平成16年度

 第3章 個別の検査結果

  第1節 省庁別の検査結果

   第9 農林水産省

    不当事項


補助金(205)―(211)

1 補助金の概要

 農林水産省所管の補助事業は、地方公共団体等が事業主体となって実施するもので、同省では、この事業に要する経費について、都道府県等及び特定の団体に対しては直接に、市町村等に対しては都道府県等を経由して補助金を交付している。

2 検査の結果

 北海道ほか43府県及びその管内の市町村等並びに23団体を検査した結果、2道県、5県管内の5市町等計7事業主体が実施した広域営農団地農道整備事業、地方卸売市場施設整備事業等の7事業に係る国庫補助金161,648,833円が不当と認められる。
 これを不当の態様別に示すと次のとおりである。

〔1〕 工事の設計が適切でないもの
    3事業 不当と認める国庫補助金
81,342,347円
〔2〕 補助の目的を達していないもの
    2事業 不当と認める国庫補助金
41,133,997円
〔3〕 補助金を過大に受給しているもの
    1事業 不当と認める国庫補助金
31,421,709円
〔4〕 補助の対象とならないもの
    1事業 不当と認める国庫補助金
7,750,780円

 また、これを個別に示すと次のとおりである。

(205)地域防災対策総合治山事業の実施に当たり、治山事業において補助の対象とならない既存歩道の改修に係る工事費を補助の対象としていたもの

会計名及び科目 国有林野事業特別会計(治山勘定)
    (項)北海道治山事業費
    (項)道州制北海道モデル事業推進費
部局等の名称 林野庁
補助の根拠 森林法(昭和26年法律第249号)
補助事業者(事業主体) 北海道
補助事業 地域防災対策総合治山
補助事業の概要 荒廃山地における山地災害を未然に防止するため、平成16年度に土留工、歩道工等を施工するもの
事業費 166,248,600円
上記に対する国庫補助金交付額 91,436,729円
不当と認める事業費 14,092,327円
不当と認める国庫補助金交付額 7,750,780円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、北海道が、地域防災対策総合治山事業(以下「治山事業」という。)の一環として、標津郡中標津町西町丸山西町地区において山地災害を未然に防止するため、平成16年度に土留工、法切工、既存歩道の改修等を工事費166,248,600円(国庫補助金91,436,729円)で実施したものである。
 このうち既存歩道の改修は、本件工事区域内の山林斜面を通る未舗装の既存歩道について、既設の階段、木橋を撤去するなどし、工事用の資機材の運搬等に必要な仮設道として利用した後、再び歩道として利用できるよう復旧することとして、歩道工(延長122.9m)、階段工(同81.6m)及び木橋(同4.5m)計209m等を施工するものである。

2 検査の結果

 検査したところ、次のとおり、適切とは認められない事態が見受けられた。
 改修の対象とした既存歩道209mについて、再び歩道として利用できるよう復旧することとしている状況についてみると、ほぼすべての区間において歩道路面を板状に成型した木チップ製のパネル(以下「木チップパネル」という。)により舗装したり、従前設置されていなかった区間も含めて大半の区間に手すりを設置したり、水路に新たに蓋を設置したりするなどとして設計し、施工していた。
 しかし、このうち終点側の136.1mについては、工事用の仮設道として利用されておらず、改修の必要はなく、補助の対象とは認められない。また、起点側の72.9mについては、工事用の仮設道として利用されていたものの、木チップパネルによる舗装、手すりや水路の蓋の設置など既存歩道の復旧の範囲を超えた工事は、本件治山事業としては適切でなく、補助の対象とは認められない。
 このような事態が生じていたのは、北海道において、当該治山事業の趣旨を十分理解していなかったことなどによると認められる。
 したがって、既存歩道のうち仮設道として利用されていない部分の改修等に係る工事費相当額14,092,327円については、補助の対象とは認められず、これに係る国庫補助金相当額7,750,780円が不当と認められる。

