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  • 平成17年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

国会からの検査要請事項に関する報告


<参考:報告書はこちら>

第4 地方財政の状況に関する会計検査の結果について

要請を受諾した年月日
平成17年6月8日
検査の対象
総務省、都道府県、市町村
検査の内容
地方公共団体の決算についての検査要請事項
平成17年度地方財政計画額
83兆7687億円
 
平成16年度地方公共団体普通会計決算の特殊勤務手当額
1109億円
 
平成16年度地方公共団体普通会計決算の職員互助組合等に対する補助金額
602億円
 
報告を行った年月日
平成18年10月18日

1 検査の背景及び実施状況

(1)検査の要請の内容

 会計検査院は、平成17年6月8日、参議院から、下記事項について会計検査を行い、その結果を報告することを求める要請を受けた。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一) 検査の対象

 総務省、都道府県、市町村

(二) 検査の内容

 総務省の資料等を活用して、地方公共団体の決算についての次の各事項

1 地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況

2 決算額に関するその他次の事項
 ・職員に対する特殊勤務手当等の状況
 ・職員の福利厚生事業への支出状況
 ・職員の病気休暇等の制度の状況

(2)平成15年度決算審査措置要求決議の内容

 参議院決算委員会は、17年6月7日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成15年度決算審査措置要求決議」を行っている。
 このうち、上記検査の要請に関連する項目の内容は、以下のとおりである。

8 地方財政計画の計画額と決算額の乖離について

 地方財政計画は、地方自治体が標準的に歳入・歳出すると見込まれる地方税収入や人件費、行政経費などの総額を算出するもので、交付税の法定率だけでは歳入と歳出の差額が生ずる場合に、その財源不足額は地方交付税の増額や地方債の増発等によって措置されている。
 しかし、地方財政計画の歳出項目ごとの計画額と決算額が近年大きく乖離している。平成14年度の地方財政計画額をその決算額と比較すると、例えば、「投資的経費(単独)」では、約15.7兆円の計画額に対して決算額は約10.6兆円にとどまり、計画額は決算額に比して約5.1兆円の過大計上となっている。これに対して、枠的に計上される「一般行政経費」では、約20.0兆円の計画額に対して決算額は約26.9兆円に上り、計画額は決算額に比して約6.9兆円の過少計上となっている。また、「給与関係経費」も、約24.5兆円の計画額に対して決算額は約25.9兆円に上り、計画額は決算額に比して約1.4兆円の過少計上となっている。
 このような計画額と決算額が乖離している現状に対して、財務省は、地方財政計画の「投資的経費(単独)」等の過大計上が給与関係経費等の不適正な支出の背景、さらには、地方交付税の肥大化につながっており、その是正・削減は喫緊の課題であると主張し、総務省は、経常的経費と投資的経費のプラス、マイナスは見合っており、投資的経費だけが過大計上であるとの主張は受け入れられず、仮に是正するならば一体的に是正すべきもの等と主張している。
 政府は、国民に対する説明責任を果たす観点から、地方団体の決算の状況を十分調査し、地方財政計画の計画額と決算額の乖離の縮小に努め、地方財政計画の適正な計上に努めるべきである。


9 地方公務員の厚遇について

 一部自治体の地方公務員が通常の給与以外の不合理な手当や福利厚生などにより厚遇を受けているとの批判が高まり、全国的な問題となった。
 地方公務員の特殊勤務手当については、〔1〕国家公務員においては設けられていない特殊勤務手当、〔2〕他の手当又は給料で措置される勤務内容に対して重複の観点から検討を要すると思われる特殊勤務手当、〔3〕月額支給等となっている特殊勤務手当が、多数の自治体において存在することが総務省の調査により明らかになった。
 また、地方公務員の福利厚生については、報道などで、一部の自治体において、職員の互助組織を介在させることにより、所定の給与等とは別に、退職給付金や祝い金などの現金給付、旅行券や家電製品などの物品給付という様々な形で公費が個人に給付される例が多くあることが明らかにされた。
 これらの特殊勤務手当や福利厚生などには、住民の理解が得られないものや、制度の趣旨に反するものも見受けられる。
 また、給与が保障されている病気休暇の日数等についても、民間企業等との格差が指摘されている。
 政府及び会計検査院は、地方自治の本旨を尊重し、地方自治体の行財政権を損なわないよう配慮しつつ、地方自治体における福利厚生の実態並びに休暇制度の実態及びその国・地方の格差について、特殊勤務手当と同様に調査をする必要がある。

(3)検査対象の概要

ア 地方財政計画と地方公共団体の決算

 地方交付税法(昭和25年法律第211号)第7条に基づき、内閣は、毎年度、翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類を作成し、これを国会に提出するとともに、一般に公表しなければならないとされている。この地方団体の歳入歳出総額の見込額が地方財政計画と呼ばれており、すべての都道府県及び市町村の普通会計に属する歳入歳出総額の見込額が計上されている。地方財政計画には、地方財政全体の収支見込みを明らかにし地方財源の不足額に対して必要な措置を講じることにより、地方団体が標準的な行政水準を確保できるようにすることなどの意義、役割があるとされており、地方交付税の総額は地方財政計画の策定を通じて決定されている。
 地方公共団体における普通会計とは、一般会計及び特別会計のうち地方公営事業会計以外の会計の純計額であり、地方公共団体の財政状況を統一的に把握及び比較するため用いられている会計区分である。地方公共団体の普通会計決算の歳入は、地方税、地方交付税、国庫支出金、地方債などの性質別に区分されている。また、歳出は、行政目的に従って区分された総務費、民生費、農林水産業費、土木費、教育費などの目的別の決算が基本であるが、地方財政計画の歳出区分は経費の性質別になっていることなどから、目的別決算とは別に、人件費、物件費、扶助費、普通建設事業費などの性質別に区分した決算資料も作成されている。

イ 地方公務員の特殊勤務手当、福利厚生、病気休暇等

 地方公務員法(昭和25年法律第261号)第24条第6項は、職員の給与等は条例で定めると規定している。また、地方自治法(昭和22年法律第67号)第204条第2項は、都道府県及び市町村が条例で職員に対し支給することができる手当の一つとして特殊勤務手当を規定している。地方公務員の特殊勤務手当は、著しく危険、不快、不健康又は困難な勤務などの特殊な勤務に対する手当であるとされているが、具体的な特殊勤務手当の種類や内容は各地方公共団体の条例により規定されている。
 福利厚生には、保健・医療、元気回復(レクリエーション)、貸付事業、厚生施設の運営、祝金・弔慰金等の給付などの事業がある。これらの事業は、地方公共団体が実施するもの及び地方公務員共済組合が実施するもののほか、各地方公共団体における職員のための任意的な互助組織として設置されている職員の互助組合や互助会など(以下「職員互助組合等」という。)を通じて実施されるものが多い。職員互助組合等については、特に法律の規定はないが、各地方公共団体の条例等に基づき設置され、地方公務員共済組合の事業を補完する形で福利厚生事業などを実施している。その事業に要する費用には、職員の掛金のほか、地方公共団体からの補助金による収入が充てられる場合が多い。
 地方公務員の休暇には、年次有給休暇、病気休暇、特別休暇及び介護休暇の4種類がある。このうち病気休暇は、職員が負傷又は病気を療養するために必要とされる期間について認められるものであり、特別休暇は、選挙権の行使、結婚、出産、交通機関の事故その他の特別の事由がある場合で条例に基づく人事委員会規則等の定める場合に認められるものである。そして、両休暇とも給与に関する条例の定めるところにより有給とされている。

