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  • 平成16年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国庫補助事業で実施する鋼橋製作・架設工事における工事費の積算に当たり、ゴム製支承の材料費を架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めない取扱いとするよう改善させたもの


(4)国庫補助事業で実施する鋼橋製作・架設工事における工事費の積算に当たり、ゴム製支承の材料費を架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めない取扱いとするよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)国土交通本省   (項)河川等災害復旧事業費
  道路整備特別会計   (項)道路事業費
      (項)地方道路整備臨時交付金
部局等の名称 東京都ほか4県
補助の根拠 道路法(昭和27年法律第180号)、道路整備費の財源等の特例に関する法律(昭和33年法律第34号)等
補助事業者(事業主体) 東京都ほか4県
工事の概要 鋼製の桁等の製作・架設を行う工事
工事費 73億5060万余円
契約 平成13年3月〜16年8月 一般競争契約、公募型指名競争契約、指名競争契約
支承材料費を算定対象額に含める取扱いをしていた間接工事費の積算額 7億8900万余円
低減できた間接工事費の積算額 1億2820万円
上記に対する国庫補助金相当額 6940万円

1 工事の概要

(鋼橋製作・架設工事の内容)

 国土交通省では、道路交通の安全確保とその円滑化を図ることを目的として道路整備事業を実施しており、その一環として、一般国道及び地方道の道路整備事業を行う地方公共団体に対し、毎年度多額の国庫補助金を交付している。そして、地方公共団体では、国庫補助金の交付を受けて、桁等が鋼製の橋りょうの製作・架設工事(以下「鋼橋製作・架設工事」という。)を実施している。この工事は、鋼製の桁等を工場で製作し、これを架設現場に運搬し、別途工事で築造した橋台や橋脚の上に支承を設置した後、この上に桁等を架設するなどのものである(以下、桁等を工場で製作する工程を「鋼橋製作工事」、運搬から架設までの工程を「鋼橋架設工事」という。)。
 支承は、工場で製作される鋼製又はゴム製の部材で、桁等から伝達される荷重を確実に橋台や橋脚に伝達し、地震、風、温度変化等に対して桁等が安全な状態となるようにするために、桁等と橋台等の接点に設置されるものである。
 東京都ほか4県(注) (以下「5都県」という。)では、平成14年度から16年度にかけて鋼橋製作・架設工事を67工事、工事費総額238億3108万余円(国庫補助金総額122億3819万余円)で施行している。

(鋼橋製作・架設工事費の積算)

 国土交通省制定の土木工事標準積算基準書(以下「国交省積算基準」という。)では、鋼橋製作・架設工事の工事費(以下「鋼橋製作・架設工事費」という。)は、次のとおり、鋼橋製作工事における工場製作原価と鋼橋架設工事における架設工事原価を合算した工事原価に一般管理費等を加算して工事価格を算定し、これに消費税相当額を加算して積算することとされている。

 

国庫補助事業で実施する鋼橋製作・架設工事における工事費の積算に当たり、ゴム製支承の材料費を架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めない取扱いとするよう改善させたものの図1

 そして、工場製作原価及び架設工事原価の構成は、それぞれ次のとおりとなっている。

そして、工場製作原価及び架設工事原価の構成は、それぞれ次のとおりとなっている。

 このうち、工場製作原価の間接工事費については、材料費を除いた直接工事費に間接労務費率又は工場管理費率を乗ずるなどして算定し、架設工事原価の間接工事費については、材料費を含めた直接工事費に鋼橋架設工事の共通仮設費率又は現場管理費率を乗ずるなどして算定することとなっている。
 そして、5都県を含め各都道府県等では国交省積算基準を基に積算基準を制定しており、これらの積算基準における鋼橋製作・架設工事費の積算体系は国交省積算基準と同様となっている。

(支承材料費の取扱い)

 国交省積算基準では、鋼製支承の材料費は、工場製作原価の直接工事費として取り扱うこととされ、工場製作原価の間接工事費の算定対象額に含まれない。したがって、鋼製支承の材料費は、架設工事原価の直接工事費に計上されることはなく、架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含まれることもない。
 これに対し、ゴム製支承の材料費については、これを工場製作原価の直接工事費として取り扱うかどうかは国交省積算基準に明記されておらず、このため、5都県が国交省積算基準を基に制定した積算基準(以下「事業主体積算基準」という。)においても、ゴム製支承の材料費を工場製作原価の直接工事費として取り扱うかどうかは明記されていない。

