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科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの


(18)—(21)科学研究費補助金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)科学技術振興費
部局等の名称 文部科学本省
補助の根拠 予算補助
補助金の交付先 3大学長、3研究代表者
補助事業の概要 我が国の学術を振興するため、あらゆる分野における優れた独創的・先駆的な学術研究を行うもの
上記に対する国庫補助金交付額の合計 593,000,000円 (平成13年度〜16年度)
不当と認める国庫補助金交付額 57,892,724円 (平成13年度〜16年度)

1 補助金の概要

(科学研究費補助金の概要)

 文部科学省は、我が国の学術を振興するため、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的とする研究助成費として科学研究費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。
 この補助金には、優れた研究分野の研究を推進する上で、特に重要な研究課題を選定し、創造性豊かな学術研究の一層の推進を図ることを目的とする学術創成研究費や特定領域研究などの研究種目等がある。

(研究組織)

 文部科学省が毎年度定める補助金の公募要領によると、補助金による研究は、研究計画の遂行に関してすべての責任を持つ研究代表者により実施されるが、研究代表者は、必要があれば、研究代表者と共同して研究計画の遂行に中心的役割を果たす研究分担者とともに研究組織を構成することができることとされている。

(補助金の交付先)

 科学研究費補助金取扱規程(昭和40年文部省告示第110号。以下「取扱規程」という。)等によると、補助金の交付先は、研究組織の形態により、〔1〕研究機関に所属する研究者が一人で行う研究にあっては研究機関の代表者、〔2〕研究機関に所属する複数の研究者が共同して行う研究にあっては研究代表者又は研究代表者の所属する研究機関の代表者(平成16年度からは、〔1〕〔2〕いずれの場合も研究代表者)とされている。
 そして、「科学研究費補助金(科学研究費及び学術創成研究費)の取扱いについて」(平成15年文科振第92号文部科学省研究振興局長通知。以下「局長通知」という。)等によると、交付された補助金の一部を研究分担者に配分することは原則としてできないこととされている。

(補助金の管理等)

 局長通知等によると、交付を受けた補助金の管理は研究代表者の所属する研究機関が行うこととされている。
 そして、補助金の管理を行う研究機関では次のことなどを行うこととされている。
〔1〕 研究代表者と連絡を密にし、補助金の適正な執行の確保に努めること
〔2〕 設備備品、消耗品等を購入する場合には、見積書、納品書、請求書、領収書を徴取することとするが、契約金額が150万円を超えないもので、見積書、納品書、請求書を徴取することが困難な場合には、これらの書類を省略することができること
〔3〕 設備備品等の納品、検査等の手続についても適切に行うこと

(補助事業の実施期間等)

 局長通知等によると、研究の実施期間は研究実態に応じて1年から6年とされているが、補助金の交付は単年度ごととされていることから、補助事業の実施期間は補助金の交付対象年度の4月1日から翌年の3月31日までとなり、この期間内に研究代表者は交付申請書に記載された研究計画を実施するとともに、購入した設備備品、消耗品等を研究計画を実施するために使用することとされている。

(補助金の使用制限)

 取扱規程によると、補助金の交付を受けた者は、補助金を補助の対象となった科学研究等の実施に必要な経費にのみ使用しなければならないこととされている。
 また、局長通知等によると、補助金の申請は一定の研究組織及び研究用施設・設備等の基盤的研究条件が最低限確保されている研究機関の研究者が行うことができることとされていることから、建物等施設に関する経費等を支出することはできないこととされている。

2 検査の結果

 国立大学法人北海道大学(16年3月31日以前は北海道大学)ほか34大学の131研究課題を対象として検査したところ、3大学の4研究課題で研究者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより架空の取引に係る購入代金を支払わせ、その全額を業者に預けて別途に経理するなどしていた。このため、補助金が過大に交付されていて、補助金57,892,724円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、研究者において、補助金が公金であることについての意識が著しく欠如していて、事実に基づく適正な経理を行うという基本認識が欠けていたり、補助制度を十分に理解していなかったりしていたこと、大学において、物品等の納品検査等が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを、交付先(大学)別に示すと次のとおりである。

