ページトップ
  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 役務

雇用安定・創出対策事業等及び緊急地域就職促進プロジェクトに係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の物品購入費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの


(118)雇用安定・創出対策事業等及び緊急地域就職促進プロジェクトに係る委託事業の実施に当たり、委託事業の経費に架空の物品購入費を含めるなどしていたため、委託費の支払額が過大となっているもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)職業転換対策事業費
平成11年度以前は、
 
(組織)労働本省
(項)職業転換対策事業費
労働保険特別会計(雇用勘定)
(項)雇用安定等事業費
部局等の名称
厚生労働本省(平成13年1月5日以前は労働本省)
契約名
(1)
雇用安定・創出対策事業等委託(平成9年度〜12年度。10年度以前は、雇用安定・創出対策事業委託及び都道府県地域雇用開発促進事業委託)
(2)
緊急地域就職促進プロジェクト委託(平成11、12両年度)
契約の概要
産業構造の変化に対応した雇用対策に関する協議及び周知、特に就職が困難な中高年の離職者等に対する職場体験講習の実施等
契約の相手方
社団法人北海道雇用開発協会及び財団法人大分県総合雇用推進協会並びに青森県地域雇用開発協議会ほか32協議会
契約時期等
(1)
平成9年4月ほか
随意契約
(2)
平成11年4月ほか
随意契約
支払額
(1)
548,395,873円
(平成9年度〜12年度)
(2)
3,800,030,741円
(平成11、12両年度)
4,348,426,614円
 
過大になっている支払額
(1)
35,556,729円
(平成9年度〜12年度)
(2)
31,654,586円
(平成11、12両年度)
67,211,315円
 

1 委託事業の概要

(1)委託事業の概要

 厚生労働本省(平成13年1月5日以前は労働本省。以下「本省」という。)では、昭和63年度から平成12年度までの間に、各都道府県ごとに設置された雇用安定・創出対策協議会等(以下「協議会」という。)に対し、雇用安定・創出対策事業等(10年度以前は、雇用安定・創出対策事業及び都道府県地域雇用開発促進事業)及び緊急地域就職促進プロジェクト(以下、これらを併せて「本件委託事業」という。)の実施を委託している。
 このうち、雇用安定・創出対策事業等は、昭和63年度から平成12年度までの間に実施されたものであり、その内容は、産業構造の変化に対応した雇用対策に関する協議及び周知等となっている。また、緊急地域就職促進プロジェクトは、10年度から12年度までの間に実施されたものであり、その内容は、特に就職が困難な中高年の離職者等に対する職場体験講習等となっている。そして、協議会では、本件委託事業の一部の事業について、地域における主要な事業主団体等(商工会議所等)に再委託して実施している。

(2)協議会の概要

 協議会は、都道府県内における主要な関連事業主団体の役員、主要労働団体の役員、都道府県労働局(11年度以前は都道府県。以下「労働局」という。)職業安定部長等の関係行政機関職員及び学識経験者から構成されている。そして、協議会には、本件委託事業の事務を処理するため事務局(以下「協議会事務局」という。)が設置されることとなっており、協議会が公益法人に置かれた北海道及び大分県では当該各法人の事務局の職員が、協議会が任意団体となっているその他の都府県では労働局の職業安定部の職員が、それぞれ協議会事務局の職員を兼務して本件委託事業の委託費の経理その他の事務を行うこととなっている。

(3)委託費の交付、精算等の手続

 本省における委託費の交付、精算等の手続は、次のとおりとなっている。
〔1〕 本件委託事業の実施に当たり、あらかじめ協議会との間で委託契約を締結した上、当該委託契約書等に基づき、国の支払計画額の範囲内で、原則として概算払により、協議会の預金口座への振込みにより委託費を交付する。
〔2〕 本件委託事業が終了したときは、協議会から委託事業費精算報告書(以下「精算報告書」という。)等を提出させて内容を審査し、適正と認めたものについて委託費の支払額を確定する。そして、協議会に交付した委託費に残額等が生じた場合にはその返還を受け、委託費を精算する。
 また、本件委託事業の再委託についても、上記と同様に再委託先から精算報告書等を提出させ、協議会において内容を審査し、適正と認めたものについて再委託事業に係る支払額を確定するなどして委託費を精算する。

(4)委託費の支払額

 本省において、9年度から12年度までの間に、毎年度、全国47都道府県の協議会から本件委託事業に係る精算報告書等の提出を受け、これに基づき確定し精算した委託費の支払額は、計10,726,252,143円となっている。

(5)広島雇用安定・創出対策協議会及び兵庫県地域雇用開発協議会の不正経理事案

 本省が16年度に実施した広島、兵庫両労働局に対する特定監査において、広島雇用安定・創出対策協議会及び兵庫県地域雇用開発協議会の各協議会事務局の職員(広島、兵庫両労働局の職業安定部の職員が兼務)が、本件委託事業の実施に必要な物品を購入したとして両協議会の預金口座から委託費計50,182,500円を不正に引き出すなどし、委託事業の目的外に使用していたなどの事態が判明した。本院では、広島、兵庫両労働局に対する検査を行い、上記の委託費の不正支払の事実を確認し、これを15、16両年度の決算検査報告に不当事項として掲記した。

