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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府|
  • (警察庁)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

偽造クレジットカード解析システムの運用状況が著しく低調となっていたため、その運用の廃止を行うなどの改善をさせたもの


偽造クレジットカード解析システムの運用状況が著しく低調となっていたため、その運用の廃止を行うなどの改善をさせたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)警察庁
(項)警察庁
部局等の名称
警察庁
偽造クレジットカード解析システムの概要
クレジットカードの電磁的記録の不正作出等の犯罪に対する捜査に利用するため、偽造クレジットカード等を検査等するシステム
偽造クレジットカード解析システムに係る調達の経費
6億5139万円
(平成13年度)
偽造クレジットカード解析システムに係る保守の経費
2億6146万円
(平成14年度〜17年度)
上記の合計額
9億1286万円
 

1 偽造クレジットカード解析システムの概要

 警察庁では、クレジットカードの電磁的記録を不正に作るなどの犯罪に対する取締りを強化するため、情報端末装置、情報収集装置及びライブラリ装置をそれぞれネットワークで結ぶ偽造クレジットカード解析システム(以下「解析システム」という。)を平成13年度に構築し、14年2月からこれを一元的に管理、運用している。
 このうち情報端末装置は、犯罪捜査の過程で偽造の疑いがあるとして押収等したクレジットカード(以下「偽造クレジットカード」という。)を検査する装置で、51箇所の都道府県警察(北海道警察旭川、釧路、北見、函館各方面本部を含む。以下同じ。)の各本部に設置されているほか、都道府県警察を支援するために警察庁及び7管区警察局(注1) にも設置されている。
 情報収集装置は、スキマー(クレジットカードの電磁的記録の情報を不正に取得するための機器)に蓄積された情報を解析する装置で、都道府県警察の依頼により解析を行うために警察庁の地方機関である51箇所の都道府県情報通信部(北海道警察情報通信部旭川、釧路、北見、函館各方面情報通信部を含む。以下同じ。)に設置されているほか、都道府県情報通信部を支援するために警察庁及び7管区警察局にも設置されている。
 ライブラリ装置は、上記の各装置により検査又は解析した結果を登録する装置で、警察庁に設置されており、ライブラリ装置に登録されたデータについては情報端末装置及び情報収集装置から検索、閲覧ができるものとなっている。
 そして、警察庁は、13年度においてこれらの装置等を合計6億5139万余円で調達しており、また、これらの装置等の保守費として、14年度から17年度までに合計2億6146万余円を支出し、18年度では8130万余円の予算額を計上している。

2 検査の結果

(検査の観点及び着眼点)

 解析システムは、前記のとおり14年2月の運用開始から3年以上経過していることから、有効性等の観点から、その運用状況等に着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

 解析システムの14年2月から18年3月までの間の運用状況について、警察庁、13都府県情報通信部(注2) 及び13都府県警察(注3) において確認するとともに、これ以外の7管区警察局、38道府県情報通信部(注4) 及び38道府県警察(注5) についても警察庁を通じて報告を求めるなどして検査を実施した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1)都道府県警察における情報端末装置の利用状況

 前記の都道府県警察51箇所のうち、押収等した偽造クレジットカードが全くなかったのは19箇所であった。これらを除いた32箇所において押収等した偽造クレジットカード約4万1千枚についてみると、このうち20箇所において押収等した約2万5千枚については検査及び登録を全く行っていなかった。そして、残りの12箇所において押収等した約1万6千枚について情報端末装置を利用して検査した実績は197枚、その検査結果を情報端末装置からライブラリ装置に登録した実績は195枚にすぎなかった。

(2)都道府県情報通信部における情報収集装置の利用状況

 前記の都道府県情報通信部51箇所のうち、押収したスキマーが全くなかったのは34箇所であった。これらを除いた17箇所において押収したスキマー204台についてみると、このうち11箇所において押収した37台については都道府県警察の依頼がなかったため、解析及び登録を全く行っていなかった。そして、残りの6箇所において押収した167台について情報収集装置を利用して解析した実績は56台、その解析結果を情報収集装置からライブラリ装置に登録した実績は3台にすぎなかった。

(3)警察庁及び7管区警察局における情報端末装置及び情報収集装置の利用状況

 警察庁及び7管区警察局においては、都道府県警察及び都道府県情報通信部の支援を必要とする事態がなかったことから、情報端末装置及び情報収集装置は利用されていなかった。
 上記のとおり、解析システムの運用状況は著しく低調となっていたが、警察庁では、システムの運用を従来と同様に続けていた。
 このように、解析システムの運用状況が著しく低調なものとなっていた事態は適切とは認められず、警察庁において、解析システムの今後の運用について、継続の可否を含め、抜本的な見直しを早急に行う必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、近年、捜査の際にクレジットカード会社の協力が十分得られるようになってきたり、ICカード化により解析システムが利用できないクレジットカードが増加してきたりするなど、偽造クレジットカードに係る犯罪を取り巻く情勢が変化してきたことにもよるが、次のことなどによると認められた。
ア 都道府県警察において、捜査上の時間的な制約があることなどから、情報端末装置及び情報収集装置を利用できる事案が多くなかったこと
イ 警察庁において、解析システムの運用が著しく低調なものとなっている状況について、その実態を十分把握していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、警察庁では、偽造クレジットカードに係る犯罪を取り巻く情勢変化等を踏まえ、解析システムの運用を抜本的に見直した結果、18年度の保守費に係る予算執行を停止するとともに、18年6月に通達を発して解析システムの運用を廃止し、前記の各装置を構成する機器については別途利活用を図るなどの処置を講じた。

 7管区警察局 東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州各管区警察局
 13都府県情報通信部 東京都警察情報通信部、大阪府情報通信部、青森、岩手、山形、茨城、神奈川、富山、福井、奈良、和歌山、岡山、鹿児島各県情報通信部
 13都府県警察 警視庁、大阪府警察、青森、岩手、山形、茨城、神奈川、富山、福井、奈良、和歌山、岡山、鹿児島各県警察
 38道府県情報通信部 北海道警察情報通信部、北海道警察情報通信部旭川、釧路、北見、函館各方面情報通信部、京都府情報通信部、宮城、秋田、福島、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、山梨、長野、静岡、石川、岐阜、愛知、三重、滋賀、兵庫、鳥取、島根、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄各県情報通信部
 38道府県警察 北海道警察、北海道警察旭川、釧路、北見、函館各方面本部、京都府警察、宮城、秋田、福島、栃木、群馬、埼玉、千葉、新潟、山梨、長野、静岡、石川、岐阜、愛知、三重、滋賀、兵庫、鳥取、島根、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、沖縄各県警察