(206)耕畜連携・資源循環総合対策事業の実施に当たり、たい肥舎の床コンクリートの設計及び施工が適切でなかったため、補助の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省
    (項)牛肉等関税財源畜産振興費
部局等の名称 関東農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 群馬県
間接補助事業者 群馬県吾妻郡中之条町
間接補助事業者(事業主体) 沢田エコ堆肥組合
補助事業 耕畜連携・資源循環総合対策
補助事業の概要 家畜排せつ物を処理して良質なたい肥生産を行うとともに、畜産環境問題の改善を促進するため、平成15年度にたい肥化施設を整備するもの
事業費 69,897,450円  
上記に対する国庫補助金交付額 34,948,000円
不当と認める事業費 31,529,257円
不当と認める国庫補助金交付額 15,763,997円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、沢田エコ堆肥組合(群馬県吾妻郡中之条町)が、耕畜連携・資源循環総合対策事業の一環として、畜産農家から発生する家畜排せつ物を処理して良質なたい肥生産を行うとともに、家畜排せつ物からの汚水が流出することによる河川や地下水の汚染を防止するため、平成15年度に、たい肥化施設として、たい肥舎1棟、自走式たい肥攪拌機(以下「たい肥攪拌機」という。)1台等を事業費69,897,450円(国庫補助金34,948,000円)で整備したものである。
 農林水産省が定める「たい肥舎その他の家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設の構造設備及び家畜排せつ物の管理の方法に関し畜産業を営む者が遵守すべき基準」によると、たい肥舎のような家畜排せつ物の処理又は保管の用に供する施設は、家畜排せつ物からの汚水が流出したりすることがないように床をコンクリート等の不浸透性材料で築造することとされている。そして、同組合では、たい肥舎の床(1,596.3m)について、次のようなコンクリート構造として設計し、これにより施工している。
〔1〕 重量5tのたい肥攪拌機のタイヤ輪が直接通過する部分(478.7m)については、コンクリートの厚さを15cmとし、径6mmの丸鉄線を用いた縦横15cm間隔の溶接金網をその中間部に配置して荷重に対する補強を行う。
〔2〕 その他の部分(1,117.6m)については、厚さ10cmの無筋コンクリートとする。

2 検査の結果

 検査したところ、たい肥舎の床コンクリートの設計及び施工が、次のとおり適切でなかった。

(1)設計について

 前記のとおり、たい肥舎の床コンクリート部分の面積は1,596.3mに及んでおり、このような場合、温度変化や乾燥収縮などによるコンクリートのひび割れ対策として、床コンクリートに目地を設けたり、その全面に均等に鉄筋を配置したりするなどの必要があったのに、同組合では、本件床コンクリートの設計において、これらの対策を講じることとはしていなかった。

(2)施工について

 同組合では、本件工事について、建築工事共通仕様書(国土交通省大臣官房官庁営繕部監修)に基づき施工することとしており、これによると、コンクリート打設後の養生については、表面の乾燥防止のため、5日以上湿潤を保つこととされている。しかし、実際には、施工業者は、床コンクリートについて養生マット等による湿潤養生を行っていなかった。
 このため、たい肥舎の床コンクリートには、そのほぼ全体にわたり、多数の亀裂が生じていた。そして、このうち12箇所を削孔して調査したところ、すべての箇所で亀裂が床コンクリートの底部まで貫通していて、家畜排せつ物からの汚水が地下に浸透する状態となっていた。
 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 事業主体において
(ア)委託した設計業務の成果品が適切でなかったのに、これに対する検査が十分でなかったこと
(イ)施工が適切でなかったのに、これに対する監督が十分でなかったこと
イ 県及び町において、事業主体に対する指導が十分でなかったこと
  したがって、本件たい肥舎(事業費相当額31,529,257円)は、補助の目的を達成しておらず、これに係る国庫補助金相当額15,763,997円が不当と認められる。

(207)卸売市場施設整備事業の実施に当たり、仕入税額控除した消費税額に係る補助金を返還していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)卸売市場施設整備費
部局等の名称 関東農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 埼玉県
間接補助事業者(事業主体) 鴻巣フラワーセンター株式会社
補助事業 地方卸売市場施設整備
補助事業の概要 既設の2地方卸売市場を統合し、花き流通の合理化、施設の大型化を図るため、平成12年度から14年度までの間に地方卸売市場施設を整備するもの
事業費 4,087,498,000円  
  (うち補助対象事業費2,768,367,000円)
上記に対する国庫補助金交付額 669,991,000円  
不当と認める補助対象事業費 129,969,208円  
不当と認める国庫補助金交付額 31,421,709円  