(4)検査の観点及び着眼点

 地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況については、有効性の観点から、地方財政計画の計上額とこれに対応する地方公共団体の普通会計決算額のうち、一般行政経費、投資的経費(単独)及び給与関係経費のかい離額に着眼して検査した。
 決算額に関するその他の事項については、有効性の観点から、16年度又は17年4月1日現在の実態並びに休暇制度の実態及びその国・地方の格差に着眼して検査した。

(5)検査の対象及び方法

 地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況については、総務省から提出された地方財政計画及び普通会計決算額に関する資料等に基づき検査した。
 決算額に関するその他の事項については、北海道ほか14府県(注) 及び管内の176市町村(6政令指定都市を含む。)を対象として、総務省の資料等を活用したほか、上記の15道府県及び176市町村に赴き、決算関係書類等の各種資料の提示を受け、担当者等から説明を聴取するなどして実地に検査した。
 また、176市町村は、本院が18年に実地に検査した時点の市町村数であるが、17年以前に多くの市町村合併が行われている。検査対象は、検査項目に応じて16年度又は17年4月1日現在としたことから、各検査項目における対象とした市町村数は、特殊勤務手当及び福利厚生が16年度に係る342市町村、住居手当及び通勤手当並びに休暇制度が17年4月1日現在における226市町村となっている。

 北海道ほか14府県 北海道、大阪府、山形、栃木、千葉、山梨、長野、静岡、滋賀、兵庫、鳥取、岡山、愛媛、福岡、宮崎各県


2 検査の結果

(1)地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況

ア 地方財政計画の計上額

 17年度の地方財政計画の歳入、歳出の総額は83兆7687億円であり、表1—1のとおり区分されている。地方財政計画では、これらの歳入歳出について、地方公共団体の実際の収支見込額ではなく、標準的な水準における収入及び支出の額が計上されている。
 国は地方に対して、国庫補助事業のほか法令等を通じて行政事務の多くを義務付けていることから、地方公共団体が国庫補助事業だけでなく単独事業も含めて標準的な行政水準を確保できるようにするため、地方財政計画の策定を通じて地方財政全体の標準的な収支の状況が明らかにされている。

表1—1 地方財政計画額

(単位:億円)


歳入
歳出
区分
15年度
16年度
17年度
区分
15年度
16年度
17年度
地方税
321,725
323,231
333,189
給与関係経費
234,383
229,990
227,240
地方譲与税
6,939
11,452
18,419
一般行政経費
(補助)
(単独)
210,263
(98,414)
(111,849)
218,833
(101,183)
(117,650)
231,307
(100,538)
(130,769)
地方特例交付金
10,062
11,048
15,180
地方交付税
180,693
168,861
168,979
公債費
137,673
136,779
133,803
国庫支出金
122,600
121,238
111,967
維持補修費
10,068
9,987
9,817
地方債
150,718
141,448
122,619
投資的経費
(補助)
(単独)
232,868
(84,068)
(148,800)
213,283
(78,583)
(134,700)
196,761
(73,061)
(123,700)
使用料及び手数料
16,386
16,420
16,438
公営企業繰出金
32,052
30,797
28,659
雑収入
52,984
52,971
50,896
地方交付税の不交付団体における平均水準を超える必要経費
4,800
7,000
10,100
862,107
846,669
837,687
862,107
846,669
837,687

 歳入では、地方税の構成比は39.8%であるが、一方、国から地方に対して支出される地方譲与税、地方特例交付金、地方交付税及び国庫支出金の合計の構成比は37.5%になっていて、国から移転される財源が地方財政にとって大きな割合を占めている。また、歳出では、一般行政経費が構成比27.6%で、給与関係経費や投資的経費を上回っている。

イ 地方財政計画の計上額の算定方法

 地方財政計画の計上額については、地方公共団体の実際の収支見込額ではなく、標準的な水準における収入及び支出の見込額が計上されている。また、地方公共団体の単年度における年度当初予算ベースの収入及び支出の見込額が計上されている。
 地方財政計画における標準的な歳入歳出の計上額の算定方法については、総務省の説明によると、その歳入歳出区分別の概要は表1—2のとおりである。

表1—2 地方財政計画17年度計上額の算定方法の概要

[歳入]

(単位:億円)

区分
計上額
算定方法の概要
地方税
道府県税
市町村税
142,737
190,452
課税標準額等×税率×徴収率+未収納税額の徴収見込額+税制改正による増減収見込額
地方譲与税
18,419
国の予算ベース
地方特例交付金
15,180
国の予算ベース
地方交付税
168,979
国の予算ベース
国庫支出金
111,967
地方公共団体普通会計に対する国庫補助負担金等に係る国の歳出予算額を積上げ計上
地方債
122,619
投資的経費の伸率等を基に計上
使用料及び手数料
高等学校授業料
幼稚園保育料
2,984
授業料・保育料単価×生徒・園児数
その他
13,454
前年度計画額×決算の伸率
雑収入
貸付金元金収入
20,291
過去の調査数値を基に計上
分担金・負担金
財産売払収入
財産運用収入
収益事業収入など
3,949
4,795
1,609
5,077
前年度計画額×各項目別の決算の伸率

[歳出]

(単位:億円)


