積書を提示してきており、その価格により調達することが経済的に最も優れている。
 しかし、次のようなことから上記の理由は妥当性を欠いており、随意契約によったことは適切ではなかったと認められた。
(ア)これらの物品は、職員が日常的に業務で使用する回転椅子、平机など一般に市販されている事務用品であることから、他の業者であっても既に納入されている物品と同一仕様の物品を納入することは可能である。そして、一般競争に付した際も、仕様書において規格基準等を示していて仕様が特定されているが、複数の業者が入札に参加していた。
(イ)一般競争に付した際の落札者が当初の調達における価格と同一の単価で見積書を提出したからといって、追加して調達する時点において最も有利な条件になっているとは限らない。

(2)特定調達契約に係る官報による公告・公示について

 国立国会図書館において14、15両年度に締結された前記1,366件の契約のうち、特定調達契約は146件(契約金額119億1716万余円)となっている。これらの契約については前記のとおり官報による公告・公示が必要とされているが、このうち電子計算機等装置一式賃貸借契約ほか107件(契約金額103億3255万余円)については、調達手続の進行管理が十分でなかったことから競争に付する場合の公告・公示又は随意契約による場合の事前公示を行う期間を確保していなかったり、競争に付した場合にのみ落札者等の公示を行うものと誤認していたりなどしたため、特例政令等で定められた官報による公告・公示が行われていなかった。なお、これらの特定調達契約108件の中には、前記(1)アの事態のうち清掃作業委託契約5件(契約金額2億1420万円)が含まれている。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、物品・役務調達契約の事務の執行に当たり、公正性、競争性及び透明性の確保についての検討が十分でなかったこと、特例政令等において定められた調達手続についての理解及びその進行管理が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、国立国会図書館では、16年9月に通知を発し、契約事務において公正性、競争性及び透明性の確保を図るため、庁舎の維持管理に係る役務調達契約については17年4月から、物品を追加して調達する契約については16年9月から一般競争に付することとするとともに、特定調達契約については、手続に関するマニュアルや契約案件の進行管理表を作成するなどして調達手続の遵守について徹底を図る処置を講じた。