  交付先
(大学名)
  研究者
(大学名)
  研究種目等   年度 補助金交付額 不当と認め
る補助金額
                千円 千円
(18) 大学長又は研究代表者(国立大学法人東京工業大学)   研究代表者(国立大学法人東京工業大学)   学術創成研究費   14〜16 240,000 8,635

 この補助金は、国立大学法人東京工業大学(平成16年3月31日以前は東京工業大学)大学院教授を研究代表者とする研究課題を対象として、14年度から16年度までの間に、計240,000,000円が交付されたもので、補助金の管理は国立大学法人東京工業大学が行っている。同大学では、14年度から16年度までの間に、研究代表者から研究用消耗品を8,821,214円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際に研究用消耗品を購入した額は185,334円にすぎず、差額の8,635,880円については、研究代表者が、業者に架空の取引を指示するなどして虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、研究代表者は8,635,880円全額を、納品書、請求書等に記載された内容とは異なる機器の購入費等に充てていたり、業者に預けて別途に経理したりしていた。
 したがって、本件補助金は計8,635,880円が過大に交付されていた。

(19) 大学長(国立大学法人千葉大学)   研究分担者(慶應義塾大学)   特定領域研究   13 27,000 4,120

 この補助金は、国立大学法人千葉大学(平成16年3月31日以前は千葉大学)大学院教授を研究代表者及び慶應義塾大学医学部教授を研究分担者とする研究課題を対象として、13年度に、27,000,000円が交付されたもので、補助金の管理は国立大学法人千葉大学が行っている。同大学では、研究分担者から実験用マウス等を4,514,304円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際にマウス等を購入した額は393,603円にすぎず、差額の4,120,701円については、研究分担者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものである。そして、研究分担者は、4,120,701円全額を業者に預けて別途に経理し、研究代表者が作成することとされている研究計画調書に記載されていないマウスの系統維持業務を当該業者に委託し、その委託費等の支払に充てていた。
 したがって、本件補助金は4,120,701円が過大に交付されていた。

(20) 大学長又は研究代表者(慶應義塾大学)   研究代表者(慶應義塾大学)   学術創成研究費   13〜16 304,000 43,473
(21) 研究代表者(慶應義塾大学)   研究代表者(慶應義塾大学)   特定領域研究   16 22,000 1,662
  小計             326,000 45,136

 これらの補助金は、慶應義塾大学医学部教授を研究代表者とする研究課題を対象として、平成13年度から16年度までの間に、計326,000,000円が交付されたもので、補助金の管理は慶應義塾大学が行っている。

(1)学術創成研究費について

 補助金を管理している慶應義塾大学では、13年度から16年度までの間に、研究代表者から実験用マウス等を44,996,219円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際にマウス等を購入した額は1,522,909円にすぎず、差額の43,473,310円については、研究代表者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものであり、研究代表者は43,473,310円全額を業者に預けて別途に経理していた。

(2)特定領域研究について

 補助金を管理している慶應義塾大学は、16年度に、研究代表者から実験用マウス等を1,681,418円で購入したとする納品書、請求書等の提出を受け、その購入代金を業者に支払っていた。
 しかし、実際にマウス等を購入した額は18,585円にすぎず、差額の1,662,833円については、研究代表者が業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これにより同大学に架空の取引に係る購入代金を支払わせていたものであり、研究代表者は1,662,833円全額を業者に預けて別途に経理していた。
 そして、上記(1)及び(2)の別途に経理した補助金45,136,143円については、研究代表者は補助対象とならない実験動物用飼育施設を当該業者に整備させ、その整備費等の支払に充てていた。
 したがって、(1)については補助金43,473,310円、(2)については補助金1,662,833円、計45,136,143円が過大に交付されていた。

(18)—(21)の計             593,000 57,892