1 補助事業の概要

(補助事業の概要)

 この補助事業は、鴻巣市等が出資して設立した鴻巣フラワーセンター株式会社(埼玉県鴻巣市)が、卸売市場施設整備事業の一環として、既設の2地方卸売市場を統合し、花き流通の合理化、施設の大型化を図るため、平成12年度から14年度までの間に地方卸売市場の施設を整備したものである。
 同会社では、本件補助事業を消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)を含め、事業費計4,087,498,000円(うち補助対象事業費計2,768,367,000円、これに対する国庫補助金計669,991,000円)で実施している。そして、埼玉県に対し13年3月、14年5月及び15年1月にそれぞれ実績報告書を提出し、これにより国庫補助対象事業費の精算を受けていた。

(補助事業における消費税の取扱い)

 消費税は、事業者が課税対象となる取引を行った場合に納税義務が生じるが、生産、流通の各段階で重ねて課税されないように、確定申告において、課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除(以下、この控除を「仕入税額控除」といい、控除する額を「消費税仕入控除税額」という。)する仕組みが採られている。
 そして、補助事業の事業主体が補助対象の施設等を取得することも課税仕入れに該当し、上記の仕組みにより確定申告の際に課税仕入れに係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体は補助事業で取得した施設等に係る消費税額を実質的に負担していないことになる。
 このため、補助事業の事業主体は、「卸売市場施設整備費補助金交付要綱」(昭和52年52食流第3752号農林事務次官依命通知)等により、実績報告書の提出後に、消費税の申告により課税売上高に対する消費税額から補助事業に係る消費税額を課税仕入れに係るものとして控除し、補助金に係る消費税仕入控除税額が確定したときには、その金額を速やかに報告するとともに、当該金額を返還しなければならないこととなっている。

2 検査の結果

 検査したところ、同会社は14年12月、15年2月及び6月にそれぞれ消費税の確定申告を行い、本件補助対象事業に係る消費税額計129,969,208円を課税仕入れに係る消費税額として控除していた。
 しかし、同会社では、上記の消費税仕入控除税額計129,969,208円のうち本件補助金に係る額計31,421,709円を報告、返還しておらず、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同会社において、補助事業における消費税の取扱いについての理解が十分でなかったこと、埼玉県において、本件補助事業の消費税の取扱いについての指導及び確認が適切でなかったことによると認められる。

(208)トレーサビリティシステム導入促進対策事業で構築したシステムが稼動しておらず、補助の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)総合食料対策費
部局等の名称 関東農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 千葉県
間接補助事業者(事業主体) 安全野菜栽培協議会
補助事業 トレーサビリティシステム導入促進対策
補助事業の概要 トレーサビリティシステムを構築するため、平成15年度にパーソナルコンピュータ等の機器等を導入するもの
事業費 53,277,126円
上記に対する国庫補助金交付額 25,370,000円
不当と認める事業費 53,277,126円
不当と認める国庫補助金交付額 25,370,000円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、安全野菜栽培協議会(千葉県匝瑳郡野栄町(そうさぐんのさかまち))が、トレーサビリティシステム(注)導入促進対策事業の一環として、青果物に関するトレーサビリティシステム(以下「システム」という。)を構築することにより消費者に対して安全・安心な青果物を供給するため、平成15年度にシステムの構築に必要なパーソナルコンピュータ、サーバ、ソフトウェア等の機器等を事業費53,277,126円(国庫補助金25,370,000円)で導入したものである。
 同協議会では、これらの機器等を導入するため、業者と請負契約を締結し、16年3月に機器等を導入し、システムの構築を完了したとして、同月に千葉県に実績報告書を提出し、これにより補助金の交付を受けていた。

