平成15年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第4 法務省
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
矯正施設の収容棟等の増改築等工事により国有財産台帳に登録する建物及び工作物の価格登録が適正に行われるよう改善させたもの
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1 国有財産の概要
(国有財産の概要)
国有財産は、国の行政目的に直接使用される行政財産とそれ以外の普通財産に分類されている。このうち行政財産の管理は、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、各省各庁の長が行うこととなっている。
法務省では、刑務所、少年院、少年鑑別所等(以下「矯正施設」という。)を多数設置しているが、矯正施設では、受刑者等を収容するための収容棟や受刑者に所定の作業を行わせるための職業訓練棟等の建物及び電気設備、機械設備等の工作物等の行政財産を多数管理している。
同省では、これらの国有財産に関する事務の一部を、各省各庁の長である法務大臣から部局等の長に分掌させており、矯正施設に属する国有財産については、各矯正施設の長が、国有財産の分類及び種類ごとに、区分及び種目、所在、数量、価格等を記載した台帳(以下「国有財産台帳」という。)を備え、管理している。国有財産台帳は、国有財産の価格等を記録し、国有財産を適正に経理するための帳簿であり、また、これを基に毎年度作成される国有財産増減及び現在額報告書、及び同総計算書(以下「国有財産報告書等」という。)は、国有財産の現況を国会を通じて国民に対して明らかにするという性格を有するものとされている。
(国有財産台帳に新たに登録する価格)
各省各庁の長は、その所管に属する建物及び工作物の設置等に基づく数量及び価格の変動があった場合においては、国有財産法第32条第2項により、直ちに国有財産台帳に記載しなければならないこととされている。そして、国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第21条により、国有財産台帳に新たに登録する場合の価格(以下「台帳登録価格」という。)は、建物、工作物等については、建築費等とすることとされている。また、「国有財産台帳等取扱要領について」(平成13年財理第1859号。以下「取扱要領」という。)により、建築費等は、建築に直接要した費用とし、建物その他の障害物の取壊し費等の費用は含めないこととされている。これらを踏まえ、法務省所管国有財産事務取扱規程(昭和59年営訓第1100号。以下「取扱規程」という。)では、請負工事で取得した建物及び工作物については、請負金額から建築に直接要した費用ではない既存建物の解体費等を控除した価格を台帳登録価格とすることとしている。
2 検査の結果
(検査の着眼点及び検査の対象)
法務省では、収容棟等の老朽化及び受刑者等の増加による過剰収容に対処するため、近年、全国的に矯正施設における建物、工作物等の増改築等を進めており、これに要する事業費は、平成14、15両年度についてみると法務省における一般会計施設整備費計931億9629万余円のうち766億7946万余円と多額に上っている。
そこで、14、15両年度に国有財産台帳に新たに登録した釧路刑務所ほか31矯正施設(注1)の建物及び工作物1,356件(注2)、台帳登録価格115億3486万余円について、前記の法令等に基づき適正な台帳登録価格で計上されているかに着眼して検査した。
(検査の結果)
検査したところ、上記のうち釧路刑務所ほか8矯正施設(注3)の建物及び工作物522件、台帳登録価格44億5806万余円について、次のような事態が見受けられた。
(ア)登録すべき共通費が計上されていなかったことなどのため台帳登録価格が計上漏れとなっていたもの
札幌少年鑑別所ほか6矯正施設(注4)では、請負工事で新設した庁舎棟などの建物及び工作物を国有財産台帳に登録するに当たり、請負金額のうち解体費等以外の直接工事費及びこれに係る共通仮設費、現場管理費、一般管理費等の費用(以下「共通費」という。)を台帳登録価格とすべきところ、この共通費を除いていたり、国有財産の登録手続自体を怠っていたりなどしていた。このため表1のとおり、台帳登録価格が220件、6億5915万余円計上漏れとなっていた。
| 表1 台帳登録価格が計上漏れとなっていたもの | (単位:千円) |
| 施設名 | 区分 | 計上漏れとなっていた件数 | 当初計上価格 | 修正計上価格 | 計上漏れとなっていた価格 | 登録年度 |
| 釧路刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 15 |
| 工作物 | 1 | − | 7,075 | 7,075 | ||
| 小計 | 1 | − | 7,075 | 7,075 | ||
| 黒羽刑務所 | 建物 | 4 | 421,715 | 446,684 | 24,969 | 14 |
| 工作物 | 63 | 138,265 | 264,418 | 126,152 | ||
| 小計 | 67 | 559,981 | 711,102 | 151,121 | ||
| 府中刑務所 | 建物 | 1 | 12,911 | 12,911 | 0 | 14 |
| 工作物 | 12 | 115,693 | 263,044 | 147,351 | ||
| 小計 | 13 | 128,605 | 275,956 | 147,351 | ||
| 金沢刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 15 |
