平成16年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第8 厚生労働省
本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項
(1)医療施設等施設整備費補助金等に係る消費税の取扱いを適切に行うよう改善させたもの
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1 事業の概要
(補助金の概要)
厚生労働省では、救急医療、がん等の特殊な医療の確保、医療従事者の養成力の充実及び患者の療養環境並びに医療従事者の職場環境の改善等を図ることを目的として、次に掲げる事業に要する費用の一部として、医療施設等施設整備費補助金、医療施設等設備整備費補助金を交付し、医療施設等施設整備資金貸付金(注)を貸し付けている(以下、これらを「国庫補助金の交付」という。)。
〔1〕 都道府県、市町村、公益法人等が事業主体となって行う施設整備事業及び設備整備事業に要する経費
〔2〕 市町村、公益法人等が事業主体となって行う施設整備事業及び設備整備事業に対して都道府県が補助する場合に要する経費
| (注) | 医療施設等施設整備資金貸付金 この貸付金は、日本電信電話株式会社の株式売却収入を財源とする財務省所管産業投資特別会計社会資本整備勘定からの無利子貸付金であり、医療施設等施設整備費補助金の補助金相当額を県等に無利子で貸し付けるもので、償還の際、国から県等に対し償還額に相当する額の補助金が交付されることから、補助金と同様に取り扱われている。 |
(国庫補助金の交付額の算定)
国庫補助金の交付額は、医療施設等施設整備費補助金交付要綱(昭和54年厚生省発医第137号)、医療施設等設備整備費補助金交付要綱(昭和54年厚生省発医第117号)及び医療施設等施設整備資金貸付金貸付要綱(平成14年厚生労働省発医政第0527006号)(以下、これらを「交付要綱」という。)により、次のように算定することとなっている。
〔1〕 所定の基準額と対象経費の実支出額を比較して少ない方の額を選定する。
〔2〕 〔1〕により選定された額と総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額などを比較して少ない方の額を国庫補助基本額又は貸付基本額(以下、これらを「国庫補助基本額」という。)とする。
〔3〕 〔2〕により選定した国庫補助基本額に、補助事業又は貸付事業(以下、これらを「補助事業」という。)の区分ごとに補助率又は貸付率を乗じて得た額等を交付額又は貸付額(以下、これらを「交付額」という。)とする。
(補助事業における消費税の取扱い)
消費税法(昭和63年法律第108号)等によれば、消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生じるが、生産、流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」といい、控除する額を「消費税仕入控除税額」という。)する仕組みが採られている。
そして、補助事業の事業主体が補助対象の施設や設備を取得することも課税仕入れに該当し、上記の仕組みにより確定申告の際に課税仕入れに係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体は補助事業で取得した施設等に係る消費税額を実質的に負担していないことになる。
また、事業主体が公益法人等である場合は、消費税の確定申告において、補助金収入など売上以外の収入(以下「特定収入」という。)の額を売上高と特定収入の合計額で除した割合(以下「特定収入割合」という。)が100分の5以下の場合、特定収入により賄われる消費税額は、課税仕入れに係る消費税額として仕入税額控除できることとなっている。そして、この場合、上記と同様に事業主体は特定収入により賄われる消費税額を実質的に負担していないことになる。
このため、これら補助事業の事業主体は、交付要綱により、補助事業完了後に、消費税の確定申告により課税売上高に対する消費税額から補助事業に係る消費税額を課税仕入れに係るものとして控除し、補助金に係る消費税仕入控除税額(国庫補助金相当額)が確定したときには、その金額を速やかに厚生労働省に報告するとともに、当該金額を返還することとなっている。
そして、事業主体が間接補助事業者である場合には、補助事業者は同様の交付条件を付すこととされている。
(消費税の納税義務者と補助事業の事業主体)
消費税の納税義務者は、消費税法により個人事業者及び法人となっており、法人の消費税の確定申告等は、支社、支部又は支店単位ではなく、本社、本部又は本店で一括して行うこととなっている。このため、補助事業において、法人の支部等が事業主体となる場合には、これらの事業主体は消費税の確定申告等を自ら行わないことになる。