区分
計上額
算定方法の概要
給与関係経費
給与費
226,684
職員数×給与単価
恩給費
556
前年度計画額×国の文官等恩給費予算伸率
一般行政経費(補助)
100,538
各省庁が作成した国庫補助負担金等の予算関係資料を基に、地方公共団体の普通会計に対する国庫補助負担金等に係る経費を積上げ計上
一般行政経費
(単独)
社会福祉関係
教育・人材育成対策
環境対策
地方活性化都市再生対策
情報化科学技術振興対策
各行政運営経費
  小計
47,198
5,325
3,085
10,483
4,899
13,756
84,746
枠として計上
特定行政経費
3,703
国と協調して行う各種団体に対する出資等の地方負担額を積上げ計上
貸付金
19,458
過去の調査数値を基に計上
追加財政需要
5,700
例年定額計上
16年度一般財源化分
17年度一般財源化分
国民健康保険関係事業費
6,130
2,666
8,366
16・17年度の国庫補助負担金改革で一般財源化した補助金等に係る経費を計上
公債費
元金償還金
利払費
102,877
30,926
地方全体の決算統計等を基に当年度における元利償還費を計上
維持補修費
9,817
前年度計画額×決算の伸率
投資的経費
(補助)
直轄事業負担金
公共事業費
失業対策事業費
11,351
61,605
105
各省庁が作成した国庫補助負担金等の予算関係資料を基に、地方公共団体普通会計に対する国庫補助負担金等に係る経費を積上げ計上
投資的経費
(単独)
一般事業費
特別事業費
70,292
53,408
枠として計上
公営企業繰出金
28,659
地方公営企業法等の規定に基づき、一般会計等が負担することが適当な経費について、各事業ごとに決算統計数値等により積上げ計上
地方交付税の不交付団体における平均水準を超える必要経費
10,100
交付税不交付団体における標準的収入が標準的経費を上回る実績額を基に積上げ計上

〔1〕 地方税は、道府県税及び市町村税の各税目別に示された課税標準額等に法令等で定められている標準税率を乗ずるなどして算定される。
〔2〕 給与関係経費のうち給与費は、義務教育教職員、警察関係職員、消防職員、非義務教育教職員、一般職員に区分し、職員数に給与単価を乗ずるなどして計上されている。職員数(17年度2,456,707人)は、前年度の計画人員に対して定員合理化などによる増減数を職員区分別に算定しており、実際の職員数とは差異が生じている。給与単価は、義務教育教職員については、義務教育費国庫負担金の積算単価に準拠しており、義務教育教職員を除く一般職員等については、職員区分別に、指定統計である給与実態調査結果による支給総額を支給人員で割った平均単価を算出した上で、国家公務員の給与水準との均衡を図るため給与水準のラスパイレス指数で割返して国家公務員ベースに修正した単価を基礎としている。
〔3〕 一般行政経費(単独)については、計上額の大部分を占める社会福祉関係など各種の行政経費8兆4746億円が、特に経費の積上げなどによらず枠として計上されている。そのほか、貸付金は、過去に調査した数値を基礎とした額が計上されている。また、追加財政需要は、現年発生災害等の年度途中における財政需要に対応するものであり、その計上額は、例年、一定額の5700億円となっている。
〔4〕 投資的経費(単独)については、特に経費の積上げなどによらず枠として計上されている。過疎対策事業費などの特別事業費は、政策や近年の実績等を勘案して内訳の計上額が決定されているが、投資的経費(単独)の総額から特別事業費を除いた額が一般事業費の計上額となっている。

ウ 地方財政計画の種類ごとの決算額の状況

 地方財政計画は、地方公共団体の標準的な水準における歳入歳出の見込額を計上しており、実際の歳入歳出額の全体を把握するものではないことなどから、地方財政計画額と普通会計決算額を実質的に比較するためには、次のような修正措置を行う必要がある。
〔1〕 地方財政計画の歳入歳出区分と普通会計決算の歳入歳出区分とは一致していないので、計上方法の差異を修正するため移し替えを行う。
〔2〕 地方財政計画額は、年度途中における補正予算に伴い追加された事業などに係る額の増額などを行う。
〔3〕 普通会計決算額は、前年度からの繰越額を控除するとともに、翌年度への繰越額を加算し、地方財政計画の対象外とされている歳入歳出額を控除する。
 総務省では、上記の修正措置を行うことにより、地方財政計画額と普通会計決算額の実質的な比較を毎年度行っている。15年度の地方財政計画額と普通会計決算額との比較による両者のかい離額の状況は、表1—3のとおりである。

表1—3 15年度の地方財政計画額と普通会計決算額とのかい離額

(歳入)

(単位:億円)

区分
地方財政計画額a
修正後計画額b
普通会計決算額c
修正後決算額d
かい離額
単純c-a
実質d-b
地方税
地方譲与税
地方特例交付金
地方交付税
国庫支出金
地方債
使用料、手数料
雑収入
321,725
6,939
10,062
180,693
122,600
150,718
16,386
52,984
862,107
321,725
6,939
10,062
180,693
127,437
150,718
16,386
52,984
866,944
326,657
6,940
10,062
180,693
131,421
137,894
24,921
130,282
948,870
322,116
6,940
10,062
180,693
127,139
132,360
22,536
73,150
874,996
4,932
1
8,821
△12,824
8,535
77,298
86,763
391
1
△298
△18,358
6,150
20,166
8,052

(歳出)

(単位:億円)


区分
地方財政計画額a
修正後計画額b
普通会計決算額c
修正後決算額d
かい離額
単純c-a
実質d-b
給与関係経費
一般行政経費
(補助)
(単独)
公債費
維持補修費
投資的経費
(補助)
(単独)
公営企業繰出金
水準超経費
234,383
210,263
98,414
111,849
137,673
10,068
232,868
84,068
148,800
32,052
4,800
862,107
242,250
204,783
90,779
114,004
137,673
10,068
235,318
86,527
148,791
32,052
4,800
866,944
259,323
302,320
 
 
131,549
10,564
185,708
94,241
91,467
36,354
925,818
253,481
272,847
 
 
128,721
10,564
183,033
85,078
97,955
36,354
885,000
24,940
92,057
 
 
△6,124
496
△47,160
10,173
△57,333
4,302
△4,800
63,711
11,231
68,064
 
 
△8,952
496
△52,285
△1,449
△50,836
4,302
△4,800
18,056

(ア)歳入の実質かい離額

 主な歳入区分における実質かい離額の推移は表1—4のようになる。

表1—4 歳入の実質かい離額の推移

(単位:兆円)


区分
62
63
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
地方税
2.07
2.73
2.25
1.82
1.64
-0.10
0.10
0.27
0.28
0.71
-0.55
-1.14
-0.16
0.00
-0.53
-0.58
0.04
地方債
-0.31
-0.33
-0.09
0.34
1.01
2.32
1.30
1.94
2.24
1.08
0.39
0.00
-0.40
-1.23
-1.63
-1.70
-1.84
使用料及び手数料
0.46
0.49
0.54
0.58
0.58
0.61
0.64
0.64
0.66
0.69
0.65
0.57
0.62
0.65
0.64
0.62
0.62
雑収入
2.40
2.67
3.22
4.12
4.37
4.04
4.30
3.86
3.83
2.99
3.33
4.11
3.56
3.16
3.01
2.38
2.02
その他
-0.18
-0.18
-0.14
-0.11
-0.19
-0.01
0.04
-0.09
-0.12
0.06
0.05
-0.25
-0.12
-0.29
-0.05
-0.38
-0.03
かい離額の合計
4.44
5.38
5.77
6.75
7.41
6.85
6.38
6.62
6.88
5.53
3.87
3.28
3.50
2.29
1.44
0.34
0.81

