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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

貸付財産に係る国有資産等所在市町村交付金の交付について、その交付事務を適切に行うよう改善させたもの


(1)貸付財産に係る国有資産等所在市町村交付金の交付について、その交付事務を適切に行うよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)財務局 (項)財務局
部局等の名称 北海道財務局ほか8財務(支)局
交付の根拠 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和31年法律第82号)
貸付財産に係る国有資産等所在市町村交付金の概要 国が所有する固定資産で国以外の者が使用するものについて、固定資産税に代わるものとして、当該固定資産が所在する市町村等に交付するもの
廃止決定された合同宿舎で居住者の退去が完了したものに交付金を交付していたもの及びこれに係る交付金額 44箇所244棟  9754万円 (平成15、16両年度)
合同宿舎で無料宿舎とされているものに交付金を交付していたもの及びこれに係る交付金額 12箇所 3967万円 (平成15、16両年度)
物納財産の引受け等により管理している住宅用地等に係る軽減措置の適用が適切に行われず過大又は過小となっていた交付金額 過大となっていた交付金額  1億0232万円 (平成16年度  643件)
過小となっていた交付金額  1371万円 (平成16年度  53件)

1 制度の概要

(国有資産等所在市町村交付金の概要)

 財務省では、国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律(昭和31年法律第82号。以下「交付金法」という。)に基づき、国が所有する固定資産で国以外の者が使用している土地、建物等(以下「貸付財産」という。)について、原則として国有資産等所在市町村交付金(以下「交付金」という。)を貸付財産が所在する市町村等に対し、毎年度交付している。交付金は、地方税法(昭和25年法律第226号)において固定資産税を課することができないとされている国の所有する固定資産のうち、使用の実態及び所在市町村等との受益関係が固定資産税の課税対象となっている固定資産と同様の土地、建物等について、負担の衡平及び地方財源の充実の見地から、固定資産税に代わるものとして交付している。財務省が所管する貸付財産には、国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号。以下「宿舎法」という。)に基づき国が国家公務員等に貸与する宿舎(以下「国家公務員宿舎」という。)、物納財産の引受け等により管理している財産がある。
 そして、各財務(支)局等では、交付金の対象となる貸付財産が所在する市町村等に対し、交付年度の初日の属する年の前年の3月31日(以下「基準日」という。)現在における当該財産の国有財産台帳価格(所定の場合には修正を行う。以下、修正された場合も含めて「台帳価格」という。)及び異動状況等を通知することとなっている。通知を受けた市町村等では、原則として各財産の台帳価格の合計額を交付金算定標準額とし、この合計額に1.4%を乗じて得た額を交付金の額とする交付金交付請求書を各財務(支)局等に送付することとなっており、各財務(支)局等ではこれを確認の上、交付金を交付している。

(廃止決定された合同宿舎)

 国家公務員宿舎のうち、2以上の府省等の職員に貸与する目的で設置され、各財務(支)局等が管理している宿舎(以下「合同宿舎」という。)を建替整備等のために廃止するに当たっては、当該宿舎について廃止することを決定し、新規の入居を停止するとともに、おおむね2〜3年後の期日を退去期限日として、当該宿舎の居住者に対してその期日までに退去するよう要請するなどしている。

(無料宿舎)

 国家公務員宿舎のうち宿舎法第12条の無料宿舎は、本来の職務に伴って、通常の勤務時間外において、国民の生命、財産を保護するための非常勤務などに従事するため、その勤務する官署等の構内又はこれらに近接する場所に居住する必要がある者などに無料で貸与する宿舎である。交付金法第2条第3項では、無料宿舎の用に供する固定資産については、貸付財産であっても交付金を交付しないと規定している。
 そして、各財務(支)局等が管理している合同宿舎の中には、1棟内に無料宿舎と有料宿舎が混在しているものがある。また、平成11年12月に、都心における災害時等の危機管理対応のための職員が無料宿舎の貸与を受ける者に追加されている(以下、この職員用の宿舎を「危機管理職員用宿舎」という。)。

(物納財産の引受けにより管理している財産)

 相続税法(昭和25年法律第73号)に基づき国に納付された土地等の財産は、各財務(支)局、財務事務所等が引き受けて管理を行っている。物納された財産の中には、借地権等の権利の目的となっているものがあり、各財務(支)局、財務事務所等では、このような権利付物納財産を借地権者等に貸し付けている。

(住宅用地等に係る交付金算定標準額の特例)