2 検査の結果
(検査の着眼点)
医療施設等の施設整備事業及び設備整備事業では、全国に医療施設等を設置して事業を展開している公益法人等の支部等が事業主体となる場合がある。
そこで、上記の公益法人等のうち国庫補助金の交付額が多額に上る日本赤十字社(以下「日赤」という。)及び社会福祉法人恩賜財団済生会(以下「済生会」という。)の支部が実施した補助事業において、補助金に係る消費税仕入控除税額を厚生労働省又は都道府県に対して適正に報告し、当該金額を返還しているかなどに着眼して検査した。
(検査の対象)
岩手県ほか17府県に所在する日赤及び済生会の各支部が事業主体として実施した国庫補助金交付額5000万円以上の事業、すなわち、平成14年度19事業(国庫補助基本額計50億6029万余円、国庫補助金計25億0094万余円)、15年度58事業(国庫補助基本額計78億5205万余円、国庫補助金計42億2480万円)、計77事業(国庫補助基本額計129億1234万余円、国庫補助金計67億2574万余円)を対象として検査した。
(検査の結果)
検査の結果、日赤岩手県支部ほか13支部の37事業(盛岡赤十字病院ほか13病院に係る事業)、茨城県済生会支部ほか7支部の40事業(水戸済生会総合病院ほか9病院に係る事業)、計22支部の77事業において、次のような事態が見受けられた。
日赤本社及び済生会本部では、14、15両年度の消費税の確定申告に当たり、毎年3月の決算終了後、各支部から消費税の確定申告の基礎となる決算関係書類を収集し、日赤本社は7月末に、済生会本部は5月末に、それぞれ各支部の分を含め一括して消費税の確定申告を行い、各年度の特定収入割合がいずれも100分の5以下であったことから、上記の22支部が実施した77事業のすべての国庫補助基本額計129億1234万余円に含まれる消費税額計8082万余円を課税仕入れに係るものとして控除していた。
しかし、事業主体である各支部では、消費税の確定申告等の事務を行っていないこともあって、補助金に係る消費税仕入控除税額を厚生労働省又は府県に対して報告し、当該金額を返還しておらず、国庫補助基本額のうち仕入税額控除していた消費税額計8082万余円に係る国庫補助金相当額14年度計1776万余円、15年度計2566万余円、合計4342万余円が交付されたままとなっていた。
そして、厚生労働省又は府県においても、補助事業完了後相当期間を経過しているのに事業主体に対し同省への報告、返還についての指導及び確認を行っていなかった。
また、前記77事業のうち70事業においては、府県からの補助金の交付決定に際し、補助金に係る消費税仕入控除税額が確定した場合の取扱いが交付条件として付されていたが、間接補助事業者である日赤福井県支部及び同兵庫県支部が事業主体となって実施した7事業においては、補助事業者の福井、兵庫両県が定めた補助金交付要綱等にこのような規定がなかったため、補助金の交付決定に際して、消費税の取扱いについての交付条件が付されていなかった。
したがって、本件補助金に係る消費税の取扱いが適切なものとなるよう、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、次のことによると認められた。
ア 事業主体である支部において、消費税の確定申告等の事務を行っていないため、消費税の取扱いについての理解、認識が十分でなかったこと
イ 府県において、消費税の取扱いに対する認識が十分でなかったこと、また、一部の県では、補助金交付要綱等に消費税の取扱いを交付条件に付する旨の規定を定めていなかったこと
ウ 厚生労働省において、交付要綱が、全国に支部等を有している日赤、済生会等の公益法人等の状況を考慮したものとなっていなかったこと、また、府県及び事業主体に対する適正な事務処理の執行についての指導や確認が十分でなかったこと
3 当局が講じた改善の処置
上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省では、17年9月に都道府県及び全国的な事業展開をしている日赤、済生会等の公益法人等に対し通知を発するなどして、医療施設等施設整備費補助金等に係る消費税の取扱いが適切なものとなるよう、次のとおり、改善の処置を講じた。
ア 都道府県並びに日赤及び済生会等の公益法人等に対し、支部等における消費税の取扱いについて周知徹底を行った。
イ 事業主体が公益法人等の支部等である場合は、本社等の確定申告の内容に基づき報告するようにした。
ウ 補助金交付要綱等に消費税の取扱いを交付条件として付する旨の規定を欠いている県に対し、消費税の取扱いを交付条件として付する旨を規定するよう指導を行った。