〔1〕 地方税は3年度までは決算額が1兆円を上回るかい離が生じていたが、4年度以降はほとんどかい離が生じていない。
〔2〕 地方債は3年度から8年度までは決算額が1兆円を上回るかい離が生じていたが、12年度以降は逆に決算額が下回るかい離が生じている。
〔3〕 使用料及び手数料は比較的少額だが恒常的に決算額が上回るかい離が生じている。
〔4〕 雑収入は恒常的に決算額が2兆円を上回るかい離が生じている。

(イ)歳出の実質かい離額

 主な歳出区分における実質かい離額の推移は表1—5のとおりである。

表1—5 歳出の実質かい離額の推移

(単位:兆円)


区分
62
63
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
一般行政経費
3.96
4.23
3.58
6.11
7.51
7.83
7.33
8.16
8.97
8.69
8.59
9.13
9.00
7.73
7.61
6.87
6.81
給与関係経費
1.34
1.37
1.38
1.23
1.11
1.04
0.91
1.19
1.22
1.39
1.58
1.43
1.40
1.83
1.57
1.39
1.12
投資的経費(補助)
0.03
0.15
0.26
0.32
0.18
0.33
0.30
-0.31
0.07
-0.09
0.07
-0.15
-0.09
-0.47
-0.36
-0.20
-0.14
投資的経費(単独)
-1.01
-0.36
0.06
1.24
1.58
1.05
-0.43
-1.23
-1.91
-2.95
-4.20
-3.75
-5.68
-6.14
-6.03
-5.07
-5.08
その他
-0.55
-1.15
-2.17
-2.91
-2.46
-2.21
-1.04
0.04
-0.15
-0.48
-0.53
-1.26
-0.31
-0.71
-0.97
-1.05
-0.90
かい離額の合計
3.76
4.23
3.12
5.98
7.92
8.05
7.06
7.85
8.20
6.56
5.51
5.40
4.32
2.24
1.82
1.93
1.81

〔1〕 給与関係経費は恒常的に決算額が1兆円から2兆円上回るかい離が生じている。
〔2〕 一般行政経費は恒常的に決算額が上回るかい離が生じており、2年度以降は6兆円を超えるかい離となっている。
〔3〕 投資的経費(単独)は7年度までは2兆円以内のかい離となっていたが、11年度以降は決算額が5兆円を超えて下回るかい離が生じている。
〔4〕 投資的経費(補助)はほとんどかい離が生じていない。

(ウ)かい離の要因

〔1〕 一般行政経費

 一般行政経費の決算には、国が法令等を通じて義務付けている行政事務などに係る支出のほか、各地方公共団体が自主的に執行する広範囲に及ぶ各種の支出が含まれており、地方財政計画で見込んでいる支出以外の支出も含まれている。そして、地方財政計画では一般行政経費のうち単独事業のほとんどは積上げではなく枠として計上されているが、地方単独事業は各地方公共団体が自主的に実施するものであり、このような地方における各種の支出に係る決算額の実態が十分には地方財政計画額に反映されていないため、かい離が生じていると考えられる。

〔2〕 投資的経費(単独)

 国は、バブル経済崩壊後の経済状況に対する対策の一環として、4年度から13年度までに数次にわたり大型の経済対策を実施している。これらの経済対策では、公共事業等による社会資本整備などの事業を内容とする財政措置が講じられている。4年8月から10年4月まで6回の経済対策においては、国による公共事業等の実施に合わせて、地方に対する単独事業や公共用地先行取得の要請が盛り込まれたこともあり、地方の投資的経費(単独)の決算額は大きく増加した。しかし、10年11月の国の経済対策からは地方単独事業等の要請が盛り込まれなくなったことに伴い、地方の投資的経費(単独)の決算額は大きく減少している。地方においては、地方税収入が伸び悩む一方で地方債の累増に伴う公債費の増加などによる財政状況の悪化により、国が地方財政計画で見込んだ以上に単独事業の投資的経費を抑制する政策がとられてきたことにより、地方財政計画とのかい離が生じていると考えられる。

〔3〕 給与関係経費

 地方財政計画に計上された人員(15年度2,480,098人)に対し、地方公共団体における実際の職員数(15年4月1日現在2,674,177人)は多くなっており、この職員数の差が給与関係経費のかい離の主な要因と考えられる。

(2)決算額に関するその他の事項

ア 職員に対する特殊勤務手当等の状況

(ア)特殊勤務手当の手当数及び支給額

 地方公共団体普通会計の16年度性質別歳出決算における人件費のうち職員給の額は18兆7652億円で、このうち特殊勤務手当の額は1109億円になっている。この普通会計の特殊勤務手当の額は、9年度をピークに10年度以降は減少している。
 実地検査の対象とした15道府県及び6政令指定都市が、16年度に普通会計及び公営事業会計で支給した手当数、支給額及び支給額を職員数で除した1人当たり支給額の状況は、表2—1のとおりである。

表2—1 15道府県及び6政令指定都市の手当数、支給額

(単位:支給額・千円、1人当たり支給額・円)

団体名
普通会計
公営事業会計
合計
手当数
支給額
職員数
1人当たり支給額
手当数
支給額
職員数
1人当たり支給額
手当数
支給額
北海道
53
3,542,943
80,080
44,242
16
651,624
2,055
317,091
69
4,194,567
山形県
37
693,100
18,216
38,048
8
358,826
2,614
137,270
45
1,051,926
栃木県
31
1,022,116
25,120
40,689
11
118,301
836
141,508
42
1,140,417
千葉県
47
2,332,128
59,836
38,975
22
473,012
4,012
117,899
69
2,805,140
山梨県
39
399,142
14,345
27,824
8
265,963
1,021
260,492
47
665,105
長野県
44
931,033
28,455
32,719
16
212,389
1,266
167,763
60
1,143,422
静岡県
74
1,763,502
39,209
44,976
22
558,293
2,167
257,634
96
2,321,795
滋賀県
55
728,504
18,208
40,010
10
248,284
1,007
246,558
65
976,788
大阪府
37
4,924,688
84,044
58,596
33
804,922
4,281
188,021
70
5,729,610
兵庫県
63
2,607,143
58,912
44,254
25
1,328,970
5,023
264,576
88
3,936,113
鳥取県
29
337,553
11,003
30,678
11
154,206
828
186,239
40
491,759
岡山県
29
857,447
24,811
34,559
19
44,641
281
158,864
48
902,088
愛媛県
36
701,161
21,118
33,202
11
513,772
2,149
239,074
47
1,214,933
福岡県
30
2,367,698
52,578
45,032
8
106,025
863
122,856
38
2,473,723
宮崎県
49
641,071
17,248
37,167
8
347,956
1,588
219,115
57
989,027
札幌市
20
1,024,629
11,829
86,620
27
332,459
4,026
82,577
47
1,357,088
千葉市
28
262,977
6,609
39,790
36
592,203
1,236
479,128
64
855,180
大阪市
34
4,564,529
30,732
148,526
76
4,926,537
17,294
284,869
110
9,491,066
神戸市
35
2,603,206
13,569
191,849
39
1,510,686
5,635
268,089
74
4,113,892
北九州市
40
641,867
7,753
82,789
41
560,971
2,306
243,265
81
1,202,838
福岡市
44
561,735
8,200
68,504
46
372,740
2,471
150,845
90
934,475