 交付金の対象となる財産のうち、住宅及び住宅の用に供する土地(以下「住宅用地等」という。)については、台帳価格に所定の率を乗じて交付金算定標準額とする特例(以下「軽減措置」という。)が定められている。その主なものは次のとおりとなっている。
ア 専ら人の居住の用に供する家屋及びその家屋の用に供する土地については、交付金算定標準額を台帳価格の5分の2とする。
イ アに定める土地のうち、家屋の床面積の10倍の面積までの土地については、アの定めにかかわらず交付金算定標準額を台帳価格の3分の1とする。
ウ イに定める土地のうち、住居数に200m を乗じた面積までの土地については、イの定めにかかわらず交付金算定標準額を台帳価格の6分の1とする。

(客体台帳の作成及び点検)

 各財務(支)局、財務事務所等では、新規に交付金の対象となる財産を登録する際には、その用途、面積、住居数等、交付金算定に必要なデータを新規登録票に記入し、また、登録済みの財産に変動があった際には、その状況について変動連絡票を起票する。そして、それらを交付金に係る電算システムの運用に関し財務本省から事務委任を受けた関東財務局に送付する。関東財務局では、電算システムにこれらのデータを入力し、対象となる財産1件ごとに交付金額を算出し、これらのデータ及び交付金額が記載された市町村交付金客体資産台帳(以下「客体台帳」という。)を作成している。各財務(支)局、財務事務所等では、作成された客体台帳の点検を行うことになっている。

2 検査の結果

(検査の着眼点)

 財務省では、15年度及び16年度にそれぞれ89億9356万余円、91億8538万余円(各財務(支)局交付分)と多額の交付金を交付しており、今後とも引き続き多額の交付金を交付することとなると見込まれている。
 そして、合同宿舎についてみると、昭和40年代に建設されたものが大きな割合を占めており、今後10年間で総戸数の4割以上が建替えの対象となり得ると見込まれていて、合同宿舎の廃止が増加すると予想されている。また、新たに危機管理職員用宿舎が設置されており、合同宿舎に有料宿舎と無料宿舎が混在している場合も見受けられる。
 さらに、各財務(支)局、財務事務所等では、物納財産の引受け等によって管理している住宅用地等を借地権者等に多数貸し付けているなどのため、交付金に関して毎年大量の事務を処理している状況になっている。
 そこで、交付金の交付に当たり、合同宿舎のうち廃止決定されたもの及び無料宿舎を有しているものの取扱いは適切か、また、住宅用地等に係る軽減措置の適用は適切に行われているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象)

 廃止決定された合同宿舎については、北海道財務局ほか7財務(支)局(注1) 管内における合同宿舎で、宿舎の全部又は一部が廃止決定され、平成15、16両年度交付金の各基準日現在で1棟内のすべての居住者が退去している宿舎54箇所290棟に係る交付金の取扱いについて検査した。そして、合同宿舎で無料宿舎とされているものについては、北海道財務局ほか7財務(支)局(注2) 管内における無料宿舎を有している合同宿舎15箇所に係る15、16両年度交付金の取扱いについて検査した。
 また、住宅用地等に係る軽減措置については、北海道財務局ほか7財務(支)局(注3) における15、16両年度交付金に係る軽減措置の適用状況について検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、以下のような事態がみられた。

(1)合同宿舎に係る交付金の取扱いについて

ア 廃止決定された合同宿舎

 関東財務局ほか3財務局(注4) における合同宿舎12箇所46棟については、すべての居住者が退去した後の最初の基準日現在で交付金の対象から除外されていた。これに対し、北海道財務局ほか5財務(支)局(注5) における合同宿舎44箇所244棟については、基準日現在ですべての居住者が退去しているのに、宿舎の建物を取り壊すまでの間、居住者の退去期限日が到来するまでの間などは交付金の対象としていた。その結果、すべての居住者が退去しているにもかかわらず、その後の基準日においても、引き続き当該宿舎を交付金の対象となる財産として所在市町村等に通知し、これに係る交付金を交付していた。
 しかし、廃止決定され、基準日現在ですべての居住者が退去しているような宿舎については、使用の実態がなく、その後も使用されないことから、貸付財産には該当しないと認められる。したがって、上記の合同宿舎44箇所244棟について、交付金15年度分4320万余円、16年度分5434万余円、計9754万余円が交付されている事態は適切ではなく、改善の要があると認められた。