2 検査の結果

 検査したところ、同協議会では、16年3月に同協議会の事務所にパーソナルコンピュータ等を導入するなどしてシステムを構築していたが、補助金を本件補助事業とは関係のない他の用途に使用し、機器等の導入に係る代金を業者に全く支払っていなかった。このため、上記の請負契約は解除され、システムが稼動しないまま機器等が業者に撤去されていた。
 このような事態が生じていたのは、同協議会において、補助事業の適正な実施に対する認識が欠けていたこと、同県において、本件補助事業の審査、確認及び同協議会に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件補助事業は、システムが稼動しないまま、導入した機器等が撤去されていて、消費者に対して安全・安心な青果物を供給するという補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金25,370,000円が不当と認められる。

(注) トレーサビリティシステム 食品の生産、加工、流通等の各段階で原材料の出所や食品の製造元、販売先等の記録を記帳・保管し、食品とその情報とを追跡及び遡及できるようにする仕組み

(209)広域営農団地農道整備事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋脚等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費
部局等の名称 中国四国農政局
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)
補助事業者(事業主体) 岡山県
補助事業 広域営農団地農道整備
補助事業の概要 橋りょうを新設するため、平成14、15両年度に橋台、橋脚の築造及び橋りょう上部工の製作、架設等を行うもの
事業費 146,853,000円
上記に対する国庫補助金交付額 73,426,500円
不当と認める事業費 133,519,693円
不当と認める国庫補助金交付額 66,759,846円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、岡山県が、広域営農団地農道整備事業の一環として、井原市芳井地区において、橋りょう(こ道橋、橋長70m、幅員7m)を新設するため、平成14、15両年度に、橋台1基、橋脚1基の築造及び橋りょう上部工としてポストテンション方式連続合成桁の製作、架設等を工事費計146,853,000円(国庫補助金73,426,500円)で実施したものである。そして、この橋りょうは、上部構造と橋脚とが固定支承、上部構造と橋台とが可動支承によりそれぞれ連結された構造となっている。
 この橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行っていて、耐震設計については地震時保有水平耐力法(注1)により行っている。これによると、橋脚の安全性の判定は、橋りょうを地震時に同一の振動をするとみなし得る設計振動単位に分割し、それぞれの単位の設計震度を算出し、これに構造物の重量を乗じて橋軸方向及び橋軸直角方向の慣性力を算定するなどして行うこととされている。
 そして、本件橋りょうの設計の基礎となっている設計計算書によると、設計振動単位については、地震時水平力分散構造(注2)により、橋台を含めた橋りょう全体を一つの単位ととらえる方式(以下「三基下部方式」という。)とした上で、慣性力を算定している(参考図1参照)
 その結果、橋軸方向及び橋軸直角方向について、プレート境界型の大規模な地震を想定した地震動(以下「プレート境界型の地震動」という。)及び内陸直下型地震を想定した地震動(以下「直下型の地震動」という。)のいずれの場合も、橋脚の地震時保有水平耐力が橋脚に作用する慣性力を上回ることから、本件橋りょうは耐震設計上安全であるとして、これにより施工していた。

(注1) 地震時保有水平耐力法 大規模地震を想定した耐震設計法で、地震に対して構造物に適切なねばりを持たせ、構造物全体としての崩壊を防止するという観点から定められた耐震設計法。安全であることの判定は、構造物が有している地震時保有水平耐力が、地震時に作用する慣性力以上になることにより行う。
(注2) 地震時水平力分散構造 地震時の上部構造の慣性力を複数の下部構造で分担する構造で、ゴム支承や免震支承を用いる場合などがある。

