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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 予算経理

物品の購入等に当たり、競争入札の実施を偽装して契約を締結していたもの


(66)(67)物品の購入等に当たり、競争入札の実施を偽装して契約を締結していたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)都道府県労働局
(項)都道府県労働局
平成12年度は、
 
(組織)都道府県労働局
(項)労働官署
(項)労働官署施設費
労働保険特別会計
(労災勘定)
(項)業務取扱費
(項)労働福祉事業費
(雇用勘定)
(項)業務取扱費
(項)施設整備費
(項)雇用安定等事業費
(徴収勘定)
(項)業務取扱費
部局等の名称
(1)静岡労働局(平成11年度以前は静岡県)
 
(2)愛知労働局(平成11年度以前は愛知県)
契約の概要
物品の購入、局舎の修繕等
競争入札の実施を偽装していた契約の件数及び契約金額
(1)
15件
106,799,280円
(平成11年度〜15年度)
(2)
68件
496,415,777円
(平成11年度〜14年度)
計83件
603,215,057円
 

1 業務の概要

(1)都道府県労働局の概要

 都道府県労働局(平成11年度以前は都道府県、都道府県労働基準局及び都道府県女性少年室。以下「労働局」という。)は、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることなどを任務としており、その一環として、事業場に対する監督指導、職業紹介、高年齢者の雇用の確保等の業務を行っている。

(2)競争入札の事務処理の概要

 労働局では、上記業務の実施に当たり、一般会計並びに労働保険特別会計の労災勘定、雇用勘定及び徴収勘定において毎年度多額の予算を執行している。このうち、労働局における物品の購入、局舎の修繕等の請負その他の契約に係る会計事務手続については、おおむね次のとおりとなっている。

ア 国の契約に係る会計事務手続について

 国の物品の購入、局舎の修繕等の請負その他の契約に係る会計事務手続は、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に基づき行うものとされており、契約の方式については、原則として、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならないとされている。そして、この競争は、原則として、入札の方法(以下「競争入札」という。)により行わなければならないとされており、また、競争入札では、原則として、予定価格の制限の範囲内で最低の価格をもって申込みをした者を契約の相手方とするものとされている。

イ 労働局における競争入札に係る会計事務手続について

 上記アのほか、労働局における競争入札に係る会計事務手続については、総務部総務課において、次のように行うことになっている。
〔1〕 競争入札に付す契約に係る契約書案、仕様書案等を作成し、一般競争に付する場合には必要に応じ、また、指名競争に付する場合には必ず入札参加者の資格を定めるとともに、予定価格を算定する。そして、これらについて、支出負担行為担当官(総務部長)の決裁を受ける。
〔2〕 一般競争に付する場合には、入札公告を行う。また、指名競争に付する場合には、指名業者に必要事項を通知する。
〔3〕 一般競争に付する場合には入札公告に、また、指名競争に付する場合には上記〔2〕の通知に、それぞれ記載した競争入札の執行日時及び執行場所に入札者を立ち会わせて開札し、落札者を決定する。そして、入札の状況について、書面(以下「入札調書」という。)に記録する。
〔4〕 競争入札の結果に基づき、入札書、入札調書等の関係書類を支出負担行為担当官に提出し、その決裁を経て当該契約を締結する。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び方法

 静岡、愛知両労働局が11年度から16年度までの間に締結した一般競争契約及び指名競争契約244件、契約金額1,681,834,473円を対象として、これらの競争入札に係る会計事務手続が適正に行われているかについて、契約書、入札書、入札調書等により検査した。
(本件の検査の背景等については別掲特定検査対象に関する検査状況参照

(2)検査の結果

 検査したところ、11年度から15年度までの間に、実際には競争入札を行っていないのに、虚偽の関係書類を作成するなどして競争入札が行われたように偽装し、契約の相手方に内定していた業者等と契約を締結していたものが、計83件、契約金額603,215,057円あった。
 上記の事態について事例を示すと、次のとおりである。

<事例1>

 静岡労働局では、平成12年度にノート型パーソナルコンピュータ85台等を購入する契約を一般競争契約により16,955,715円でA社と締結したとしていた。
 しかし、実際には、入札公告等の一般競争契約の手続を行わずに、同局内のLANシステムを保守運用していた同社を契約の相手方に内定し、同社の担当者に自社名義の入札書のほか、他業者名義の入札書を持参させ、虚偽の内容の入札調書等の関係書類を作成するなどして競争入札の実施を偽装した上、支出負担行為担当官の決裁を受け、同社と契約を締結していた。

<事例2>

 愛知労働局では、平成12年度に名古屋南公共職業安定所事務室のOAフロアの敷設替えをする工事の契約を一般競争契約により19,097,522円でB社と締結したとしていた。
 しかし、実際には、入札公告等の一般競争契約の手続を行わずに、他の安定所庁舎で施工実績のある同社を契約の相手方に内定し、下見積りを提出させ、この下見積りを基に工事の仕様等の詳細について打合せを行うとともに、必要な図面等の作成についても依頼していた。そして、同社の担当者に自社名義の入札書のほか、他業者名義の入札書を持参させ、虚偽の内容の入札調書等の関係書類を作成するなどして競争入札の実施を偽装した上、支出負担行為担当官の決裁を受け、同社と契約を締結していた。
 上記の事態は、会計法令等に違反し、競争入札の実施を偽装して契約を締結していたもので、著しく適正を欠いていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省において、両労働局の契約に係る事務の実態把握が十分でなく、当該事務の適正な執行に関する指導監督が十分でなかったことにもよるが、主として、両労働局において、契約に係る事務は会計法令等の定めるところに従い適正に行わなければならないとの認識に著しく欠けていたことによると認められる。
 これを労働局別に示すと、次のとおりである。

 
労働局名
年度
競争入札の実施を偽装していた件数
左の契約金額
     
(66)
静岡労働局
11〜15
15
106,799,280
(67)
愛知労働局
11〜14
68
496,415,777
(66)(67) の計
83
603,215,057