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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 不当事項|
  • 予算経理

求人情報自己検索システムの取得等に当たり、会計法令に違反し、複数年度にわたる役務の提供等に係る契約を締結するなどして当該経費の全額を支払っていたもの


(68)—(99)求人情報自己検索システムの取得等に当たり、会計法令に違反し、複数年度にわたる役務の提供等に係る契約を締結するなどして当該経費の全額を支払っていたもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)都道府県労働局
(項)都道府県労働局
平成11年度以前は、
 
(組織)職業安定官署
(項)職業安定官署
平成12年度は、
 
(組織)都道府県労働局
(項)都道府県労働局
(項)労働官署
労働保険特別会計(雇用勘定)
(項)業務取扱費
(項)雇用安定等事業費
部局等の名称
北海道労働局ほか31労働局(平成11年度以前は都道府県)
求人情報自己検索システムに係る契約の概要
求人情報自己検索システムの本体機器等の取得、保守サービスの提供、消耗品の購入等に係る契約
上記に係る契約件数及び金額
160件
5,917,272,545円
(平成11年度〜16年度)
契約金額のうち会計法令に違反する役務の提供等の件数及び支払額
160件
2,358,467,988円
(平成11年度〜16年度)

1 求人情報自己検索システムの概要等

(1)都道府県労働局の概要

 都道府県労働局(平成11年度以前は都道府県、都道府県労働基準局及び都道府県女性少年室。以下「労働局」という。)では、労働者の働く環境の整備及び職業の確保を図ることなどを任務としており、その一環として、求職者にその有する能力に適合する職業に就く機会を与え、産業に必要な労働力を充足するなどのため、職業紹介等の業務を行っている。そして、その所掌事務の一部については、管下の公共職業安定所(以下「安定所」という。)に行わせている。

(2)求人情報自己検索システムの概要

 求人情報自己検索システム(以下「自己検索システム」という。)は、安定所に来所した求職者が自ら端末を操作してサーバに蓄積された求人情報を電子的に検索し、検索結果を表示・印刷するもので、サーバ、ネットワーク、端末等の各種機器及びソフトウェアで構成されている(以下、これらを併せて「自己検索システムの本体機器等」という。)。
 労働局では、厚生労働本省(13年1月5日以前は労働本省。以下「本省」という。)から予算の示達を受け、また、その指導に基づき、10年度より順次、売買契約又は賃貸借契約により自己検索システムの本体機器等を調達するなどして、安定所に自己検索システムを設置し、運用している。
 自己検索システムの運用に当たっては、点検・修理等の保守サービスが必要となるほか、求人情報の検索結果をプリンタで印刷することから多量のトナーカートリッジ、印刷用紙等の消耗品が必要となる。このため、労働局では、これらの保守サービスの提供及び消耗品の購入に係る契約締結の手続を執ることが必要となる。

(3)契約の締結等に関する会計法令の規律

 財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)等(以下「会計法令」という。)の規定によると、国の会計については、財政活動を適切に規律するとともにその実績を明確にするため、会計年度(毎年4月1日から翌年3月31日まで)が定められており(予算の単年度主義)、原則として、各会計年度における経費は当該年度の歳入をもって支弁しなければならないなどとされている(会計年度独立の原則)。また、国が当該年度を越えて債務を負担する行為をするときは、特例的に認められる所定の長期継続契約を除き、原則として、予め予算をもって国会の議決を経なければならないものとされている。そして、国の会計機関が契約を締結した場合には、原則として、給付の完了を確認するため必要な検査を行い所定の検査調書を作成しなければならず、この検査調書に基づかなければ当該契約の代金を支払うことができないなどとされている。
 このように、国の会計機関は、会計法令上所定の場合を除き、原則として、翌年度以降にわたる債務を負担する契約を締結することはできず、また、このような契約を締結した場合であっても、翌年度以降における役務の提供等の経費を当年度予算から支出することはできないこととなっている。
 また、会計法の規定によると、国の会計機関は、契約の相手方を決定したときは、原則として、契約の目的、契約金額、履行期限等の契約内容を記載した契約書を作成しなければならないものとされている。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び方法

 11年度から16年度までの間における47労働局の自己検索システムの設置・運用に係る契約を対象として、契約の締結及び経費の支払が会計法令に従い適切に行われているかについて、当該契約書等により検査した。

