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租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの


(16)租税の徴収に当たり、徴収額に過不足があったもの

会計名及び科目
一般会計
国税収納金整理資金
(款)歳入組入資金受入
  (項)各税受入金
部局等の名称
札幌中税務署ほか109税務署
納税者
182人
徴収過不足額
徴収不足額
485,585,381円
(平成11年度〜17年度)
 
徴収過大額
30,164,200円
(平成12年度〜17年度)

1 租税の概要

 源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税、消費税等の国税については、法律により、納税者の定義、納税義務の成立の時期、課税する所得の範囲、税額の計算方法、申告・納付の手続などが定められている。
 平成17年度国税収納金整理資金の各税受入金の徴収決定済額は61兆2492億余円となっている。このうち源泉所得税は15兆6617億余円、申告所得税は3兆0745億余円、法人税は14兆2735億余円、相続税・贈与税は1兆6858億余円、消費税及地方消費税は16兆8005億余円となっていて、これら各税の合計額は51兆4961億余円となり、全体の84.0%を占めている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 上記の各税に重点をおいて、合規性の観点等から、課税が法令等に基づき適正に行われているかに着眼して、札幌中税務署ほか189税務署等において提出された申告書等により検査した。

(徴収過不足の事態)

 検査したところ、札幌中税務署ほか109税務署において、納税者182人から租税を徴収するに当たり、徴収額が、173事項485,585,381円(11年度〜17年度)不足していたり、9事項30,164,200円(12年度〜17年度)過大になっていたりしていて、不当と認められる。
 これを、税目別にみると次表のとおりである。

税目
徴収不足の事項数
徴収過大の事項数
徴収不足額
徴収過大額(△)
源泉所得税
 
4
37,036,681
申告所得税
58
1
148,460,300
△1,000,000
法人税
64
2
182,232,400
△18,156,700
相続税・贈与税
22
5
45,588,700
△6,664,900
消費税
25
1
72,267,300
△4,342,600
173
9
485,585,381
△30,164,200

 なお、これらの徴収不足額及び徴収過大額については、本院の指摘により、すべて徴収決定又は支払決定の処置が執られた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、前記の110税務署において、納税者が申告書等において所得金額や税額等を誤るなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったり、課税資料の収集・活用が的確でなかったりしたため、誤ったままにしていたことなどによるものである。

(税目ごとの態様)

 この182事項について、源泉所得税、申告所得税、法人税、相続税・贈与税及び消費税の別に、その主な態様を示すと次のとおりである。

(1)源泉所得税に関するもの

 源泉所得税では徴収不足になっていたものが4事項あった。これらは、いずれも配当に関するものである。

 配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月10日(休日等の場合はその翌日)までに国に納付しなければならないこととなっている。また、法人が、自己株式の取得(市場取引による取得等を除く。)に際し、株主に対し金銭等を交付した場合、当該株式に対応する資本等の金額を超える部分の金額は、配当とみなされ、源泉所得税を徴収して、上記の法定納期限までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、支払者に対して、納税の告知をしなければならないこととなっている。

 この配当に関し、徴収不足になっている事態が4事項37,036,681円あった。その主な内容は、自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、課税資料の収集・活用が的確でなかったため、納税の告知をしていなかったものである。

<事例1>  配当に関する源泉所得税について納税の告知をしていなかったもの

 A会社は、平成14年2月に株主3名から市場取引等によらないで自己株式432,000株を取得し、総額200,016,000円を支払っていたが、これに対する源泉所得税を納付していなかった。
 しかし、同会社から提出された13年4月から14年3月までの事業年度分の法人税の申告書等によれば、同会社の取得株数432,000株に対応する資本等の金額は25,713,989円となることから、支払金額のうちこれを超える部分の金額174,302,011円は配当とみなされる。そして、この金額は14年2月に支払われているので、これに対する源泉所得税が同年3月11日までに納付されていなければならないのに、上記の申告書等の活用が的確でなくこの事実を把握していなかったため、納税の告知をしておらず、源泉所得税額34,860,401円が徴収不足になっていた。

(2)申告所得税に関するもの

 申告所得税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが59事項あった。この内訳は、不動産所得に関するもの26事項、事業所得に関するもの18事項、譲渡所得に関するもの9事項及びその他に関するもの6事項である。

