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  • 平成17年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第8 成田国際空港株式会社|
  • 不当事項|
  • 工事

橋りょうの架替え工事の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの


(382)橋りょうの架替え工事の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっているもの

科目
建仮直接費(工事費)
部局等の名称
成田国際空港株式会社本社
工事名
第1PTB南側アプローチ橋上下部工事
工事の概要
成田国際空港第1旅客ターミナルビル南棟の増築に伴い、平成16、17両年度に架け替える橋りょうの上部工及び下部工を整備するもの
工事費
1,052,100,000円
(当初契約額1,071,000,000円)
請負人
横河・住重第1PTB南側アプローチ橋上下部工事特定建設工事共同企業体
契約
平成16年7月 公募型競争契約
支払
平成16年11月、17年9月 2回
不適切な設計となっている工事費
210,252,000円
 

1 工事の概要

 この工事は、成田国際空港株式会社(平成16年3月31日以前は新東京国際空港公団。以下「成田会社」という。)が、成田国際空港第1旅客ターミナルビル南ウイング棟の増築に伴い、構内道路から南ウイング棟に接続する橋りょうを架け替えるため、16、17両年度に、橋りょう(橋長272.3m、幅員8.4m〜13.0m、交角(注1) 83.5度の曲線橋)の上部工として5径間連続鋼床版箱桁の製作及び架設、下部工として橋台支承部の設置、鋼製橋脚5基(P1、P2、P3、P4及びP5橋脚)の製作及び設置等を工事費1,052,100,000円で実施したものである(参考図参照)
 本件橋りょうの構造は、構内道路側の端支点である既設の橋台及び中間支点である橋脚1基(P4橋脚)については支承部を介して上部工と下部工を結合する構造とし、南ウイング棟側の端支点である橋脚1基(P5橋脚)及び中間支点である橋脚3基(P1、P2及びP3橋脚)については支承を介することなく上部工と下部工を直接剛結する構造としている(参考図参照)
 成田会社では、この工事の設計に当たり、15年に設計コンサルタント会社に設計業務を委託し、成果品を検査し、これに基づき本件工事を実施している。
 そして、本件橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づき行っている。示方書によると、設計で想定されない地震動が作用したり、周辺地盤の破壊や構造部材の予測しない複雑な振動によって、想定を超える変位、変形等が生じたりした場合でも上部構造の落下を防止することができるように、落橋防止システムを設置することとされている。この落橋防止システムは、橋軸方向の落橋を防止するための落橋防止構造及び桁かかり長(注2) 並びに橋軸直角方向の落橋を防止するための変位制限構造(注3) 等から構成されていて、橋りょうの形式等に応じて適切に選定することとされている。
 成田会社では、前記の設計業務の成果品に基づき、本件橋りょうは、前記のとおり橋脚4基(P1、P2、P3及びP5橋脚)については上部工と下部工が直接剛結されていて上部工が落橋しにくい構造であると考えたことなどから、橋台の支承部に橋軸方向の落橋を防止するための落橋防止構造及び桁かかり長を設置すれば、橋軸直角方向の変位制限構造を設置しなくても所要の安全度が確保されるものとして、これにより施工していた。

2 検査の結果

 本件工事について、設計図面、設計計算書等を検査したところ、落橋防止システムの設計が、次のとおり適切でなかった。
 すなわち、示方書によると、橋りょうが曲線橋であって、上部構造が橋軸直角方向に移動するときに端支点で拘束されない場合には、落橋する可能性があることから、その場合には端支点に橋軸方向の落橋防止システムに加えて橋軸直角方向の同システムとして変位制限構造の設置を検討することとされている。そして、上部構造が橋軸直角方向に移動することにより落橋の可能性があるか否かは判定式(注4) により判定することとなっている。
 そこで、この判定式に、本件橋りょうの上部構造の長さや全幅員等の条件を当てはめて計算すると、上部工は橋軸直角方向に移動することにより落橋の可能性があるため、橋りょうの端支点には変位制限構造を設置する必要があることとなる。このため、上部工と下部工を直接剛結する構造とした南ウイング棟側の端支点であるP5橋脚には設置する必要はないものの、構内道路側の端支点である橋台の支承部には変位制限構造を設置する必要があると認められる。
 このような事態が生じていたのは、成田会社において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
 したがって、本件橋りょう上部工(橋台から隣接するP1橋脚までの間の上部工(橋長54.3m))等は、落橋防止システムの設計が適切でなかったため、橋軸直角方向の変位制限構造が設置されておらず、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る工事費相当額210,252,000円が不当と認められる。

 交角 橋りょう上部工の両端からの橋軸に直交する線が交わってできる角度
 落橋防止構造及び桁かかり長 桁と橋台の胸壁をPC鋼材で連結するなどして、上下部構造間に予期しない大きな相対変位が生じた場合に、これが桁かかり長(桁端部から下部構造頂部縁端までの長さ)を超えないようにする構造(参考例参照)

(参考例)

(参考例)

 変位制限構造 支承と補完し合って、上下部構造間の相対変位が大きくならないようにするためのもので、桁と橋台部に突起を設けるなどしてその相対変位を制限する構造(参考例参照)


(参考例)

(参考例)

 判定式


(注4)

(参考図)

橋りょう概念図

(平面図)

(平面図)

(側面図)

(側面図)