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私立高等学校等経常費助成費補助金の経理が不当と認められるもの


(24)(25) 私立高等学校等経常費助成費補助金の経理が不当と認められるもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)文部科学本省
(項)私立学校助成費
部局等
2県
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号) 
補助事業者(事業主体) 
2県
補助事業
私立高等学校等経常費助成費補助
補助事業の概要
私立の小学校、中学校、高等学校等の専任教職員給与費等の経常的経費を補助する都道府県に対し、その一部を国が補助するもの
上記に対する国庫補助金交付額の合計
7,589,912,000円(平成14年度〜17年度) 
不当と認める国庫補助金交付額
212,779,000円(平成14年度〜17年度) 

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

 私立高等学校等経常費助成費補助金(以下「補助金」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、都道府県が、私立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校及び幼稚園(以下「私立学校」という。)の専任教職員給与費等の経常的経費を補助する場合に、その一部を国が補助するものである。この補助金は、私立学校の教育条件の維持及び向上並びに私立学校に在学する児童、生徒又は幼児(以下「生徒等」という。)に係る修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立学校の経営の健全性を高めることを目的として交付されるものである。

(2) 補助金の額の算定方法

 補助金の額は、私立高等学校等経常費助成費補助金(一般補助)交付要綱(昭和51年文部大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等に基づき、各都道府県において、小学校、中学校等の学校の区分及び全日制・定時制等の課程の区分(以下「学校等の区分」という。)ごとに次の算式により算定した額の合計額となっている。

私立高等学校等経常費助成費補助金の経理が不当と認められるものの図1

 定員内実員  学則で定められた収容定員と当該年度の5月1日現在の生徒等の実員(ただし、幼稚園については、当該年度中に満3歳に達し5月2日以降に入園するなどの園児数を含んだ数)のうちいずれか少ない数をいう。

 上記算式の「生徒等1人当たりの国庫補助単価」は、次のア及びイを合算したものである。
ア 学校等の区分ごとの生徒等1人当たりの都道府県の助成額を基に算定した都道府県ごとの生徒等1人当たりの補助単価(以下「基本国庫補助単価」という。)
イ 情報教育の推進を図るなど交付要綱に定められた特定の事由に該当する施策を行っている私立学校に対して都道府県が特別な助成をしている場合に、基本国庫補助単価に加算される、学校等の区分別、特定の事由別に算定した額(以下「加算単価」という。)の合計

 そして、この加算単価の制度は国が特定の事由の定着を政策的に誘導するためのもので、交付要綱及び「平成14年度私立高等学校等経常費助成費補助金(一般補助)の配分方法について(通知)」(平成14年文部科学省高等教育局私学部私学助成課長通知)等によれば、加算単価の対象となる特定の事由は、次表のとおりとされている。

表 加算単価の対象となる特定の事由等
加算事由
加算単価の対象となる特定の事由
内容
加算事由1
レンタル又はリース方式による教育用コンピュータ等整備の推進
教育用コンピュータ等をレンタル又はリース方式により整備するもの
加算事由2
インターネット接続の推進
インターネットを利用した教育活動を実践するもの
加算事由3
教員の能力開発及び資質向上の促進
現職教員の大学院修士課程への派遣、各種研修事業への派遣(新学習指導要領への対応)等を行うもの
加算事由4
教員の情報教育に関する研修への派遣
情報教育を主とした研修への派遣を行うもの
加算事由5
ティーム保育の推進
幼稚園において複数の教員が学級の担任となるなどティーム保育の推進を図るもの
加算事由6
少人数教育等の推進
私立学校(幼稚園を除く。)において少人数教育等きめ細かな学習指導の推進を図るため教職員を配置するもの
加算事由7
情報処理技術者等の活用
授業の補助や教員の教材作成等に対して補助・助言等を行う情報処理技術者等を活用するもの
加算事由8
教育用コンテンツ(注) の研究及び開発
学校独自の教育用コンテンツを研究及び開発するもの
加算事由9
体験学習の推進
私立学校(幼稚園を除く。)において社会奉仕体験活動、自然体験活動等の体験学習の推進を図るもの

 教育用コンテンツ  授業など学校における教育活動において、パソコン等教育用コンピュータを用いて活用される文字、映像、音声等のテジタル化された教材


(3) 加算単価の算定方法

 この加算単価は、文部科学省が、学校等の区分別、加算単価の対象となる特定の事由別に、年度ごとに定めた全国一律の生徒等1人当たりの配分単価を基に、都道府県ごとに次のとおり算定することとなっている。

この加算単価は、文部科学省が、学校等の区分別、加算単価の対象となる特定の事由別に、年度ごとに定めた全国一律の生徒等1人当たりの配分単価を基に、都道府県ごとに次のとおり算定することとなっている。

 そして、上記の算式における「学校等の区分ごとの加算単価の対象となる生徒等数」は、加算単価の対象となる特定の事由に該当する施策を行っている私立学校に対し、都道府県が特別な助成をしている場合の当該私立学校の生徒等数とされている。

(4) 本件補助金についての検査の経緯等

 本院は、本件補助金について平成17年次に11道府県、18年次に18都府県を検査し、加算単価の対象とはならない生徒等数を含めて加算単価を算定していたため補助金が過大に交付されていた事態について、平成16年度決算検査報告には不当事項として、平成17年度決算検査報告には本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項として、掲記したところである。そして、文部科学省では、本院の指摘を踏まえ、18年11月に、本院が検査を実施していなかった県に対し依頼文書を発し、過年度の本件補助金の加算単価について申請内容の見直しを行い、誤りがある場合には報告するよう要請した。