 また、政令指定都市以外の336市町村の手当数及び支給額の状況については、手当数及び支給額の計数区分別に市町村数を示すと表2—2のとおりである。

表2—2 手当数及び支給額の区分別の該当市町村数

[手当数]

手当数の区分
普通会計
公営事業会計
0
1〜9
10〜19
20〜29
30以上
0
1〜9
10〜19
20〜29
30以上
北海道管内
3
22
6
3
1
5
16
11
2
1
山形県管内
4
9
4
 
 
3
9
2
3
 
栃木県管内
3
8
3
 
 
6
6
2
 
 
千葉県管内
 
2
5
4
1
 
9
2
1
 
山梨県管内
4
8
 
 
 
4
6
2
 
 
長野県管内
3
22
2
 
1
8
15
4
 
1
静岡県管内
3
19
8
1
 
10
16
3
1
1
滋賀県管内
2
23
3
 
 
6
17
3
2
 
大阪府管内
 
2
6
1
2
 
3
5
3
 
兵庫県管内
 
 
3
4
3
 
 
4
2
4
鳥取県管内
12
18
1
 
 
14
13
4
 
 
岡山県管内
5
23
6
 
 
17
12
4
1
 
愛媛県管内
9
19
2
4
 
15
15
3
1
 
福岡県管内
6
11
1
 
 
11
6
1
 
 
宮崎県管内
2
16
 
1
 
4
13
2
 
 
56
202
50
18
8
103
156
52
16
7

[支給額]

支給額の区分
普通会計
公営事業会計
0円
100万円未満
1000万円未満
1億円未満
1億円以上
0円
100万円未満
1000万円未満
1億円未満
1億円以上
北海道管内
3
12
11
9
 
5
4
3
10
13
山形県管内
4
5
5
3
 
3
5
 
4
5
栃木県管内
3
6
3
1
1
6
4
1
2
1
千葉県管内
 
1
2
8
1
 
6
4
 
2
山梨県管内
4
4
4
 
 
4
3
2
2
1
長野県管内
3
17
6
2
 
8
7
9
2
2
静岡県管内
3
10
9
7
2
10
9
2
2
8
滋賀県管内
2
18
6
2
 
6
10
4
7
1
大阪府管内
 
 
1
6
4
 
1
2
2
6
兵庫県管内
 
 
 
6
4
 
 
 
1
9
鳥取県管内
12
17
1
1
 
14
8
4
5
 
岡山県管内
5
18
5
4
2
17
4
3
9
1
愛媛県管内
9
11
9
3
2
15
8
6
3
2
福岡県管内
6
8
2
2
 
11
3
1
2
1
宮崎県管内
2
10
5
2
 
4
8
1
6
 
56
137
69
56
16
103
80
42
57
52

(イ)検討を要すると思われる特殊勤務手当

 総務省では、15年度における都道府県及び政令指定都市の特殊勤務手当の支給状況の特別調査を次の3つの視点から実施し、結果を16年12月に公表している。
〔1〕 国家公務員においては設けられていない特殊勤務手当
 地方公共団体固有の業務に基づくものなどがあり、国にない手当であることをもって直ちに妥当でないというものではないが、時代の変化を踏まえ、必要性及び妥当性を改めて検証する必要があるもの
〔2〕 他の手当又は給料で措置される勤務内容に対して重複の観点から検討を要すると思われる特殊勤務手当
〔3〕 月額支給等となっている特殊勤務手当
 対象となる業務に従事した場合ごとに日額や件数当たりで支給されることが適当であり、月額となっている支給方法の妥当性の検討が必要であるもの
 そして、15道府県及び6政令指定都市において、上記の総務省調査で検討を要するとされた特殊勤務手当に係る16年度の手当数及び支給額は、〔1〕国家公務員においては設けられていない特殊勤務手当が、15道府県359手当、支給額7,624百万円、6政令指定都市225手当、支給額7,733百万円、〔2〕他の手当又は給料で措置される勤務内容に対して重複の観点から検討を要すると思われる特殊勤務手当が、12道府県42手当、支給額676百万円、6政令指定都市93手当、支給額7,688百万円、〔3〕月額支給等となっている特殊勤務手当が、15道府県246手当、支給額10,481百万円、6政令指定都市128手当、支給額6,525百万円となっている。
 また、実地検査の対象とした市町村における16年度の特殊勤務手当について、前記の総務省調査と同様な視点から検査した結果、検討を要すると思われる手当数及び支給額は表2—3のとおりとなっている。

表2—3 市町村における検討を要すると思われる特殊勤務手当の手当数及び支給額

(単位:千円)


区分
〔1〕国家公務員に設けられていない
〔2〕他の手当、給料との重複の観点
〔3〕月額支給等
16年度特殊勤務手当の総数、総支給額
支給額
支給額
支給額
支給額
北海道
35市町村
366
2,606,661
75
732,906
213
1,289,977
546
3,926,239
山形県
17市町村
94
742,658
17
248,447
37
892,991
180
1,352,108
栃木県
14市町
64
169,678
12
163,982
56
228,116
125
530,271
千葉県
12市町
217
931,206
40
221,679
140
658,254
318
1,408,355
山梨県
12市町村
43
171,325
4
9,089
39
145,031
69
226,599
長野県
28市町村
203
718,799
29
105,829
107
438,878
269
856,527
静岡県
31市町村
238
2,039,486
36
142,112
122
1,554,342
378
3,562,546
滋賀県
28市町村
146
166,993
38
164,425
93
184,128
285
566,139
大阪府
11市町
235
1,745,919
86
516,140
134
1,173,288
352
2,657,811
兵庫県
10市
330
2,258,031
101
511,812
165
1,106,540
488
2,994,300
鳥取県
31市町村
101
188,378
12
15,895
60
142,132
135
259,369
岡山県
34市町村
175
904,518
35
308,050
75
494,921
273
1,369,491
愛媛県
34市町村
227
541,469
20
80,342
109
439,653
323
859,990
福岡県
18市町
40
224,366
10
86,029
25
152,925
60
296,958
宮崎県
19市町
60
134,523
19
33,410
66
199,703
129
345,558
2,539
13,544,010
534
3,340,147
1,441
9,100,879
3,930
21,212,261

