平成17年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第7 厚生労働省
不当事項
医療費
(126)労働者災害補償保険の療養の給付に要する診療費の支払が適正でなかったもの
1 保険給付の概要
(1)労働者災害補償保険
労働者災害補償保険は、労働者の業務上の事由又は通勤による負傷、疾病等に対し療養の給付等の保険給付を行うほか、労働福祉事業を行う保険である。
(2)療養の給付に要する診療費の支払
療養の給付は、保険給付の一環として、負傷又は発病した労働者(以下「傷病労働者」という。)の請求に基づき、都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所又は労働福祉事業で設置された病院において、診察、処置、手術等(以下「診療」という。)を行うものである。そして、診療を行ったこれらの医療機関は、都道府県労働局に対して診療に要した費用(以下「労災診療費」という。)を請求することとなっており、都道府県労働局で請求の内容を審査し、その結果に基づき、厚生労働本省において労災診療費を支払うこととなっている。
労災診療費は、「労災診療費算定基準について」(昭和51年基発第72号労働省労働基準局長通達)に基づき算定することとなっている。この算定基準によれば、労災診療費は、労災診療の特殊性などを考慮して、〔1〕健康保険法(大正11年法律第70号)に基づく診療報酬点数表の点数(以下「健保点数」という。)に12円(法人税等が非課税となっている公立病院等については11円50銭)を乗じて算定すること、〔2〕初診料、再診料等特定の診療項目については、健保点数とは異なる点数又は金額を別に定め、これにより算定することとなっている。
2 検査の結果
(1)検査の対象及び方法
労災診療費のうち手術料、入院料等について、北海道労働局ほか14労働局の審査に係る平成16年度の労災診療費の支払の適否を診療費請求内訳書等により検査した。
(2)不適正支払の事態
検査したところ、上記15労働局の審査に係る労災診療費のうち、手術料、入院料、指導管理料、処置料、リハビリテーション料等が適正に支払われていなかったものが、279医療機関について50,295,565円あった。
これらの事態について、その主なものを示すと次のとおりである。
ア 手術料に関するもの
手術料は、創傷処理、植皮術等の区分ごとの所定点数により算定することとなっている。そして、1回の皮切により手術を行い得る範囲(以下「同一手術野」という。)の手術につき、2以上の手術を同時に行った場合の手術料は、主たる手術の所定点数のみにより算定することとなっている。
しかし、前記15労働局管内の217医療機関では、本来算定すべき区分の所定点数によらず、異なる区分のより高い所定点数により手術料を算定したり、同一手術野につき2以上の手術を同時に行っているのに、主たる手術の所定点数によらず、それぞれの手術の所定点数により手術料を算定したりするなどしていた。このため、手術料318件、32,799,107円が適正に支払われていなかった。
イ 入院料に関するもの
入院料のうち特定入院料は、救命救急入院料、回復期リハビリテーション病棟入院料等の区分ごとに算定できる要件を満たす場合に、当該区分の所定点数により算定することとなっている。また、入院室料加算は、傷病労働者が医師又は看護師の常時監視を要する症状であるなどの要件に該当する場合に算定できることとなっている。
しかし、前記15労働局管内の57医療機関では、算定できる要件を満たしていないのに特定入院料を算定したり、傷病労働者が医師又は看護師の常時監視を要する症状でないなど入院室料加算を算定できる要件に該当しないのに、入院室料加算を算定したりするなどしていた。このため、入院料162件、13,695,237円が適正に支払われていなかった。
ウ 指導管理料に関するもの
指導管理料のうち手術後医学管理料は、病院又は診療所に入院している患者について、入院の日から起算して10日以内に行われたマスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注)を伴う手術の後に必要な医学管理を行った場合に、当該手術日の翌日から起算して3日に限り算定することとなっている。
しかし、群馬労働局ほか11労働局管内の28医療機関では、入院の日から起算して10日を超えた期間に行われた手術の後に行った医学管理について手術後医学管理料を算定するなどしていた。このため、指導管理料40件、1,214,379円が適正に支払われていなかった。
| (注) |
閉鎖循環式全身麻酔 閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する吸入麻酔法
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このような事態が生じていたのは、医療機関が労災診療費を誤って算定し請求していたのに、前記の15労働局において、これに対する審査が十分でないまま支払額を決定していたことによると認められる。
上記の適正に支払われていなかった労災診療費の額を都道府県労働局ごとに示すと、次のとおりである。
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