ア 不動産所得に関するもの

 個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。
 個人が有する減価償却資産につきその償却費として不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、その者が当該資産について定められた償却の方法に基づいて計算した金額とすることとなっている。そして、10年4月1日以後に取得した建物等についての償却の方法は定額法で行うこととなっている。また、不動産の貸付けについて、収入、経費の各項目の金額に消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)を含めて経理している場合には、経費に係る消費税等の額が収入に係る消費税等の額を超えるときに生ずる消費税等の還付金は、不動産所得の計算上、総収入金額に算入することとなっている。
 この不動産所得に関し、徴収不足になっている事態が26事項88,030,900円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア)総収入金額から差し引く減価償却費等の必要経費の額を誤って過大としているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。
(イ)収入及び経費に消費税等を含めて経理している場合の消費税等の還付金が総収入金額に算入されていないのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていた。

<事例2>  不動産所得の必要経費を過大としていたもの

 納税者Bは、平成15年分から17年分までの3年分の申告に当たり、不動産所得の計算において、貸付けの用に供している2棟の建物について、定率法に基づき計算した減価償却費40,130,519円、38,204,253円及び36,370,449円を必要経費に算入し、各年分の総収入金額からこれらの減価償却費を含めた必要経費等を差し引き、不動産所得の金額をそれぞれ54,945,763円、58,371,718円及び61,429,892円としていた。
 しかし、同人の青色申告決算書等によれば、当該2棟の建物は13年4月に取得したものであり、減価償却費の計算は定額法に基づき行わなければならない。そして、取得直後の償却費が定率法に比べて少額となる定額法により計算すると減価償却費は各年分24,782,841円となる。したがって、これにより計算すると、不動産所得の金額は70,293,441円、71,793,130円及び73,017,500円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額5,678,800円、4,965,800円及び4,287,500円、計14,932,100円が徴収不足になっていた。

イ 事業所得に関するもの

 個人が事業を営む場合には、その総収入金額から必要経費を差し引いた金額を事業所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、青色申告書の提出について税務署長の承認を受けている事業所得者が、同人の営む事業に専ら従事する生計を一にする親族(以下「青色事業専従者」という。)に対して支払った給与(以下「青色事業専従者給与」という。)については、税務署長に青色事業専従者の氏名、青色事業専従者給与の金額等を記載した届出書を提出し、届出書に記載された金額の範囲内で労務の対価として相当と認められる金額が支払われた場合に必要経費に算入することとなっている。
 この事業所得に関し、徴収不足になっている事態が18事項35,949,700円あった。その主な内容は、総収入金額から差し引く必要経費について、青色事業専従者給与の規定の適用を誤ったり、減価償却費の額を誤ったりしているなど必要経費の額を過大としているのに、これを見過ごしたため、事業所得の金額を過小のままとしていたものである。

<事例3>  事業所得の必要経費を過大としていたもの

 納税者Cは、平成15年分の申告に当たり、事業所得の計算において、青色事業専従者給与として三男に対して支給した17,400,000円及び妻に対して支給した6,200,000円を必要経費に算入し、必要経費の額を251,459,117円としていた。そして、総収入金額からこの必要経費の額を差し引き、事業所得の金額を1,536,806円としていた。
 しかし、同人から提出された届出書に記載され、労務の対価として相当と認められる三男の青色事業専従者給与の金額は年8,000,000円であり、この金額を超える9,400,000円は必要経費に算入することはできない。また、妻は届出書に青色事業専従者として記載されていないこと及び他の法人の事業に従事していて同人の事業に専ら従事していないことから、妻に対して青色事業専従者給与として支給した6,200,000円は必要経費に算入することはできない。したがって、このことなどにより計算すると、事業所得の金額は21,826,045円となるのに、これを見過ごしたため、申告所得税額7,506,900円が徴収不足になっていた。

ウ 譲渡所得に関するもの

 個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額などを差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている。そして、国又は地方公共団体へ土地等を譲渡した場合など、一定の土地等の譲渡による所得に対しては、軽減された税率を適用することとなっている。
 この譲渡所得に関し、徴収不足になっている事態が8事項15,402,900円、徴収過大になっている事態が1事項1,000,000円あった。その主な内容は、軽減税率の適用に誤りがあるのに、これを見過ごしたため、税額を過小又は過大のままとしていたものである。

