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  • 平成16年度|
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  • 貸付金

中小企業高度化事業に係る資金の貸付けが不当と認められるもの


(289)中小企業高度化事業に係る資金の貸付けが不当と認められるもの

科目 貸付金
部局等の名称 中小企業事業団(平成11年7月1日以降は中小企業総合事業団、16年7月1日以降は独立行政法人中小企業基盤整備機構)
貸付けの根拠 中小企業事業団法(昭和55年法律第53号)
貸付金の種類 小売商業店舗共同化資金貸付金(構造改善等高度化(特定))
貸付けの内容 中小企業者に対し中小企業高度化資金の貸付けを行う都道府県に対する貸付け
貸付先 山口県
貸付金額 1,590,300,000円 (平成3年度)
県の貸付先及び貸付金額 事業協同組合 2,356,000,000円
県の不当貸付金額 9,613,975円  
貸付けの目的に沿わない事業団の貸付金相当額 6,489,433円  

1 貸付金の概要

(制度の概要)

 中小企業事業団(平成11年7月1日以降は中小企業総合事業団、16年7月1日以降は独立行政法人中小企業基盤整備機構。以下「事業団」という。)は、中小企業事業団法(昭和55年法律第53号)等に基づき、中小企業者が事業の共同化、工場及び店舗の集団化その他中小企業構造の高度化を図るための事業(以下「高度化事業」という。)の用に供する土地、建物その他の施設の取得等を行う場合に、これに必要な資金の貸付けを行う都道府県に対して、その財源の一部を貸し付けている。その貸付条件は、貸付利率を無利子から年4.1%までとし、償還期限を20年以内としている。
 都道府県は、事業団からの借入金に自己資金を合わせて中小企業者に貸し付けている。その貸付条件は、貸付利率を無利子又は年2.7%とし、償還期限を上記と同様20年以内としている。
 事業団が都道府県に高度化事業に係る資金を貸し付ける場合、あらかじめ都道府県において借入申込者の事業計画について診断を実施し、事業団はその診断結果と事業計画の内容を審査した上、妥当と認めたものについて貸し付けることとしている。また、都道府県は、償還猶予等の貸付けに係る条件変更を行うに当たっては、その妥当性を審査するため、実地調査を行うなどして診断等を実施することとしている。
 借入者は、貸付けを受けた後に貸付対象施設を処分しようとする場合には、あらかじめ都道府県に申請することとされている。都道府県はこれについて事業団に協議又は報告し、事業団が当該処分をやむを得ないと認める場合を除いては、処分する施設に係る貸付金残高相当額について借入者に繰上償還をさせることとされている。そして、事業団では、各都道府県に対し、貸付対象施設の無断処分等を防止し高度化事業が適正に実施されるよう、貸付先に対する定期的な実地調査等を行うことなど貸付後に留意すべき事項について、従前から通達を発するなどしてきたところである。

(本件貸付金の概要)

 事業団は、3年12月に山口県に対して、小売商業店舗共同化資金貸付金(構造改善等高度化(特定))1,590,300,000円を無利子で貸し付けていた。同県は、この貸付金に県費765,700,000円を合わせて貸付財源とし、同年同月に長門市所在の事業協同組合(以下「組合」という。)に対して、地元消費者の生活に必要な商品を供給するための共同施設として、店舗本館及び別館(延べ面積計18,672m )を建設するとともに、賃借した土地6箇所(計13,136.3m )にアスファルト舗装を行い、併せて、フェンス等を設置して来店者用駐車場(461台分)を整備するのに必要な資金3,086,813,000円(貸付対象事業費2,946,952,000円)の一部2,356,000,000円を無利子で貸し付けていた。
 また、同県は、11年9月以降、毎年度、組合の業績不振を理由として、貸付対象施設について実地調査を行うなどした上、約定償還金の一部について償還を猶予していた。

2 検査の結果

 上記貸付対象施設の利用状況について調査したところ、次のような事態となっていた。
 組合では、本件貸付金により整備した6箇所の来店者用駐車場のうち、利用者が少なかった2箇所の駐車場(227台分、4,931.5m )の一部(27台分、583.5m )について、7年5月から11年1月までの間に順次、同県に無断で、貸付けの目的に反して、地元金融機関等の第三者(5会社等)に駐車場として賃貸し、これらを占有使用させていた。そして、その後15年8月から16年12月までの間に順次、これらの2箇所の駐車場の敷地(所有者4人)に係る賃借期間の終期が到来したが、その際、組合は契約を更新することなく、同県に無断で、上記の第三者賃貸部分を含め当該敷地のすべてを所有者に返還するとともに、貸付対象施設であるアスファルト舗装、フェンス等を譲渡していた。
 このような事態が生じていたのは、同県において、毎年度償還を猶予する際に実地調査を行っていたのに貸付対象施設の利用状況を十分に把握していなかったこと、事業団において、貸付後に留意すべき事項について同県に対する周知徹底が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、当該アスファルト舗装等に係る貸付金残高相当額9,613,975円(うち事業団の貸付金相当額6,489,433円)は貸付けの目的を失っており、不当と認められる。
 なお、本件の不当貸付金残高9,155,337円(事業団の貸付金相当額6,179,852円)については、17年10月に繰上償還された。