 愛媛県管内の2市町の計数が不明のため、合計の市町村の数は334となっている。


(ウ)その他の手当

 特殊勤務手当以外の諸手当について、17年4月1日現在の制度を検査したところ、国家公務員に係る諸手当の制度とは異なっているものが多くみられた。
 特に、住居手当のうち自宅所有者に対する手当について、国家公務員の場合は、住宅を新築又は購入した日から5年以内に限り月額2,500円とされているのに対し、15道府県及び156市町村では、手当支給期間が住宅を新築又は購入した日から5年を超えて退職等までとなっており、5年以内の支給月額も2,500円以上となっている。
 また、通勤手当のうち通勤のため自動車等を使用することを常例とする職員に係る手当について、国家公務員の場合は、自動車等の使用距離が片道2km以上5km未満は月額2,000円、片道5km以上10km未満は月額4,100円などとされているのに対し、14道県及び123市町村では、支給月額がそれぞれ2,000円以上、4,100円以上となっている。

イ 職員の福利厚生事業への支出状況

(ア)職員互助組合等

 地方公共団体の福利厚生事業費において大きな割合を占める職員互助組合等に対する補助金の額は、普通会計については性質別歳出決算の人件費の内訳として示されており、16年度は計602億6786万円となっている。
 道府県の職員互助組合等は、一般の知事部局の職員、学校教職員、警察職員などの別に複数の職員互助組合等が設置され、各職員は該当する職員互助組合等に加入している。なお、学校教職員互助組合等には、道府県の学校教職員のほか市町村の学校教職員が加入している場合が多い。
 政令指定都市を含めた市町村の職員互助組合等は、様々な形態となっているが、おおむね次の類型に分類される。なお、職員互助組合等が設置されていない市町村もある。
〔1〕 各市町村に一つの職員互助組合等が設置され、職員が加入している。
〔2〕 各市町村に一般部局のほか、学校教職員、交通局、水道局などの部局別に複数の職員互助組合等が設置され、各職員は該当する職員互助組合等に加入している。
〔3〕 各市町村には職員互助組合等が設置されていないが、道府県内市町村の連合会的な職員互助組合等が設置されており、職員が加入している。
〔4〕 各市町村に職員互助組合等が設置されており、職員が加入している。また、職員は道府県内市町村の連合会的な職員互助組合等にも加入している。
 そして、市町村職員のうち学校教職員については、市町村に設置される職員互助組合等には加入しないで、道府県の学校教職員互助組合等に加入している場合が多い。
 これらの職員互助組合等に対しては、各地方公共団体から補助金が交付される場合がほとんどであり、職員互助組合等は、主に職員による掛金と地方公共団体からの補助金を財源として事業を行っている。
 実地検査の対象とした15道府県が職員互助組合等に対する16年度の補助金額は、14道府県が1億円以上を交付しており、最高額は大阪府の49億8283万円、最低額は千葉県の100万円となっている。
 また、実地検査の対象とした市町村が職員互助組合等に対して16年度に交付した補助金額について、補助金額の計数区分別に市町村数を示すと表2—4のとおりである。職員互助組合等に職員が加入していなかったり、加入していても補助金を交付していなかったりする市町村もあるが、多くの市町村では職員互助組合等に対する補助金の交付が行われている。市町村のうち6政令指定都市の補助金額は1億円以上の区分に該当するが、特に大阪市は4職員互助組合等に対する補助金額の合計が73億4222万余円となっている。
 職員互助組合等に対する地方公共団体の補助金については、条例等で負担率などが規定されていない場合が多く、補助金負担率及び補助金額は地方公共団体により差異がみられる。

表2—4 職員互助組合等に対する補助金額の区分別の該当市町村数

支給額の区分
0円
100万円
未満
100万円〜
1000万円未満
1000万円〜
5000万円未満
5000万円〜
1億円未満
1億円以上
北海道管内
 
2
19
13
1
1
山形県管内
 
 
14
2
1
 
栃木県管内
6
1
3
3
 
1
千葉県管内
 
 
4
5
2
2
山梨県管内
2
4
5
1
 
 
長野県管内
1
9
16
2
1
 
静岡県管内
2
5
12
9
1
2
滋賀県管内
 
 
23
4
1
 
大阪府管内
 
 
 
1
2
9
兵庫県管内
 
 
 
3
3
4
鳥取県管内
 
 
26
2
3
 
岡山県管内
1
1
26
4
 
2
愛媛県管内
 
12
18
4
1
1
福岡県管内
 
 
9
7
 
4
宮崎県管内
2
7
7
2
1
 
14
41
181
62
17
27

 そして、前記「平成15年度決算審査措置要求決議」において退職給付金や祝い金などの現金給付、旅行券や家電製品などの物品給付の指摘があったことから、職員互助組合等が16年度に実施している個人に対する給付事業について、地方公共団体を実地に検査したところ、現金給付のほか、商品券、旅行券、記念品等の物品給付など各種の事業が実施されており、多くの事業は地方公共団体からの補助金の対象となっていた。実施されている事業の種類は、各職員互助組合等により差異がみられるが、主な事業について、多くの職員互助組合等で共通的に実施されている事業、一部の職員互助組合等で実施されている事業を示すと表2—5のとおりである。

表2—5 職員互助組合等による個人に対する給付事業

[多くの職員互助組合等で共通的に実施されている事業]

事業の種類
事業の概要
祝金
結婚祝金
結婚記念祝金
出産祝金
入学祝金
卒業祝金
特別給付金
職員の結婚時に給付
職員の結婚後25年目等の時期に給付
職員、その配偶者の出産時に給付
扶養親族の小中学校等の入学時に給付
扶養親族の小中学校等の卒業時に給付
結婚祝金等の各種祝金を受けていない職員に給付
弔慰金
死亡弔慰金
親族死亡弔慰金
職員の死亡時に給付
職員の親族の死亡時に給付
見舞金
災害見舞金
家屋、家財等に対する被害に対する給付
永年勤続
永年勤続表彰
職員の勤続10年、20年、30年等の時期に給付
退会
退会給付金
互助組合等の退会時に在会年数等に応じた給付
医療
医療費助成
入院・療養見舞金
人間ドック等助成
医療費の自己負担額に対する助成
傷病による入院等に対する給付
人間ドック、生活習慣病検診等の受診費用を助成
レクリエーション等
宿泊費助成
スポーツ・文化施設等利用助成
スポーツ観戦・芸能鑑賞等助成
各種講座受講助成
旅行による宿泊費を助成
施設の利用料金を助成
入場料金を助成、利用券等の配付
通信講座等による講座の受講費を助成