エ その他に関するもの

 上記アからウのほか、雑所得等に関し、徴収不足になっている事態が6事項9,076,800円あった。

(3)法人税に関するもの

 法人税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが66事項あった。この内訳は、同族会社の留保金に関するもの21事項、法人税額の特別控除に関するもの18事項、減価償却費の計算に関するもの10事項及びその他に関するもの17事項である。

ア 同族会社の留保金に関するもの

 3人以下の株主等(株主等に同族会社でない法人がある場合はその法人を除く。)並びにこれらと特殊の関係にある個人及び法人が発行済株式総数又は出資金額(その会社が有する自己の株式数又は出資金額を除く。)の100分の50を超える株式数又は出資金額(注1) を有している同族会社(以下「特定の同族会社(注2) 」という。)については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額(以下「課税留保金額」という。)に対し特別税率(注3) の法人税を課することとなっている。

(注1)
 100分の50を超える株式数又は出資金額 平成15年4月1日前開始事業年度分については、100分の50以上の株式数又は出資金額
(注2)
 特定の同族会社 平成18年4月1日以後開始事業年度分については、1人の株主等並びにこれと特殊の関係にある個人及び法人が発行済株式総数又は出資金額(その会社が有する自己の株式数又は出資金額を除く。)の100分の50を超える株式数又は出資金額を有しているなどの同族会社をいう。
(注3)
 特別税率 課税留保金額が年3000万円以下の部分については100分の10、年3000万円を超え1億円以下の部分については100分の15、年1億円を超える部分については100分の20

 この同族会社の留保金に関し、徴収不足になっている事態が20事項97,953,300円、徴収過大になっている事態が1事項15,179,200円あった。その主な内容は、特定の同族会社に該当し課税留保金額が算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課していなかったものである。

<事例4>  同族会社の課税留保金額に対して特別税率の法人税を課していなかったもの

 D会社は、平成15年4月から17年3月までの2事業年度分の申告に当たり、上位3人の株主及びこれらの親族が発行済株式総数の100分の42.3及び100分の42.6を所有しており、特定の同族会社には該当しないとして、利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率の規定による税額計算をしていなかった。
 しかし、申告書等によれば、同会社は自己株式を所有しており、自己株式数を発行済株式総数から除くと、上位3人の株主及びこれらの親族が発行済株式総数の100分の54.5及び100分の51.6を所有する特定の同族会社となる。そして、所定の計算をすれば、課税留保金額が37,985,000円及び84,345,000円算出されるのに、これを見過ごしたため、特別税率の法人税を課しておらず、法人税額4,197,700円及び11,151,700円、計15,349,400円が徴収不足になっていた。

イ 法人税額の特別控除に関するもの

 法人税額から税額を控除する各種の特別控除が設けられており、中小企業者等(注4) が一定の減価償却資産を賃借(賃借期間が5年以上であり、かつ、その期間が当該減価償却資産の耐用年数を超えないものに限る。)して事業の用に供した場合には、その最初の事業年度において、当該事業年度の法人税額の一定の割合の金額を限度として、賃借期間中に支払う賃借料の総額に一定の割合を乗じた金額を法人税額から控除できることなどとなっている。
 また、青色申告書を提出する法人が試験研究費として損金経理をした金額について、当該事業年度の法人税額の一定の割合の金額を限度として、試験研究費に一定の割合を乗じた金額(以下「税額控除限度額」という。)を法人税額から控除できることとなっている。そして、当該事業年度において控除できなかった税額控除限度額があるときには、翌事業年度の試験研究費の額が当該事業年度の試験研究費の額を超える場合において、翌事業年度に繰り越して控除できることなどとなっている。

 中小企業者等 資本若しくは出資の金額が1億円以下の法人(発行済株式総数又は出資金額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有しているなどの法人を除く。)又は農業協同組合等で青色申告書を提出する法人をいう。


 この法人税額の特別控除に関し、徴収不足になっている事態が18事項27,616,300円あった。その主な内容は次のとおりである。
(ア)賃借期間が5年未満の減価償却資産又は賃借期間が耐用年数を超えている減価償却資産について、誤って控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
(イ)試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超えていない事業年度において、前事業年度から繰り越した税額控除限度額を誤って控除するなどしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、法人税額を過小のままとしていた。