| 工作物 | 1 | − | 12,624 | 12,624 | ||
| 小計 | 1 | − | 12,624 | 12,624 | ||
| 熊本刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 14 |
| 工作物 | 4 | 14,112 | 21,538 | 7,426 | ||
| 小計 | 4 | 14,112 | 21,538 | 7,426 | ||
| 鹿児島刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 14 |
| 工作物 | 1 | − | 6,752 | 6,752 | ||
| 小計 | 1 | − | 6,752 | 6,752 | ||
| 札幌少年鑑別所 | 建物 | 5 | 1,396,496 | 1,586,070 | 189,574 | 15 |
| 工作物 | 128 | 1,011,649 | 1,148,874 | 137,224 | ||
| 小計 | 133 | 2,408,146 | 2,734,945 | 326,799 | ||
| 合計 | 建物 | 10 | 1,831,123 | 2,045,667 | 214,543 | |
| 工作物 | 210 | 1,279,721 | 1,724,328 | 444,606 | ||
| 計 | 220 | 3,110,845 | 3,769,995 | 659,150 |
(イ)登録すべきでない解体費等を計上したなどのため台帳登録価格が計上過大となっていたもの
府中刑務所ほか5矯正施設(注5)では、請負工事で新設した庁舎棟などの建物及び工作物を国有財産台帳に登録するに当たり、既存建物等に係る解体費等を控除した請負金額を台帳登録価格とすべきところ、これを除いていなかった。このため、表2のとおり、台帳登録価格が124件、3億3304万余円計上過大となっていた。
| 表2 台帳登録価格が計上過大となっていたもの | (単位:千円) |
| 施設名 | 区分 | 計上過大となっていた件数 | 当初計上価格 | 修正計上価格 | 計上過大となっていた価格 | 登録年度 |
| 釧路刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 14 |
| 工作物 | 1 | 12,495 | 12,021 | 473 | ||
| 小計 | 1 | 12,495 | 12,021 | 473 | ||
| 黒羽刑務所 | 建物 | 8 | 127,263 | 113,881 | 13,381 | 14 |
| 工作物 | 66 | 323,237 | 189,202 | 134,035 | ||
| 小計 | 74 | 450,501 | 303,084 | 147,416 | ||
| 府中刑務所 | 建物 | 1 | 372,635 | 372,635 | 0 | 14 |
| 工作物 | 43 | 734,949 | 553,085 | 181,864 | ||
| 小計 | 44 | 1,107,585 | 925,721 | 181,864 | ||
| 横須賀刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 15 |
| 工作物 | 1 | 1,225 | 1,057 | 168 | ||
| 小計 | 1 | 1,225 | 1,057 | 168 | ||
| 新潟刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 14 |
| 工作物 | 1 | 7,882 | 7,661 | 221 | ||
| 小計 | 1 | 7,882 | 7,661 | 221 | ||
| 熊本刑務所 | 建物 | − | − | − | − | 14 |
| 工作物 | 3 | 26,178 | 23,279 | 2,899 | ||
| 小計 | 3 | 26,178 | 23,279 | 2,899 | ||
| 合計 | 建物 | 9 | 499,899 | 486,517 | 13,381 | |
| 工作物 | 115 | 1,105,968 | 786,307 | 319,661 | ||
| 計 | 124 | 1,605,867 | 1,272,825 | 333,042 |
上記のように、台帳登録価格として登録すべき共通費に相当する額を計上しなかったり、台帳登録価格として登録すべきではない解体費等に相当する額を計上したりなどしていることは、国有財産台帳が正しく作成されず、ひいては国有財産報告書等が正しく作成されないことにもなり適正とは認められず、改善を図る要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、主として、次のようなことなどによると認められた。
(ア)矯正施設において、国有財産価格に登録する範囲を定めている取扱要領における建築費の内容及び取扱規程で定める請負金額における費用の具体的な範囲について理解等が十分でなかったこと
(イ)法務本省において、矯正施設に対し、国有財産価格に登録する範囲を定めている取扱要領における建築費の内容及び取扱規程で定める請負金額における費用の具体的な範囲について指導が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、法務省では、16年10月に通知を発し、矯正施設に対し適正な国有財産価格に改めるよう指示をするとともに、更に事務連絡を発し、取扱要領における建築費の内容及び取扱規程で定める請負金額の範囲について具体的に明示して、台帳登録価格の計上方法について周知徹底を図る処置を講じた。