2 検査の結果

 検査したところ、橋りょうの設計が、次のとおり適切でなかった。
 すなわち、本件橋りょうは、前記のとおり、上部構造と橋脚とが固定支承、上部構造と橋台とが可動支承によりそれぞれ連結された構造であることから、橋りょう全体を設計振動単位とするのではなく、橋台とは別に上部構造と橋脚とを一つの単位(以下「一基下部方式」という。)として慣性力を算定すべきであるのに(参考図2参照)、誤って三基下部方式としていた。
 一基下部方式では上部構造の慣性力が橋脚に集中することになるなどのため、三基下部方式に比べて橋脚に作用する慣性力は大幅に大きくなることから、本件橋脚について、設計振動単位を一基下部方式とするなどして、改めて地震時保有水平耐力及び慣性力を計算すると、次のような結果となっている。
 プレート境界型の地震動の場合、橋軸方向では地震時保有水平耐力4,049kNに対し慣性力が4,470kN、直下型の地震動の場合は、橋軸方向では地震時保有水平耐力4,051kNに対し慣性力が6,310kN、橋軸直角方向では地震時保有水平耐力4,074kNに対し慣性力が4,617kNと、地震時保有水平耐力が慣性力を大幅に下回っている。
 このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件橋りょうは設計が適切でなかったため、橋脚及びこれに架設されたポストテンション方式連続合成桁等(これらの工事費相当額計133,519,693円)は所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額66,759,846円が不当と認められる。

(参考図1)

三基下部方式の概念図

(参考図2)

一基下部方式の概念図

(210)農村振興総合整備統合補助事業の実施に当たり、設計が適切でなかったため、コンクリート擁壁の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農村整備事業費
部局等の名称 中国四国農政局
補助の根拠 土地改良法(昭和24年法律第195号)
補助事業者 徳島県
間接補助事業者(事業主体) 徳島県麻植郡川島町(平成16年10月1日以降は吉野川市)
補助事業 農村振興総合整備統合補助(地域環境整備)
補助事業の概要 集落道を新設するため、平成15年度に舗装工、擁壁工等を実施するもの
事業費 48,762,000円
上記に対する国庫補助金交付額 24,381,000円
不当と認める事業費 8,270,003円
不当と認める国庫補助金交付額 4,135,001円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、徳島県麻植郡川島町(平成16年10月1日以降は吉野川市)が、農村振興総合整備統合補助事業(地域環境整備)の一環として、同町神後地区において、集落道(延長246.1m)を新設するため、15年度に、舗装工、擁壁工等を工事費48,762,000円(国庫補助金24,381,000円)で実施したものである。
 上記擁壁工のうち、切土部のコンクリート擁壁(高さ0.65mから2.7m、延長112.95m、以下「擁壁」という。)は、切土した箇所の法面の安定を図るために築造するもので、擁壁の設計に当たり、同町では、設計コンサルタント会社に設計業務を委託し、この委託契約に基づく成果品を基とするなどして施工していた。
 そして、擁壁については、転倒や滑動等に対する所要の検討を行い、安定計算上安全であるとしていた(参考図1参照)

2 検査の結果

 検査したところ、擁壁の設計が次のとおり適切でなかった。
 設計コンサルタント会社が設計図面を作成する段階において、全延長について擁壁の前面に沿って排水路を築造する必要が生じたため、擁壁の底版のつま先部を削除した断面の設計図面を作成したが、これに関する安定計算の検討を行っていなかった(参考図2参照)
 施工段階において、擁壁のうち延長25.35m(高さ2.25m)についてはかさ上げする必要が生じ、擁壁天端に直壁(高さ0.45m)を設ける設計変更を行っていたが、これに関する安定計算を行っていなかった(参考図3参照)
 そこで、本件擁壁について、改めて安定計算を行うと、次のとおりとなる。
ア 転倒に対する安定については、擁壁の全延長において、水平荷重及び鉛直荷重の合力の作用位置が擁壁の底版幅の中央より0.070mから0.291mの位置となり、転倒に対して安全である範囲0.039mから0.175mを大幅に逸脱している。
イ 滑動に対する安定については、かさ上げするために直壁を設けた擁壁延長25.35mにおいて、その安全率が1.19となり、許容値1.5を大幅に下回っている。
 このような事態が生じていたのは、同町において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに十分な検査を行わなかったこと及び設計変更に当たって必要な安定計算を行わなかったこと、並びに同町に対する徳島県の指導が十分でなかったことによると認められる。
 したがって、本件擁壁は設計が適切でなかったため、擁壁等(工事費相当額8,270,003円)について所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額4,135,001円が不当と認められる。

 

(参考図1)

  (安定計算時の断面)

 

(参考図2)

   (成果品の設計図面):全延長分

(参考図3)