<事例5>  試験研究費に係る法人税額の特別控除の規定の適用を誤っていたもの

 E会社は、平成16年4月から17年3月までの事業年度分の申告に当たり、試験研究費に係る法人税額の特別控除の規定を適用して、同事業年度の税額控除限度額67,388,126円及び前事業年度から繰り越した税額控除限度額6,158,974円の合計額73,547,100円を法人税額から控除していた。
 しかし、申告書等によれば、同事業年度の試験研究費の額は、前事業年度の試験研究費の額を超えていないことから、繰り越した税額控除限度額については上記特別控除の規定を適用できず、同事業年度の法人税額から誤って控除しているのに、これを見過ごしたため、法人税額6,158,900円が徴収不足になっていた。

ウ 減価償却費の計算に関するもの

 法人がその有する減価償却資産につき償却費として損金経理をした金額のうち、その法人が当該資産について定められた償却の方法に基づき当該資産の耐用年数等に応じて計算した金額に達するまでの金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入されることとなっている。そして、10年4月1日以後に取得した建物等についての償却の方法は定額法で行うこととなっている。
 この減価償却費の計算に関し、徴収不足になっている事態が10事項27,504,500円あった。その主な内容は、償却の方法を誤り、償却費を過大に計上しているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、損金算入額を過大のままとしていたものである。

エ その他に関するもの

 上記アからウのほか、受取配当等の益金不算入、役員賞与の損金不算入等に関し、徴収不足になっている事態が16事項29,158,300円、徴収過大になっている事態が1事項2,977,500円あった。

(4)相続税・贈与税に関するもの

 相続税・贈与税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが27事項あった。この内訳は、相続税については有価証券の価額に関するもの11事項、土地建物等の価額に関するもの9事項及びその他に関するもの3事項、贈与税については有価証券の価額に関するものなど4事項である。

ア 相続税に関するもの

(ア)有価証券の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し相続税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、相続又は遺贈により取得したときの時価とされていて、有価証券のうち取引相場のない株式又は出資の価額については、株式を発行した会社等の各資産の価額の合計額から各負債の金額の合計額を差し引いた純資産価額等を基にして計算することとなっている。
 この有価証券の価額に関し、徴収不足になっている事態が8事項17,183,700円、徴収過大になっている事態が3事項4,403,400円あった。その内容は、取引相場のない同族会社の出資等の価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、出資等の価額を過小又は過大のままとしていたものである。

(イ)土地建物等の価額に関するもの

 個人が相続又は遺贈により取得した土地建物等の価額については、路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。そして、被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族が事業又は居住の用に供していた宅地等のうち用途区分に応じて所定の方法により計算した一定の面積までの部分については、小規模宅地等として、次に掲げる区分に応じ、土地等の価額にその割合を乗じた額を減額できることとなっている。

〔1〕 被相続人又は被相続人と生計を一にしていた親族が事業(不動産貸付業等は除く。)の用に供していた宅地等で、その宅地等を相続又は遺贈により取得した者のうちに、申告期限まで事業を継続しているなどの要件に該当する親族がいる場合の宅地等(以下「特定事業用宅地等」という。)などに該当するもの

100分の80

〔2〕 上記以外のもの

100分の50


 この土地建物等の価額に関し、徴収不足になっている事態が9事項19,496,100円あった。その主な内容は、土地の価額の計算において、特定事業用宅地等などに該当しない小規模宅地等について減額割合を誤って100分の80としていたり、小規模宅地等に該当しない宅地について減額していたりしているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。

(ウ)その他に関するもの

 上記(ア)、(イ)のほか、相続税額の加算等に関し、徴収不足になっている事態が1事項685,800円、徴収過大になっている事態が2事項2,261,500円あった。

<事例6>  有価証券の価額の計算を誤っていたもの

 納税者Fは、平成14年11月相続分の申告に当たり、相続により取得した取引相場のないG会社の出資16,800口の価額を、同会社の14年10月期末における現金・預金等の資産の価額の合計額から借入金等の負債の金額の合計額を差し引いた純資産価額等を基にして計算した出資1口当たりの価額3,020円により、50,736,000円としていた。
 しかし、申告書等によれば、上記資産のほかに、被相続人の死亡により同会社が受ける生命保険金70,568,675円があり、また、上記負債のほかに、被相続人に対して支払う退職金20,000,000円及び保険差益に対する法人税等6,437,000円があった。したがって、これらを上記純資産価額の計算における資産及び負債に含めるなどして出資1口当たりの価額を計算すると4,740円となり、当該出資の価額は79,632,000円となるのに、これを見過ごしたなどのため、相続税額7,317,000円が徴収不足になっていた。

