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  • 平成18年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第10 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

生活保護費負担金の算定において、施設事務費の基準額の設定が適正でなかったため、国庫負担金が過大に交付されているもの


(149) 生活保護費負担金の算定において、施設事務費の基準額の設定が適正でなかったため、国庫負担金が過大に交付されているもの

会計名及び科目
一般会計
(組織)厚生労働本省
(項)生活保護費
部局等
4府県
国庫負担の根拠
生活保護法(昭和25年法律第144号)
補助事業者等
(事業主体)
府2、市27、町1、計30事業主体(基準額の設定者高槻市)
生活保護費負担金(保護施設事務費負担金に係る分)の概要
身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者等を保護施設に入所させるなどして保護を実施する場合に、これに伴い都道府県、市等が支弁した事務費の一部を負担するもの
上記のうち指摘対象施設に係る国庫負担金交付額の合計
863,642,249円
(平成16年度〜18年度)
不当と認める国庫負担金交付額
13,634,706円
(平成16年度〜18年度)

1 負担金の概要

(1) 生活保護費負担金(保護施設事務費負担金分)

 生活保護費負担金(保護施設事務費負担金に係る分。以下「負担金」という。生活保護費負担金の概要については、前掲「生活保護費負担金の経理が不当と認められるもの」 参照。)は、都道府県又は市町村(特別区を含む。以下「事業主体」という。)が、身体上又は精神上著しい障害があるために日常生活を営むことが困難な要保護者等について、社会福祉法人等が設置する救護施設等の保護施設(以下「保護施設」という。)に入所を委託するなどして保護を実施する場合に、これに伴い事業主体が支弁した事務費(以下「施設事務費」という。)の一部(4分の3)を国が負担するものである。

(2) 施設事務費の算定

 施設事務費(月額)は、施設事務費支弁基準額(以下「基準額」という。)に各月初日の入所実人員を乗じるなどして得た額となっている。
 この基準額は、保護施設の所在する地域区分、取扱定員ごとに定められた一般事務費単価に、指導員加算費、看護師加算費等の所定の単価を加算した額をもって、保護施設を管轄する都道府県知事又は政令指定都市若しくは中核市の市長(以下「都道府県知事等」という。)が設定することとされている。そして、保護施設に入所を委託するなどして要保護者の保護を実施する事業主体は、当該保護施設を管轄する都道府県知事等が設定した基準額に基づき、当該保護施設に対して施設事務費を支弁することになる。
 上記基準額のうち、取扱定員が111人以上の救護施設の一般事務費単価については、施設に配置されている医師(以下「配置医師」という。)が常勤医師である場合と非常勤医師である場合とで区分されており、都道府県知事等が施設からの申請に基づき、医師の勤務実態等を審査、確認の上、適用する単価を決定することとなっている。そして、常勤医師である場合の一般事務費単価については、配置医師が当該施設の就業規則等に定めるところにより常勤医師として勤務し、原則として勤務時間が1日6時間以上かつ勤務日数が月20日以上である場合に適用することとされ、非常勤医師である場合の一般事務費単価よりも高い単価設定となっている。
 また、保護施設の取扱定員や配置医師に変更があった場合等における基準額の改定は、その事実が生じた日の属する月の翌月(その事実が生じた日が月の初日であるときはその月)から行うこととなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性等の観点から、保護を実施する事業主体が支弁する施設事務費の算定の基礎となっている基準額が保護施設の実態を反映した適正なものとなっているかに着眼して、基準額の設定を行っている31都府県市(注1) において、基準額の設定及び施設事務費について、事業実績報告書や保護施設から提出された各種の申請書、報告書等の書類により会計実地検査を行った。

(2) 検査の結果

 検査したところ、上記31都府県市のうち、高槻市において、基準額の設定が次のとおり適正でなかった。
 すなわち、同市に所在するA救護施設(取扱定員200人)では、平成16年9月30日に常勤医師が退職し、同年10月1日から配置医師が非常勤医師となっていたにもかかわらず、引き続き同市に対し配置医師が常勤医師であるとの申請をしていた。これに対し、同市では、配置医師が常勤医師である場合の一般事務費単価により基準額(16年度161,910円、17年度165,540円、18年度166,470円)を設定していた。
 その結果、16年度から18年度までの間に、A救護施設に入所を委託して保護を実施していた同市を含む4府県の30事業主体(注2) では、A救護施設に対して不適正な基準額に基づき施設事務費計1,151,523,034円を支弁し、これに係る負担金計863,642,249円の交付を受けていた。
 したがって、配置医師が非常勤医師である場合の一般事務費単価を用いた適正な基準額(16年度158,780円(9月までは161,910円)、17年度162,410円、18年度163,450円)によりA救護施設に係る施設事務費を算定すると計1,133,343,424円となり、支弁された施設事務費との差額計18,179,610円が過大に支弁されていた。そして、適正な施設事務費に基づき負担金を算定すると計850,007,543円となり、交付額との差額計13,634,706円が過大に交付されていて不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、A救護施設において制度に対する理解が不足していたことにもよるが、高槻市において制度に対する理解が不足していたため、基準額の設定に当たり審査、確認が十分でなかったことなどによると認められる。

 31都府県市  東京都、京都、大阪両府、茨城、埼玉、神奈川、福井、山梨、長野、愛知、三重、奈良、広島、愛媛、福岡、佐賀、長崎、宮崎、沖縄各県及び川越、横浜、長野、名古屋、岡崎、大阪、高槻、奈良、松山、福岡、長崎、宮崎各市
 4府県の30事業主体  京都府、京都、長岡京両市(以上京都府)、大阪府、大阪、堺、豊中、吹田、高槻、守口、枚方、茨木、八尾、泉佐野、寝屋川、松原、大東、和泉、箕面、柏原、羽曳野、門真、摂津、高石、東大阪、四条畷各市、島本町(以上大阪府)、尼崎、西宮両市(以上兵庫県)、岩国市(山口県)