2 検査の結果

(検査の着眼点及び対象)

 7年の阪神・淡路大震災による橋りょうの甚大な被害を契機として、支承の設計においては、大規模な地震に耐える構造が求められ、より大型化・多様化した高額なゴム製支承が多く採用されるようになってきている。
 そして、前記のとおり、ゴム製支承の材料費については、鋼製支承の材料費と異なり、工場製作原価の直接工事費として取り扱うかどうかが国交省積算基準及びこれを基に制定された事業主体積算基準に明記されていない。
 そこで、前記の5都県が施行した67工事の積算において、ゴム製支承の材料費がどのように取り扱われているかに着眼して検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、67工事ではすべてゴム製支承が用いられていたが、その材料費の取扱いは次のとおり区々となっていた。
 すなわち、67工事中46工事(工事費総額164億8048万余円)では、ゴム製支承の材料費は鋼製支承の材料費と同様、工場製作原価の直接工事費として取り扱っており、間接工事費の算定対象額に含めていなかった。一方、残りの21工事(工事費総額73億5060万余円)では、ゴム製支承の材料費(計4億3662万余円)を架設工事原価の直接工事費として取り扱い、間接工事費の算定対象額に含めて架設工事原価の間接工事費を計7億8900万余円と積算していた。
 しかし、ゴム製支承の材料費は、次のとおり、鋼製支承の材料費と同様に工場製作原価の直接工事費として取り扱うべきものと認められた。
 すなわち、5都県では、前記のとおり事業主体積算基準の制定に当たり国交省積算基準を基にしており、架設工事原価の間接工事費を算定する際の共通仮設費率及び現場管理費率も国交省積算基準で定めている率をそのまま採用している。そして、国土交通省では、これらの率を支承の材料費を鋼製、ゴム製の区別なく材料費として工場製作原価の直接工事費に計上していることを前提に決定していた。現に、国土交通省の国道事務所等では、鋼橋製作・架設工事費の積算において、ゴム製支承の材料費も鋼製支承の材料費と同様に工場製作原価の直接工事費として取り扱っており、ゴム製支承の材料費は架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めないこととしていた。
 したがって、ゴム製支承の材料費を架設工事原価の直接工事費として取り扱っていた前記の21工事は、架設工事原価の間接工事費が過大に積算されており、適切とは認められない。

(低減できた架設工事原価の間接工事費)

 上記のことから、21工事の積算において、ゴム製支承の材料費を工場製作原価の直接工事費として取り扱うこととし、架設工事原価の間接工事費の算定対象額には含めないで修正計算すると、架設工事原価の間接工事費の積算額7億8900万余円は6億6071万余円となり、差し引き約1億2820万円(国庫補助金相当額約6940万円)低減できたと認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、国交省積算基準を基に事業主体積算基準を制定している5都県において、国交省積算基準にはゴム製支承の材料費の取扱いが明記されていないことから、国土交通省における取扱いを確認した上で積算すべきであったのに、これを確認しないまま架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めて積算していたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、5都県では、17年3月から7月までに、鋼橋製作・架設工事費の積算において、ゴム製支承の材料費を工場製作原価の直接工事費として取り扱い、架設工事原価の間接工事費の算定対象額に含めないようにする旨の通知を都県内の関係各機関に発し、静岡、愛知及び和歌山各県では同年4月以降、東京都及び熊本県では同年7月以降の積算から適用することとする処置を講じた。
 また、国土交通省では、17年10月、すべての都道府県等に対し、国交省積算基準における鋼橋架設工事の共通仮設費率及び現場管理費率は、ゴム製支承の材料費を間接工事費の算定対象額に含めないことを前提に決定しており、同省の施行する鋼橋製作・架設工事の工事費の積算においては、架設工事原価の間接工事費の算定対象額にゴム製支承の材料費を含めていないことを周知した。

東京都ほか4県 東京都、静岡、愛知、和歌山、熊本各県