イ 贈与税に関するもの

 個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。そして、取得した財産の価額は、贈与により取得したときの時価とされている。
 この贈与税に関し、徴収不足になっている事態が4事項8,223,100円あった。その主な内容は、取引相場のない同族会社の株式の価額の計算を誤っているのに、これを見過ごしたため、株式の価額を過小のままとしていたものである。

(5)消費税に関するもの

 消費税では徴収不足又は徴収過大になっていたものが26事項あった。この内訳は、納税義務の免除に関するもの10事項、課税仕入れに係る消費税額の控除に関するもの8事項及びその他に関するもの8事項である。

ア 納税義務の免除に関するもの

 基準期間(個人事業者は課税期間(注5) の前々年、法人は課税期間の前々事業年度)における課税売上高が1000万円以下(注6) の事業者は、課税期間の課税売上げについて納税義務が免除されることとなっている。

(注5)
 課税期間 納付する消費税額の計算の基礎となる期間で、原則として個人事業者は暦年、法人は事業年度
(注6)
 1000万円以下 平成16年4月1日前に開始した課税期間については、納税義務が免除される基準期間における課税売上高は3000万円以下となっている。

 この納税義務の免除に関し、徴収不足になっている事態が10事項43,814,200円あった。その内容は、基準期間の課税売上高が3000万円を超えていて納税義務が免除されないため申告の必要があるのに、これを見過ごしたため、消費税を課していなかったものである。

<事例7>  消費税を課していなかったもの

 納税者Hは、平成12年1月から15年12月までの4課税期間分の消費税の申告をしていなかった。
 しかし、同人の12年から15年までの申告所得税の申告書に添付された書類等によれば、同人の課税売上高は、55,601,142円、53,841,142円、47,215,826円及び195,790,178円となっている。そして、上記の4課税期間に係る基準期間の課税売上高は、いずれも30,000,000円を超えていて納税義務は免除されない。したがって、上記の4課税期間分について申告の必要があるのに、これを見過ごしたため、消費税を課しておらず、消費税額2,000,200円、1,885,800円、1,781,500円及び7,616,900円、計13,284,400円が徴収されていなかった。

イ 課税仕入れに係る消費税額の控除に関するもの

 事業者は、課税期間における課税売上高に対する消費税額から課税仕入れに係る消費税額(注7) を控除した額を消費税として納付し、また、課税仕入れに係る消費税額が課税売上高に対する消費税額を上回る場合には控除不足税額の還付を受けることができることとなっている。この課税仕入れに係る消費税額の控除額は、課税期間における課税売上割合(課税売上高を総売上高で除した割合)が100分の95以上のときは、課税仕入れに係る消費税額の全額、100分の95未満のときは課税売上高に対応する部分の金額となっている。
 この課税仕入れに係る消費税額の控除に関し、徴収不足になっている事態が8事項21,273,900円あった。その主な内容は、課税売上割合の計算を誤り、同割合が100分の95未満であるにもかかわらず、建物の取得等に係る消費税額の全額を控除額としたり、課税売上高に対応する課税仕入れに係る消費税額の金額を過大に計算して控除額としたりしているのに、これを見過ごしたため、消費税額を過小のままとしていたものである。

 課税仕入れに係る消費税額 課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)は、消費税額(税率100分の4)と地方消費税額(消費税額の100分の25。消費税率換算で100分の1)に相当する額を含んだ額とすることとされているので、課税仕入れに係る消費税額は、課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)に105分の4を乗ずることとなる。


ウ その他に関するもの

 上記ア、イのほか、課税売上高の計上等に関し、徴収不足になっている事態が7事項7,179,200円、徴収過大になっている事態が1事項4,342,600円あった。
 これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局別に示すと次のとおりである。

上記ア、イのほか、課税売上高の計上等に関し、徴収不足になっている事態が7事項7,179,200円、徴収過大になっている事態が1事項4,342,600円あった。これらの徴収不足額及び徴収過大額を国税局別に示すと次のとおりである。