[一部の職員互助組合等で実施されている事業]

事業の種類
事業の概要
祝金
就職祝金
壮健・還暦等祝金
住宅建築祝金
成人祝金
子の結婚祝金
扶養親族が高校進学せず就職した時に給付
職員が55歳、60歳、70歳等になった時に給付
家屋を新築又は購入した場合に給付
職員、その扶養親族の成人時に給付
職員の子の結婚時に給付
見舞金
障害見舞金
傷病見舞金
特別見舞金
傷病による障害が残った場合に給付
傷病により退職した場合に給付
生活が困窮し救済が必要な場合に給付
医療
家政婦利用助成
鍼灸、マッサージ等助成
メガネ購入助成
入院時に家政婦を利用した場合に費用を助成
施術料を助成
メガネ等を購入した場合に費用を助成
レクリエーション等
リフレッシュ助成
研修旅行等助成
自己啓発活動助成
サークル助成
親睦会等助成
カフェテリアプラン等
職員が30歳、40歳、50歳等になった時に旅行券等を給付
職場で実施する研修旅行等に対する助成
自己啓発のための研修を行う職員に対する給付
職場のスポーツ・文化サークルに対する助成
忘年会等の職員の親睦に係る会合の開催に対する助成
毎年所定の金額の範囲内で、職員が多様な福利厚生メニューの中から選択して受ける給付
その他
遺児給付金
休職給付金
育児休業給付金
介護休暇給付金
介護給付金
職員死亡時に18歳未満の子がある場合に給付
職員の休職時に給付
職員の育児休業時に給付
職員の介護休暇取得時に給付
職員等が介護認定を受けた時に給付

(イ)健康保険組合の保険料負担

 地方公務員における医療給付等の短期給付は、地方公務員共済組合によって行われる場合がほとんどであり、その短期給付に要する費用は、職員である組合員の掛金と地方公共団体の負担金でそれぞれ2分の1の割合で負担することとされている。
 一方、一部の地方公共団体では、健康保険組合が当該地方公共団体の職員に対する短期給付を行っている。健康保険法では、事業に要する費用に充てるため徴収する保険料は、被保険者及び被保険者を使用する事業主がそれぞれ2分の1を負担することが原則とされているが、同法第162条では、健康保険組合の特例として、その規約で定めるところにより、事業主の負担すべき保険料の負担割合を増加することができるとされている。
 実地検査の対象とした地方公共団体のうち17市では、健康保険組合を設立して、短期給付の一部を実施しているが、これらの市では健康保険組合に対して事業主として負担する保険料の16年度の負担割合は60.0%から67.5%となっており、市の支出により職員の保険料負担が軽減されている状況となっている。

ウ 職員の病気休暇等の制度の状況

(ア)病気休暇

 実地検査の対象とした15道府県及び226市町村における、17年4月1日現在の病気休暇の期間及び休暇中の給与の取扱いについては、国の制度と同様に、休暇期間は必要最小限度の期間として90日を超える場合は給与を半減することとしている地方公共団体が50団体(全体の21%)あるが、休暇期間の上限を具体的に規定している団体が多く、その中では90日としている団体が148団体(全体の61%)となっている。
 また、病気休暇から休職に移行した場合の休職者給与の支給期間及び支給割合については、国の制度と同様に、給与の8割相当額を休職者給与として1年間支給することとしている団体が196団体(全体の81%)となっている。

(イ)特別休暇

 実地検査の対象とした地方公共団体では、休暇に関する条例で特別休暇を定めている。また、いくつかの団体では、地方公務員の服務に関する制度である職務専念義務の免除という形で条例を定めることなどにより、実質的に特別休暇と同様な取扱いが行われている。15道府県及び226市町村が定めている特別休暇等の数については、国の17種類より多くの特別休暇等を設けている団体は217団体(全体の90%)となっている。
 そして、特別休暇等の種類については、家族の祭日(法要)休暇、妊娠障害休暇、リフレッシュ・永年勤続休暇など国に制度がない様々な特別休暇等を定めている団体が多くみられるが、一方、国に制度がある特別休暇でも導入率が低いものもみられる。
 また、国に制度がある特別休暇のうち、結婚休暇及び夏季休暇の付与日数状況については、国の制度における付与日数(結婚休暇は5日、夏季休暇は3日)と同じ制度となっている団体が、結婚休暇では123団体(全体の51%)、夏季休暇では138団体(全体の57%)となっている。

3 検査の結果に対する所見

 今般、参議院からの要請を受けて、地方財政の状況について検査した結果は次のとおりである。

(1)地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況

ア 地方財政計画には、地方における標準的な水準の収入支出見込額が計上されている。その歳出計上額の算定方法は、給与関係経費のうち給与費(17年度計上額22兆6684億円)は計画人員に給与単価を乗ずるなどして算定され、一般行政経費(補助)(同10兆0538億円)及び投資的経費(補助)(同7兆3061億円)は国庫補助負担金等の資料を基に積上げ計上されている。一方、一般行政経費(単独)(同13兆0769億円)及び投資的経費(単独)(同12兆3700億円)の大部分は、個々の事業を積み上げるのではなく枠として計上されている。
イ 地方財政計画の歳出の種類ごとの決算額の状況については、一般行政経費は恒常的に決算額が上回るかい離が生じており、2年度以降は6兆円超のかい離が生じていたが、11年度以降は決算額が5兆円を超えて下回るかい離が生じている。また、給与関係経費は恒常的に決算額が1兆円から2兆円を上回るかい離が生じている。
ウ 一般行政経費のかい離については、地方における一般行政経費の決算には、国が法令等を通じて義務付けている行政事務などに係る支出のほか、各地方公共団体が自主的に執行する広範囲に及ぶ各種の支出が含まれており、地方財政計画で見込んでいる支出以外の支出も含まれているが、地方財政計画では一般行政経費のうち単独事業のほとんどは積み上げではなく枠として計上されていて、地方単独事業は各地方公共団体が自主的に実施するものであり、このような地方における各種の支出に係る決算額の実態が十分には地方財政計画額に反映されていないため、かい離が生じていると考えられる。
 地方の決算額では、特に、物件費、補助費等が、地方財政計画で見込まれた一般行政経費の増加率を恒常的に上回る伸びを示しており、これらの経費に係る支出が増加したことにより、地方財政計画とのかい離が生じていると考えられる。また、貸付金に係る計画計上額が近年における決算額と大きく異なっていることもかい離の要因の一つと考えられる。
エ 投資的経費(単独)のかい離については、地方財政計画額が国の政策判断に基づき枠として計上されているのに対し、地方の政策判断による財政支出は国の想定以上に公共事業などの投資的経費を削減していることによると考えられる。バブル経済崩壊後4年度から8年度までは、国の経済対策における地方単独事業等の要請もあって地方の決算額は大きく増加したが、その後、国の経済対策に地方単独事業等の要請が盛り込まれなくなった頃から地方の決算額は大きく減少しており、地方においては、地方税収入が伸び悩む一方で地方債の累増に伴う公債費の増加などによる財政状況の悪化により、国が地方財政計画で見込んだ以上に単独事業の投資的経費を抑制する政策が執られてきたことにより、地方財政計画とのかい離が生じていると考えられる。
オ 給与関係経費のかい離は、地方財政計画に計上される職員数が、前年度の計画人員を基に定員合理化などによる増減数を算定して計上されているのに対し、地方公共団体における実際の職員数は、この計画計上人員を上回っていることによると考えられる。

