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  • 平成15年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの


(82)−(90)国民健康保険の療養給付費負担金の交付が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)国民健康保険助成費
部局等の名称 厚生労働本省(交付決定庁)
福島県ほか7都府県(支出庁)
交付の根拠 国民健康保険法(昭和33年法律第192号)
交付先 市7、特別区1、町1、計9市区町(保険者)
療養給付費負担金の概要 市町村等の国民健康保険事業運営の安定化を図るために交付するもの
上記に対する国庫負担金交付額の合計 48,453,250,254円 (平成14年度)
不当と認める国庫負担金交付額 153,753,593円 (平成14年度)

1 負担金の概要

(国民健康保険の療養給付費負担金)

 国民健康保険は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)等が保険者となって、被用者保険の被保険者及びその被扶養者等を除き、当該市町村の区域内に住所を有する者等を被保険者として、その疾病、負傷、出産又は死亡に関し、療養の給付、出産育児一時金の支給、葬祭費の支給等の給付を行う保険である。
 国民健康保険については各種の国庫助成が行われており、その一つとして、市町村が行う国民健康保険事業運営の安定化を図るため、療養給付費負担金(以下「国庫負担金」という。)が交付されている。

(国庫負担金の交付対象)

 市町村の国民健康保険の被保険者は、一般被保険者と退職被保険者及びその被扶養者(以下「退職被保険者等」という。)とに区分されている。
 このうち、退職被保険者は、被用者保険の被保険者であった者で、退職して国民健康保険の被保険者となり、かつ、厚生年金等の受給権を取得した場合に老人保健法(昭和57年法律第80号)による医療を受けるまでの間において適用される資格を有する者である。
 そして、一般被保険者に係る医療費については、老人保健法による医療を受けることができる者に係る医療費(被用者保険の保険者等が拠出する老人保健医療費拠出金等で負担)を除き、国庫負担金の交付の対象とされているが、退職被保険者等に係る医療費については、国庫負担金の交付の対象とはせずに、被用者保険の保険者が拠出する療養給付費交付金等で負担されている。

(退職被保険者等の資格取得の時期)

 国民健康保険の被保険者の資格を取得している者が、退職被保険者となるのは、当該被保険者の年金受給権を取得した日(ただし、年金受給権の取得年月日が国民健康保険の資格取得年月日以前の場合は国民健康保険の資格取得年月日。以下「退職者該当年月日」という。)とされている。そして、退職被保険者等となったときは、年金証書等が到達した日の翌日から起算して14日以内(年金受給権を有している者等が退職被保険者等となったときは、退職者該当年月日から14日以内)に、市町村に届出をすることとなっている。

(国庫負担金の算定方法)

 毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

毎年度の国庫負担金の交付額は、「国民健康保険の国庫負担金及び被用者保険等保険者拠出金等の算定等に関する政令」(昭和34年政令第41号)等により、次により算定することとなっている。

保険基盤安定繰入金 市町村が一般被保険者の属する世帯のうち、低所得者層の負担の軽減を図るため減額した保険料又は保険税の総額について当該市町村の一般会計から国民健康保険に関する特別会計に繰り入れた額

 このうち一般被保険者に係る医療給付費は、療養の給付に要する費用の額から当該給付に係る一部負担金に相当する額を控除した額及び入院時食事療養費、高額療養費等の支給に要する費用の額の合算額とされている。
 ただし、届出が遅れるなどしたために退職被保険者等の資格が遡って確認された場合は、一般被保険者の医療給付費から、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費を控除することとなっている。

(交付手続)

 国庫負担金の交付手続については、〔1〕交付を受けようとする市町村は都道府県に交付申請書を提出し、〔2〕これを受理した都道府県は、その内容を添付書類により、また必要に応じて現地調査を行うことにより審査の上、厚生労働省に提出し、〔3〕厚生労働省はこれに基づき交付決定を行い国庫負担金を交付することとなっている。
 そして、〔4〕当該年度の終了後に、市町村は都道府県に実績報告書を提出し、〔5〕これを受理した都道府県は、その内容を審査の上、厚生労働省に提出し、〔6〕厚生労働省はこれに基づき交付額の確定を行うこととなっている。

2 検査の結果

 北海道ほか22都府県の271市区町村において、国庫負担金の交付について検査した結果、福島県ほか7都府県の9市区町では、国庫負担金の交付申請等に当たり、一般被保険者に係る医療給付費の算定において、遡及して退職被保険者等の資格を取得した者について、退職者該当年月日以降に一般被保険者に係るものとして支払った医療給付費の一部を控除しておらず、国庫負担対象費用額が過大に算定されていた。
 したがって、適正な国庫負担対象費用額に基づいて国庫負担金の交付額を算定すると、計48,299,496,661円となり、国庫負担金交付額計48,453,250,254円のうち計153,753,593円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、前記の9市区町において制度の理解が十分でなかったり事務処理が適切でなかったりしたため、適正な交付申請及び実績報告を行っていなかったこと、また、これに対する前記の8都府県の審査が十分でなかったことによると認められる。
 これを都府県別・交付先(保険者)別に示すと次のとおりである。

  都府県名 交付先
(保険者)
年度 国庫負担対象費用額 左に対する国庫負担金 不当と認める国庫負担対象費用額 不当と認める国庫負担金
        千円 千円 千円 千円
(82) 福島県 原町市 14 1,470,889 588,355 10,226 4,090
(83) 茨城県 取手市 14 2,055,174 822,069 16,517 6,606
(84) 埼玉県 行田市 14 2,454,347 981,739 7,802 3,121
(85) 東京都 新宿区 14 10,815,845 4,326,338 20,890 8,356
(86) 国分寺市 14 2,779,537 1,111,814 8,170 3,268
(87) 神奈川県 横浜市 14 84,954,390 33,981,756 303,973 121,589
(88) 京都府 相楽郡精華町 14 502,393 200,957 5,467 2,187
(89) 兵庫県 尼崎市 14 14,890,661 5,956,264 8,483 3,393
(90) 長崎県 福江市 14 1,209,886 483,954 2,851 1,140
  (82)−(90)の計   121,133,125 48,453,250 384,383 153,753