(本件の検査の背景等については別掲特定検査対象に関する検査状況参照

(2)検査の結果

 検査したところ、北海道労働局ほか31労働局(注) (以下「32労働局」という。)において、次のような事態が見受けられた。
 32労働局では、本省の指導に従い、11年度から16年度までの間に、自己検索システムの本体機器等を売買により取得する契約(以下「自己検索システム取得契約」という。)等の契約(契約件数計160件、契約金額計5,917,272,545円)を締結していたが、その際、自己検索システムの運用に係る保守サービスの提供又は消耗品の納入について、業者との間で、次のような合意をしていた。
〔1〕 労働局は、自己検索システム取得契約等の締結後、当年度以降の複数年度にわたり、必要に応じ、随時、業者から自己検索システムの運用に係る保守サービスの提供又は消耗品の納入を受けること
〔2〕 労働局は、自己検索システム取得契約等の締結年度内(出納整理期間を含む。以下同じ。)に、これらの複数年度にわたる保守サービスの提供又は消耗品の納入に係る経費の全額を支払うこと
 そして、32労働局では、上記の合意が自己検索システム取得契約等の契約内容の一部を構成しているのに、その内容を明示せず又は当年度以降の複数年度にわたる保守サービスの提供に係る経費を関連ソフトウェアの購入に係る経費等の名目で記載して契約書を作成するなどし、当該契約を締結していた。
 その上で、32労働局では、当該契約の締結後、自己検索システムの本体機器等の納入をもってすべての契約内容が履行されたとして検査調書を作成するなどした上、当年度内に、当年度以降の複数年度にわたる保守サービスの提供又は消耗品の納入に係る経費を含む契約金額の全額を業者に支払っていた。そして、当年度以降の複数年度にわたり、必要に応じ、随時、業者から保守サービスの提供又は消耗品の納入を受けていた。
 このような役務の提供等の件数及び支払額は、32労働局において、計160件、2,358,467,988円となっている。

 北海道労働局ほか31労働局 北海道、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、静岡、愛知、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、香川、高知、長崎、鹿児島各労働局


 上記の事態は、自己検索システム取得契約等の締結に当たり、契約締結年度以降の複数年度にわたる役務の提供等及びこれに係る経費全額の当年度内の支払について業者と合意した上、当該合意の内容を契約書に明示せずに契約を締結するなどし、当該合意に従い当年度内にその経費の全額を支払っていたもので、会計法令に違反し、著しく適正を欠いていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められる。
ア 本省において、自己検索システム取得契約等の締結に当たり、労働局に対し、保守サービスの提供及び消耗品の納入に係る経費については、契約締結の年度内に、当年度以降の複数年度にわたる経費の全額を支払うことも可能であるとするような不適切な指導をしていたり、労働局に当年度以降の複数年度にわたる当該経費の全額を積算させ、これに基づき当年度の予算の示達を行ったりしていたこと
イ 上記の各労働局において、本省から上記アのような指導又は予算の示達を受けていたことにもよるが、契約の締結等に当たっては会計法令を遵守しなければならないことについて職員に徹底させていないなどのため、職員の会計法令の遵守及びこれに基づく予算の適正執行に対する認識が著しく欠如していたこと
 これを労働局別に示すと、次のとおりである。

 
労働局名
年度
件数
保守サービスの提供に係る額
消耗品の納入に係る額
合計
     
(68)
北海道
12、13
3
16,536,611
19,404,552
35,941,163
(69)
青森
11、12、14
6
51,029,160
19,288,500
70,317,660
(70)
岩手
11、12
3
8,040,690
4,096,680
12,137,370
(71)
宮城
12〜14
10
55,484,100
14,017,500
69,501,600
(72)
秋田
13、14
3
17,718,580
17,718,580
(73)
山形
12〜14
7
30,229,888
30,229,888
(74)
福島
12、14
6
26,932,500
45,030,090
71,962,590
(75)
茨城
13〜15
6
65,027,004
51,920,305
116,947,309
(76)
栃木
11
1
9,830,100
9,830,100
(77)
埼玉
12〜14
6
146,017,725
91,961,688
237,979,413
(78)
千葉
12、14
3
79,444,887
21,785,428
101,230,315
(79)
東京
11〜13
17
137,037,180
137,037,180
(80)
神奈川
12〜14、16
8
39,992,820
18,992,925
58,985,745
(81)
新潟
13、14、16
7
45,317,017
5,258,400
50,575,417
(82)
長野
11、13、14
6
44,716,637
17,640,000
62,356,637
(83)
静岡
11
1
19,766,880
19,766,880
(84)
愛知
12〜14
5
191,519,628
191,519,628
(85)
三重
14
1
2,403,807
2,403,807
(86)
滋賀
12〜14
5
30,340,703
11,138,220
41,478,923
(87)
京都
12
1
13,052,063
13,052,063
(88)
大阪
12〜16
20
364,243,788
347,425,218
711,669,006
(89)
兵庫
14
3
28,789,740
28,789,740
(90)
奈良
12〜14
8
43,481,544
40,766,985
84,248,529
(91)
和歌山
11、13〜15
10
26,200,909
26,200,909
(92)
島根
12、13
2
23,033,338
11,832,528
34,865,866
(93)
岡山
11
1
7,879,410
3,037,387
10,916,797
(94)
広島
12、15
3
5,082,840
5,082,840
(95)
山口
12〜14
3
10,074,357
20,326,087
30,400,444
(96)
香川
14
1
4,200,000
4,200,000
(97)
高知
12
1
22,554,000
15,254,400
37,808,400
(98)
長崎
14
1
3,906,000
3,906,000
(99)
鹿児島
13、14
2
29,407,189
29,407,189
(68) —(99) の計
160
1,599,291,095
759,176,893
2,358,467,988