ページトップ
  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 保険給付(17)−(19)

厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの


(17)厚生年金保険の老齢厚生年金及び国民年金の老齢基礎年金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 厚生保険特別会計(年金勘定)  (項)保険給付費
国民年金特別会計(基礎年金勘定)  (項)基礎年金給付費
部局等の名称 社会保険庁  
支給の相手方 (1) 厚生年金保険  589人
(2) 国民年金 7人
596人
老齢厚生年金等の支給額の合計 (1) 厚生年金保険  766,965,797円 (平成13年度〜16年度)
(2) 国民年金 1,889,914円 (平成14年度〜16年度)
768,855,711円  
不適正支給額 (1) 厚生年金保険 322,280,549円 (平成13年度〜16年度)
(2) 国民年金 1,889,914円 (平成14年度〜16年度)
324,170,463円  

1 保険給付の概要

(1)厚生年金保険及び国民年金の給付

 厚生年金保険(「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照) において行う給付には、老齢厚生年金などがある。また、国民年金は、日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の者等を被保険者として、老齢、死亡等に関し年金等の給付を行うものであり、この給付には、老齢基礎年金などがある。

(2)厚生年金保険の老齢厚生年金

(老齢厚生年金の支給の原則)

 老齢厚生年金では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳以上である場合に受給権者となる。

(特別支給の老齢厚生年金)

 特別支給の老齢厚生年金は、当分の間の特例として65歳未満であっても60歳(坑内員及び船員については56歳から60歳までの一定の年齢)以上で被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者などが受給権者となっている。

(特別支給の老齢厚生年金の給付額)

 特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕配偶者等について加算される額との合計額となっている。
 なお、基本年金額は定額部分及び報酬比例部分からなっており、定額部分及び上記〔2〕の加算額の支給開始年齢は平成13年度から25年度(女子は18年度から30年度)にかけて3年ごとに1歳ずつ60歳から65歳に引き上げられることとなっている。

(特別支給の老齢厚生年金の支給の停止)

(ア)特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に新たに使用されて被保険者となったときなどには、次のとおり、年金の支給を停止することとなっている。
〔1〕 総報酬月額相当額(注) (16年3月までは標準報酬月額。以下同じ。)と基本月額(基本年金額の100分の80に相当する額を12で除して得た額)との合計額が280,000円(16年3月までは220,000円)以下のときは基本年金額の100分の20に相当する額の支給停止
〔2〕 上記の合計額が280,000円(16年3月までは220,000円)を超えるときは、総報酬月額相当額と基本月額とを用いて、一定の方式により算定した額に応じ、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給停止

総報酬月額相当額 標準報酬月額と、受給権者が被保険者である日の属する月以前1年間の標準賞与額(総額)の12分の1の額との合算額

(イ)この場合の支給停止の手続は次のとおりである。
〔1〕 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、新たに使用した者などが受給権者であるときは、その者の生年月日、基礎年金番号、資格取得年月日、報酬月額などを記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳を添えて地方社会保険事務局の社会保険事務所等に提出する。
〔2〕 社会保険事務所等は、これを調査確認の上、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定の上、支給額を決定する。
 なお、14年4月から、被保険者資格の年齢上限が70歳未満に引き上げられるとともに、65歳以上70歳未満の老齢厚生年金にも支給停止の制度が導入されている。

(3)国民年金の老齢基礎年金

 老齢基礎年金では、保険料納付済期間が25年以上ある者などが65歳に達したとき、又は65歳に達する前に繰上げ支給の請求をしたときは、そのときから受給権者となる。そして、繰上げ支給の請求をした者(昭和16年4月1日以前に生まれた者に限る。)が、その後、厚生年金保険の被保険者となったときは、年金の額の全部が支給停止されることになっていて、その手続は特別支給の老齢厚生年金の場合とほぼ同様である。

2 検査の結果

(検査の対象)

 青森社会保険事務局ほか23社会保険事務局の169社会保険事務所等管内において、平成13年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受け年金の額の全部を支給されている受給権者等465,563人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認され調査の要があると認められた者が1,835人見受けられた。そこで、上記の169社会保険事務所等において、これらの受給権者等を使用している1,004事業所について、厚生年金保険の被保険者資格取得届等の提出の必要性の有無に着眼して13年度から16年度までの間における特別支給の老齢厚生年金、老齢基礎年金等の支給の適否を検査した。

(不適正支給の事態)

 検査したところ、上記24社会保険事務局の136社会保険事務所等管内における391事業所の596人については当該事業所において常用的に使用されていて、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため、年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、特別支給の老齢厚生年金等の受給権者589人に対する支給(支給額766,965,797円)について322,280,549円、老齢基礎年金の受給権者7人に対する支給(支給額1,889,914円)について1,889,914円、計324,170,463円が適正に支給されていなかった。
 このような事態が生じていたのは、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、上記の社会保険事務所等において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったことによると認められる。
 なお、これらの不適正支給額については、本院の指摘により、すべて返還の処置が執られた。
 これらの不適正支給額を地方社会保険事務局ごとに示すと次のとおりである。

地方社会保険事務局名 社会保険事務所等 本院が調査した受給権者等数 不適正受給権者数 左の受給権者に支給した年金の額 左のうち不適正支給額
    千円 千円
青森 青森ほか3 44 24 30,847 9,952
宮城 仙台南ほか3 34 10 7,551 2,252
福島 東北福島ほか3 66 17 16,162 6,457
栃木 宇都宮東ほか3 128 57 69,866 28,468
埼玉 浦和ほか5 75 49 71,788 32,076
千葉 千葉ほか5 105 30 35,467 15,866
東京 神田ほか23 177 73 99,063 53,504
神奈川 鶴見ほか7 74 27 38,750 19,180
新潟 新潟東ほか4 78 25 45,427 15,244
石川 金沢北ほか1 15 4 4,693 2,865
静岡 静岡ほか6 109 31 47,902 21,109
愛知 大曽根ほか10 150 46 51,632 18,730
京都 上京ほか3 21 7 6,627 3,446
兵庫 三宮ほか7 133 39 63,064 26,201
和歌山 和歌山東ほか2 49 10 4,983 1,476
鳥取 鳥取ほか1 15 3 6,293 2,272
岡山 岡山西ほか3 85 19 30,708 12,827
山口 山口ほか4 47 13 14,139 3,871
徳島 徳島南ほか1 41 6 8,694 2,281
福岡 博多ほか7 97 42 56,219 21,259
佐賀 佐賀ほか2 49 22 15,381 6,196
長崎 佐世保ほか2 35 12 12,276 5,741
熊本 熊本東ほか2 32 12 13,927 6,151
鹿児島 鹿児島南ほか5 40 18 17,386 6,734
136箇所 1,699 596 768,855 324,170