平成18年度
第3章 個別の検査結果
第1節 省庁別の検査結果
第10 厚生労働省
不当事項
保険給付
(74) 厚生年金保険の老齢厚生年金の支給が適正でなかったもの
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1 保険給付の概要
(1) 厚生年金保険の給付
厚生年金保険(前掲「健康保険及び厚生年金保険の保険料の徴収に当たり、徴収額が不足していたもの」参照)において行う給付には、老齢厚生年金等がある。
(2) 老齢厚生年金
ア 老齢厚生年金の支給の原則
老齢厚生年金では、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)により、厚生年金保険の適用事業所に使用された期間(以下「被保険者期間」という。)を1月以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者等が65歳以上である場合に受給権者となる。
イ 特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金では、当分の間の特例として、65歳未満であっても原則60歳以上で被保険者期間を1年以上有し、老齢基礎年金に係る保険料納付済期間が25年以上ある者等が受給権者となっている。
ウ 特別支給の老齢厚生年金の給付額
特別支給の老齢厚生年金の給付額は、〔1〕受給権者の被保険者期間及びその期間における報酬を基に算定される額(以下「基本年金額」という。)と〔2〕配偶者等について加算される額との合計額となっている。
エ 特別支給の老齢厚生年金の支給の停止
(ア) 特別支給の老齢厚生年金の受給権者が、厚生年金保険の適用事業所に常用的に使用されて被保険者となった場合において、総報酬月額相当額(注)と基本月額(基本年金額を12で除して得た額)との合計額が280,000円を超えるときなどには、基本年金額の一部又は年金の額の全部の支給を停止することとなっている。
総報酬月額相当額 標準報酬月額と、受給権者が被保険者である日の属する月以前1年間の標準賞与額(総額)を12で除して得た額との合算額 |
(イ) この場合の支給停止の手続は次のとおりである。
〔1〕 厚生年金保険の適用事業所の事業主は、常用的に使用している者が受給権者であるときは、その者の生年月日、基礎年金番号、資格取得年月日、報酬月額等を記載した被保険者資格取得届に、その者から提出を受けた年金手帳を添えて地方社会保険事務局の社会保険事務所等に提出する。
〔2〕 社会保険事務所等は、これを調査確認の上、届出内容を社会保険庁にオンラインで伝送し、同庁は、これに基づいて受給権者に係る年金の支給停止額を算定の上、支給額を決定する。
2 検査の結果
(1) 検査の観点、着眼点及び対象
全国の47社会保険事務局の309社会保険事務所等(平成19年3月末現在)のうち、27社会保険事務局の164社会保険事務所等管内において、16年に特別支給の老齢厚生年金の裁定を受けて年金の額の全部を支給されている受給権者等531,647人のうち、厚生年金保険の適用事業所からの給与収入が確認されて調査の要があると認められた者が1,543人見受けられた。そこで、合規性等の観点から、これらの受給権者等を使用している744事業所について、被保険者資格取得届等の提出は適正になされているかに着眼して、16年度から19年度までの間における特別支給の老齢厚生年金等の支給の適否を検査した。
(2) 検査の方法
本院は、上記の27社会保険事務局の164社会保険事務所等において、事業主から提出された厚生年金保険に係る届け書等の書類により会計実地検査を行った。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、更に社会保険事務所等に調査及び報告を求め、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。
(3) 不適正支給の事態
検査したところ、23社会保険事務局の108社会保険事務所等管内における219事業所の300人については、当該事業所において常用的に使用されて厚生年金保険の被保険者資格要件を満たしていて、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が280,000円を超えるなどしているのであるから、年金の額の一部又は全部の支給を停止すべきであったのに、被保険者資格取得届が提出されなかったなどのため年金の支給停止の手続が執られていなかった。このため、特別支給の老齢厚生年金等の受給権者300人に対する支給(支給額382,891,803円)について107,398,873円が適正に支給されておらず、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、受給権者又は事業主が制度を十分理解していなかったり、誠実でなかったりして、事業主が前記の届出を怠るなどしていたのに、上記の108社会保険事務所等において、これに対する調査確認及び指導が十分でなかったことによると認められる。
上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。
<事例>
社会保険庁では、受給権者Aに対して平成16年6月に裁定を行い、同年9月分から18年10月分まで特別支給の老齢厚生年金を全額支給していた。これらの不適正支給額を地方社会保険事務局ごとに示すと次のとおりである。
地方社会保険事務局名 |
社会保険事務所等 |
本院の調査に係る受給権者等数 |
不適正受給権者数 |
左の受給権者に支給した年金の額 |
左のうち不適正支給額 |
|
人 |
人 |
千円 |
千円 |
|||
北海道 |
札幌東 |
等7 |
36 |
12 |
24,330 |
5,907 |
青森 |
青森 |
等2 |
16 |
2 |
6,015 |
842 |
岩手 |
盛岡 |
等2 |
17 |
5 |
9,057
|
772 |
山形 |
寒河江 |
6 |
3 |
6,178 |
581 |
|
群馬 |
前橋 |
等5 |
68 |
16 |
25,439 |
6,861 |
埼玉 |
浦和 |
等7 |
69 |
41 |
46,630 |
11,269 |
千葉 |
船橋 |
等4 |
108 |
10 |
6,146 |
1,693 |
東京 |
神田 |
等18 |
359 |
48 |
66,959 |
15,427 |
神奈川 |
港北 |
等7 |
26 |
16 |
19,504 |
10,388 |
福井 |
福井 |
等3 |
24 |
5 |
7,841 |
1,250 |
山梨 |
甲府 |
等3 |
39 |
11 |
12,894 |
7,518 |
長野 |
長野南 |
等6 |
43 |
12 |
13,574 |
4,367 |
岐阜 |
岐阜南 |
等3 |
13 |
5 |
3,674 |
1,208 |
三重 |
津 |
等4 |
85 |
15 |
18,648 |
6,219 |
京都 |
上京 |
等2
|
8 |
3 |
3,757 |
641 |
大阪 |
天満 |
等7 |
55 |
9 |
4,552 |
1,255 |
兵庫 |
須磨 |
等5 |
49 |
20 |
18,565 |
4,823 |
奈良 |
奈良 |
等3 |
24 |
14 |
20,486 |
4,951 |
徳島 |
徳島南 |
等3 |
19 |
12 |
21,562
|
10,237
|
高知 |
高知東 |
等3 |
26 |
8 |
7,850 |
2,658 |
福岡 |
東福岡 |
等8
|
25 |
12 |
20,364 |
5,206 |
熊本 |
熊本東 |
等2 |
48 |
13 |
11,392 |
1,340 |
宮崎 |
宮崎 |
等3 |
18 |
8 |
7,464 |
1,976 |
計 |
108箇所 |
1,181 |
300 |
382,891 |
107,398 |
|