(2)決算額に関するその他の事項

ア 特殊勤務手当について、16年度における手当数や支給額は地方公共団体によって差異がみられる。15道府県の普通会計及び公営事業会計を合わせた手当数は38手当(福岡県)から96手当(静岡県)、支給額は4億円(鳥取県)から57億円(大阪府)、6政令指定都市の普通会計及び公営事業会計を合わせた手当数は47手当(札幌市)から110手当(大阪市)、支給額は8億円(千葉市)から94億円(大阪市)の状況である。また、336市町村については、手当数が0で支給額が0円の団体が普通会計で56、公営事業会計で103みられるが、一方、手当数が30以上の団体が普通会計で8、公営事業会計で7、支給額が1億円以上の団体が普通会計で16、公営事業会計で52みられる。
イ 336市町村における16年度の検討を要すると思われる特殊勤務手当は、〔1〕国家公務員においては設けられていない特殊勤務手当が2,539手当、支給額135億円、〔2〕他の手当又は給料で措置される勤務内容に対して重複の観点から検討を要すると思われる特殊勤務手当が534手当、支給額33億円、〔3〕月額支給等となっている特殊勤務手当が1,441手当、支給額91億円となっている。
ウ 特殊勤務手当以外の諸手当について、15道府県及び226市町村の17年4月1日現在の制度を国家公務員の制度と比較したところ、自宅所有者に対する住居手当は15道府県及び156市町村、自動車等を使用する場合の通勤手当は14道県及び123市町村で、国の支給月額以上の支給月額となっている。
エ 地方公務員の福利厚生には職員互助組合等を通じて実施されるものが多く、多くの地方公共団体は職員互助組合等に対して補助金を支出している。16年度における15道府県の補助金額は100万円(千葉県)から49億円(大阪府)であり、342市町村については、補助金額が0円の団体が14あるとともに、1億円以上の団体が27あり、最高額は大阪市の73億円である。
オ 職員互助組合等は、職員個人に対して現金等の給付など各種の給付事業を行っており、多くの事業は地方公共団体からの補助金の対象となっている。給付事業の内容は職員互助組合等によって多様であるが、結婚等の祝金、死亡弔慰金、災害見舞金、永年勤続表彰、医療費助成、レクリエーション助成などは多くの職員互助組合等で共通的に実施されている。
カ 健康保険組合を設立して職員に対する医療給付等が行われている17市では、保険料の市の負担割合が60.0%から67.5%となっており、国家公務員や地方公務員の共済組合における50%の負担割合に比べて高く、市の支出により職員の保険料負担が軽減されている。
キ 病気休暇について、15道府県及び226市町村の17年4月1日現在の制度を国の制度と比較したところ、病気休暇の期間及び休暇期間中の給与の取扱いが、国の制度と同様に、必要最小限度の期間で90日を超える場合は給与を半減することとしている団体は50(全体の21%)あるが、休暇期間の上限を具体的に規定している団体が多く、その中では90日としている団体が148(全体の61%)となっている。また、病気休暇から休職に移行した場合の休職者給与の支給期間及び支給割合は、国の制度と同様に、給与の8割相当額を1年間支給することとしている団体は196(全体の81%)となっている。
ク 特別休暇について、15道府県及び226市町村の17年4月1日現在の制度を国の制度と比較したところ、特別休暇等の数が、国の17種類より多く設けている団体は217(全体の90%)となっており、国の制度にない様々な特別休暇等を定めている団体が多くみられる。また、国の制度がある特別休暇のうち結婚休暇及び夏季休暇の付与日数については、国の制度と同じ付与日数となっている団体が、結婚休暇で123(全体の51%)、夏季休暇で138(全体の57%)となっている。
 なお、上記の検査結果は、16年度又は17年4月1日現在を対象としているものであるが、実地検査の対象とした地方公共団体の中には、17年度以降に制度を改正して適正化を実施している団体も相当数見受けられる状況である。
 地方財政については、国と地方の信頼関係を維持しつつ、国、地方それぞれの財政健全化を進めるための取組を行うこととされている。そして、以上の検査結果を踏まえ、地方財政計画の計上額と決算額、及び地方公務員に係る特殊勤務手当等、福利厚生事業への支出、病気休暇等の制度については、次の点に留意することが求められる。
ア 地方財政計画額と決算額のかい離の縮小を図るためには、単独事業の地方財政計画額は、地方の決算額などにより地方における標準的な経費の実態を十分に踏まえて計上することが求められる。17年度及び18年度の地方財政計画では、かい離の一体的是正として、一般行政経費(単独)の増額及び投資的経費(単独)の減額が実施されているが、今後もかい離を是正するための措置が必要である。
 また、地方財政計画の計上額については、地方の一般行政経費や投資的経費に係る単独事業は、名地方公共団体が自主的に実施するものであるから、地方財政計画で、単独事業に係る経費について積上げにより計上することは困難であるが、地方の決算に関する情報を早期に把握して決算の内容を分析することにより、単独事業に係る標準的な経費の適正な計上に努めることが求められる。
イ 地方公務員に係る特殊勤務手当等、福利厚生事業への支出、病気休暇等の制度については、地方の一般財源に関する事項であり、地方自治の本旨に基づき、各地方公共団体においてその住民の意思に基づいて決定されるべきものである。
 これらの事項については、各地方公共団体において、時代の変化を踏まえて必要性及び妥当性を改めて点検し、住民の理解が得られるものとなるよう見直しを実施するとともに、これらの事項の具体的内容や実施状況等を住民に対してより積極的に開示し公表することが求められる。

 本院としては、今回の検査要請を踏まえ、地方公共団体の決算の状況について、引き続き検査していくこととする。