(設計変更図面):25.35m分

(211)農業用施設災害復旧事業の実施に当たり、頭首工の設計が適切でなかったため、工事の目的を達していないもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省 (項)農業施設災害復旧事業費
部局等の名称 九州農政局
補助の根拠 農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)等
補助事業者 熊本県
間接補助事業者(事業主体) 熊本県水俣市
補助事業 農業用施設災害復旧
補助事業の概要 被災した頭首工の機能回復を図るため、平成15、16両年度にえん体、エプロン等を築造するもの
事業費 10,500,000円
上記に対する国庫補助金交付額 10,447,500円
不当と認める事業費 10,500,000円
不当と認める国庫補助金交付額 10,447,500円

1 補助事業の概要

 この補助事業は、熊本県水俣市が、農業用施設災害復旧事業の一環として、同市湯出前田地区において、豪雨により被災した頭首工(注)の機能回復を図るため、平成15、16両年度に頭首工のえん体、エプロン等の築造を工事費10,500,000円(国庫補助金10,447,500円)で実施したものである。
 上記の工事は、15年7月の豪雨に伴う洪水により2級河川湯出川(河川全幅37.5m)に設置された頭首工のえん体等の一部が損壊し、農業用水を取水することができなくなったことから、この機能を回復するため、新たに頭首工のえん体、エプロン等を築造するものである。同市では、頭首工は、洗掘のおそれがある礫及び砂の混合の浸透性地盤に設置させることから、次のように設計し、これにより施工していた(参考図1参照)
〔1〕 えん体は、河川の横断方向に長さが24.5m、断面が上端幅0.6m、下端幅1.9m、高さ1.38mの台形状のコンクリート構造とする。
〔2〕 えん体の上流側には、浸透水により砂礫が流出して基礎地盤が洗掘されることを防止するため止水壁を、えん体の下流側には、越流水によるえん体下流部の洗掘を防止するためエプロン、水叩きコンクリート等をそれぞれ設ける。

2 検査の結果

 検査したところ、頭首工の設計は次のとおり適切でなかった。
 すなわち、上記の頭首工の設計は、15年11月に実施された災害査定を受けて同市が当初の設計を次のように変更したものであった。
〔1〕 当初の設計においては、農林水産省制定の「土地改良事業計画設計基準・設計「頭首工」」(以下「頭首工設計基準」という。)等に基づき、エプロン下流側の河床の洗掘を防止するための護床工が必要であると判断し、えん体を越えた高速の越流水の勢いを、上面部の凹凸により減勢するため、護床ブロックを用いた護床工(長さ16.0m)を設けることとしていた(参考図2参照)
〔2〕 現地で行われた災害査定において、「護床ブロックは削除。ただし、実施に当り現地の石を活用する。水たたきコンクリートを追加。」などと示された。
〔3〕 同市では、〔2〕の内容について護床工は不要であると理解したため、実施設計においては水叩きコンクリートを追加する一方、護床工は設けない構造とした。
 しかし、上記の現地査定の「護床ブロックは削除」の趣旨は、越流水の流れを漸次減勢し下流の流速と等しくするためには、護床ブロックを用いて護床工を設けるのではなく、現地にある転石を利用することとしたものであり、護床工そのものを不要であるとしたものではないことから、本件頭首工において、護床工を設けていないことは適切と認められない。
 そして、頭首工は、工事完成後5箇月後の会計実地検査時(16年11月)において、水叩きコンクリートの下流側の河床が既に40cm洗掘されていた。
 このような事態が生じていたのは、同市が査定の内容を誤って理解したことによるものと認められる。
 したがって、本件頭首工(工事費10,500,000円)は、設計が適切でなかったため、河床の洗掘に対応できない構造となっていて、今後、河床の洗掘が進行して頭首工が転倒するなど頭首工の機能が確保できなくなるおそれがあり、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金10,447,500円が不当と認められる。

(注) 頭首工 河川から必要な農業用水を用水路に引き入れるための施設で、固定堰(えん体、エプロン)、護床工等の取水堰、取入口及び附帯施設から構成される。

(参考図1)

実施設計の断面図

(参考図2)

当初設計の断面図

 

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