イ 無料宿舎を有している合同宿舎

 関東財務局では、14年2月に新設され全戸が無料宿舎の危機管理職員用宿舎である合同宿舎1箇所について、15、16両年度において土地又は建物等に係る台帳価格を所在市町村等に通知し、これに係る交付金を交付していた。
 北海道財務局ほか6財務(支)局(注6) の無料宿舎と有料宿舎が混在している合同宿舎11箇所については、台帳価格の全額を所在市町村等に通知し、これに係る交付金を交付していた。
 しかし、前記のとおり、無料宿舎については、貸付財産であっても交付金を交付しないとされているのであるから、無料宿舎に係る交付金15年度分2919万余円、16年度分1048万余円、計3967万余円が交付されている事態は適切ではなく、改善の要があると認められた。

(2)物納財産の引受け等により管理している住宅用地等に係る軽減措置の適用について

 北海道財務局ほか7財務(支)局(注3) 及び管内の財務事務所等では、物納財産の引受け等によって管理している財産について、新規登録票を貸付関係書類に基づいたデータにより記入していなかったり、登録済みの財産に変動があったにもかかわらず変動連絡票を起票していなかったりしており、その後の点検も十分でなかった。そのため、財産の用途が住宅用地等であるにもかかわらず住宅用地等とされていなかったり、集合住宅の住居数を誤ったりなどしていて住宅用地等に係る軽減措置が適切に適用されていないものが多数見受けられた。そして、16年度交付金について対象となる財産1件当たりの交付金額が10万円以上のものに限って抽出してみても、住宅用地等に係る軽減措置の適用が適切でなく、交付金が過大となっているものが計643件、1億0232万余円、過小となっているものが計53件、1371万余円認められた。
 このように、客体台帳の作成及び点検が適切に行われておらず、住宅用地等に係る交付金額が過大又は過小となっているものが多数生じている事態は適切ではなく、改善の要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

(1)合同宿舎について

ア 廃止決定された合同宿舎については、財務本省において、廃止決定され基準日現在で居住者の退去が完了している合同宿舎に係る交付金の取扱いが各財務(支)局で区々となっていることを把握しておらず、交付金の対象から除外する具体的な時期等を示していなかったこと
イ 無料宿舎を有している合同宿舎については、前記の危機管理職員用宿舎の全戸が無料宿舎であり交付金の対象とはならないことを十分に認識していなかったこと、また、交付金法では、1棟内に無料宿舎と有料宿舎が混在している場合、台帳価格から無料宿舎部分に相当する額を控除する方法について具体的な定めがないことから、各財務(支)局において、台帳価格の全額を通知していたこと

(2)物納財産の引受け等により管理している住宅用地等に係る軽減措置について

 各財務(支)局、財務事務所等において、住宅用地等に係る軽減措置に対する認識が十分でなかったこと、また、対象となる財産の現況に変更があった際の交付金事務と貸付事務との連携が十分でないなど、財産の現況を交付金の算定に反映させるために必要な新規登録票の記入、変動連絡票の起票及び客体台帳の点検を確実に実施する体制が整っていなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、財務省では、17年9月に各財務(支)局等に対して事務連絡を発し、次のような処置を講じた。

(1)合同宿舎について

ア 廃止決定され1棟内のすべての居住者が退去している場合には、その後の最初の基準日で交付金の対象から除外することとするなどの取扱いを明確にし、これを各財務(支)局等へ周知するなどした。
イ 無料宿舎は交付金の対象とはならないこと及び無料宿舎に係る台帳価格をあん分計算して無料宿舎部分に相当する額を控除する方法を各財務(支)局等へ周知するなどした。

(2)物納財産の引受け等により管理している住宅用地等に係る軽減措置について

 各財務(支)局、財務事務所等に、住宅用地等に係る軽減措置に対する認識と理解を高めさせるとともに、新たに市町村交付金関係確認表の様式を定めるなどして、これにより各財務(支)局、財務事務所等で、新規に登録する財産に係る入力データの確認、現況に変更のあった財産に係る貸付事務と交付金事務の連携及び客体台帳の点検が確実に行えるような体制を整備するなどした。

 

(注1) 北海道財務局ほか7財務(支)局 北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、九州各財務局、福岡財務支局
(注2) 北海道財務局ほか7財務(支)局 北海道、東北、関東、東海、近畿、四国、九州各財務局、福岡財務支局
(注3) 北海道財務局ほか7財務(支)局 北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、九州各財務局、福岡財務支局
(注4) 関東財務局ほか3財務局 関東、東海、近畿、九州各財務局
(注5) 北海道財務局ほか5財務(支)局 北海道、東北、関東、近畿、中国各財務局、福岡財務支局
(注6) 北海道財務局ほか6財務(支)局 北海道、東北、東海、近畿、四国、九州各財務局、福岡財務支局