2 検査の結果

 本院は、文部科学省が申請内容の見直しを要請した14県のうち10県(注) において、合規性等の観点から、見直しが正確に行われ補助金の返還等の措置が適切に執られているかなどに着眼して、13年度から17年度までの間の補助金の算定について、前記の通知に基づく報告書と事業計画書等の書類を照査することなどにより会計実地検査を行った。
 検査したところ、10県のうち2県において、報告には記載のない誤りがあるなどしたため、国庫補助金212,779,000円が過大に交付されたままとなっていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、上記の2県において、本院の指摘を踏まえ、文部科学省から過年度の本件補助金の加算単価について申請内容の見直しを行うよう要請があったにもかかわらず、見直しが十分でなかったこと、文部科学省において、両県に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
 これを県別に示すと次のとおりである。

 10県  福島、富山、福井、岐阜、鳥取、島根、高知、佐賀、長崎、大分各県


 
県名
年度
国庫補助金交付額
不当と認める国庫補助金
 
 
 
千円
千円
(24)
福島県
14、15、17
3,870,964
197,287

 福島県は、管内の私立学校の加算単価の対象としていた生徒等数に基づき、平成14年度1,309,332,000円、15年度1,301,337,000円、17年度1,260,295,000円、計3,870,964,000円の補助金の交付を受けていた。そして、前記の依頼文書に基づく見直しの結果、上記の各年度とも誤りはなかったとしていた。
 しかし、次表のとおり、高等学校の14年度において、加算事由5を除く加算事由1から加算事由9に係る生徒数については、同県が各事由に係る特別な助成をしていないため、すべて加算単価の対象とはならない生徒数などとなっていた。

表 算定が過大となっていた加算事由ごとの生徒等数等

区分
加算事由
年度
県の申請
本院の修正
過大となっていた生徒等数・加算単価
対象となる生徒等数(a) 
加算単価(b) 
対象となる生徒等数(c) 
加算単価(d) 
生徒等数(a-c) 
加算単価(b-d) 
高等学校
加算事由1
14
8,066
2,288
0
0
8,066
2,288
加算事由2
14
11,507
72
0
0
11,507
72
加算事由3
14
5,276
1,093
0
0
5,276
1,093
加算事由4
14
10,753
701
0
0
10,753
701
加算事由6
14
12,084
1,300
0
0
12,084
1,300
加算事由7
14
2,216
296
0
0
2,216
296
加算事由8
14
4,545
5,819
0
0
4,545
5,819
加算事由9
14
8,539
370
0
0
8,539
370
幼稚園
加算事由3
14
13,390
2,060
5,879
905
7,511
1,155
15
13,595
2,232
10,312
1,693
3,283
539
17
6,658
1,334
6,505
1,303
153
31

 したがって、これらの加算単価の対象とはならない生徒等数を除外して加算単価を算定すると本件加算単価がそれぞれ減少し、生徒等1人当たりの国庫補助単価も減少するので、適正な国庫補助金は14年度1,123,706,000円、15年度1,290,301,000円、17年度1,259,670,000円、計3,673,677,000円となり、14年度185,626,000円、15年度11,036,000円、17年度625,000円、計197,287,000円が過大に交付されていた。

(25)
長崎県
15〜17
3,718,948
15,492

 長崎県は、管内の私立学校の加算単価の対象としていた生徒等数に基づき、平成15年度1,261,503,000円、16年度1,238,877,000円、17年度1,218,568,000円、計3,718,948,000円の補助金の交付を受けていた。そして、前記の依頼文書に基づく見直しの結果、次表のとおり誤りがあったとしていた。
 しかし、次表のとおり、高等学校の17年度の加算事由3に係る生徒数のなかには、同県が特別な助成をしていないため加算単価の対象とはならない生徒数が含まれているなどしていた。

表 算定が過大となっていた加算事由ごとの生徒等数等

区分
加算事由
年度
県の申請
県の見直し結果
本院の修正
見直しの結果を除いても、なお過大となっていた生徒等数・加算単価
対象となる生徒等数(a) 
加算単価(b) 
対象となる生徒等数(c) 
加算単価(d) 
対象となる生徒等数(e) 
加算単価(f) 
生徒等数(c-e) 
加算単価(d-f)
中学校
加算事由3
15
768
9,392
768
9,392
562
6,873
206
2,519
高等学校
加算事由3
17
12,948
6,983
12,948
6,983
12,370
6,671
578
312
幼稚園
加算事由3
15
14,432
3,362
10,564
2,461
10,137
2,362
427
99
16
14,084
3,216
11,739
2,681
11,487
2,623
252
58
17
10,000
2,925
10,000
2,925
9,664
2,827
336
98
加算事由5
17
8,120
1,828
8,120
1,828
6,830
1,538
1,290
290

 したがって、これらの加算単価の対象とはならない生徒等数を除外して加算単価を算定すると本件加算単価がそれぞれ減少し、生徒等1人当たりの国庫補助単価も減少するなどのため、適正な国庫補助金は15年度1,243,257,000円、16年度1,230,525,000円、17年度1,209,135,000円、計3,682,917,000円となり、15年度5,242,000円、16年度817,000円、17年度9,433,000円、計15,492,000円が、同県の見直しの結果による過大交付額20,539,000円を除いても、なお過大に交付されていた。

(24)(25)の計
 
7,589,912
212,779