2 検査の結果

(1)検査の対象及び方法

 広島雇用安定・創出対策協議会及び兵庫県地域雇用開発協議会を除く全国の45都道府県の協議会に対し、11、12両年度に、本省が支払った委託費を対象として、委託費が委託事業の目的外に使用されていないかなどについて、精算報告書、協議会事務局の支払決議書、出納簿等により検査した。なお、検査の過程において不正な事態等が判明した場合には、可能な範囲において過去の年度まで検査を実施した。

(本件の検査の背景等については別掲特定検査対象に関する検査状況参照

(2)検査の結果

 労働検査したところ、次のような事態が見受けられた。

 本省では、社団法人北海道雇用開発協会及び財団法人大分県総合雇用推進協会並びに青森県地域雇用開発協議会ほか32協議会(注) (以下「35協議会」という。)が9年度から12年度までの間に実施した本件委託事業について、各協議会から提出された精算報告書等の内容を審査した上、委託費の支払額を計4,348,426,614円と確定し精算していた。

 しかし、35協議会では、協議会事務局が、本省から交付された委託費を不正に支払い、これを協議会事務局等において別途に経理したり、委託事業ではなく労働局の業務で使用する物品を購入したりするなどして、計67,211,315円を委託事業の目的外の用途に使用するなどしていた。

 これを態様別に示すと、次のとおりである。

ア 委託費から、次の(ア)から(ウ)のような方法により、物品の購入費、謝金、旅費を不正に支払い、これを協議会事務局等において別途に経理して職員の飲食費に充てるなど委託事業の目的外の用途に使用するなどしていたもの

 13協議会 35,348,799円

(ア)物品の購入等に係る不正返金

 委託事業の実施に必要な物品を購入するなどの名目により業者に架空請求等を行わせ、委託費から業者に支払った購入代金の全部又は一部を不正に返金させていた。

(イ)謝金及び旅費の不正支払

 雇用していない非常勤職員を雇用したこととし又は出張の事実がないのに職員を出張させたこととして、謝金又は旅費を、委託費から支払ったように偽装し、協議会の預金口座から不正に引き出していた。

(ウ)郵券等の不正換金

 委託費で購入した郵券等を不正に換金していた。

イ 委託事業で使用する物品を購入するなどの名目で委託費から代金の支払を行い、実際はこれを労働局で使用する物品の購入費に充てるなど委託事業の目的外の用途に使用していたもの

 8協議会 5,777,357円

ウ 委託費で購入した郵券を、本件委託事業の終了時の12年度末においても未使用のまま保有するなどしていたのに、これを精算していなかったもの

15協議会 4,178,424円

エ 本件委託事業のコーディネーター等として雇用した非常勤職員に対する謝金の支払額の算定に際し、勤務日数を誤るなどしていたため、委託費から謝金を過大に支払っていたもの

8協議会 986,040円

オ 再委託事業について、協議会事務局が再委託先から提出された精算報告書等の内容を十分に審査していなかったなどのため、再委託事業に要した経費よりも過大に委託費を支払っていたもの

18協議会 20,920,695円

 したがって、次表のとおり、35協議会が9年度から12年度までの間に実施した本件委託事業に係る適正な委託費の額は計4,281,215,299円となり、前記の委託費の支払額計4,348,426,614円との差額計67,211,315円が過大に支払われていて、不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、協議会事務局において、再委託先から提出された精算報告書等の内容を十分に審査しないまま委託費の支払額を確定し精算していたこと及び事実と相違する内容の精算報告書等を作成して本省に提出するなどしていたこと、本省において、協議会から提出された精算報告書等の内容を十分に審査しないまま委託費の支払額を確定し精算していたことなどによると認められる。

 青森県地域雇用開発協議会ほか32協議会 青森県、岩手県、和歌山県、徳島県、高知県、福岡県、佐賀県、熊本県、沖縄県各地域雇用開発協議会、宮城県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、長野県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、京都府、奈良県(平成12年3月31日以前は奈良県雇用創出拡大協議会)、鳥取県(12年3月31日以前は鳥取県雇用対策協議会)、岡山県、山口(12年3月31日以前は山口県雇用安定・創出対策協議会)、香川県、長崎各雇用安定・創出対策協議会及びふるさと定住総合雇用対策推進協議会(秋田県)


表 雇用安定・創出対策事業等及び緊急地域就職促進プロジェクトにおける過大な支払額
(単位:円)
年度
事業
委託費の支払額
適正な委託費の額
過大な支払額
9
雇用安定
38,922,857
38,446,368
476,489
10
雇用安定
64,842,965
56,680,971
8,161,994
11
雇用安定
207,820,066
192,735,913
15,084,153
緊急地域
1,397,252,938
1,382,491,907
14,761,031
12
雇用安定
236,809,985
224,975,892
11,834,093
緊急地域
2,402,777,803
2,385,884,248
16,893,555
雇用安定
548,395,873
512,839,144
35,556,729
緊急地域
3,800,030,741
3,768,376,155
31,654,586
合計
4,348,426,614
4,281,215,299
67,211,315
 事業欄の「雇用安定」は雇用安定・創出対策事業等、「緊急地域」は緊急地域就職促進プロジェクトをそれぞれ示すものである。
 委託費の支払額は、本省が精算報告書等により確定し精算した委託費の額で、概算払交付額から委託費残額等を控除した額である。